公開日:2024年02月22日
最終更新日:2024年02月23日
財務管理とは、企業活動が発展するために適正な資金供給バランスを保持するために管理していくことをいいます。
企業が存続し成長していくためには、常に最適な量の資金の供給が必要です。具体的な財務管理の役割としては、資金繰りや資金調達などを検討したり、資金需要を把握してどう配分するか決めたりといったことが挙げられます。
財務管理の豆知識
企業が存続し成長していくためには「ヒト」・「モノ」・「カネ」・「情報」の4つの経営資源を調達したうえで、効率的に配分し、適切に組み合わせていくことが必要です。
ヒト:人事労務管理
モノ:在庫管理
情報:情報管理
カネ:財務管理
上記の4つは、経営資源を管理するための要素といえます。
たとえば、財務管理のうち「税務管理」では、企業の課税されるべき所得額と税額を管理します。
法人税法は中小法人に対して各種の優遇措置を設けており、これらの制度をどのように活用否かで手許のキャッシュを減らしてしまうリスクがあります。
したがって財務管理はは、中小企業にこそ非常に重要であり、税務管理を実現し維持するためには税務の専門家である税理士の存在が不可欠といえるでしょう。
企業が行う生産活動は、ヒト、モノ、カネ、情報の4つの要素で成り立っているといわれます。財務管理とは、この4つの要素のうち「カネ」を管理することです。
具体的には、企業活動が発展するために適正な資金供給バランスを管理していくことであり、財務政策に基づいて遂行されます。
資本(カネ)はすべての企業活動の源です。
企業活動の結果は、利益として資本に戻ります。
こうした循環を繰り返しながら企業が存続し成長していくためには、適正な資金供給バランスを管理すること、つまり財務管理が不可欠です。
財務管理というと大企業が行うイメージがあるかもしれませんが、中小企業はもちろん非営利法人や個人事業主にとっても不可欠な知識です。
財務管理の目的は、できるだけ少ない負担で適正な成果(利益=収益-費用)を獲得することです。
具体的には、資金繰りを把握し不足している場合には資金調達について検討したり、財務指標を用いて財務分析を行なったり、設備投資などの資金需要を把握してどう配分するか検討したり、事業を拡大するために再投資を検討したりといった業務を行います。
財務管理の内容
財務分析 |
経営管理とは、ヒト・モノ・カネ・情報の4つの資源を調達し、効率的に配分し、適切に組み合わせながら、事業を成長させていくことです。
つまり経営管理は、以下のようにヒト(人事労務管理)・モノ(在庫管理)・カネ(財務管理)・情報(情報管理)の4つの資源を管理することです。
経営管理 | ヒト | 人事労務管理 |
カネ | 財務管理 | |
モノ | 在庫管理 固定資産管理 |
|
情報 | 情報管理 |
財務管理の進め方としては、トップ・ダウン方式とボトム・アップ方式が考えられます。
財務管理は経営戦略と密接に関係しているものですから、トップ・ダウン方式で進めるのが主となります。
さらに企業全体を巻き込んで財務管理を進めるためには、現場の各部門の意見を考慮するボトム・アップ方式も併せて用いる必要があります。
会社が存続し、事業を継続し、さらに成長していくためには、適正な資金循環ができていることが重要です。
また、資産や負債の評価は将来のキャッシュ・フローに大きな影響を与えるため、資金を管理し仮に損失が出る可能性があれば、それを早期に見極め対策を検討することも重要です。
そのためには、財務管理を念頭において適切に経理事務作業を行うことが必要です。
財務管理は、まず決算書に基づいて企業の財務状況を正確に把握することからスタートします。これを財務分析といいます。
財務分析の手法としては、外部分析(外部の利害関係者による分析)や内部分析(内部の経営管理者による分析)などがあります。
そして、収益性や生産性、安全性、成長性に関して分析を行います。
収益性分析
収益性とは、企業がどれだけ効率的に利益を上げているかを見るための指標です。
収益性分析を行うことで、会社が利益を出しやすいか否かを見ることができます。
代表的なものとしては、以下のような指標があります。
