公開日:2022年02月10日
最終更新日:2022年03月20日
税法の益金は、会社の収益とほぼ同じものですが、その目的などによって、収益と益金の内容は異なることがあります。
税法の益金には、商品や製品の売上高のほか、無償で資産を譲渡した時に本来もらうべきであった金額や無償で役務を提供した時に本来もらうべきであった金額なども含まれます。
法人税とは、法人の所得金額に課税される国税です。
法人の各事業年度における所得金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を差し引いた金額です。
ただし、利益=所得ではありませんし、収益=益金でもありませんし、費用=損金でもありません。税法における益金は、非常にその範囲が広くなっています。
税法における益金は会社の収益とほぼ同じものですが、その目的などから内容が異なります。
なぜなら法人税は、担税力(税金を負担する能力)に応じて課税の公平性、経済政策などを考慮して設定されているからです。
そして、税法における益金には、以下のような金額があります。
・商品や製品の売上高 ・土地などの資産を売却した代金 ・タダで資産を譲渡した時に本来もらうべき金額 ・請負その他役務の提供による収入金額 ・タダで役務を提供した時の本来もらうべき金額 ・タダで資産をもらった時に本来支払うべき金額 ・資本等取引以外のその他の収益の金額 |
つまり税法では、会社がタダで資産を譲渡した場合には、本来もらうべきであった金額も益金の額に算入されることになります。
また、タダで譲り受けた資産についても、本来支払うべき金額(時価=当該資産の取得のために通常要する価額)が取得価額となり、同額が益金の額に算入されます。
たとえば、時価100万円、帳簿価額40万円の機械をタダで譲渡した時、税法では以下のように考え、時価で売ったものとして売却益を計算します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄附金 | 1,000,000 | 機械 | 400,000 |
売却益 | 600,000 |
税法における益金の範囲はかなり広いですが、例外もあります。
つまり、本来であれば収益に計上するものも、特別に益金とはしないという規定があります。
このように「本来であれば収益に計上するが、益金としない(つまり税金がかからない)もの」としては、以下のとおりでこれを「別段の定め」といいます。
・受取配当金の益金不算入 ・資産の評価益の益金不算入 ・還付法人税等の益金不算入 |
別段の定めとは、企業会計処理と異なる税務処理事項のことで、①益金算入項目、②益金不算入項目、③損金算入項目、④損金不算入項目があり、企業会計上の当期純利益を「別段の定め」にしたがって加減調整し、所得金額を計算することを「税務調整」といいます。
つまり、会計上の収益と税法の益金が異なる典型例がこの「別段の定め」と前述した「タダで資産をあげても、時価で益金に計上する」「タダで資産をもらっても、時価で益金に計上する」という点であるといえます。
法人は、決算利益に基づいて税務調整を行い、課税所得を計算することになります。
所得金額=(収益額+益金算入額-益金不算入額)-(費用額+損金算入額-損金不算入額) =当期純利益+益金算入額-益金不算入額-損金算入額+損金不算入額 |
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企業会計上、収益は、原則として製品、商品の販売またはサービスの提供を行い、かつ、これに対する現金および預金、売掛金、受取手形等を取得したときに計上するものとされています。
これは、いわゆる「実現主義」によるものです。
一方、税法上は原則として収益は企業会計の「公正処理基準」に基づいて、益金の額に算入されますが、商品や製品などの棚卸資産の販売による収益の額は、その引き渡しがあった日の属する事業年度の「益金」の額に算入することになっています。
節税対策のためには、なるべく売上高を翌期に伸ばす方がよいですが、「売上計上もれ」は税務調査でも厳しくチェックされる項目ですから、適切に処理することが大切です。
商品の売上高は、決算期末の前後にわたって商品を売っている場合など、当期の収益に計上するか、翌期の収益に計上するかが大きな問題となります。
商品や製品の計上は、「引き渡した時」に計上しなければなりません。これは、代金が未収であっても売掛金として計上することになります。
