公開日:2024年05月13日
最終更新日:2024年05月13日
損金経理とは、決算において費用または損失として経理することです。
たとえば減価償却費は、損金経理が要件となっており、決算書に減価償却費という費用を計上していなければ、損金算入できません。
法人税を計算するうえで基礎となる所得を「課税所得」といい、この課税所得を減少させる費用や損失は、損金の額に算入されますが、損金の額の算入できる項目のなかには、減価償却費以外にも損金経理が要件となっているものがあり、損金経理をしていなければ、損金の額に算入できないものがあります。
損金経理とは、損金として認められるために、決算で費用または損失として経理することです。
益金は会計の収益、損金は会計の費用のようなものですが、実際には益金は収益そのものではありませんし、同様に損金は費用そのものではありません。
会社が決算上の利益を計算するときには、外部取引の金額のほかに減価償却費や引当金など外部取引に基づく費用ではないものを内部計算する必要があります。
税法では、この費用を損金とみなす際に一定の制限として、損金にできる限度額を設定し、この限度額内の金額を損金として認めるしくみにしています。
つまり、損金として認められるためには、決算で費用または損失として計上しなければなりません。これが損金経理です。
たとえば、減価償却費は損金経理が要件です。
決算書に減価償却費と計上していなければ、損金算入はできません。
法人税法では、減価償却費以外にも、いろいろな費用について損金経理を要件としています。
損金とは、税法上の費用です。
しかし、損金と会計上の費用は同じものではありません。
会計上は費用となるにも関わらずまったく損金算入できない項目や、損金算入できる金額に上限のある項目もあります。
また、損金算入するためには損金経理などの一定の条件が必要になるものもあります。
会社の利益は、「利益=収益-費用」で計算され、所得は「所得=益金-損金」で計算されます。したがって
益金イコール収益 損金イコール費用 |
であれば、利益と所得は一致することになります。
費用と損金は、大部分は同じですが、その範囲は完全には一致しません。また、収益と益金も大部分は同じですが、その範囲は完全に一致しません。
税務上の所得を計算する際には、会計上の利益をベースにして、収益と益金、費用と損金の差異を加算・減算して所得を求めます。
①益金不算入 ②益金算入 ③損金不算入 ④損金算入 |
この4つの違いによって、会社の利益と所得はイコールとはならなくなります。
したがって、会社の利益に
①損金不算入項目をマイナスし、 ②益金算入項目をプラスし、 ③損金不算入をプラスし、 ④損金算入をマイナスして、 |
所得金額を計算しなければならないのです。
法人税の計算をする際には、会計上は費用として計上しているのに、税務上の損金算入の時期はもっと後になってしまうことがあります。
費用がなかなか損金として認められないために、より税負担が増えてしまうこともあります
この原因の1つが、損金と費用の計上時期の違いです。
一般的には、会計上の費用は、発生主義によって計上します。
一方、税務上の損金は、債務確定主義によって行われます。
発生主義: 費用は収益と合わせて計上されます。 収益計上時期とのバランスをとるために、合理的に見積れば費用をあらかじめ計上しておくこともあります。 債務確定主義: |
たとえば、賞与引当金の繰入額は費用として認識されますが、税務上は、賞与の損金算入時期は従業員に賞与を支給した時点です。つまり、費用計上される時点より遅いタイミングで損金算入されるのです。
なお、固定資産の減価償却の損金算入は、債務確定主義の例外です。
債務確定主義の原則に従えば、固定資産の取得価額を損金に算入する時期は、固定資産の除却時ということになりますが、一定の条件のもとで、減価償却費は損金算入が認められます。
損金経理をしないと、損金として認められないものとしては、主に以下のようなものがあります。
減価償却費
減価償却費は、損金算入できる金額の計算が細かく定められており、損金算入限度額以内の減価償却位を損金算入するためには、損金経理が必要であり、かつ明細書を確定申告書に添付する必要があります。
評価損
固定資産の評価損は、災害でひどく傷んだ、1年以上遊休となっているなどの事情があり、かつ損金経理をした場合に認められます。
ただし、ひんぱんに使ったための痛みや償却不足については、評価損が認められず損金不算入となります。
貸倒損失
翌期以降に発生すると見込まれる貸倒れについては、会計上は貸倒引当金を計上して、金銭債権の評価減を行います。貸倒引当金を設定した場合に生じる貸倒引当金繰入額は、中小法人等一定の要件を満たせば損金算入が認められます。
法人税法で損金経理を求める規定がない支出については、原則として債務確定主義の要件を満たしていれば、損金に算入されます。
たとえば、売上原価、販売費、資本等取引以外の損失は、会計上の費用とほぼ同じで、費用として計上すれば、すべて損金になります。
また、損金経理が要件となっていない支出については、申告調整で損金算入できます。
このような支出は、たとえ決算書上で費用または損失として計上していなくても、申告書上で損金の額に算入する調整ができます。たとえば、事業税は損金経理をしたかどうかに関わりなく、申告書を提出した事業年度に損金算入されますから、前期分や中間申告分の事業税は、損金算入されます。
また、期中に出張を行いその支払いが済んでいるものを、決算書上は「仮払金」として資産計上していても、法人税の課税所得計算をする際には、損金算入することができます。
法人税や住民税は、全額が損金不算入です。
また、交際費や寄附金、減価償却費や過大役員給与、引当金の繰入額は、一定限度を超えたら損金不算入となります。
費用 | 損金 |
売上原価 | 損金算入 |
営業費 | 損金算入 |
支払利息 | 損金算入 |
雑損失 | 損金算入 |
繰越欠損金の損金算入 | 損金算入 |
減価償却費 | 一定限度を超えたら 損金不算入 |
過大役員給与 | |
交際費・寄附金 | |
引当金の繰入額 | |
資産の評価損 | 損金不算入 |
法人税・法人住民税 |
税務調査では、損金経理をしているか否か、厳しくチェックされます。
税務調査では、少しでも税金を徴収したいわけですから、損金への計上については、厳しく対応します。貸倒引当金や貸倒損失を計上する取引先が経営破たんしているなどの要件を満たしていない場合には、損金への計上は認められません。
また、季節品の売れ残り品について評価損を計上しなかった場合には、評価損の計上は損金経理が要件となっています。
調査官に指摘されても回答できるように、内容をよく精査して判断することが大切です。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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・法人税申告 租税公課の納付状況等に関する明細書の作成について 「別表五(租税公課の納付状況等に関する明細書)を作成しています。前期末に未払法人税を計上しています。損金経理をした納税充当金「31」にも同じ税額が入力されており、期末納税充当金「41」は0円ではなく税額が入っています。どちらが正しいでしょうか。…」 |
・役員報酬を現金主義から発生主義に変更した場合に定期同額給与に該当するかどうか 「1月分の役員報酬を2/5に支給し、現金主義で損金経理していましたが、当期から1月分の役員報酬は1/31付で未払計上すること変更しました。…」 |
・控除対象外消費税額等においての「損金経理を要件として」について 「税務調査にて、仕入高の書類の不備等で、仕入高の一部の消費税の課税仕入額が否認される場合ですが、控除対象外消費税額等において、「損金経理を要件として」の件(くだり)から、その期の全額損金加算を認めないということですが、…」 |
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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