法人の節税対策|OKな節税・NGな節税

公開日:2018年11月06日
最終更新日:2022年03月29日

この記事のポイント

  • 税法には複数の方法が認められ、最も有利な税務処理を選択できるものが多く設けられている。
  • 有利な税務処理を選択することで、節税できるケースはたくさんある。
  • 適切な節税対策を行うためには、法人税法等の仕組みを理解することが大切。

 

事業が軌道に乗ってくれば、利益に対して課税される税金も増加します。税金を少なくするためにはさまざまな方法を検討する必要があります。なかには支出を伴う節税対策を行っているケースもありますが、それでは会社にキャッシュが残らなくなってしまい元も子もありません。
節税できたとしても、会社を成長させるために何の貢献もしないようでは、意味がないのです。
またなかには節税ではなく、脱税になるケースがありますので、その点も注意が必要です。

会社の節税対策の基本

中小企業の節税対策には、さまざまな方法がありますが、良い節税対策は「お金を残すこと」に尽きます。
100万円の節税に成功すれば、その残った100万円を販売促進費などに投資することができます。それによって売上高は伸びれば、さらにお金を増やすことができます。つまり「節税でお金を残す→投資をしたさらにお金を増やす→節税でお金を残す」といった好循環にすることこそが、お金を残す良い節税のコツなのです。
効果的な節税対策としては、会社の支出のうち経費にしていないものを計上したり、社長個人に対する支払いを増やしたりといった方法が考えられます。ここでは、中小企業で適用できる節税アイデアをいくつかご紹介します。

(1)青色申告の承認は必ず受ける

節税の第一歩は、青色申告の承認を受けることです。
青色申告は法人税の申告方法の一つで、欠損金の繰越控除や繰戻還付など、多くの税務上の特典が受けられます。
参照:国税庁「青色申告書の承認の申請」

たとえば、青色申告で確定申告をした年度の赤字を、翌年から10年間、所得金額から控除できる制度があります。これは、たとえば設立した年度に赤字が200万円出た場合、その200万円を翌年以降の所得金額から控除することができるというものです。

国税庁がまとめた「会社標本調査」によると99%以上の法人が青色申告を行っています。まだ青色申告を行っていない場合は、税務署に申し出て青色申告の承認を受けましょう。

参照:国税庁「会社標本調査結果」

青色申告の承認を受けるためには、「青色申告の承認申請書」を事前に税務署へ申請し、承認を受ける必要があります。なお、申請後に税務署から何も連絡がない場合は承認されたものとして取り扱われます。
なお、税務調査で帳簿を提示しなかったり2期連続で期限内に申告書を提出しなかったりなどの不正があれば、青色申告は取り消されるため注意しましょう。

(2)特例はフル活用する

法人税では中小企業に対するさまざまな特例が設けられています。
そして、これらの特例で適用できるものをフルに活用すれば、法人税を節税することができます。
青色申告法人に認められている税額控除としては、「試験研究を行った税額控除」「中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除」「地方活力向上地域等で特定建物等を取得した場合の税額控除」などがあります。

投資奨励策、景気対策等の目的で採用されている特別償却や租税特別措置法の規定による税額控除は、時限立法的に認められます。
適用期間が指定されていて、適用対象資産、対象法人、計算方法などが変わることがありますので、こまめに特例をチェックし税理士等から情報を受けることが大切です。

(3)役員報酬を高くする

役員報酬を高くすることで、利益を圧縮して節税することができます。
毎月同額の役員給与を支給している場合には、不当に高額でない限りは税務上費用処理が認められます。

ただし、役員報酬が利益調整に使われないようにするために、経費の計上には一定のルールがあります。
まず、役員報酬は自由に変更することができず、事業年度開始3カ月以内に改定する必要があります。たとえば3月決算の会社の場合には、4月~6月に役員給与を改定決定すれば、それは税務上も認められることになります。

上記以外に報酬の改定が認められるケースとしては、経営状況が著しく悪化したケースで減額(増額はダメ)改定が認められることもありますが、一定の要件を満たしていることが必要です。

(4)社長からの借入金に利息を支払う

会社が社長個人から資金を借りた場合は、利息を支払わないことが多いようですが、この時利息を支払うことで利益を圧縮できます。ただし、会社が利益を圧縮できても、今度は、社長個人が受け取った利息には所得税が課税される場合があります。支払利息で節税を図る場合は、会社と社長個人の税務メリットについて、十分検討する必要があります。

(5)少額減価償却資産の損金算入

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を令和4年3月31日までの間に取得(延長の可能性あり)などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
減価償却資産については、この特例以外にも中小企業者のための租税優遇措置があります。