指標 | 計算式 | 内容 |
売上高総利益率 | 売上高総利益率 = 売上総利益売上高×100 | 売上高と原価を比較する指標です。粗利率ともいわれます。 前年と比較して落ちている場合には、仕入原価や製造原価が上がっている可能性があり、販売単価自体の下落が考えられます。 |
売上高営業利益率 | 売上高営業利益率 = 営業利益売上高×100 | 会社の営業活動による利益を表す指標で、同業他社と比較することで、販管費の中身に問題ないかをチェックすることができます。経費を掛け過ぎていると、この数値は悪くなる傾向があります。 |
売上高経常利益率 | 売上高経常利益率 = 経常利益売上高×100 | 上記の売上高営業利益率で計算した数値のほかに、支払利息や受取利息などの数値が反映された指標で、資金調達の効率性を見ることができます。この数値は5%以上を目指すべきとされています。 |
売上高当期純利益率 | 売上高当期純利益率 = 当期純利益売上高×100 | 売上に対する会社の最終利益を見る指標です。 中小企業の場合は、特別利益や特別損失が発生するケースが少ないため、売上高経常利益率と同じ数値になることもあります。 |
総資本回転率 | 総資本回転率 = 売上高総資本×100 | 資本回転率とは、売上高に対して資本がどれだけ回転しているかを見る指標で、資本を効率的に利用しているのかをチェックすることができます。 中小企業は、そもそも資本が少ないですから、この回転率を向上させなければ資金繰りが悪化するリスクがあります。 |
生産性分析
生産性分析とは、一人の従業員が稼ぎ出す売上高を計算し、その数値を見て生産性を判断するための指標です。
一人当たりの売上高は、多ければ多いほど生産性がよい会社といえます。
生産性分析の指標の代表的なものとしては、労働生産性、資本生産性があります。
指標 | 計算式 | 内容 |
労働生産性 | 労働生産性 = 限界利益人件費×100 | 限界利益とは、売上高から変動費を引いたもので、少ない人件費でより多くの利益を計上できているかを見る指標です。労働生産性をアップさせるためにはは、一人当たりの売上高を上げる、機械装置などの導入で省力化をはかるといった施策が必要です。 |
資本生産性 | 資本生産性 = 付加価値総資本×100 | 会社が投資した資本に対して、どれだけの付加価値を上げたかを見る指標です。 |
安全性分析
安全性分析とは、その会社が倒産する可能性が低い安全な会社であるかを見るための分析です。代表的な指標としては、自己資本比率や流動比率、当座比率、固定長期適合率などがあり、これらの指標の数値が高い会社は、安定していると判断され、金融機関などからの評価が高くなり、結果的に資金調達力の強化につながります。
指標 | 計算式 | 内容 |
自己資本比率 | 労働生産性 = 自己資本総資本×100 | 自己資本とは貸借対照表の純資産の部の合計で、他人資本とは貸借対照表の負債合計と純資産の部の合計です。運用している資金のうち、どれだけを他人のお金で賄っているかを表します。他人のお金は、いつかは返済しなければなりませんが、自分のお金なら返済義務がありませんから、自己資本比率が高い会社は安全性が高いと判断できます。 |
流動比率 | 流動比率 = 流動資産流動負債×100 | 会社の支払い能力を見る指標です。会社はさまざまな資産を持っていますが、そのなかで流動性が高い資産といえば現金です。そこで、「現金やすぐに現金化できる資産の合計(流動資産)」と「すぐに支払わなければならない負債の合計(流動負債)」を比較して、流動資産が十分あるかをチェックします。 |
当座比率 | 当座比率 = 当座資産流動負債×100 | 当座資産とは、流動資産のなかでもとくに現金に近い資産(現金・預金、売掛金など)だけで、すぐに払わなければならない負債を賄えるかをチェックする指標です。当座比率が100%を超えていれば、支払能力としては問題ないといえます。 |
固定長期適合率 | 固定長期適合率 = 固定資産(固定負債+自己資本)×100 | 資金の使い方に無理がないかを見る指標です。この数値が100%を超えてしまうと、固定資産が長期資金だけでは賄えず流動負債から調達した資金も利用していることになりますので、最低でも100%いかに抑えなければなりません。 |