しかし、この「引き渡しが行われた時点」について、「注文を受けて商品を発送する場合」や「相手が商品を検収して合格したものだけを受けとることになっている場合」など、その判定がつかないケースも多々あります。
この点税法では、引き続き継続することを条件として以下のいずれかの時点であれば、益金に算入することが認められています。
出荷基準: 相手の注文に応じて商品を出荷したときに、引渡しがあったとする基準。 ①出庫基準:店頭または倉庫などから出荷した ②荷積み基準:船積み、または貨車積みした時に引渡しがあったとする ③搬入基準:相手の受け入れ場所に搬入したとき 検収基準: 使用収益開始基準: |
税法上、請負には①物の引き渡しを要するものと②物の引き渡しを要しないものがあります。
①「物の引き渡しを要するもの」の代表例は建築請負、②「物の引き渡しを要しないもの」の代表例は、運送、技術指導です。
この2種類の請負の収益の計上時期は、以下のとおりです。
①物の引き渡しを要するもの:工事完成基準 ②物の引き渡しを要しないもの:役務完了基準もしくは部分完了基準 |
土地を売った時には、「売買契約書を締結したとき」「所有権移転登記をしたとき」「手付金を支払ったとき」など、いつの収益としたらよいのか迷うことも多いでしょう。
固定資産を売却した時の収益は、資産を「引き渡したとき」に計上することになっています。ただし、引き渡したときがいつか分からないケースもあります。このようなときには、「譲渡契約を締結したとき」に計上することも認められています。
なお固定資産の売却収益は、棚卸資産と異なり継続して基準を採用する必要はありません。土地Aについては「引き渡したとき」、土地Bについては「譲渡契約を締結したとき」と異なる基準で売却収益を計上することができます。
収益の計上は、分割払いとなっても一括して収益を計上することになりますが、長期の分割払いのケースでは、その収益に見合う納税資金を確保できないケースが出てくることも考えられます。
そこで、工事の請負の収益については、長期大規模工事とその他の工事に分類し、長期大規模工事については工事進行基準、その他の工事については工事進行基準、工事完成基準、引渡した目的物が部分的に完成した工事については、部分完成基準となります。
長期大規模工事とは、以下の要件のすべてを満たす工事で、各事業年度の工事進行度を見積もって、収益の一部を当該事業年度の収益として計上することが認められます。
・着手日から目的物の引渡期日までの期間が1年以上の工事 (ただし、平成10年4月1日から平成20年3月31日までに締結した工事については、2年) ・請負対価の額が10億円以上の工事 (ただし、平成10年4月1日から平成13年3月31日までに締結した工事では、150億円、平成13年4月1日から平成16年3月31日までに締結した工事については100億円、平成16年4月1日から平成20年3月31日までに締結した工事では50億円以上の工事) ・損失が見込まれる工事を含む |
商品が予約された時に事前に予約金を受け取って、後から商品を引き渡す「予約販売」においては、予約金を受けとったときに収益を計上することはできません。
予約販売においては、実際に商品を引き渡したときに収益を計上します。
予約金については、決算日までに商品の引渡しが完了した分だけを当期の売上高に計上します。
決算日前後に予約販売を行うときには、売上高を当期の益金に算入するか、翌期に伸ばすかを十分に検討する必要があります。
長期割賦販売等に係る資産の譲渡について、税法では以下のような特例を認めていました。
延払基準
機械などについて、契約のときに頭金として相当額を受け取り、残金を長期にわたって回収するような場合にも、相手に引き渡したときに収益に計上しなければなりませんが、以下の一定要件に該当すれば、収益に分割計上することができます。 ※ただし、この長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例は、平成30年4月1日以後に行う長期割賦販売からは、廃止となりました。 |
以上、収益の意味や益金との違いについてご紹介しました。
税法では、タダで資産をあげても時価で益金に計上しなければならず、タダで資産を受け取っても、時価で益金に計上しなければなりません。
また、収益の計上基準については、商品は出荷基準、検収基準があり、建設業等は、工事完成基準等によって収益を計上します。
ただし、長期大規模工事については、工事進行基準によって収益を計上することができます。
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