公開日:2018年08月01日
最終更新日:2024年02月20日
通常会社が税理士と契約する時は、年間を通じた顧問契約を結ぶことが基本です。しかし、顧問契約を結ぶと場合によっては年間で数十万円以上の報酬がかかることもあるため、開業から間もない企業や小規模な事業者にとっては、この顧問料が大きな負担となってしまうケースもあります。
このような時には、期末の決算申告だけを税理士に依頼することも選択肢のひとつになります。支払う報酬を抑えることができるという点が大きなメリットですが、一方いくつかのデメリットもあります。
ここでは、税理士に決算申告のみを依頼するメリット、デメリットについてご紹介します。
税理士の豆知識
中小企業にとっては、税理士による経営改善のためのアドバイスを受けることは非常にメリットがあります。大企業だと経営者と顧問税理士が直接面談する機会は非常に少ないものですが、中小企業の場合は、税務会計の知識はもちろん、経営全体に関する見識を持つ税理士は経営者の意思決定を助ける心強い存在です。
また、顧問税理士がいればキャッシュ・フローに問題があれば、「在庫が多すぎる」「売掛金が増えている」など、すぐに忠告してくれたうえで、在庫の処分や支払サイトの見直しなど、経営の体質改善を促すための対策を提案してくれます。
また、顧問税理士がいれば「銀行受けのいい決算書」を作成してもらうこともできます。
出された数字をそのまま機械的に決算書に反映させるのではなく、融資審査でどこの数字がチェックされるのかという観点から決算書を作成してくれます。
さらに資金繰りに大きな影響を及ぼす節税対策についても、適切な時期にもっとも効果のある対策を提案してもらうことができます。
会社が税理士と契約する時は、通常は必要に応じて(月に1度など)面談等行い、税務書類の作成や税務相談をするために、年間を通じて顧問契約を締結します。
しかし個々のニーズに応じて、決算時の税務申告だけを依頼するなどスポットで契約を締結することもできます。税理士に決算申告のみ依頼するメリットとしては、報酬が安く済むことと、スピーディーな対応で税務申告が可能になるといった点を挙げることができます。
税理士に決算申告だけを依頼する最大のメリットは、「税理士に支払う報酬を抑えることができる」という点でしょう。
税理士報酬の相場は売上規模や取引数など、さまざまな要素によって変動しますが、小規模な会社の場合で、すでに記帳が済んでいれば数万円~数十万円で依頼できる場合もあります。
通常、税理士と顧問契約を結ぶと月間数万円の報酬に加えて別に決算報酬が必要となり、それらを合計すると年間数十万円を超えるケースがほとんどです。そこで、事業の規模がそれほどではない会社や起業したての会社の場合には、決算申告のみ税理士に依頼することで、月々の税理士報酬分を削減することができます。
決算申告だけを依頼する場合は、1年間の会計データを渡してから税理士が申告書の作成に取り掛かることになります。法人税の申告期限は年度が終わってから2カ月以内と定められていて、この間に帳簿のチェック、税務書類の作成を行う必要があるため、それほど余裕はありません。
税理士に依頼することで、スピーディーかつ正確な処理が可能となります。
税理士に決算申告を依頼する理由で最も多いのが、この「時間を節約できる」というものです。
「freee会計」を利用して、日々の取引がきちんと処理できているケースであれば、決算業務もそれほど時間はかからず対応することができます。しかし、「1年分の領収書を溜めてしまった」「税務申告を一度も行ったことがない」「決算申告期限が迫っているのに、何から始めたら良いか分からない」というケースだと、本業の傍らで税理士に依頼しないで決算申告を行うのは、ほとんど不可能でしょう。なぜなら、決算申告を行うためには簿記の知識も必要となりますし、税務知識も必要となるからです。
しかし税理士に依頼すれば、通帳のコピー、売上及び仕入が分かる資料、帳簿書類、領収書や請求書、クレジットカードの明細票など、指示されたとおりの資料等を整理して税理士に渡すことで、決算申告を行うことができます。
税理士と顧問契約を締結せずに決算申告のみ依頼すると、前述したようなメリットもありますが、デメリットもあります。
主なデメリットとしては、「十分な節税対策ができない」「経営に関するアドバイスが受けられない」などを挙げることができます。
これらのデメリットは短期的には影響がないように見えますが、長い目で見ると資金繰りに大きな影響を与えることがあるので、十分に理解しておくことが必要です。
事業を行っていくうえでは、法人税の他に消費税、住民税、事業税など数多くの税金を納めなければなりません。
これらの税金は上手に節税対策を行えば、かなりの税負担を抑えることができます。
しかし決算前後に決算申告だけを税理士に依頼しても、十分な節税対策を行うことができません。節税対策は、中長期で行う方が効果的なものが多いですし、自社の事情によって効果がある節税対策は異なります。
たとえば、会社の主な節税対策としては、設備の減価償却や役員報酬の支給などがありますが、これらの会計処理は決算を迎えてから実施することはできず、事前に届出が必要となりますし、中長期計画で実施すべきです。
したがって、どのような節税対策を行うべきかについては、日ごろからの税理士とのコミュニケーションをとり適宜必要な対策についてアドバイスを受けることが必要なのです。
また、決算申告だけ依頼すると、税理士は1年間の会計処理を十分にチェックすることができません。年間の会計の内容や個々の事業の状況が分からない状態では、効果的な節税対策を考えることができなくなってしまうのです。
税理士の業務というと、帳簿をつけて税務申告をするというイメージを持つ人が多いと思いますが、実は税理士の仕事はそれだけではありません。
税理士には、会計・税務のプロとして、会社の経営に関するアドバイスを受けることもできます。
