工具器具備品の耐用年数・償却方法・仕訳処理

公開日:2023年04月14日
最終更新日:2023年04月14日

この記事のポイント

  • 工具器具備品とは、事業のために使われる道具や設備。
  • 工具器具備品は、耐用年数が1年以上で、取得価額が10万円以上のものを処理する時に使う。
  • 工具器具備品の取得の際にかかった費用も、合算して計上する。

 

工具器具備品とは、事業のために使われる道具や設備です。
「工具」とは、加工工具、切削工具などで、「器具」とは、送風機、計量器などで、「備品」とは、キャビネット、テレビ、エアコンなどをいいます。

工具器具備品とは

工具器具備品とは、事業のために使われる道具や設備で、耐用年数1年以上、取得価額10万円以上のものを処理する時の勘定科目です。
耐用年数が1年未満のものや取得価額が10万円未満のものは、「消耗品費」として計上します。

(1)工具器具備品として処理するもの

工具器具備品として処理するものは、事業のために使われる道具や設備で、機械に取り付けられた加工用の道具や机、テレビなどで、耐用年数が1年以上、取得価額が10万円以上のものです。






工具 加工工具・切削工具・取付工具・金型・裁断機など
器具 試験機器・測定機器・光学機器・洗浄機・送風機・計測器など
備品 応接セット・キャビネット・コピー機・テレビ・カメラ・エアコン・金庫・看板・観葉植物・書画・骨とう品など

(2)工具器具備品と機械装置の違い

機械装置とは、事業目的のために所有・使用している機械や装置をいいます。一般的には「工具器具備品」は事業活動に使用される小規模な資産とされるのに対して、「機械及び装置」は製造業における製造ラインを構成する設備とされます。

工具器具備品が機械装置に組み込まれている場合でも、その工具器具備品が汎用性を維持している場合には工具器具備品とし、機械装置として一体化して使用されている場合には、機械装置に含めます。
なお、車両に取り付けられているカーナビなどの備品は、車両に含めて計上します。

「機械装置」は租税特別措置の対象資産となりますが「工具器具備品」は、租税特別措置の対象資産となりません。
参照:国税庁「減価償却資産における「機械及び装置」と「器具及び備品」の区分について」

(3)工具器具備品の耐用年数

主な工具器具備品の耐用年数は、以下のとおりです。
使用・保有する工具器具備品が何に該当するか不明な場合や、疑問点がある場合には、早めに税理士に確認してください。

工具

構造・用途 細 目 耐用年数
測定工具、検査工具(電気・電子を利用するものを含む。) 5
治具、取付工具 3
切削工具 2
型(型枠を含む。)、鍛圧工具、打抜工具 プレスその他の金属加工用金型、合成樹脂、ゴム・ガラス成型用金型、鋳造用型 2
その他のもの 3
活字、活字に常用される金属 購入活字(活字の形状のまま反復使用するものに限る。) 2
自製活字、活字に常用される金属 8

 
器具・備品

構造・用途 細 目 耐用年数
家具、電気機器、ガス 機器、家庭用品(他に 掲げてあるものを除く) 事務机、事務いす、キャビネット 主として金属製のもの 15
その他のもの 8
応接セット 接客業用のもの 5
その他のもの 8
ベッド 8
児童用机、いす 5
陳列棚、陳列ケース 冷凍機付・冷蔵機付のもの 6
その他のもの 8
その他の家具 接客業用のもの 5
主として金属製のもの 15
その他のもの 8
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器 5
冷房用・暖房用機器 6
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器 6
氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(電気式のものを除く。) 4
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに
類する繊維製品
3
じゅうたんその他の床用敷物 小売業用・接客業用・放送用・レコード吹込用・
劇場用のもの
3
その他のもの 6
室内装飾品 主として金属製のもの 15
その他のもの 8
食事・ちゅう房用品 陶磁器製・ガラス製のもの 2
その他のもの 5
その他のもの 主として金属製のもの 15
その他のもの 8
事務機器、通信機器 謄写機器、タイプライター 孔版印刷・印書業用のもの 3
その他のもの 5
電子計算機 パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。) 4
その他のもの 5
複写機、計算機(電子計算機を除く。)、金銭登録機、タイムレコーダーその他これらに類するもの 5
その他のもの 5
その他の事務機器 5
テレタイプライター、ファクシミリ 5
インターホーン、放送用設備 6
電話設備その他の通信機器 デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備 6
その他のもの 10
時計、試験機器、測定機器 時計 10
度量衡器 5
試験・測定機器 5
光学機器、写真製作機器 カメラ、映画撮影機、映写機、望遠鏡 5
引伸機、焼付機、乾燥機、顕微鏡 8
看板、広告器具 看板、ネオンサイン、気球 3
マネキン人形、模型 2
その他主として金属製のもの 10
その他のもの 5
容器、金庫 ボンベ 溶接製のもの 6
鍛造製のもの(塩素用のもの) 8
鍛造製のもの(その他のもの) 10
ドラムかん、コンテナーその他の容器 大型コンテナー(長さが6m以上のものに限る。) 7
その他(金属製のもの) 3
その他のもの 2
金庫 手提げ金庫 5
その他のもの 20
理容・美容機器 5
医療機器 消毒殺菌用機器 4
手術機器 5
血液透析又は血しょう交換用機器 7
調剤機器 6
歯科診療用ユニット 7
娯楽・スポーツ器具 たまつき用具 8
パチンコ器、ビンゴ器その他これらに類する球戯
用具、射的用具
2
碁、将棋、麻雀、その他の遊戯具 5
スポーツ具 3

