公開日:2022年03月30日
最終更新日:2022年04月08日
暗号資産にはさまざまな種類がありますが、なかでも有名なのがBTC(ビットコイン)、ETH(イーサリアム)などの仮想通貨でしょう。
仮想通貨は世界中で毎日取引がされていて、ドルや円のように価値が変動することから、投資を目的として購入する人も少なくありません。
この記事では、仮想通貨などの暗号資産のしくみや所得の計算方法、確定申告などについてご紹介します。
暗号資産とは、インターネット上で取引ができる通貨のことで、金融機関を介さない通貨です。
暗号資産は、もともとは「仮想通貨」と呼称されていましたが、2018年に行われたG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)において「仮想通貨は、『通貨』としての特性を欠いている」と指摘されました。国が価値を裏づけている信頼性の高い通貨とはいえず、流通体制や管理体制が十分に整備されていない点を指摘されたことから、通貨と明確に区別するために「暗号資産」と呼称されることとなりました。
このG20サミットの決定を受けて、2019年5月に成立した改正資金決済法から日本でも仮想通貨を「暗号資産」と呼称することとなりました。
ただし実際には「暗号資産」と呼んでいる事業者はほとんどなく、「仮想通貨」という名称がそのまま使われています。
暗号資産とは、従来の通貨とは異なる概念を持つ新しい資産といえます。
従来の通貨は、銀行に預けるなどして保管管理をしますが、暗号資産はインターネット技術によって暗号化されていますので、この保管管理をインターネット上で行います。
ここまで説明すると、「電子マネーとどこが違うのか」と思われるかもしれません。では電子マネーとの違いはどこにあるのかといえば、暗号資産は「管理者不在でシステムが成立している」という点です。
たとえば、日本円を管理しているのは日本の中央銀行ですし、suicaを管理しているのはJRですが、暗号資産を構成するのは、お金のやり取りをするユーザーとシステムを処理する参加者(マイナー)です。
従来の電子決済の流れ 保管管理は管理者が行ない、取引を行うユーザーは、管理者に手数料を支払って決済する。 暗号資産の流れ |
暗号資産は、このように管理者がいないシステムであることから、ユーザーの取引記録が公開されるなど、一定の規律が設けられています。
銀行で取引が行われる場合には、銀行がその取引が正しく行われているのかを検証しますが、暗号資産にはこのような管理者が不在であるため、マイニング(他の人が作成した取引を検証する作業)の参加者がブロックチェーンという取引台帳を記帳して公開し、不正がないことを検証し、全員が全員を監視するネットワークで取引を成立させています。
ビットコインは、今や知らない人はいないであろう最も有名な暗号資産、つまり暗号資産の王様です。ビットコインは、他の暗号資産とは区別されて扱われており、ビットコイン以外の暗号資産は「アルトコイン」と呼ばれています。
有名なところでは、イーサリアム、リップル、コスモスなどがあり、それぞれビットコインとは異なる特徴があります。
ビットコインの価格相場は、2017年には10万円程度でしたが、同年12月には一時的に200万円を突破し、投資家たちの注目を集めました。
その後取引サイトのハッキング事件などもあり、ビットコインの価格は大暴落し10万円程度まで価値を落としましたが、2020年の新型コロナウイルス感染症によって打撃を受けた各国の経済の救済措置をきっかけとして、再びビットコインの価格は急騰し、一気に700万円近くまで値を戻したことで話題となりました。
投機・投資の対象として注目される暗号資産ですが、決済手段や送金手段として活用することもできます。
ビットコインでの支払いに対応しているお店であれば、現金やクレジットカードと同じようにビットコインで支払いをすることができます。
さらにビットコインは全世界共通のため、海外でビットコイン決済を利用する場合には、両替などの手間を省くことができるというメリットもあります。
また、ビットコインは送金手段としても注目を集めています。
暗号資産で送金すれば、送金にかかる手数料を抑えることができ、時間も短縮できるからです。
暗号資産は、2016年に公布された改正資金決済法のなかで、法的に決済手段として位置づけられたことを受け、税制の面でも法整備が進んでいます。
