賞与引当金とは|計算方法や仕訳例について解説

公開日:2022年03月06日
最終更新日:2022年03月30日

この記事のポイント

  • 賞与引当金とは、翌期に支払う賞与のうち当期の負担に属する金額を当期の費用として見積り、引当計上しておくこと。
  • 翌期の賞与支給見込額のうち、当期に負担すべき金額を「賞与引当金」として計上する。
  • 賞与引当金繰入額は、製造費用または販売費および一般管理費に計上される。

 

賞与引当金とは、翌期の賞与支給見込額のうち、当期に負担すべき金額を計上するときに使う勘定科目です。
賞与引当金は、原則として過去の賞与の支給実績や同業他社の支給状況、労使間の協定内容などを考慮して、翌期の賞与支給額を見積ります。

賞与引当金とは

現在支給されている賞与の多くは、あらかじめ支払いの時期や支給対象期間が労使間の協定や慣行によって決められています。
したがって、従業員に支給される賞与は通常一定期間にわたってその期間の経過とともに発生する費用と考えることが合理的であるといえます。
そこで、賞与の支払いが翌期であっても、当期に負担すべき金額については当期の費用として見積り、引当計上しておくことが必要となります。このときに使う勘定科目が「賞与引当金」です。

(1)賞与引当金の「賞与」とは

賞与引当金の「賞与」は、従業員に対する賞与です。
たとえば、1年決算で3月決算の会社で賞与を年2回(6月と12月)に支給している場合には、当期末に翌期の6月に支給する賞与額を見積り、この見積額のうち当期3月末までの期間に負担すべき額を費用として計上し、賞与引当金を設定します。

ただし、賞与のなかには「創立○○周年記念賞与」「決算賞与」など、臨時的に支給される賞与もあります。
これらの賞与は、「期間の経過とともに発生する費用」とは言えないことから、賞与引当金設定対象とせず、金額の確定時または支給時の費用として計上します。
また役員賞与も、発生した会計期間の費用として処理します。

(2)賞与引当金の「引当金」とは

賞与引当金の「引当金」とは、翌期以降において費用または損失の発生可能性が高い場合で、その費用または損失の発生原因が当期以前の事象に起因し、かつその費用または損失の発生見込額を合理的に算定することが可能な場合に、その費用または損失を見積って計上する科目です。
引当金は、以下の4つの要件のすべてを満たしたときに計上されます。

①対象が将来の費用または損失であること
②その発生可能性が高いこと
③発生原因が当期以前の事象に起因していること
④その費用または損失の金額を合理的に見積もることが可能なこと

(3)賞与引当金の「支給見込基準」とは

賞与引当金は、翌期に従業員に対して支給する賞与の支給額を見積り、当期の負担と考えられる金額を「賞与引当金繰入」として費用処理します。
具体的には、①決算日後に支払われる賞与の額を見積って、当期に負担すべき額を月割計算して計上する支給見込み基準のほか、②旧法人税法で用いられていた支給対象期間を基準とする方法があります。

①支給見込額基準
過去の賞与の実績、同業他社の支給状況、労使間の協定内容、企業の業績などから勘案して、翌期の賞与支給額を見積り、そのうち当期に対応する金額を賞与引当金として計上する。

②旧税法基準
旧法人税法にもとづき賞与引当金を計上する方法は廃止されましたが、中小企業会計指針では、旧税法基準で算定された金額が合理的である場合には、賞与引当金の金額とすることができるとされています。

賞与引当金繰入額={前年1年間の1人あたりの使用人等に対する賞与支給額×(当期の月数÷12)-当期の期末在職使用人等に支給した賞与の額で当期に対応するものの1人あたりの賞与支給額}×期末の在職使用人等の数

参照:日本税理士連合会「中小企業の会計に関する指針」

(4)賞与引当金の社会保険料も計上する

賞与を支給した場合には社会保険料が発生します。
したがって賞与引当金を計上するときは、社会保険料の法人負担分について見積って、賞与引当金または未払費用として計上します。
社会保険料には、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、労働保険料がありますが、見積もる際には翌期の賞与支給時における保険料率を用いて計算する点について注意が必要です。

