融資とは?|融資の種類・債務者区分・格付けの意味

公開日:2019年03月26日
最終更新日:2022年03月15日

この記事のポイント

  • 融資とは、「金融機関からの借り入れ」のこと。
  • 都市銀行、地方銀行、信用金庫など金融機関によって特色がある。
  • 融資を受けるには、それぞれの金融機関が何を求めているのか知ることが大切。

 

銀行に企業から融資の申し込みがあった時に、銀行が融資を行うか否か、行う場合にはどの程度の金利を設定するかなどの判断基準としているのは、金融検査マニュアルに基づいた「格付け」で決定されます。以前は、銀行の融資担当や支店長との人間関係などから、融資をするか否か判断されていた時代もあったようですが、現在ではそのようなことはありません。

そして銀行は、受領した決算書を審査用分析システムに入力し、細かい財務分析をした上で「格付け」を行なっており、この格付けを基準として融資ができるかどうかを判断しています。

この記事では融資の意味や種類、金融機関ごとの融資の特色、金融機関が融資を行う際に基準としている評価「格付け」や「債務者区分」などについて、ご紹介します。

そもそも「融資」とは

融資とは、金融機関から借り入れを行うことです。

ただしひとくちに融資といっても、みずほ銀行や三井住友銀行などの「都市銀行」、千葉銀行や京都銀行などの「地方銀行」、さわやか信用金庫、芝信用金庫などの「信用金庫」、日本政策金融公庫などの政府系の金融機関などで、さまざまな種類の銀行からの融資があります。

これらの金融機関はそれぞれ特徴があり、個人事業主や中小企業の方が融資を受ける際にも、どのような融資を受けたいのかによって相談すべき銀行は異なってきます。まずは銀行の種類について整理し、どのような銀行に融資の相談、申込みをすれば良いかイメージを膨らませましょう。

(1)日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫とは、100%政府出資の金融公庫です。
一般の金融機関が行う金融業務を補完して、個人や中小企業経営者の資金調達のサポートなどを行います。したがって、民間の金融機関では対応しにくい融資にも活用できます。特に新創業融資は、新規開業者にとって非常にありがたい融資制度です。
実際、毎年約2万社以上の起業前または起業間もない中小企業が創業融資制度を利用しています。

そのほか、女性・若者・シニアの起業家や再挑戦支援のための経営改善貸付といった制度もあります。

日本政策金融公庫は、政策目的を実現するための金融機関なので、政策目的に合致した事業計画と経営者のやる気や能力をアピールする必要があります。
したがって、日本政策金融公庫に融資の申し込みを行う際には、事前に税理士などの専門家に事業計画について相談することをおすすめします。

(2)都市銀行からの融資

都市銀行とは、都市圏に本店を置き、全国に支店を構えている銀行のことで、一般的にみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行(埼玉りそな銀行)の5行のことをいいます。
預金業務、融資業務といった基本的な銀行業務の他、国際為替業務など幅広い銀行サービスを提供していて、中小企業や個人事業主向けの融資も行なってはいますが一般的には取引先は大手企業が中心です。創業間もない中小企業だと、融資を受けるのは難しいです。
会社が小規模なうちは、決済サービス以外に都市銀行と取引するメリットはないと思っておいてよいでしょう。
そして、地方銀行や信用金庫等と融資取引の実績を積み、都市銀行でなければ必要な金額の資金を融資してもらえない段階になったら、都市銀行からの融資を検討しましょう。

(3)地方銀行からの融資

地方銀行とは、各都道府県を中心として本店を置き、文字どおり地方の大手・中堅・中小企業などを中心に取引を行なっている銀行のことをいいます。

都市銀行と同様に預金業務、融資業務の他、国際為替業務などにも対応している銀行もあります。
地域の活性化を目的として、少額の保証協会付融資からプロパー融資まで幅広く取り扱っています。地方銀行が都道府県単位で活動をしているため、都道府県単位で活動する会社にとっては、店舗網が充実していて利便性も高く、メインバンクとして利用するのに適しているといえます。