参照:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

(4)工具器具備品の償却方法

中小企業者が30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、取得した年度に全額を算入できる即時償却の特例があります。

また、税務上、10万円以上20万円未満の工具器具備品は、3年間で均等償却することができ、3年で償却する資産を「一括償却資産」といいます。
通常、償却資産の減価償却は、購入した月に応じて月割計算します。たとえば、期首が4月、期末が3月の会社において、10月に購入した償却資産があれば、初年度は10月から3月までの6カ月分だけ減価償却を行います。
一方、一括償却資産であれば、月割計算を行わずに、いつ購入しても1年分、全体の3分の1の減価償却資産を計上することができますので、節税と処理の効率性のメリットがあります。
なお、一括償却資産には償却資産税はかかりません。

取得価額 中小企業者等 中小企業者等以外の法人
30万円以上 通常の減価償却 通常の減価償却
30万円未満20万円以上 300万円を限度として全額損金算入
20万円未満10万円以上 一括償却(3年間定額償却)可能または300万円を限度として全額損金算入 一括償却(3年間定額償却)可能
10万円未満 消耗品費等として全額損金算入可能

(5)取得価額10万円未満の判断基準

耐用年数1年未満または取得価額10万円未満の工具器具備品は、消耗品費や備品費(販売費及び一般管理費)として、費用処理をします。

この場合の「10万円未満かどうか」は、「通常1単位として取引される単位」で判断します。
「1単位かどうか」を判断する場合には、たとえば応接セットは、テーブル、椅子がそれぞれ10万円未満でもセットで10万円以上であれば、工具器備品として固定資産に計上しなければなりません。

・応接セット:通常テーブルと椅子は、セットで販売されているので、あわせて1セット
・事務用デスク:通常机と椅子は、別々に販売されているので、それぞれ1つずつ
・カーテン:通常部屋ごとに使用されるため、1部屋ずつ
・間仕切り:事務所と会議室を区切るなど、その間仕切りとして完成された枚数
・電話機:通常1つずつ販売されているため1つずつ

工具器具備品の仕訳

工具器具備品で処理するものは、事業のために使われる道具や設備で、耐用年数は1年以上、取得価額は10万円以上のものです。
10万円未満のものは消耗品費等で処理をします。また、償却資産のうち3年未満のものについては、3年で均等償却することができます。

(1)10万円未満の工具器具備品を得した

取得価額10万円未満の工具器具備品を取得し、費用処理した時には、消耗品費等で処理をします。

「8万円の備品を現金で購入した。10万円以下であるため、消耗品費で処理をした。」

借方 貸方
消耗品費 200,000 現金 88,000
仮払消費税等 8,000

(2)10万円以上の工具器具備品を取得した

10万円以上、耐用年数1年以上の道具や設備を取得した時には、工具器具備品で処理をします。

「50万円の備品を取得した。取得に際し、3万円の据付費を要した。」

取得時

借方 貸方
工具器具備品 530,000 未払金 583,000
仮払消費税等 53,000

減価償却時
「耐用年数は10年であり、定額法により減価償却を行う。」

借方 貸方
減価償却費 5,300 減価償却累計額 5,300

※帳簿価額(簿価)は、530,000-5,300=477,000

(3)一括償却資産を取得した(3年で均等償却)

