公開日:2019年12月24日
最終更新日:2022年07月05日
会社は、いくつもの税金を支払わなければなりませんが、そのなかでも特に「法人税」「法人住民税」「法人事業税」は、法人3税と呼ばれています。
この記事では、この法人3税のひとつである「法人事業税」の意味や納税義務者、計算方法や申告・納付の方法、法人税や法人住民税との違い、などについてご紹介します。
法人事業税とは、法人が行う事業活動に対して、事務所や事業所が所在する都道府県が法人に課する税金のことをいいます。
事業を行う法人は、国、都道府県、市町村の道路や施設など行政のサービスを受けて事業を行っています。事業税は、このような公共サービスを利用する法人も、必要な経費を分担すべきであるという考え方に基づいた税金です。
法人は、事業活動を行うにあたって、国、都道府県、市町村の道路や港湾などの公共施設を利用します。そしてその中でも一番利用することが多いのは都道府県の公共サービスです。
法人事業税は、公共施設などの都道府県の行政サービスを法人が最も利用することが多いという点に注目し、その都道府県の行政サービスにかかる必要経費を負担すべきだという考えに基づいて設けられた税金であることから、都道府県税とされています。
法人税と法人事業税、法人住民税は、法人が納める税金の代表で「法人3税」と呼ばれています。この3つの税金は、決算書の損益計算書でも「法人税等」として最後の方に記載されることが多いですが、それは、これらの税金の大部分が会社の所得に対して課されるものだからです。
法人税の税率は、所得の大きさに代わらず一定の比例税率ですが、中小企業の税負担を軽くするため、資本金1億円以下の法人については、所得金額のうち年800万円以下の部分について税率が軽減されています。
法人税のしくみと税率
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法人事業税と法人税はともに法人に対して課税される税金ですが、法人が国税であるのに対して、法人事業税は地方税です。また、法人税が損金算入できないのに対して、法人事業税は損金算入することができます。
法人住民税は、行政サービスの費用分担という趣旨の税金です。
個人の住民税と同じように「道府県民税」と「市町村民税」があります。さらにそれぞれ「均等割」と法人税額の一定率が課税される「法人税制」があります。
なお、平成26年に地方法人税が創設されましたが、これまでの地方法人税の税額は法人税額の4.4%であったのが、令和元年10月1日に開始する事業年度から10.3%に引き上げられます。なお、法人住民税は、地方公共団体によって一定の範囲で税額・税率が変わります。
法人住民税のしくみ
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法人住民税も法人事業税と同様に地方税ですが、法人住民税は損金に算入することができません。
つまり、法人税と法人住民税は損金算入できませんが、法人事業税は損金算入ができるという点が大きな違いということができます。
法人事業税は、原則として事業を行うすべての法人に対して課されますが、国、都道府県、市区町村、公共法人には課税されません。
ただし、公益法人の公益事業に係る所得については、法人事業税は課税されませんが、公益法人等の収益事業については、普通法人と同様、法人事業税が課税されます。
法人事業税の納税義務者
区分 | 例 | 課税非課税 |
---|---|---|
普通法人 | 株式会社 医療法人など |
所得の全部に課税 |
公共法人 | 地方公共団体 独立行政法人の一部 |
非課税 |
公益法人 | 宗教法人 学校法人など |
収益事業から生じた所得に課税 |
協同組合 | 農業協同組合 消費生活協同組合など |
所得の全部に課税 |
人格のない社団など | PTA 同窓会など |
収益事業から生じた所得に課税 |
法人事業税は、期末の資本金が1億円以下かどうかで課税方法が大きく変わります。税金の課税対象を「課税標準」といいますが、資本金1億円以下の法人の法人事業税の課税標準は、特定の業種を除き原則として法人税と同じ所得金額です。
しかし、資本金が1億円超の法人については、課税標準として「所得」に「付加価値額」と「資本金額の額」が加えられます。このように所得以外をベースに行う課税を「外形標準課税」と呼びます(※後ほど、「法人事業税の税率と計算方法」の項目で詳しく解説します。)。
法人事業税は、都市部と地方では税収格差が大きくなります。そこで、この課題を解決し地域格差を是正することを目的として、令和元年に「地方法人特別税」が導入されました。これは、大都市を抱えた都道府県から地方に税収をまわすもので、それ以前の法人事業税(都道府県民税)の約半分を一旦、国が地方法人特別税(国税)として集めます。
そしてその後、人口と従業員数に応じて「地方法人特別譲与税」として再配分されます。