ただし、都市銀行ほどのネームバリューやサービスの幅がないので、対外的な取引銀行として売上の振込指定口座などに利用する際には、やや弱い面があります。

(4)信用金庫・信用組合からの融資

信用金庫・信用組合は、都道府県より小さい市町村単位を中心としていて、広くても隣県くらいまでしか商圏を持たない小さな金融機関です。
前述した都市銀行、地方銀行は株式会社組織であり営利法人ですが、信用金庫と信用組合は形態が少し異なります。

信用金庫は会員が出資することで成り立っている共同組織であり、非営利法人です。信用組合も組合員の出資により成立する共同組織で非営利法人です。個人、法人からの預金受け入れや融資など、実際の業務としては地方銀行と変わらないものを提供していますが、融資取引などを開始する際に出資金が別途必要です。

信用金庫や信用組合は、継続的な取引を長期間続けて実績を積み上げていけば、会社にとって強い味方になってもらえるようになります。毎月の定期積み金を始めたり、支店長と定期的に商談する機会を設けて会社の経営状況に報告したりすると、融資がスムーズになることもあるようです。

(5)ネット銀行などからの融資

ネット銀行は、リアルな店舗をほとんど持たない銀行です。
ジャパンネット銀行やソニー銀行、楽天銀行などがあります。店舗をあまり持たずに人件費を抑えることができるため、振込手数料などが一般的な銀行に比べて安いという特徴があります。個人事業主を含む個人向け融資を行うネット銀行もありますが、中小企業向けの融資は行なっていないことがほとんどです。今後は、中小企業向けの融資が増加する可能性があると言われています。

・その他
その他の金融機関としては、信託銀行などの金融機関が存在します。
信託銀行は預金、貸出業務等、一般的な銀行業務の他、有価証券の信託のような信託業務、証券代行なども行うことができる銀行です。

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銀行融資は4種類ある

資金調達の方法としてもっともポピュラーな銀行融資ですが、その種類はさまざまで、大きく(1)手形割引、(2)手形貸付、(3)当座貸越、(4)証書貸付の4つの種類があります。

ここでは、銀行融資の特徴や種類を理解して、活用できそうな融資かなどについて判断しましょう。

(1)手形割引

手形割引とは、商売上、回収代金として預かった手形を、資金化期日の前に銀行に持ち込んで現金化する借入です。
形式上は、手形の流通の仕組みに沿った融資ですが、その実態は「手形を担保にお金を借りた」ということなので、通常の融資と変わりはありません。

(2)手形貸付

手形貸付とは、自社の約束手形を銀行に差し入れる借入です。
通常の商売でも、顧客へ代金を支払う際に約束手形を交付することがありますが、それと同様の原理です。
たとえば、以下のようなものがあります。

つなぎ資金…材料費や外注費、仕入れ代などの支払い時期が先に来て売掛金入金が後にくる場合に、その期間をつなぐための資金

季節資金…季節で在庫備蓄時期と販売・売掛金回収時期が異なる場合に、その期間をつなぐための資金

これらは、3カ月返済や6カ月返済など短期間で返済することから、手形貸付の方法がよく行われます。

(3)当座貸越

当座貸越とは、当座貸越契約によって融資の限度額を設定し、その限度額内で繰り返し利用できる形式の借入です。この限度額の事を「極度額」といいます。
当座貸越には、「専用当座貸越」と「一般当座貸越」があります。

専用当座貸越は、一定の極度額のなかで自由に融資を受けたり返済したりする方法です。
たとえば、500万円の当座貸越契約を締結した場合には、500万円まではいつでも資金調達することができます。

一般当座貸越とは、当座預金の残高が不足した場合に自動的に貸越しとなります。当座預金口座を保有している会社が当座貸越を行えるように銀行と契約することで、当座預金残高をマイナス(貸越し)にすることができます。

(4)証書貸付

「証書貸付」は一般的な借入手法で、「金銭消費貸借契約書」という借入れに関する詳細な契約書を交わす形式の借入です。
契約では、借入金額、借入日、金利など、詳細条件が設定されます。
主に返済期間1年を超える長期での融資で、使われる方法です。

銀行の融資審査のポイント

融資審査は、稟議書によって行われます。
稟議書は、担当者が起案して課長や支店長に回付されて決済されます。

(1)銀行融資は「格付け」で決まる!

