公開日:2019年06月04日
最終更新日:2022年10月25日
源泉徴収票は、従業員に渡されるほか、税務署や市区町村にも提出されます。
ここでは、会社からもらった源泉徴収票の見方や、サラリーマンの税金がどのように計算されているのか、令和2年(2020年)に改正されたポイントなどについてご紹介します。
※令和4年の年末調整の計算に当たっては、昨年の令和3年分から比べて大きな改正事項はありません。
源泉徴収票とは、会社が年末調整を行った後に作成する書類で「会社が従業員に1年間いくら給料を支払って、いくら税金を徴収したか」が記載されている「法定調書」のひとつです。
年末調整後は、源泉徴収簿をもとに源泉徴収票と給与支払報告書(内容はほぼ同じ)を作成します。源泉徴収票は本人に交付するほか、税務署に提出することもあります。
原則として、毎年1月には勤務先から従業員に交付されます。受け取っていない場合には、すぐに会社に請求しましょう。
源泉徴収票は、年末調整後に作成されます。
会社や個人事業主などの給与支払者は、1月から12月までに従業員に支払った給与をもとに年末調整を行います。
年末調整とは、年間の所得税を確定し、月々の合計天引額とのズレを精算する作業です。
所得税は毎月天引きされていますが、この時天引きされる所得税は、実は仮の金額を基にしていて、徴収されている税金も仮の金額に基づいて徴収されています。
そこで、「この過不足について、年末に帳尻を合わせましょう」というのが、年末調整の作業です。
そして、この年末調整のあとには源泉徴収票を作成し、従業員に提出するほか、従業員の住んでいる市区町村(※市区町村に提出する場合には『給与支払報告書』というほぼ同じ書式の報告書となる)に提出しなければならないことになっています。市区町村に提出された「給与支払報告書」は、翌年に課税される住民税の計算に使用されます。
源泉徴収票は、年末調整の計算後に発行されますが、その他にも従業員が退職した時や従業員の収入証明が必要な時にも、源泉徴収票が必要となります。
①年末調整後
年末調整後には、源泉徴収票を発行しなければなりません。
会社は従業員1人につき合計4枚作成し、従業員と税務署にそれぞれ1部ずつ、市区町村に2部提出されます。
②従業員の退職時
従業員が退職した時には、会社は1月1日から退職時点までに支払った給与について源泉徴収票を発行する義務があります。この源泉徴収票は、従業員自身の確定申告や、次の職場(従業員が転職した場合)の年末調整に使われることになります。
③従業員の収入証明が必要な時
従業員が自動車や住宅の購入の際にローンを組む時や、子どもを保育園に入れる時などは、収入証明が必要になります。課税証明書の提出が求められることもありますが、源泉徴収票の提出が求められることもあります。
ここからは源泉徴収票の見方についてご紹介していきますが、その前に知っておきたいのが「そもそもサラリーマンの税額は、どのように計算されているのか」という点です。
そこで、まず所得税額がどのように計算されるかを理解しておきましょう。
所得税は会社から従業員に支払われた「収入」に対して直接税金が課税されるわけではありません。収入から給与所得や所得控除を差し引いた額に、給与の額ごとに決まった税率を掛けた額が所得税額となります。
【所得税額の計算方法】 |
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※復興特別所得税とは、東日本大震災の復興に必要な財源を確保するために、納税者すべてが負担します。平成25年(2013年)に新設された税金で、2037年まで実施されます。
復興特別所得税は、課税所得にさらに2.1%上乗せされます。
まずは支払金額の欄です。
支払金額の欄には、その年の1月から12月中に支払いの確定した給与等の総額(控除や源泉徴収される前の額面上の年収)が記載されています。
源泉徴収票を作成した時点でまだ未払いのものがある時には、その未払い額がカッコ内に併記されています。
「給与所得控除後の金額」には、「支払金額」から「給与所得控除額」を差し引いた金額が記載されています。
給与収入-給与所得控除額=給与所得金額 |
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給与所得控除とは、給与収入の額に対して一定の金額を差し引く仕組みです。
サラリーマンは、個人事業主などのように必要経費が認められないことから、それに類するものとして「給与所得控除」という控除枠が設けられているのです。
給与所得控除額は、年間の収入によって金額が変わります。また、給与所得の上限額が適用される給与収入は、平成29年(2017年)から収入が1,000万円超となり、この場合の控除額が220万円に引き下げられました。
また、令和2年(2020年)からは、給与所得控除額が一律10万円引き下げられ、さらに上限額が適用される給与収入が850万円(控除額195万円)に引き下げられました。
ただし、子育て世帯や介護世帯には税負担増が生じないように、所得金額調整控除という制度が令和2年(2020年)から導入されています。
所得金額調整控除とは、扶養親族や障がい者がいる家庭の負担を減らすために、税額を調整する措置です。
この制度によって、給与収入が850万円を超える人のうち、生計を一にする22歳以下の扶養親族がいる人や特別障害者控除の対象となる配偶者・扶養親族がいる人については、年末調整において給与所得から所定の金額が差し引かれることで、給与所得控除の見直しによる税負担増が相殺されることとなりました。
控除額は「給与等の収入金額(上限1000万円)-950万円×10%です。
参照:国税庁「給与所得控除」
「所得控除の額の合計額」とは、給与所得控除後の金額から、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養家族控除、基礎控除などが差し引かれた額です。
所得控除とは、「所得金額から控除(差し引く)できる金額」のことで、全部で15種類あります。
基礎控除はすべての人が受けられる控除で、令和2年(2020年)から48万円となり、所得要件が設けられました。その他の所得控除は、個々の事情によって適用されるか否かが変わります。
所得金額から一定額を差し引くことができれば、それだけ課税対象額が減ることになりますので、納税額が軽減します。
下記15種類の所得控除のうち、「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」については、会社で年末調整をしてもらうことができないので、自分で確定申告をしないと損をしてしまいます。確定申告をすれば、その分の税金が戻ってくるので、該当する場合にはかならず確定申告をするようにしましょう。
「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」の確定申告の方法については、以下の記事をご覧ください。
▶ 寄附金控除(所得控除)とは|対象となる寄附金と控除額の計算式