工具器具備品の20万円未満の支払いを「一括償却資産」として取り扱った場合には、3年で一括償却します。

「当期、20万円未満の工具器具備品を120万円(税抜)で取得し、一括して3年間で均等償却することとした。」

①取得時

借方 貸方
工具器具備品 1,200,000 未払金
仮払消費税等 120,000

②1年目決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

③2年目決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

④3年目決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

(4)一括償却資産を売却・除却した

一括償却資産について、3年間の均等償却で処理している場合に、2年目の事業年度中に、その資産の全部または一部を売却したり除却したりすることがあります。
その場合には、除却などした資産の未償却部分の全額について、除却等を行った事業年度の損金に計上できるか問題となりますが、一括償却資産として処理することを選択した資産については、償却時に除却や売却をしたとしても、仕訳上は帳簿価額を減らさずに、必ず3年にわたり減価償却を続けます。

つまり、一括償却資産を除却した場合でも、損金算入できる額は、一括償却資産の損金算入限度額(つまり、3年間均等償却)までの金額となりますので注意が必要です。

「20万円未満の工具器具備品を120万円(税抜)で取得した。この資産のうち、取得価額30万円(税抜)の備品を取得した翌年に10万円(税抜)で、売却した。」

①売却時

借方 貸方
現金 110,000 雑収入 100,000
仮受消費税等 10,000

②決算時

借方 貸方
減価償却費 400,000 工具器具備品 400,000

(5)書画・骨とう品を取得した時の仕訳

書画・骨とう品は、器具備品として処理をします。
ただし、以下に挙げるような書画・骨とう品は、時の経過で価値が減少しないという理由から、減価償却は行いません。

①古美術品、古文書、出土品、遺物などのように、歴史的価値または希少価値があり、代替性がないもの

②美術関係の年鑑などに登録されている作者の制作による書画、彫刻、工芸品など

書画・骨とう品に該当するか明らかでない美術品については、取得価額が1点20万円(絵画では、号2万円)未満のものは、減価償却資産として取り扱うことができます。

また、書画・骨とう品のうち、複製のようなもので、単に装飾の目的で使用するものについては、器具備品として処理します。耐用年数は「室内装飾品その他のもの」に該当し、8年となります。

「美術年鑑に登録されている作者の彫刻を、300万円(税抜)で購入した。」

借方 貸方
工具器具備品 3,000,000 未払金 3,300,000
仮払消費税等 300,000

まとめ

「工具器具備品」で処理するものは、事業のために所有・使用している道具、設備などで、耐用年数1年以上、取得価額が10万円以上のものを処理するときに使用する勘定科目です。
耐用年数が1年未満のものや、金額が10万円未満のものは「消耗品費」として計上します。
20万円未満のものについては、一括償却資産として適用することを選択できます。
一括償却資産として処理することを選択した資産については、3年間で減価償却を行います。

「工具器具備品」については、消耗品費として処理をするべきか、工具器具備品として処理するべきか、資産の耐用年数は何年かなど、不明点等が多いものですが、早めに税理士に相談して適切な処理を行うことが必要です。

工具器具備品について相談する

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、工具器具備品の処理や節税対策、経理システムの効率化などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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・少額減価償却の特例を適用する際の仕分けについて
「今般、15万円程度のパソコンを購入し、青色申告の少額減価償却の特例を適用できればと考えております
・工具 別売りのアタッチメントを取得原価に含めるべきか
「会社で40万円の工具を1個購入しました。
工具と同時に工具のアタッチメント(7万)を購入したのですが、資産計上する際にアタッチメントの金額も工具の価格に含めるべきなのか、アタッチメントは消耗品で処理すべきなのか迷っています。
・遮光シートの処理について
「昨年一枚11万円くらいする遮光シートを買いました。
※遮光シートとは、ビニールハウスの天井のビニールの上に被せる遮光を目的とした薄いシートです。
10万円以上するので農具費ではないと思うのですが、この場合は工具器具備品で大丈夫でしょうか。
・工具器具備品の経費処理(節税対策)
「創業1年目(2021年6月創業)です。開業資金でデスクトップパソコン(約22万円、勘定科目:工具器具備品)を購入しましたが固定資産税の支払いと事務手続きを回避をするため経費処理にするつもりです。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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