前述したとおり、法人事業税は、資本金が1億円以下かどうかで課税方法が異なります。資本金1億円以下の法人は、特定の業種を除いて、法人税と同じ所得全部が課税標準ですが、資本金1億円を超えると、所得に「付加価値割」と「資本割」の額が加算されます。
資本金1億円以下の会社の場合には、特定の業種をのぞき、原則として各事業年度の決算をもとに計算した所得が課税標準(税金の課税対象のこと)とされます。この所得は、特別の規定がない限り、法人税の事業年度の所得と一致します。
資本金1億円以下の会社の標準税率は、令和2年4月1日以後に開始する事業年度から、所得のうち年400万円以下の金額については、3.4%、所得のうち400万円超800万円以下の金額については、5.1%、所得のうち年800万円超の金額については、6.7%となります。
資本金1億円以下の会社の法人事業税の標準税率
所得金額 | 標準税率 |
---|---|
400万円以下の金額 | 3.5% |
400万円超800万円以下の金額 | 5.3% |
800万円超の金額 | 7.0% |
資本金1億円以下の会社の特別法人事業税の標準税率
所得金額 | 標準税率 |
---|---|
上記の法人事業税 | 37% |
資本金が1億円を超える会社の場合には、課税標準として、「所得」以外に「付加価値割」と「資本割」が追加されます。このように所得以外をベースに行う課税を「外形標準課税」といいます。
所得に対して課税するのではなく、事業所の床面積や従業員数、資本金の額など、客観的に判断できる基準をもとに課税する制度です。
総務省は、この外形標準課税を導入する理由として、以下の4つを挙げています。
①事業規模に応じた公平な課税 ②行政サービスの受益に応じた課税 ③都道府県の安定した税収の確保 ④経済の活性化と構造改革の促進 |
外形標準課税では、法人の所得、付加価値額、資本金等の額の3つの金額が課税標準とされ、それぞれの課税標準に一定税率を掛けたものを合算して法人事業税を計算します。
所得に税率を掛けたものを「所得割」、付加価値額に税率を掛けたものを「付加価値割」、資本金等の額に税率を掛けたものを「資本割」といいます。
資本金1億円超の会社の法人事業税
課税標準 | 課税対象額 | 標準税率 |
---|---|---|
所得割 | 400万円以下の金額 | 0.4% |
400万円超800万円以下の金額 | 0.7% | |
800万円超の金額 | 1.0% | |
付加価値割 | 当期利益+収益分配額 (※収益分配額=報酬給与+総支払利子+純支払賃借料) |
1.2% |
資本割 | 資本金等の額 | 0.5% |
資本金1億円超の会社の特別法人事業税の標準税率
課税対象額 | 標準税率 |
---|---|
上記の所得割額 | 260% |
法人事業税も、法人税と同じように確定申告書を作成して申告納税しなくてはなりません。申告納付期限は、各事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です。
中間申告納付については、事業年度開始の日から6カ月を経過した日から2カ月以内に申告納付しなければなりません。
(事業年度が6か月を超える法人 外形標準課税対象法人以外の所得課税法人にあっては、法人税の中間申告額が10万円を超える法人)
申告の種類 | 納める税額 | 申告と納税の期限 |
---|---|---|
予定申告 | 前事業年度の税額÷前事業年度の月数×6 | 事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内 |
仮決算に基づく中間申告 |
・外形標準課税対象法人以外の所得課税法人 所得金額×税率 ・外形標準課税対象法人 |
事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内 |
納める税額 | 申告と納税の期限 |
---|---|
・外形標準課税対象法人以外の所得課税法人 所得金額×税率 - 中間納付額 ・外形標準課税対象法人 |
事業年度終了の日から2か月以内(一定の場合には、この期限について延長可能) |
以上、法人事業税の意味や税率、申告と納付方法、法人税や法人住民税との違いなどについてご紹介しました。
法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)は、会社が納める代表的な税金ですが、資本金1億円以下か否かで課税方法が大きく違います。
つまり資本金の額によって、税額が大きく変わるということです。
法人事業税は、税率も頻繁に改正されますし、計算方法も煩雑です。
ミスのないように、早めに税理士に確認することをおすすめします。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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