控除の種類 | 控除が受けられる場合 | 控除額 | 雑損控除 | 災害や盗難、横領によって損害を受けた時に適用される控除 | 以下のいずれか多い方
・(差引損失額)-(総所得金額等)×10% |
医療費控除 | 一定額以上の医療費を支払った場合。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。 | (支払った医療費-保険金などで補填される金額)ー10万円
※その年の所得金額が200万円未満の人は所得金額×5% |
社会保険料控除 | 健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金、厚生年金保険料などを支払った場合に適用される控除。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。 | 支払った保険料の合計 | 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される控除 | 支払った掛金の合計額 | 生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で、支払った保険料がある場合に適用される控除 | 一定の方法で計算した金額 | 地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合に適用される控除 | 一定の方法で計算した金額 (最高5万円) |
寄附金控除 | ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄付をした場合に適用される控除 | 「寄附金支出合計額」と 「所得 ×40%」のいずれか 少ない方-2,000円 |
障害者控除 | 納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される控除 | 一人につき、 ①障害者27万円 ②特別障害者40万円 ③同居特別障害者75万円 |
寡婦控除 | 配偶者と死別または離婚して扶養家族がいる場合に適用される控除 | 27万円 (一定の要件を満たす場合35万円) |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親であるときに適用される控除 ※ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用 |
35万円 | 勤労学生控除 | 学校に行きながら働いている場合に適用される控除 ※ただし、前年分の合計所得金額が75万円以下 |
27万円 | 配偶者控除 | 配偶者の合計所得が48万円以下の場合に適用される控除 | ①一般控除対象配偶者:最大38万円 ②老人控除対象配偶者:最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上) |
配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以上133万円未満である場合に適用される控除 | 配偶者の所得金額によって 最大38万円 |
扶養控除 | 16歳以上の子供や両親などを扶養している場合に適用される控除 | ①16歳以上の一般の控除対象扶養親族:38万円 ②特定扶養親族:63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満の方) ③老人扶養親族:最大58万円 |
基礎控除 | すべての人に適用される控除 | 48万円(所得合計が2,4000万円以下の場合) |
「源泉徴収税額」には、源泉所得税及び復興特別所得税の合計額が記載されています。
年末調整後の税額、つまり還付を受けた場合にはその額も合計した税額が表示されています。
なお、年末調整していない場合には源泉徴収されていた金額の合計額が記載されることになります。
給与所得者と生計を一にする配偶者がいる場合には、以下の要件に該当した場合に配偶者の所得に応じて所得控除を受けることができます。控除額は、納税者本人の合計所得金額によって異なります。
①控除を受ける年の給与所得者の合計所得金額が1,000万円であること。
②控除を受ける年の配偶者の合計所得金額は、それぞれ以下のとおりであること。 ③「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出した人であること。 |
たとえば、本人の給与所得が930万円(収入1,140万円)で、配偶者の合計所得が92万円(給与収入147万円)の場合には、26万円の配偶者特別控除を受けることができます。
扶養控除とは、所得が一定金額以下の満16歳以上の親族等がいる場合に受けられる控除です。控除額は扶養親族の年齢によって変わります。
0歳~15歳:0万円(その代わり児童手当が支給されます。) 16歳~18歳:38万円 19歳~22歳:63万円 23歳~69歳:38万円 70歳以上 :48万円 ※同居老親等は10万円加算:58万円 |
障害者控除とは、申告者本人が障害者と認定されているか、その家族(同一生計配偶者や扶養親族)が障害者の認定を受けている時に受けられる所得控除です。
1人27万円、特別障害者の場合には40万円が控除されます。
給料から天引きされる健康保険・介護保険・厚生年金保険などの社会保険料の合計額が記入されます。
いずれも給与に保険料を掛けて計算されますが、この3つを合計すると給与の15%になります。
たとえば、20万円の給与の人は社会保険料だけで約3万円が控除され、この時点で手取りが17万円となってしまいます。
生命保険料や地震保険料を支払った時には、一定の所得控除を受けることができます。
生命保険料の控除額は、契約した時期によって異なり、旧契約(平成23年12月31日以前に契約した保険契約)は、上限5万円、新契約(平成24年1月1日以降に契約した保険契約)は、上限4万円です。
地震保険料控除の金額は、地震保険および旧長期損害保険料のそれぞれの計算結果を合計した金額で、上限は5万円です。
住宅借入金等特別控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得または増改築等下場合で、一定の要件に該当した場合に所得から控除されるものです。
控除を受ける最初の年分は、本人が確定申告をしなければなりませんが、2年目以降は年末調整の対象となります。
以上、源泉徴収票の見方についてご紹介しました。
医療費控除や寄付控除などの所得控除をもれなく適用し、税金から直接差し引くことができる「税額控除」を上手に利用すれば、サラリーマンの税負担を軽くすることができます。
以下では、サラリーマンが実践できる11個の節税術をご紹介します。併せてご覧ください。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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