役員退職金はいつ損金になるか

公開日:2023年05月17日
最終更新日:2023年05月17日

この記事のポイント

  • 役員退職金は、不当に高額でなければ損金算入できる。
  • 役員退職金は、スムーズな事業承継の手段として活用できる。
  • 役員退職慰労引当金とは、退職金の支給に対して計上される引当金。

 

役員に対する退職金は、不当に高すぎなければ損金に算入することができます。
退職金は大きな経費となり節税効果が期待できるほか、個人の所得税についても、退職所得が税制上優遇されていることから、税務調査の対象となった場合には、とくにチェックされるポイントです。
「退職金の金額が適正であるか」「支給時期に問題はないか」「退職金を支給するための形式的要件は整っているか」などは、とくに問題となるため、適切な処理を行うことが重要です。

役員退職金とは

役員退職金とは、法人が役員に対して支給する退職金です。
「役員退職慰労金」とも言われ、取締役、監査役が会社を退職するときに、役員の在任中の職務の遂行に対する対価として支払われます。
役員に対する退職金は、在職年数や功績、類似の会社の支給状況と比較して、「不当に高すぎないこと」を要件として損金になります。
ただし、以下の場合は退職金としては取り扱われません。

①支給した退職金のうち、明らかに給与と認められる部分の金額
②亡くなった役員の遺族に対して支給した、葬祭料または弔慰金のうち適正な金額

(1)役員退職金が損金となる要件

役員退職金が損金に算入されるためには、以下の要件を満たしている必要があります。

①不当に高すぎないこと
役員退職金が高すぎるかどうかは、退職の事情や在職年数、同業種同規模他社の支給状況などを参考にして判断されます。

②定款で定めるか、株主決議が必要
役員退職金も会社法上役員報酬に該当しますので、支給するためには、定款で定めるか株主総会の決議が必要となります。一般的には、株主総会決議によります。
この決議を恣意的に遅らせ、利益が過大に発生した年度に決議をすると、租税回避とみなされる場合がありますので注意が必要です。

役員退職慰労金規程がある会社では、取締役会に支給金額および支給方法を一任する場合もありますが、役員退職慰労金規程がない場合には、退任する役員ごとに金額を決定します。

(2)役員退職金は節税対策・事業承継対策になる

退職金は大きな経費となるため、会社にとって節税対策になります。
また、役員退職金を事業承継に活用することもできます。
同族会社では、社長の保有する株式を後継者にいかに引き継ぐかが、最大の課題となります。
役員退職金の支給は、会社の利益と相殺して法人税を軽減することができ、さらに自社株の相続税評価額を引き下げて株式の生前贈与を実施しやすくなるというメリットがあります。
また、役員個人にとっても、退職金は所得税法上優遇されていることから、税額負担が少なくなります(※後述)。

(3)退職金は役員個人にもメリット大

退職金は、税制上非常に優遇されており、役員個人の退職金にかかる税金を抑えることができます。

まず、退職所得には退職という事情を控除して、多額の「退職所得控除」が認められます。退職所得控除とは無条件に所得から差し引くことができる制度で、これだけでもかなり優遇されているのですが、課税対象となる金額は、この退職所得控除後の金額にさらに1/2を掛けた金額です。

(収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得
退職所得金額 × 税率 - 控除額 = 退職所得の税金

退職所得控除額は勤続年数によって算定され、20年を超えていれば、「70万円×(勤続年数-20年)+800万円」で計算された金額を退職所得から差し引くことができます。
たとえば勤続30年で退職金が1,500万円であれば、退職所得控除額は「70万円×10年+800万円=1,500万円」ですから、全額控除となり税金は1円もかかりません。

70万円×10年+800万円=1,500万円

このように退職所得にかかる税額はかなり優遇されていますから、毎月の役員報酬を少し下げて退職金で受け取るようにすれば、個人の手取り金額を相当に増やすことができます。

ただし、役員としての勤続年数が5年以下の場合には、上記1/2ができなくなるなど、一定の制限が設けられています。
退職金の所得税については、下記記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ 退職所得とは?退職金の税金は?確定申告は必要?

(4)役員退職金にもデメリットはある

多くのメリットがある役員退職金の支給ですが、支給するためには資金繰りの事前準備が必要となります。また、役員退職金の金額は、最終月額報酬がカギとなるので(※(5)功績倍率法で後述)、役員の退職が控えている場合には、計画的に役員報酬額を決めなければなりません。

さらに役員の勤続年数が5年以下の場合には、役員の退職所得について、退職金の優遇税制である「×1/2」が使えませんから、退職金から一定の退職所得控除額を差し引いた退職所得金額に課税されることになります。

したがって、役員退職金についてはこれらのデメリットも踏まえて、慎重に検討する必要があります。

(5)役員退職金の適正額「功績倍率法」

これまでご紹介したように、役員退職金は、その退職金の金額が適正であるかどうかが非常に重視されます。
そこで、適正額の計算手法として最も多く採用されているのが、功績倍率法と言われるものです。