銀行の融資は、「格付け」で決まると言っても過言ではありません。
銀行は、すべての取引先企業を自社で格付けしていて、この格付けによって融資を行うか、行う場合にはどの程度の金利を設定するかなど、あらゆる条件や取引方針を決めています。

つまり、この格付けが高ければ融資を受けやすくなりますし、金利等より有利な条件で借入することが可能になります。また、格付けが高ければ調達コスト(事業資金を借入や出資で調達する際にかかる費用こと)が信用保証料分高くなる保証協会付融資(マル保)ではなくプロパー融資で借入できる可能性も高くなります。

格付けは、決算書の分析結果をもとにした評価である「定量的評価」と、経営者の姿勢や経営方針などをもとにした評価である「定性的評価」の2種類で行われます。

定性的な評価は、あくまでも補完的な役割に過ぎず、メインは定量的評価です。

・定量的評価

定量的評価は、決算書の分析結果をもとに、その企業の収益性、成長性を評価したもので、一般的に直近3期分程度の決算書から判断されます。

創業まもない企業は3期分の決算書がない場合もありますが、そういった場合でも必ず定量評価は行います。

決算書は、売上の数字が多ければ格付けが上がるというものではありません。
銀行が見ているのは、損益計算書の「経常利益」「純資産」の2点がプラスの数字になっているかを重視しています。

「経常利益」とは、売上高から仕入値を差し引いた額のことをいいます。
具体的には、「売上総利益」から「販売管理費及び一般管理費」を差し引いた結果が「営業利益」で、この「営業利益」に受取利息などを加え、借入金の支払利息を差し引いた額が「経常利益」です。
経常利益が黒字であれば、「利息を払っても利益がプラスだ」と判断され、銀行から高評価を得ることができるのです。

経常利益が赤字である場合には、格付けは低くなりますが、融資が絶対に無理ということはありません。赤字の要因が具体的に説明できてかつ今期には黒字転化することが説明できれば、融資を受けられる可能性があります。

「純資産」とは、貸借対照表の「純資産の部」のことで、純資産の部がプラスになっていれば、利益がきちんと出ていて債務超過に陥っていないということになります。
したがって、融資を受けやすくなるといえることができます。

反対に、純資産について債務超過になってしまうと、それだけで格付けは下がってしまいます。
もちろん、債務超過であってもその理由や今後解消できる見通しなどについて、きちんと説明できれば、融資の可能性がゼロというわけではありません。しかし、債務超過になっている企業の多くは過去数年赤字を経常していることが多く、黒字転化及び債務超過解消のストーリーを描いても説得力が低いのが実態です。そのため正常先企業に比べて融資ハードルは極端に高くなります。

また、銀行は融資の面談の際、決算書について色々と質問をしてきます。
たとえば、在庫が今期極端に増えているとなれば、その理由を細かく知りたがります。これは、在庫に不良性がないかを確認するためです。もし、在庫に不良性が認められると判断された場合は含み損として決算書を銀行内で訂正してシステム入力され、結果として表面の決算数字が良くても、銀行内の格付けが下がってしまうこともあります。

つまり「定量的評価」は、表面の数字だけで判断しているわけではなく、実態を保守的に判断し直し、銀行内で独自に修正した決算書をベースに評価しているということになります。

・定性的評価

定性的評価とは、経営者の姿勢や経営方針など、数字で表せないものを数値化したものです。他にも市場の将来性や後継者の育成状態などを定性的評価の目安とする銀行もあります。
ただし、定性的評価がどれだけ素晴らしくても、定量的評価が悪ければ、格付けが上がることはありません。

格付け基準は非公表であり各金融機関によって異なりますが、①リスクなし、②ほとんどリスクなし⑨延滞先、⑪事故先などの10~11段階程度に分けられることが一般的なようです。