国税庁は「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」を公表し、暗号資産取引によって生じた所得は「雑所得」に区分されることや、暗号資産は、売却・商品購入・仮想通貨同士での交換・マイニングにより取得した場合に所得税の対象となるとして、取引事例ごとの具体的な計算方法などがFAQで示されています。
参照:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
暗号資産(仮想通貨)で得た所得の計算方法としては、「総平均法」と「移動平均法」があります。
総平均法とは、1年間の購入金額をすべて足して平均単価を算出し、すべての売却に対してその購入単価で損益を計算する方法です。
一方、移動平均法とは、仮想通貨を購入するたびに取得価額と残高を平均し、売却したときの所得を計算する方法です。
原則としては総平均法による評価方法で算出し、移動平均法を選択する場合には、評価方法の変更を届け出る必要があります。
ビットコイン、イーサリアムなどの暗号資産の取引で生じた所得は、雑所得となります。サラリーマンなど会社で年末調整を終えている場合でも、給与所得以外のこれらの所得が20万円を超えると確定申告が必要となります。
暗号資産は、ただ所有しているだけなら確定申告の対象とはなりません。
暗号資産は、売却・商品購入・仮想通貨同士の交換・マイニングによって取得し年間20万円超の所得が出た場合には、所得税の対象となります。
・暗号資産を売却して、円に換えた ・暗号資産で商品を購入した ・暗号資産と暗号資産を交換した(ビットコインをイーサリアムに換えた) |
暗号資産は10種類ある所得のうち、「雑所得」に該当し総合課税の対象となります。
なお、FXによって生じた所得は「雑所得」の分離課税で損益通算をすることができますが、暗号資産による所得は、損失が生じても雑所得以外の他の所得と通算をすることはできません。ただし、他の雑所得の黒字の所得から赤字分を差し引いて通算することはできます。
FX | 暗号資産 |
---|---|
先物取引に係る雑所得等(分離課税) | 雑所得(総合課税) |
20.315% | 累進税率 |
暗号資産は「総収入金額-必要経費」で計算します。
ここでいう必要経費は、暗号資産の取得価額や取引にかかった手数料などが該当します。
暗号資産取引の必要経費として計上できる支出
・暗号資産の取得費 |
暗号資産の必要経費に算入する価額は、原則として「総平均法」によって計算します(届出を行うことで移動平均法を算定することも可能です)。
①1年間に購入したビットコインの合計: 4BTC ②1年間に購入した金額の合計: 100万円×2+80万円×2=360万円 ③購入時の単価: 360万円÷4=90万円 1BTC120万円のときに3BTCを売却しているため最終的な損益額は以下のようになります。 (120万円-90万円)×3=90万円 |
暗号資産の取引で20万円超の利益が出たら、確定申告が必要です。
確定申告は、インターネットで簡単に行うことができます。
①雑所得(その他)を選択
国税庁確定申告書作成コーナーにログインし、雑所得(その他)を選択します。
②所得の選択
所得:「上記以外(報酬等)」を選択します
③収入金額、必要経費などを入力
所得の種目、支払者の名称、収入金額、必要経費を入力します。
暗号資産は、投資目的として魅力的な資産であるほか、決済手段や送金手段として活用することもできるメリットの多い資産のひとつです。
ただし、当然預金のような元本保証もなく運用に失敗すれば大きなマイナスにつながるリスクもあります。
また、暗号資産の取引で年間20万円超の利益が出たら、確定申告が必要です。
2022年2月16日には、日本経済新聞が「暗号資産の投資家に税務調査が入り、合計約14億円の申告もれを指摘された」と報じられたことからも分かるように、税務当局は暗号資産に関する監視を強めています。
適切に暗号資産取引を行ない、申告もれの指摘などを受けないためにも、暗号資産で利益が出たときの確定申告や節税ポイントについては、早めに税理士等に確認しておくことをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、暗号資産の確定申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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