(5)賞与引当金の税務上の取り扱い(損金算入)

税務上引当金繰入額の損金算入が認められているのは貸倒引当金(返品調整引当金は廃止)で、賞与引当金は税務上計上が認められていません。
したがって賞与引当金は未払計上の社会保険料を含め、全額損金不算入となり、申告加算(※)しなければなりません。
翌期に賞与の支給があった時点で損金となり、翌期には全額が認容されることになります。したがって、会計上と税務上とでは賞与引当金の扱いに違いがある点に注意が必要です。

※法人税法と企業会計は、その計算目的が異なるため企業会計上の収益・費用と法人税法上の益金・損金はその範囲が異なります。
しかし確定決算主義にもとづく我が国の法人税法では、確定した会計上の利益に申告調整をすることで法人税法上の所得を計算することとなっています。
そこで、法人税申告書別表四において、会計上の利益の金額に法人税法上の別段の定めに基づく損金不算入項目、益金算入項目を加算し、益金不算入項目および損金算入項目を減産することで法人税法上の所得の金額を算定します。

賞与引当金の仕訳

賞与引当金は、翌期の賞与支給見込額のうち、当期に負担すべき金額を計上します。

なお、賞与引当金は、通常1年以内に使用されるので流動負債に計上します。また、賞与引当金繰入額は製造費用または販売費及び一般管理費に計上されます。

(1)賞与引当金を計上し支給した

「3月決算の会社において、6月の賞与として300万円と見積もったが、実際の支給額が320万円であった。」

①決算時
300万円×3/6カ月=150万円として、当期の負担すべき金額を計算します。

借方 貸方
賞与引当金繰入額 1,500,000 賞与引当金 1,500,000

②支給時

借方 貸方
賞与引当金 1,500,000 諸口 3,200,000
賞与 1,700,000

(2)賞与引当金の社会保険料を見積計上した

「3月決算の会社において、6月の賞与として300万円と見積もり、会社の負担する社会保険料を13%程度と見積もった。実際の発生額も13%であった。」

①決算時
150万円×13%=19万5000円として、当期の社会保険料を見積ります。

借方 貸方
法定福利費 195,000 未払費用 195,000

②支給時
170万円×13%=22万1,000円として、当期の社会保険料を計算します。

借方 貸方
未払費用 195,000 普通預金 416,000
法定福利費 221,000

(3)役員賞与引当金を計上し支給した

役員賞与引当金は、役員に対する賞与の支給に備えて計上される引当金です。
役員賞与は役員報酬に含められ、株主総会の決議を経て行われることが多いことから(定款もしくは株主総会における限度額の範囲内であれば、株主総会の決議を経ずに支給することも可能)、決算時においては株主総会における決議金額を役員賞与引当金と計上します。
なお、税法上役員給与の取り扱いは厳しいものとなっており、役員賞与は基本的には全額損金不算入となっています。

「当期の役員賞与の支給額300万円が、株主総会で決議された。」

①決算時

借方 貸方
役員賞与引当金繰入額 3,000,000 役員賞与引当金 3,000,000

②株主総会決議時

借方 貸方
役員賞与引当金 3,000,000 未払役員賞与 3,000,000

③支給時

借方 貸方
未払役員賞与 3,000,000 諸口 3,000,000

まとめ

賞与引当金は、翌期に従業員に対して支給する賞与の支給額を見積り、当期の負担と考えられる金額を「賞与引当金繰入」として費用処理します。
賞与引当金は、決算日後に支払われる賞与の額を見積って、当期に負担すべき額を月割計算して計上する方法と、旧法人税法で用いられていた方法で計算して計上する方法があります。

賞与引当金について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、賞与引当金について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

賞与引当金について相談できる税理士をさがす

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、賞与引当金について相談することができます。

クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なうことができます。ぜひお試しください!




PageTop