公開日:2019年11月25日
最終更新日:2022年07月04日
国際的なビジネスを行う場合や、外国株式から生じた配当金が外国で源泉徴収をされた場合などは、日本と外国の双方で国際的に二重課税の問題が生じます。
このような事態を回避・軽減する目的で設けられている制度が、外国税額控除です。
一定の計算方法で計算した控除限度額の範囲内で、日本の所得税額、住民税額から差し引くことができ、税額の負担を軽減させることができます。
外国税額控除とは、国際的な二重課税を排除するために規定されている税額控除です。
税額控除とは、税金そのものから差し引くことができる制度です。
このような税額控除には、外国税額控除以外にも災害減免額、住宅ローン控除、政党等寄附金等特別控除などがあります。
国外で生じた所得が外国所得税の課税対象とされる場合には、日本とその外国の双方で二重に所得税が課税されることになってしまいます。
このような、国際的な二重課税を防止するために設けられたのが、この外国税額控除です。
所得のなかに外国で得た所得があって、その外国の法令によって日本の所得税に相当する税金が課された時には、その外国で得た所得に対応する税額を限度として、一定の計算式で計算した金額が、その年の所得税額から差し引かれます。
外国税額控除は、居住地国において全世界所得課税が採用されている国においては、ほとんどの国で採用されていて、日本でも同様に採用されています。
なお、国外所得免税方式を採用している国では、国際二重課税が発生しないことから、採用されている国はほとんどありません。
外国株式の配当金や外国株式投資信託の分配金に対して課税される外国所得税は、外国税額控除の対象となります。また、外国公社債の利子等に対して課されている外国所得税も、外国税額控除の対象となります。
・超過所得税その他個人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
・個人の所得またはその特定の部分を課税標準として課される税の付加税 ・個人の所得を課税標準として課される税と同一の税で、個人の特定の所得について徴税上の便宜のために、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税 ・個人の特定の所得について、所得を課税標準とする税に代え、個人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税 |
以下のものは、外国税額控除の対象となる外国所得税には含まれません。
・税を納付する人が、納付後に任意にその税額の還付を請求できるもの
・税を納付する人が、納付が猶予される期間を任意に定めることができるもの ・複数の税率のなかから、納税者と外国当局などとの合意によって、税率が決定されたもの(その複数の税率のうち、最も低い税率を上回る場合) ・加算税、延滞税などの付帯税に相当するもの ・通常行われる取引とは認められない一定の取引に基因して生じた所得に対して課される外国所得税 ・みなし配当に対して課される外国所得税 ・国外事業所等と国内事業所等との間の内部取引につき、その国外事業所等の所在する国または地域において課される外国所得税 ・NISA、ジュニアNISAの口座内の上場株式等の配当等に対して課される外国所得税の額 ・居住者がその年以前の年において、非居住者であった範囲内に生じた所得に対して課される外国所得税 ・外国子会社合算課税における特定外国子会社等や、コーポレート・インバージョン対策税制における特定外国法人から受ける剰余金の配当等に対して課される一定の外国所得税 ・居住者の所得に対して課される外国所得の額で、租税条約の規定において外国税額控除をされるべき金額の計算をするうえで考慮しないものとされるもの ・日本の租税条約締結相手国等において、課される外国所得税のうち、その条約の規定によって相手国等において課することができることとされる額を超える部分の金額 ・外国において課される外国所得税のうち、外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律の規定によって、軽減・免除することができるとされる部分の金額 |
外国税額控除額は、以下の方法によって計算します。
外国税額控除額の計算
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外国税額控除を受けるためには、外国税額控除に関する明細書に必要事項を記入して、かつ外国所得税が課税されたことを証する書類を添付する必要があります。
個人の所得税において外国税額控除の適用を受けるためには、確定申告書とともに、外国税額控除に関する明細書に必要事項を記入して、外国所得税が課税されたことを証明できる書類を添付する必要があります。
その他、控除限度額などの繰越に関する明細書も添付する必要があります。
外国税額控除の確定申告においては、以下の書類の添付が必要となります。
・外国税額控除に関する明細書
・外国所得税を課されたことを証する書類 ・国外所得総額の計算に関する明細書 ・みなし外国税額の計算明細書とこれを証明する書類 ・適用金額の計算の基礎となる控除対象外国所得税の額等の明細を記載した書類 |
平成29年以降の各年において、恒久的施設を持つ非居住者が外国所得税を納付する場合には、外国税額控除が適用されることになりました。
控除限度額は以下のとおりです。
控除限度額=恒久的施設帰属所得に関する所得について、居住者に係る規定に準じて計算された所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の恒久的施設貴族所得金額) |
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非居住者の国外所得金額とは、恒久的施設帰属所得に係る所得金額のうち、国外源泉所得に係る所得をいいます。また、国外源泉所得とは、外国税額控除の控除限度額の計算の基礎となる国外所得金額の要素であり、その種類ごとに個別に規定されています。
非居住者が納付することになった外国所得税の額については、外国税額控除の適用を受けた年の翌年以降、7年以内の各年において、その外国所得税額が減額された場合に、減額控除対象の外国所得衛額は、その年の納付控除対象外国所得税額から控除されます。
また、控除しきれない金額については、減額した年の前年以前3年以内の繰越控除対象外国所得税額から控除されます。
非居住者の外国税額控除の適用を受けるためには、居住者と同じように確定申告書等に控除を受けるべき金額と、その計算に関する明細書の添付、課税されたことを証する書類等の添付が必要です。
法人は適用に当たって注意が必要 外国税額控除は、法人税実務において判断に迷う場面がいくつも出てくるものです。 まず、実際に外国税額控除を行う際には、外国で納めた税金が濃く税額控除の対象となる「控除対象外国法人税」に該当するかどうかです。特に税制優遇地域に進出している企業の場合には、適用が可能か判断に迷う場面が多くあるでしょう。 また、外国税額控除を適用した方が有利か否かもポイントとなります。内国法人で十分な課税所得があり、国外所得も十分にある状態では、外国税額控除を適用して法人税の納税額を減らすことができますが、実際の申告では、外国税額の全額を控除できないことも多々あります。 したがって、外国税額控除の対象となる税金なのか、外国税額控除の適用を受けた方が有利なのかについては、国際税務に精通している税理士によく確認するようにしましょう。 |
外国税額控除とは、外国税を納付した場合に、控除限度額の範囲内で日本の税額を差し引くことができる制度です。
税額そのものを減らすことができ、適用を受ければ節税効果が期待できますが、いつでも節税効果が期待できるものではありませんし、頻繁に税制改正される制度でもあります。
したがって、この記事に記載されている以降に税制改正がされていて「対象となると思っていたが対象ではなかった」というケースも出てくる可能性があります。したがって、外国税額控除の適用を検討する場合には、この記事の情報をもとに判断するのではなく、個別に税理士からのアドバイスを受けるようにしましょう。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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