時間外労働は「働き方改革(2019年)」でどう変わるか

公開日:2019年07月03日
最終更新日:2019年07月03日

目次

  1. 時間外労働とは
    • 労働時間の適正な管理
    • 法定労働時間と所定労働時間
    • 時間外労働のために必要な「36協定」
  2. 働き方改革で求められる労働時間の管理
    • 時間外労働時間の上限規制
    • 月60時間超の割増賃金率が中小企業にも適用
    • 年次有給休暇の取得を義務化
    • その他の改正点
  3. 時間外労働罰則規定
    • その他のリスク
  4. 割増賃金の計算方法
    • 月60時間超の割増率が中小企業に適用
  5. まとめ

この記事のポイント

  • 働き方改革法案によって、残業時間の上限を定められた。
  • 法定労働時間を超える時間外労働の割増率は25%、月60時間を超える場合には、割増率は50%となる。
  • 適正に対応しないと罰則規定も設けられたので、注意が必要。

 

「時間外労働」とは1日8時間を超える分の残業で、法律上割増賃金を支払う必要がある時間外労働時間のことをいいます。

割増賃金の割増率は時間帯ごとに定められていて、それを下回ると労働基準法違反になります。時間外労働については、働き方改革(2019年から施行)で残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とされました。
この記事では、働き方改革の「時間外労働の上限規制」の内容と、必要な対策などについてご紹介します。

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時間外労働とは

時間外労働とは、法律で定める労働時間(1週間に40時間、1日8時間)を超えた時間外労働のことです。月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当します。
これまで、時間外労働について制限はありませんでしたが、働き方改革法案で労働基準法が改正されたことで、残業時間の上限を定められ、これを超える残業はできなくなります。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、下記を超えることはできません。

・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)

労働時間の適正な管理

使用者(会社など)は、従業員の労働時間を把握する責務がありますので、必ず労働時間の管理を行う必要があります。
管理が必要な労働者は、労働基準法第41条に定める者、および「みなし労働時間制」が適用される労働者をのぞくすべての労働者です。
厚生労働省では、平成29年(2017年)に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を改定しました。
このガイドラインでは、「使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」「適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならない」などが規定されています。

参照:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

法定労働時間と所定労働時間

時間外労働は、大きく分けて「法定時間外労働」と「所定時間外労働」の2種類あります。このうち法律上残業代を支払うべきとされているのは、法定労働時間外の労働です。

法定時間外労働(法定の残業)
法律で定める労働時間(1週間に40時間、1日8時間)を超えた時間外労働のことです。

所定時間外労働(法内の残業)
契約や就業規則で定められた労働時間を超えてはいるが、法律で定める労働時間(1週間に40時間、1日8時間)は超えてはいない残業のことです。
所定時間外労働は、法定労働時間を超えていないので、原則として割増した残業代を支払う義務はありません。ただし、就業規則などで「所定時間外労働について割増した残業代を支払う」と規定されている場合などは、残業代を支払う義務は生じます。

時間外労働のために必要な「36協定」

法定労働時間を超えて労働させる可能性がある事業所は、すべて「36協定」の締結と提出が必要です。
たとえば、1日の法定労働時間は8時間なので、この時間を超えて労働させることがある場合には、36協定の締結と提出が必要となります。

「36(サブロク)協定とは|36協定を締結すべきケースと記載すべき内容」を読む

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働き方改革で求められる労働時間の管理

働き方改革法とは、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指して労働基準法や安全衛生法の一部の条文を改正し、2019年4月1日から順次施行される改革法です。

労働時間に関連する主な改正内容は、以下のとおりです。

① 時間外労働時間の上限規制
② 月60時間超の割増賃金率を中小企業にも適用
③ 年次有給休暇の取得時期の指定義務
④ フレックスタイム制の見直し
⑤ 企画業務型裁量労働制の対象業務の見直し
⑥ 高度プロフェッショナル制度の見直し

時間外労働時間の上限規制

これまで、前述した36協定で定める時間外労働については、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、特別条項付きの36協定を締結すれば、限度時間を超える時間まで時間外労働を行わせることが可能でした。

しかし、働き方改革法案によって残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできなくなりました。
また、臨時的で特別な事情がある場合でも、時間外労働時間は年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する必要があります。そして、この上限時間に対する違反は、特定の場合を除いて罰則が課せられることになりました。

参照:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」

月60時間超の割増賃金率が中小企業にも適用

法定労働時間を超える時間外労働の割増率は25%、月60時間を超える場合には、割増率を50%とすることになっています。現在は中小企業について適用が猶予されていますが、2023年から、中小企業にも適用される予定です。

参照:厚生労働省「働き方改革関連法のポイント」

年次有給休暇の取得を義務化

年次有給休暇について、これまで労働者が自ら申し出なければ取得することができませんでしたが、労働者の希望を踏まえて時期を指定し、年5日の有給休暇を取得させなければならなくなりました。

その他の改正点

上記のほか、働き方改革法案では、「労働時間の客観的な把握を企業に義務づけ」「フレックスタイム制の拡充」「高度プロフェッショナル制度の創設」「産業医・産業保健機能の強化などが盛り込まれています。

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時間外労働罰則規定

今回の改正では、実際の労働時間が上限を超えた時に「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」とする罰則が設けられました。
また、フレックスタイム制の協定の届出義務を怠った時には、同様に罰則の対象となり、30万円以下の罰金が定められています。

その他のリスク

時間外労働については、罰則が設けられた他、未払い残業代を請求されるリスクもあります。自己申告制で労働時間管理をしていて労働時間の記録と実態の時間数に剥離が生じていたり、給与明細書で基本給と定額時間外労働手当を区別していなかったりすると、残業代を請求されるリスクがありますので、注意しましょう。

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割増賃金の計算方法

法定労働時間を超えて労働させた場合の時間外労働、休日労働および深夜労働については、割増賃金の支払いが必要です。
割増率は、時間外労働は1カ月60時間までは25、60時間超からは50%、深夜労働は35%、深夜労働は25%です。

月60時間超の割増率が中小企業に適用

前述したとおり、1カ月60時間を超える時間外労働の法定割増率が50%に引き上げられました。上限規制の施行は2019年4月1日ですが、中小企業に対しては2024年から施行される予定となっています。

中小企業の範囲については、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」のいずれかが以下の基準を満たしていれば、中小企業に該当すると判断されます。なお、事業場単位ではなく、企業単位で判断されます。

参照:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」

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まとめ

働き方改革法案では、時間外労働の上限規制以外にも36協定の記述や労働時間の管理方法等の労務管理法が大きく変わることになります。また、適正に対応しないと罰則規定も設けられたことから、早急な対応が必要です。
しかし、依然として「平日の残業が減ったが、休日出勤が増加した」「適切な就業規則の作成方法が分からない」といった声も多く聞かれます。

法改正の概要や必要な対策については、社会保険労務士にアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

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