起業時の資本金は、いくら用意すべきか

公開日:2023年07月18日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 資本金とは、起業(会社設立)時の元手となるもの。
  • 資本金は、税金、信用、融資、許認可等、さまざまな視点から考慮する必要がある。
  • 資本金1円でも登記はできるが、事業を行うためにはある程度の自己資金を用意しておくことが大切。

 

会社法施行によって、資本金が1円の会社も設立できるようになりました。しかし、資本金は設立後の事業資金として使うことができますし、取引先が登記簿で会社の資本金の額を確認することもあります。
また業種によっては、許認可の要件として一定の資本金が必要となることもありますので、相当額は資本金としておく方がよいでしょう。
ただし、ムダに大きな資本金で会社を設立するのも考えものです。税金面から見ると、設立時の資本金は1,000万円のラインと1億円のラインで影響があるからです。

この記事では、「起業して会社を設立する時には、資本金をいくらにすべきか」について、信用、税金、許認可、運転資金等の観点から解説していきます。

起業時の資本金の基礎知識

2006年に施行された新会社法では、資本金1円でも会社を設立できるようになりました。
1円を用意できれば会社を設立できるとなると魅力的に感じるかもしれませんが、自己資金1円では創業融資の審査にも通りません。また、実際事業を行うことを考えると、元手が1円ではペン1本も買えません。
したがって、ある程度の額は資本金として用意しておく方がよいといえるでしょう。

(1)そもそも「資本金」とは

資本金とは、会社の事業を行ううえでの元手となるものです。
起業して会社を設立するうえでは、事業を開始してから一定期間にどのくらいの設備資金や運転資金がかかるかを検討し、資本金の額を決めていくことになります。

(2)出資割合はどうするか

資本金を提供する人を「出資者」といい、通常は発起人が出資者となります(発起設立)。出資者は、株式を取得することで、株主総会における会社の意思決定に関して一定の議決権を行使することができるようになります。
したがって、誰が出資者となるのか、そして出資割合をどうするかについては、事前に十分考慮してから決定することが大切です。
なお、起業時の役員としては、特別決議も議決可能な出資総額の3分の2以上を確保できれば、予期せぬ議決を防止できるので、安定的に事業運営を行うことができます。

定足数
株主総会実施に必要な最低出席者数
評決数
議決に必要な最低議決権数
普通決議 過半数
(定款に定めで
なくすことも可)
出席した当該株主の
議決権の過半数
役員の報酬等
特殊普通決議 過半数
(定款に定めで
1/3まで軽減可)
出席した当該株主の
議決権の過半数
役員の選任・解任
特別決議 過半数
(定款に定めで
1/3まで軽減可)
出席した当該株主の
議決権の2/3以上
定款の変更
特殊決議 なし 議決権を行使できる株主の半数以上かつ議決権を行使できる株主の議決権の2/3以上 全部の株式を譲渡制限とする定款変更

起業時の資本金の決め方

資本金の額をいくらにすべきかについては、事業をスタートさせてから一定期間に、どのくらいの設備資金や運転資金がかかるのかを基準に、検討することが大切です。また、節税の観点や資本金の額は1,000万円未満とするのが妥当です。
ここでは、起業して会社を設立する際の資本金の額について検討する際の5つのポイントについてご紹介します。

(1)資本金は信用度を示すひとつの基準

資本金の額が大きいことが事業の規模を示すわけではありませんが、会社の信用度を図るひとつの基準として見られる商慣習は未だに存在しています。
取引先によっては、資本金額を取引基準としていて、登記簿で会社の資本金を確認することもあります。したがって、後述する「設備資金+運転資金」の必要資金から、相当額は資本金としておくべきでしょう。

(2)税務上違いが出る1,000万円と1億円のライン

資本金の額によって税務上の違いが生じるのは、1,000万円と1億円のラインです。
設立時の資本金が1,000万円未満の場合には、設立事業年度と翌事業年度は消費税を納める必要はありません(例外あり)。また、法人住民税の均等割は、資本金の額が1,000万円を超えると増額されます。
したがって、まずは「1,000万円を超えない」ことを、前提とすることをおすすめします。

1,000万円のライン
会社設立時の資本金が1,000万円未満の場合、最大で2事業年度にわたって消費税の納税義務が免除されますが、1,000万円以上の資本金の額で設立すると、設立初年度から課税事業者となってしまいます。

また法人住民税の均等割は、赤字でも課される税金ですが、この均等割は、設立時は資本金等の額と従業員数で税額が変わります。資本金等の額が1000万円以下であれば、最低限の負担で済みます。

1億円のライン
資本金の額が1億円以下の会社は、税務上「中小企業」と位置付けられます。
そして、法人事業税の外形標準課税の適用除外となったり、法人税の中小企業軽減税率が適用されたりするなど、多くの優遇税制措置を受けることができます。
ただし、親会社の資本金の額が5億円以上でその親会社が株式を100%保有する完全子会社を設立した場合には、その子会社は実質的には中小企業ではないとみなされ、優遇措置の適用が制限されます。

(3)資本金で融資額が異なることも

融資制度の種類によっては、事業全体で要する資金の1/10~1/2の自己資金、つまり、資本金を準備しているかどうかが要件となっている場合があります。資本金は、会社の債権者の債権を担保するものという側面もあるからです。
したがって、事業全体で必要となる資金を計算し、融資を受けるにはいくらの自己資金を準備すべきか計算しておくことが重要です。

(4)資本金額が許認可の要件となることも

許認可によっては、資本金額が許認可の要件となっていることがあります。
たとえば、有料職業紹介事業は500万円、旅行業は300万円~3,000万円の資本金額が必要です。
したがって、起業して行う予定の業種に許認可が必要な場合には、資本金要件がないか確認しておくことが必要です。

(5)設備資金+運転資金で3カ月分を目安に

資本金は、活動資金として使うことができます。したがって、まずは起業当初にどれだけの資金が必要となるか(設備資金)、そして事業開始後最低3カ月の活動資金(運転資金)はどれくらい必要かを計算して、その合計額を準備することを目安とします。
なお、売掛金の回収までに時間がかかるような業種の場合には、もう少し多めに用意する必要もあるでしょう。
一定期間は無収入の状態が続くかもしれないという場合には、半年分の生活費も用意しておくと、心に余裕を持つことができます。

設備資金
店舗や事務所、機械、車両など、貸家が業務で使用する設備を購入する際の資金

運転資金
事業を行ううえで日々必要となる、仕入費用、人件費、交通費、光熱費などの資金

なお、日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、資本金を含めた起業資金は、「250万円未満」(21.7%)と「250万~500万円未満」(21.4%)が4割以上を占めていて、ここ30年「250万円未満」で開業する割合は増加傾向にあることが分かります。

参照:日本政策金融公庫総合研究所「「2022年度新規開業実態調査/開業費用と資金調達~「250万円未満」で開業する割合は増加傾向」

まとめ

起業して会社を設立するには、さまざまな経費が必要となります。
まずは登記費用などの設立費用や資本金をイメージすると思いますが、資それ以外にもさまざまな経費が発生しますから、あらかじめ十分に検討することが大切です。
資本金が1円の会社を設立することもできますが、取引先が登記簿で資本金の額を確認することがありますし、資本金は設立後の事業資金として使うことができますので、相当額は用意しておくことが大切です。
また、資本金の大きさで設立後の税金が変わってきますので、多すぎず少なすぎず、事業の規模にあった金額を決める必要があるといえるでしょう。

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