取得価額 中小企業者等 中小企業者等以外の法人
30万円以上 通常の減価償却 通常の減価償却
30万円未満20万円以上 300万円を限度として全額損金算入
20万円未満10万円以上 一括償却(3年間定額償却)可能または300万円を限度として全額損金算入 一括償却(3年間定額償却)可能
10万円未満 消耗品費等として全額損金算入可能

(6)社宅を活用する

役員や従業員の住む自宅の家賃は、経費にはできません。しかし、賃貸契約を借上社宅として会社名義で契約することで、節税することができます。

ただし、この場合には、①小規模の住宅であること、および②全額を経費処理していると、従業員が給与課税されるなど、一定の要件を満たしている必要があります。

参照:国税庁「給与所得の源泉徴収事務」

(7)その他の節税対策

これまでご紹介した以外にも、「売上計上基準を見直す」「販売方法を委託販売方式に変更する」「出張日当を支給する」「中古資産を購入する」「回収困難な売掛金は減額して回収する」など、活用したい節税対策は多々あります。

ただし、節税対策は個々のケースによって最適な対策が異なります。したがって、早めに税理士等に相談し適切な節税対策についてアドバイスを受けることをおすすめします。

絶対NG!節税にならない脱税事例

経費を増やして利益を圧縮する行為でも、ルールを逸脱したものは節税ではなく脱税になります。ここでは、脱税にあたるケースをいくつかご紹介します。脱税をすれば、確かに税金を一時的に減らすことはできるでしょう。しかし、後から追徴課税を受けて結局は大きく損することになります。「脱税は百害あって一利なし」であることを、忘れないようにしましょう。

(1)売上除外

脱税の方法として、最も多いのが、売上を計上しない、または次の期にずらすことで利益を少なくする行為である「売上除外」です。

利益を減らすために売上を操作しても、必ずどこかで取引の矛盾が発生します。税務署が行う税務調査では、現金預金や商品の流れを追跡するほか、取引先にも聞き取りをして売上除外を見つけ出します。「これくらいなら、バレないだろう」は絶対に禁物です。

(2)架空仕入の計上

架空仕入の計上も脱税行為です。架空仕入の計上とは、実体のない仕入を計上するほか、次の期に計上するべき仕入を当期に計上することで利益を圧縮する方法です。
税務調査では、売上除外と同じように現金預金や商品の流れを追跡する他、取引先への聞き取り調査も実施します。支払条件の変更などイレギュラーな取引があれば不正が疑われやすくなります。

(3)従業員数の水増し

従業員数を水増しして人件費を増やすことも、不正な行為です。架空の社員を雇用したように見せかける他、退職した社員を継続して雇用しているように見せかけることも、脱税の方法としてよく使われる手法です。

税務調査では、出勤簿やタイムカードのほか、履歴書の有無を確認したり他の従業員に聞き取ったりして、従業員数の水増しを突き止めます。特定の人だけ給与を現金払いにしている場合も不正が疑われます。

(4)架空の外注費計上

外注費のようなサービスに対する支払いは、商品の仕入のように物が動くわけではないので、比較的架空計上しやすい費目です。
税務調査では「反面調査」といって、取引先の売上高を確認して外注費が正しいかどうかを調べます。架空の外注費は取引先では売上の増加につながり税金が増えるため、計上されることはあまりありません。そこで矛盾が発生して架空計上が発覚します。

(5)源泉徴収をしない

会社は従業員の給与から所得税と住民税を源泉徴収する他、税理士や弁護士などの個人に支払う報酬からも所得税を源泉徴収しなければなりません。税務調査で源泉徴収モレが見つかると、相手先から源泉徴収税額を回収するか、回収できなければ会社が負担することになります。

源泉徴収が必要な報酬・料金については、国税庁ホームページに詳しく記載されています。源泉徴収漏れのないように注意しましょう。

参照:国税庁タックスアンサー No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

まとめ

中小企業で節税対策を考えるときは、税の専門家である税理士に相談することをおすすめします。制度改正への対応や節税のための有効なアドバイスが受けられるため、会計を自社で行っている会社でも、税理士に相談するメリットは大きいといえます。

制度改正に対応してもらえる
税金に関する制度は時々改正が行われます。時限措置だった特例の期限が延長されることも珍しくありません。経営者自らこれらの制度改正をもれなく把握するのは大変でしょう。このような時に税理士に相談していれば、頻繁に行われる制度改正にもタイムリーに対応してもらえます。

節税アドバイスをもらえる
中小企業の節税対策にはさまざまなものがありますが、すべてが自社に有効であるとは限りません。また、中小企業に関する優遇税制は種類が多く、上手に活用できていないこともあります。信頼できる税理士に相談すれば、自社の事情に最も有効な節税アドバイスを受けることができます。

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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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