格付け基準と債務者区分

前述した格付けをベースに決定されるのが、債務者区分です。
債務者区分は、「正常先」「要注意先」「破たん懸念先」「実質破たん先」「破たん先」の5つに分類されていることが多く、どの債務区分に分類されるかで、融資条件が大きく変わります。
「正常先」以外の区分に分類されてしまうと、新規融資はかなり困難になり、「貸出金額xxx円まで支店判断で融資して良いが、それ以上の融資を行う場合は本店の許可がなければNG」などという判断をされやすくなってしまいます。

(2)返済原資は最も重視される

返済原資とは、借入金を返済するためのお金、もしくはそのお金をどのように作るかということでもあります。
返済原資は、融資審査でもっとも重要な項目いうことができますから、融資申し込みの際には、徹底した準備を行って説得力のある説明ができるようにしておくことが必要です。

(3)資金使途は明確にしよう

資金使途も、返済原資とあわせて重視されるポイントです。
資金使途とは、融資を受けたお金を何に使うのかというものです。
金融機関はお金を貸し出す以上、貸したお金をどのように使って返済のためのお金を作るのかを非常に気にします。そして、そのお金の使い道が返済原資につながらないようであれば、お金を貸すことはできません。

経常運転資金なのか、納税資金なのか、季節資金なのか、そしてなぜ必要なのかをしっかりと説明できることが必要です。

銀行の融資よくあるQ&A

融資を受ける際には、初めて聞く用語も多々あり、担当者とのやり取りで戸惑う方も多いようです。そこでここでは、銀行融資に関するよくあるご質問をご紹介します。

(1)保証協会付融資(マル保)って何?

融資の方法としては、信用保証協会が連帯保証人になる「保証協会付融資(マル保)」と、保証協会付融資を使用しない「プロパー融資」の方法があります。

融資による資金調達を考えた場合には、まずプロパー融資を検討します。
そして、プロパー融資ができない、もしくは調達金額が不足する場合に、保証協会付融資やその他の融資の方法(ノンバンクからの融資など)を検討することになります。

信用保証協会付融資とは、信用保証協会が連帯保証人になり、債務者が返済不能になった場合には、金額の80%を保証協会が銀行に支払うタイプの融資方法です。

たとえば、申込者が銀行から融資を受ける際に銀行から審査された結果、「リスクが高い」と判断された場合には、「信用保証協会の保証付融資にしましょう」と提案されることがありますが、それは、この「保証協会付融資(マル保)」のことをさしています。

これは、融資を受ける企業が信用保証料を信用保証協会に対して支払い、融資を受ける銀行は信用保証協会から信用保証を得るという仕組みになっているのです。

この信用保証制度は、中小企業・小規模事業者のための制度であり、利用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

融資を受ける企業としては、銀行に支払う金利の他に信用保証協会に信用保証料も支払わなければならないというデメリットがありますが、初めて融資を受ける際はこの保証協会付融資のおかげで、融資を受けることが可能となるケースが多いといえます。

(2)プロパー融資って何?

プロパー融資とは、保証協会付融資を使用せずに銀行が独自の資金を融資するタイプの融資制度です。

信用保証協会保証付融資では銀行と保証協会が融資のリスクをシェアするのに対し、融資のリスクを銀行側が全て負うということになります。そのため、起業したばかりの法人や個人事業主など信用力が低い場合には、このプロパー融資を受けることは困難です。

ただし「銀行内の格付け」が高ければ、プロパー融資で対応してもらえる可能性も高くなります。

銀行から融資を受ける際には、最初は保証協会保証付融資を受けて信用力を高め、銀行取引の実績を積みながら、徐々にプロパー融資に移行するというのが一般的です。

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まとめ

以上、銀行の格付けや債務区分について、ご紹介しました。
これまで述べてきたように、銀行からの融資は、格付けで決まります。
多くの企業は「正常先」もしくは「要注意先」に該当しますが、「正常先」以外の企業が融資を受けるのはハードルが高くなりますし、破綻懸念先と判断されれば、新規融資はまず受けることができません。

したがって、銀行からの融資を検討する際には、格付けを上げることができるよう対策を行うことが必要です。
税理士に相談すれば、決算科目内訳書を丁寧に作成する、来期予算表(事業計画書)を添付するなど、格付けをアップするための決算書のポイントについてアドバイスをもらうことができます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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