定期的に税理士に経営相談ができれば、資金繰りの必要性を指摘してもらうこともできますし事業計画のチェックなどもしてもらうことができます。また、業界に精通している税理士であれば、業界の情報を共有してもらうこともできます。
しかし1年に1回の決算申告だけのつきあいでは、このような経営上メリットのあるアドバイスを受けることはできなくなります。
これまで述べてきたようなメリットとデメリットを比較して、「やはり、今回は決算申告のみ税理士に依頼する」と判断した場合には、いくつかのポイントがあります。
報酬額だけでなく依頼できる業務内容についても必ず確認するようにしましょう。
税理士報酬については、契約前に見積もりを提示してもらいましょう。
今では税理士業界でも価格競争が進んでいて、税務申告だけであれば安い場合では数万円で引き受けてもらえることもあります。
ただし、報酬は会社の売上高によって変動することがほとんどです。税理士事務所のホームページでは、「29,800円~」といった表示がされている場合でも、その通りの金額で済むわけではないということは理解しておきましょう。
売上が1,000万円以上あるなど消費税の課税事業者である場合には、消費税の申告も必要となってきます。報酬のなかには、この消費税申告が含まれているのか、それとも消費税申告については別料金になっているのかも重要なポイントとなります。その点も忘れずに確認するようにしましょう。
さらに、自社で記帳を済ませていて税務申告だけ依頼するのか、記帳から依頼するのかによっても報酬が変わることがあります。記帳から必要な場合は、その分の報酬を支払う必要があるからです。
自社で記帳をしていた場合でも、仕訳処理が適切でなく修正作業で工数がかかれば追加報酬がかかります。税理士によるチェックがどの程度必要か、事前に確認しておくことも必要です。
なお、税理士の報酬相場については、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」でまとめましたので、参考にしていただければと思います。
本当に効果的な節税対策は、決算を迎えてから考えていては間に合いません。こればかりは顧問税理士と相談しながら、計画的に対策を検討し効果的な節税対策を提案してもらう必要があります。
とはいうものの、「決算間近では、絶対に節税対策はできない」というわけではありません。もちろん個々の状況にもよりますが、決算間近でも節税対策を実施することが可能な場合もあります。
したがって、「今から実施できる節税対策はないか」という点は、確認することをおすすめします。
税理士に決算業務を依頼する場合には、ほかに今必要な施策はないか、その施策を実施するうえでサポートを受けられるのかも確認してみましょう。
たとえば、税理士は中小企業向けの助成金や補助金に関する情報もよく知っています。
助成金や補助金はいつでも申請できるわけではなく、申請しても必ずもらえるとは限りません。また、税理士をはじめとした「経営革新等支援機関」のサポートが条件となっている補助金も数多くあります。
資金調達に強い税理士に相談すれば、助成金や補助金申請時期の情報だけでなく、申請が受理されるための書類の書き方やアピール方法についてアドバイスを受けることも期待できます。
税理士に税務申告を依頼する場合は、会計ソフトの対応状況も確認する必要があります。事務所によっては、指定された会計ソフトを使うように指示されることがあるほか、リアルタイムでデータを共有できるクラウド会計ソフトに対応していない場合もあるからです。
クラウド会計ソフトに対応していない税理士事務所だとクラウド上でデータを共有することができないので、申告までにただでさえ時間がないのに、会計データの受け渡しだけでも時間がかかってしまいます。
時間と費用のコスト面から考えても、会計ソフトの対応状況については、必ず確認すべきでしょう。
これまでご紹介したように、税理士には決算申告だけ依頼するよりも顧問契約を締結した方が、有効な節税対策を実施することができ、経営上のアドバイスを受けることができるなど、さまざまなメリットがあります。さらに顧問税理士がいることで、金融機関に対する信用度が増し融資を受ける上で有利になりますし、税務調査の対象となりにくいというメリットがあります。
そこで、顧問契約を締結する場合に依頼できる業務内容についても、あわせて確認しておきましょう。
まずは、自社の事情や希望を細かく説明して、どのような業務を行ってくれるのか、その業務に対応する報酬はどのように設定されているのかという点について事前に確認をするようにしましょう。
なかには、経理指導から対応してくれる税理士もあります。
たとえば、売上や仕入など定型的な会計処理は毎回同じパターンでできますが、設備を購入したときに資産計上するか費用計上するかについては、そのつど判断しなければなりません。
このような非定型的な会計処理についても、顧問税理士に指導を受けることができれば、自計化を進めることにつながりますし、自社内で経営上の判断ができるようにもなります。
また、税理士によっては、給与計算を依頼すると源泉徴収から年末調整まで代行してもらえる場合があります。
この点も顧問契約を締結するうえで大きなメリットといえるでしょう。
顧問契約を締結する時の注意点については「税理士と顧問契約を結ぶときの注意点とは」もあわせてご覧ください。
以上、税理士に決算申告のみを依頼するメリット・デメリットを中心に、税理士との契約の考え方についてお伝えしました。
税理士に決算申告のみ依頼すれば、確かに税理士報酬を抑えることが可能です。しかし適切な節税対策ができないことから、トータルで考えると結局高くつくことになってしまうケースも多いものです。また、経営指導を受ける機会もないため、経営をレベルアップさせたい時には顧問契約が経営上の強力なパートナーとなってくれることも期待できます。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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