成長性分析
事業を行ううえでは、成長は不可欠です。成長することで利益を得られれば、さらに他の商品やサービスにその利益を活用することができるからです。
成長性分析の指標の代表的なものとしては、以下のような指標があります。
指標 | 計算式 | 内容 |
売上高成長率 | 売上高成長率 = (当期売上高-前期売上高)前期売上高×100 | 前期と比較して売上高がどれだけ増加(減少)したのかをチェックする指標です。 |
経常利益成長率 | 経常利益成長率 = (当期経常利益-前期経常利益)前期経常利益×100 | 前期の経常利益と比較して、どれだけ増加(減少)したかをチェックする指標で、上記の売上高成長率の数値を超えていれば、会社として順調に成長しているといえます。 |
利益管理とは、目標利益を設定して達成方法を計画する利益計画と、予算実績差異分析を行い、次期の利益計画を策定する利益統制をいいます。
利益計画では、一般的には長期利益計画と短期利益計画を作成します。
長期利益計画では、3年~5年程度の中長期計画のなかで企業全体に将来の利益目標を示し、設備投資、新製品開発や環境改善などについて策定します。
短期利益計画では、1年の期間を対象として策定され、原価計画、短期資金計画とリンクさせ具体的な活動方針を示します。
資本調達管理とは、資金計画を作成して資金の必要額とそれらの調達手段について検討することです。
固定比率、固定長期適合率、自己資本比率、流動比率、当座比率などの指標を用いて、固定資産の買い替えのタイミングや設備投資に関する長期的な資金繰りを検討します。
実務的には、資金繰り表、資金運用法、キャッシュ・フロー計算書によって管理することになります。
内部留保だけでは足りない場合には、必要に応じて外部からの資金調達も検討します。
融資を受ける際には、日本政策金融公庫等の政府系金融機関などから公的融資を受けたり制度融資を利用したりするケースと、一般の銀行融資に分かれますが、中小企業の場合には日本政策金融公庫等の融資等が主となります。
また、金融機関からの借入ではなく、外部の投資家から直接調達する方法もあります。
これには、増資と社債の発行という2つの手段があります。社債は、償還期限がきたら元本の返済を行わなければならないもので、固定負債に分類されます。
一方、増資は資本金や資本準備金の増加となるため、自己資本が増加します。
上場企業と異なり、中小企業には企業価値を把握することが難しいものですが、財務管理の目的は企業価値の向上にあり、企業価値を向上させるためには、事業と投融資のそれぞれにおいて資本運用を最適化させる必要があります。
資本運用管理の対象は、設備投資や売上債権で、設備投資に関する合理的な意思決定を行なうことを目的とします。
資本運用が効率的に行われているかどうかは、売上高利益率ではなく、固定資産などの資本の回転率に着目します。
資本利益率 = 利益資本 × 100 |
実務的には、固定資産の減価償却額の計算、リース契約の管理、繰延税金資産の管理、有価証券管理、不要投融資の処分などを行ったうえで、資本運用表などを策定し、長期と短期の設備投資計画など計画を策定します。
中小企業において、設備投資は投資に見合った利益や資金を確保できなければ、企業経営に重大なダメージを与えることもあり、長期利益計画などをはじめとする総合的な財務計画のもとに行う必要があります。
なお、これらの計画書は、融資審査などで金融機関等からの評価が高まり、設備投資等に関する資金調達が有利になるというメリットもあります。
財務管理の観点から見た原価管理は、長期利益計画を作成したうえで、収益性の拡大を目的とする利益管理を補完する視点で行います。
まず利益計画で目標利益を確定し、この目的利益を達成するために必要な原価計画を決定します。
原価管理においては、原価低減の目的を達成するために、原価計算を行い製造原価だけでなく営業費の管理も行います。
原価率が高いと売上総利益が小さくなり、結果として営業利益や経常利益も小さくなります。同業他社と比較して原価率が明らかに高い場合には、原価の見直しを行い、売上原価を抑えて売上総利益を高め、利益の大本を確保するための対策を行います。
