退職所得の源泉徴収票の書き方のポイント

公開日:2019年06月01日
最終更新日:2022年07月13日

この記事のポイント

  • 退職者には、退職後1カ月以内に源泉徴収票を交付する。
  • 退職所得の源泉徴収票は、転職先の年末調整や確定申告で必要になる。
  • 退職所得の源泉徴収要は、退職者本人と市区町村に送付する。

 

退職所得の源泉徴収票とは

退職所得の源泉徴収票とは、退職手当、一時恩給、その他これらの性質を有する給与等を支払った場合に作成する法定調書のひとつです。

年の途中で退職した場合には、1年間の給与の合計額が確定しないため、年末調整を行なうことができません。そのため、転職した従業員の年末調整は、その従業員が転職した先の会社で行うことになります。
その際には、転職前の会社で支給された源泉徴収票を転職先の会社に提出する必要があります。なお、転職しない場合には、翌年の3月までに従業員本人が確定申告をしないと所得税の還付を受けることができなくなります。

(1)退職時の源泉徴収票を提出する人

提出しなければならない人は、退職所得の源泉徴収票とは、退職手当、一時恩給、その他これらの性質を有する給与等を支払った者(会社など)です。
退職所得の源泉徴収票等は、退職手当等を支払ったすべての方について作成し交付することとされていますが、税務署と市区町村へ提出しなければならないのは、受給者が法人の役員である場合です。

なお従業員が死亡したために退職し、退職手当等を支払った場合には、相続税法の規定による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。したがって、この場合には、退職所得の源泉徴収票を提出する必要はありません。

参照:国税庁「「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」

(2)退職時の源泉徴収票の作成ポイント

① 支払いを受ける者
支払いを受ける従業員等の情報を記載します。
・受給者の個人番号
・源泉徴収票を作成する日の住所または居所
・上記の住所とは別に、「令和○年1月1日の住所」に1月1日現在の住所または居所を記載します。
・氏名欄には退職時の役職名も記載します。

② 区分
・上段
受給者が提出した「退職所得の受給に関する申告書」に、退職手当がないと記載がある場合に使用します。

・中段
受給者が提出した「退職所得の受給に関する申告書」に、退職手当があると記載がある場合に使用します。

・下段
受給者が提出した「退職所得の受給に関する申告書」の提出がないために、100分の20.42の税率を適用して所得税および復興特別所得税を徴収する場合に使用します。

③ 支払金額
支払金額の欄には、支払の確定した退職手当等の金額を記載します。
源泉徴収票の作成日時点で未払いのものがある時には()の中にその未払額を記載します。

④ 源泉徴収税額
源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税を記載します。

⑤ 特別徴収税額
特別徴収すべき地方税の税額(支払金額に対する税額)を記載します。

⑥ 退職所得控除額
退職手当等に対する源泉徴収税額の計算をした時に、控除した金額を記載します。

⑦ 勤続年数・就職年月日・退職年月日
勤続年数・就職年月日・退職年月日を記載します。
勤続年数は、退職手当等に対する源泉徴収税額の計算の基礎となった勤続年数を記載します。

⑧ 支払者
退職手当を支払った者の住所や所在地、氏名または名称、電話番号、個人番号、法人番号を記載します。
なお、退職した従業員に対して交付する源泉徴収票には、個人番号、法人番号は記載する必要はありません。

参照:国税庁「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」

(3)退職所得の源泉徴収票の交付時期

退職所得の源泉徴収票は、退職後1カ月以内に退職者に送付します。
従業員の転職先で年末調整を行う際に必要となりますし、転職しない場合には、退職者本人が確定申告をする際に必要となります。
会社の繁忙期に退職者から交付依頼を受けると事務負担につながりますので、本人からの依頼がなくても退職時に交付するのが望ましいでしょう。

(4)退職所得の源泉徴収票の交付先

退職所得の源泉徴収票は、退職者本人だけでなく退職者本人の住所地(住民税の納税地)の市区町村にも送付します。
市区町村への提出期限は翌年1月末です。税務署と市区町村へ提出しなければならないのは、受給者が法人の役員である場合です。
あらかじめ受給者の承諾を得るなど一定の要件を満たす場合には、退職所得の源泉徴収票等に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができます。

ただし電磁的方法により提供した場合でも、受給者から書面による交付してほしい旨の請求があるときは、書面により交付しなければなりません。

参照:国税庁「「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」

(5)退職金の税金は分離課税

退職金は、最後に支払う給与ではないので「給与所得」ではなく「退職所得」となります。
退職所得は単独で課税される分離課税となるため、給与計算とは別に税額を計算し、所得税と住民税を控除します。

退職金に課税される税額は、以下のような特別な計算式で計算します。
退職所得は、退職所得控除が適用されることで大きく税金が軽減されることになっていますので注意しましょう。

退職所得の計算方法

退職所得の金額(退職金-退職所得控除額)×1/2(※)

※平成25年からは、会社の役員等で勤続年数が5年以下の場合は2分の1とする措置が廃止されました。
※令和4年(2022年)からは、役員等以外で勤続年数5年以下の短期退職手当金等については、収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分について2分の1とする措置が適用されません。

勤続年数 退職所得控除額
勤続年数が
20年以下の場合
40万円×勤続年数(1年未満の端数は切り上げ)
80万円に満たない時は80万円
勤続年数が
20年を超す場合
800万円+70万円×(勤続年数-20年)

まとめ

退職所得の源泉徴収票は、退職手当等を支払った全ての方について作成し交付しなければなりません。退職者が転職先の会社で年末調整を受ける場合や、本人が確定申告を行う際に必要となるからです。ただし、税務署と市区町村へ提出しなければならないのは、受給者が法人の役員である場合に限られています。
また、退職金の税金計算については、税負担の軽減措置が設けられています。勤続年数に応じて異なりますので、注意が必要です。

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