役員退職金の適正額 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 比較法人の功績倍率

功績倍率には、ルールがあるわけではなく、退職する役員の在籍中の貢献度を考慮して倍率を決めることになります。たとえば、代表取締役は3倍、専務取締役は2.5倍、常務取締役は2倍というように決めておきます。
あまりに高率になっていると、税務調査で否認される可能性が高くなりますので注意が必要です。また、この計算式で計算した結果が同業他社と比較して同程度であれば問題ありませんが、突出して高くなっているようだと、税務調査で説明できるだけの根拠が必要となりますから、予め役員退職慰労金規程を作成しておく方が、よりリスクが少なくなります。

役員退職金の処理

役員退職金の損金算入の時期は、原則として株主総会の決議等があった日の属する事業年度ですが、実際に支給した日の事業年度に損金に算入する方法も認められています。これにより分割払いが認められることになりますが、役員退職慰労金規程等が整備されている必要があります。

(1)原則「額が確定した時」

役員退職金の損金算入の時期は、原則として株主総会の決議等によって、その退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。
したがって、その決まった退職金をその事業年度に全額を支払っていれば、以下のように仕訳をします。

借方 貸方
役員退職金 15,000,000 現金 15,000,000

そして、まだ支払っていなければ以下のように仕訳をします。

借方 貸方
役員退職金 15,000,000 未払金 15,000,000

退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度で、取締役会で内定した金額を損金経理によって未払金に計上した場合には、その未払金に計上した時点での損金の額に算入することはできません。

(2)例外「損金処理した時」

損金となる時期の例外として、その退職金を実際に支払ったときに損金経理した場合も認められています。
具体的には、その退職金を支給した日の属する事業年度において損金経理した場合です。

したがって、株主総会の決議等の前に役員が退職した事業年度において、取締役会で内定された退職金を支払った場合には、以下のように仕訳をすれば損金と認められます。

借方 貸方
役員退職金 15,000,000 現金 15,000,000

(3)退職金を分割支給するには?

資金繰り等の理由で、退職金を分割支給することも認められますが、そのためには合理的な理由が必要です。手続きとしては、株主総会で分割支給することを決議し議事録を作成することが必要となります。
また、分割支給する期間は長期間にわたらないようにしないと、退職年金として扱われることになりますので、注意が必要です。
退職金を分割支給する期間は、長くても3~4年とするようにしましょう。

(5)役員退職金を支給した時の仕訳

役員退職金についても、従業員に対する退職金と同じように所得税と住民税を源泉・特別徴収した額を支給します。なお、役員退職金は消費税の課税対象外取引です。

「取締役3人の退職にあたり、役員退職金について、所得税200万円を差し引いて2,500万円を支給した。」

借方 貸方
役員退職金 27,000,000 普通預金 25,000,000
預り金 2,000,000

(4)役員退職慰労引当金が計上されている時の仕訳

役員退職慰労引当金とは、役員に対して支払う役員退職金について計上される引当金です。
役員が退職したときに、退職金が支払われることが明らかであり、かつ支払額について規程で算定方法が明記されている場合には、その支給見込み額を引当金として計上します。
役員退職金の支給に備えて役員退職慰労引当金を計上している場合には、役員退職慰労引当金を取り崩す処理を行います。

「取締役3人の退職にあたり、役員退職金について、所得税200万円を差し引いて2,500万円を支給した。」

借方 貸方
役員退職慰労引当金 27,000,000 普通預金 25,000,000
預り金 2,000,000

まとめ

役員退職金の支給は頻繁にあるものではありませんが、大きな経費となるため会社にとって節税効果があります。
退職所得にかかる税金がかなり少なくなるので、役員個人にとっても大きなメリットがあり、毎月の役員報酬を少し抑えてその分退職金で支給するようにすれば、役員の手取り額も増やすことができます。

ただし、役員退職金は金額が大きいため税務署とのトラブルが発生することもありますし、短い勤続年数の場合には退職所得の金額の計算で「1/2」が認められませんし、不当に高額な金額の場合は、税務否認されるリスクがあります。
したがって、役員退職金の支給については税務署とのトラブルを避けるためにも、税理士等に相談して妥当な額を計算して支給すること、そして必要な手続き等を計画的に整備することをおすすめします。

役員退職金について相談する

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、決算賞与を損金算入するための要件や、資金繰りへの影響、節税効果などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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・退職金について
「1人会社を経営しています。
もし会社を倒産させる場合、会社にある資産を全て自分自身の退職金として問題ないでしょうか?
・役員の退職金の決める時期と退職のタイミング
「役員が退職するのに合わせて退職金の支給を考えています
その際退職金を支給するという議事録を作成しようと考えているのですが
そもそもの話
役員に出す退職金の額というのは
・役員が退職前に決めるのか
・役員が退職後に決めるのか
・どちらでもいいのか
・役員の退職金について
「30年勤めて退職する役員に1年目から29年目までは役員報酬0円、30年目のみ役員報酬30万円が支払われていた場合(功績倍率を3.0とする)は、
30万円×30年×3.0=2,700万円(退職時の月額報酬×勤続年数×功績倍率)
を役員退職慰労金として計算してもよろしいのでしょうか。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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