公開日:2019年11月02日
最終更新日:2022年07月17日
海外資産(海外の有価証券や海外不動産の賃貸収入など)を運用して収入があると、日本と海外の現地国の両方の税金がかかります。
国際税務の基本ルールとしては、日本居住者は全世界の所得に対して課税される「全世界所得課税」となっているからです。
日本に居住していない人の場合には、国内源泉所得についてのみ所得税が課税されますが、所得の種類によっては、別途税金がかかるケースもあります。
日本国内での居住者で海外に資産がありその資産を運用して収入がある場合には、日本と海外の両方に税金がかかります。たとえば、海外に所有している不動産を賃貸に出している場合、その所有者が日本在住であれば、原則として、その不動産の所在する国と日本の両方で、この不動産所得に課される税金を納めなくてはなりません。
このような状態を「二重課税」といいます。
そして、日本でも海外でも税金が課されている場合には、基本的に外国税額控除の対象となり、この二重課税を排除することができます(※後述)。
※ただし、ひとくちに海外資産の運用と言っても、外国の有価証券を購入し「源泉徴収ありの特定口座」を利用した場合には、自動的に源泉徴収されているので、確定申告が必要ないケースもあります。
国際税務の基本ルールは、「全世界所得課税」です。
つまり、日本に住んでいたら原則として全世界の所得について課税されることになります。ただし、納税義務者については、非永住者以外の居住者や非永住者などの区分があり、この区分によって所得税が課される所得の範囲と課税方式が異なります。
個人の区分 | 定義 | 課税所得の範囲 | |
---|---|---|---|
居住者 | 非永住者以外の 居住者 |
次のいずれかに該当する個人のうち非永住者以外の者 ・ 日本国内に住所を有する者 ・ 日本国内に現在まで引き続き1年以上居所を有する者 |
国内および国外において生じたすべての所得 |
非永住者 | 居住者のうち、次のいずれにも該当する者 ・ 日本国籍を有していない者 ・ 過去10年以内において、日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である者 |
国外源泉所得以外の所得および国外源泉所得で日本国内において支払われ、または国外から送金されたもの | |
非居住者 | 居住者以外の個人 | 国内源泉所得 |
居住者 非永住者以外の居住者 …国内に住所を有する者、または日本国内に現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人のうち、非永住者以外の者 →居住者の場合は、国内源泉所得の全部および国外源泉所得の全部が課税対象です。つまり、日本国内で得た所得も海外で得た所得も課税されます。これを「全世界所得課税」といいます。 非永住者 非居住者 |
海外の不動産による賃料収入についても、日本と海外の両方の税金がかかります。
日本では、不動産所得として毎年3月15日までに確定申告をしなくてはなりません。
海外の税金については、不動産が所在する現地国の税法によって異なりますので、現地国の税法に従います。たとえば、ハワイであれば、不動産の評価額に応じた固定資産税のほか、賃貸収入に応じた所得税、ハワイ州消費税などがかかります。
なお、日本と海外の二重課税となった部分については、租税条約(国家間の合意)や後述する外国税額控除によって税負担を軽くすることができます。
海外の有価証券等を購入して利子が発生した場合には、日本と海外の両方の税金がかかります。前述したとおり、日本では「全世界所得課税制度」を適用していますし、世界では自国に所在する財産から発生する収益についてはその国の税法で課税されるからです。
日本国内で口座開設した場合には、発生した利子から20.315%の税金が源泉徴収されますので、確定申告は必要ありませんが、海外で直接口座開設をした場合には、日本で源泉徴収されないので確定申告が必要となります。
なお、租税条約がある場合には、その条約に従って課税されます。
海外の有価証券等を購入して配当が発生した場合にも、日本と海外の両方の税金がかかります。外国の有価証券を購入したのが「源泉徴収ありの特定口座」を利用した場合には、自動的に源泉徴収されているので、確定申告が必要ないケースもありますが、それ以外の場合には、確定申告をして外国税額控除の適用を受けることもできます。
海外資産を運用して利益が出た場合、通常は日本と海外の両方から課税されます。これを「二重課税」といいますが、この二重課税の状態は租税条約や外国税額控除を活用することで解消することができます。
租税条約とは、二国間以上の国同士の租税に関する取り決めです。
日本に住んでいる人で海外投資をした場合、その土地で一定の手続きを行えばその地では非居住者であることが認められ、税率が低くなることもあります。
なお、租税条約があるか否かに関わらず後述する外国税額控除を利用すれば、二重課税部分を解消することができますので、確定申告をする際には、事前に税理士に相談しましょう。
外国税額控除とは、国際的な二重課税を調整するための制度で、居住者が外国所得税を納付することとなる場合には、一定の金額を限度として、その外国所得税の額を所得税の額から差し引くことができる制度です。
なお、不動産所得、事業所得、山林所得、一時所得または雑所得についての外国所得税は外国税額控除をする代わりに、これらの所得の金額を計算するうえで、必要経費に算入することができます。必要経費に算入するか外国税額控除を適用するかは、毎年確定申告の際に検討しなければなりません。
外国税額控除額の計算は、控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額に超えるか否かによって、その額が異なります。
①控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額に満たない場合 ②控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合 イ 控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた残額 |
所得税の控除限度額及び復興特別所得税の控除限度額は次の算式により計算します。
「その年分の所得税額」とは、配当控除や住宅ローン控除などの税額控除などを適用した後の所得税額をいいます。 「その年分の所得総額」とは、純損失または雑損失の繰越控除や居住用財産の買換えによる譲渡損失の繰越控除などの各種繰越控除の適用を受けている場合には、その適用前のその年分の総所得金額です。 |
以上、外国資産を運用する時にかかる税金や、二重課税を解消するための方法についてご紹介しました。外国資産を運用した際には、日本と海外の両方から課税されますが、外国税額控除の適用を受けることで、二重課税の状態は解消することができますし、確定申告の際に受けられる所得控除や税額控除を活用することで、さらに税負担を軽くすることができます。
また、不動産に係る収入については、収入についてはTTB(外貨を購入する時のレート)、必要経費についてはTTS(外貨を円に戻す時のルート)を用いて、税額上有利に計算するという方法もあります。
どの控除を利用できるかについては、個々のケースによって異なりますので、確定申告の前に国際税務に詳しい税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
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