「勘定合って銭足らず」と言われるように、利益と資金のフロー誤差によって運転資金が不足する問題が生じることがあります。
利益を計上しても、手許資金が足りなくなれば、企業は継続することができず黒字倒産に追い込まれます。
資金管理とは、このような事態を回避するために行うもので、日々や月次の資金の出入り管理から、資金繰り表を作成して適正な運転資金を常に保有し資金ショートに陥らないための管理です。
会社の運転資金は、「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で算定されます。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務 |
これは、売上債権を他社に貸し付けている資金であり、棚卸資産は現金化されずに社内にある資産であり、仕入債務は他社から借りている資金と見るからです。
具体的に運転資金がどの程度必要なのかは、その会社が掛取引なのか現金取引なのか等によって異なります。
現金取引では、在庫の回転状況に合わせて資金を保有すればよいですが、掛取引は、掛代金の回収までにタイムラグがあるため、その日数を含めて資金を保有する必要があるからです。
この場合は、仕入を行うために資金を支払った時点から、売掛代金を回収して現金化されるまでの日数を計算して、それに合わせて資金を保有します。
これを「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」略して「CCC」と呼ばれます。
CCC =営業サイクル - 仕入債務回転日数 =棚卸資産回転日数 + 売上債権回転日数 - 仕入債務回転日数 |
CCCを改善するためには、「回収を早めに、支払は遅めに」を徹底することです。
税務管理は、正確な利益計画や資金計画を作成するために行います。
企業利益と課税所得には、それぞれの目的から一定の差異が生じます。
これは、会計の目的が利害関係者の判断を損なわないことであり、税務は課税の公平を重視しているからです。さらに租税特別措置法による税額控除などの減税措置もあります。とくに、法人税法は中小法人に対して各種の優遇措置を設けており、これらの制度をどのように活用するかは、手許の利益に大きな影響を与えます。また、企業が各種の特別償却制度や税額控除制度を活用しなければ、利益を減らしてしまうリスクがあります。
したがって、中小企業にこそ税務管理は非常に重要であり、税務管理を実現し維持するためには、税務の専門家である税理士の存在が非常に重要ということになります。
財務管理を経営に導入している中小企業は、会計と財務の力で経営力を強化しています。自社で正確な会計帳簿を作成し、月次決算で利益計画や資金管理について検討し、さらに税理士から財務管理的な視点で「将来的な見通し」や「経営に変更を加えるべきか」といった経営のアドバイスを受けることは、事業を成長させるうえで欠かせません。
税理士がいれば、適切な税務管理システムを構築することができますし、さらに税理士法33条の2に規定される「税理士による書面」は、専門家による「税務監査証明書」とも言えるものですから、税務管理体制の構築を内外に証明することができ、税務調査となりにくく、さらには資金調達の場面で有利になるというメリットもあります。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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・経理・財務・経営管理に関する情報源について 「税理士さんは、企業の経営管理・経理・財務担当者の方から、業務の相談を受ける事はありますか? どこまでご相談して良いものか分からず、確認です。…」 |
・いわゆる原価計算というものは、会計とは別に行っていくものなのでしょうか?…」 |
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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