公開日:2023年10月11日
最終更新日:2024年05月24日
附属明細書とは、株式会社に作成が義務づけられている書類の1つです。
附属明細書には、事業報告の附属明細書と計算書類に係る附属明細書があります。
ここでは、計算書類に係る附属明細書についてご紹介します。
附属明細書の豆知識
すべての会社は、会社法の規定の基づいて決算終了後に株主総会を開催しなければなりません。
そして計算書類と事業報告、この2つの附属明細書を開示書類として作成します。
附属明細書には、事業報告の附属明細書と計算書類に関する附属明細書があります。
事業報告の附属明細書に記載すべき事項は、「会社法施行規則」に規定されています。
たとえば、他の会社の業務執行取締役などを兼ねる会社役員についての兼務の状況の掲載や、第三者との取引で、会社役員と会社あるいは支配株主との利益が相反するものの明細などが規定されています。
計算書類に関する附属明細書に記載すべき事項は、「会計計算規則」に規定されています。
たとえば、有形固定資産および無形固定資産の明細や、引当金の明細、販売費及び一般管理費の明細などが規定されています。
附属明細書は、税務調査の際にチェックされることがあるため、ミスのないよう税理士に相談して作成することが重要です。決算書や申告書の作成を税理士に依頼し、税理士法第33条の2による書面を添付してもらうと、申告内容の正確性と信頼性を確保することができ、そもそも税務調査の対象となりにくいというメリットがあります。
附属明細書は、会社法の規定に基づいて、株式会社に作成が義務づけられている書類の1つです。
附属明細書には、以下の2つがあります。
①事業報告の附属明細書 ②計算書類の係る附属明細書 |
①事業報告の附属明細書とは、事業報告の内容を補足する重要な事項を記載する書類で、記載すべき事項は、「会社法施行規則」に規定されています。
たとえば、他の会社の業務執行取締役を兼ねる会社役員についての業務の状況の明細、第三者との間の取引で、株式会社と会社役員または支配株主との利益が相反するものの明細などがあります。
②計算書類に係る附属明細書とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の内容を補足する重要な事項を記載する書類です。
計算書類に係る附属明細書に記載すべき事項としては、有形固定資産および無形固定資産の明細、引当金の明細などが規定されています。
計算書類に係る附属明細書の記載事項としては、以下に関するもののほか、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の内容を補足する重要な事項を記載しなければならないとされています(会計規17)。
①有形固定資産および無形固定資産の明細 ②引当金の明細 ③販売費及び一般管理費の明細 ④関連当事者との取引の注記について、省略した事項があるときはその事項(会社計算規則112条1項但書)。 |
上記のうち④は、「公開会社以外の会社は、記載を要しない」とされています。
つまり、上記の④について記載をしなければならないのは、公開会社でありかつ会計監査人設置会社でない会社のうち、関連当事者との取引の注記事項の記載を一部省略した会社のみ、ということになります。
附属明細書の作成方法や記載例については、会社計算規則で具体的に定められているものではないため、会社が自主的に判断し明細書を作成することとなります。
日本公認会計士協会では、会計監査人設置会社(会計監査人の監査を受ける会社)を対象に、「計算書類に係る附属明細書のひな型」を公表しています。
ここでは、この日本公認会計士協会の「計算書類に係る附属明細書のひな型」の記載事例をもとに、注意点等についてご紹介していきます。
参照:日本公認会計士協会「計算書類に係る附属明細書のひな型」
参照:会社法計算書類作成ハンドブック第17版(中央経済社)P276~287
貸借対照表における固定資産の残高等の記載を補足する情報として、固定資産の期首残高、当期増加額、当期減少額、期末残高、減価償却累計額や減価償却等の情報を記載します。
増減・残高については、帳簿価額に基づいて記載する方法や、取得原価に基づいて記載する方法などがあり、どの方法を選択するかは会社に委ねられています。
帳簿価額による記載方法では、期首帳簿価額、当期増加額、当期減少額、期末帳簿価額の各欄は、帳簿価額によって記載します。そして、期末帳簿価額と減価償却累計額の合計額を、期末取得原価の欄に記載します。
ちなみに無形固定資産については、償却額が直接減価されるので、減価償却累計額や取得原価については、集計したり記載したりする必要はないと考えられます。
区分 | 資産の 種類 |
期首 帳簿価額 |
当期 増加額 |
当期 減少額 |
当期 償却額 |
期末 帳簿価額 |
減価償却累計額 | 期末 取得原価 |
有形固定資産 | 建物 | 673,540 | 54,852 | 20,114 | 18,876 | 689,402 | 248,655 | 938,057 |
機械装置 | 143,776 | 32,600 | 8,744 | 18,579 | 149,053 | 99,640 | 248,693 | |
計 | 817,316 | 87,452 | 28,858 | 37,455 | 838,455 | 348,295 | 1,186,750 | |
無形固定資産 | ソフトウェア | 146,540 | 30,460 | 27,580 | 38,662 | 110,758 | - | - |
のれん | 24,300 | 4,000 | - | 5,450 | 22,850 | - | - | |
計 | 170,840 | 34,460 | 27,580 | 44,112 | 133,608 | - | - |
なお、取得原価による記載方法では、期首残高、当期増加額、当期減少額、期末残高の各欄を取得原価によって記載します。そして、期末残高から期末減価償却累計額または償却累計額を差し引いた残高を、差引期末帳簿価額の欄に記載します。
取得原価による記載
区分 | 資産の 種類 |
期首 残高 |
当期 増加額 |
当期 減少額 |
期末 残高 |
期末減価償却累計額又は償却累計額 | 当期 償却額 |
差引期末 帳簿価額 |
有形固定資産 | 建物 | 431,225 | 46,720 | 22,498 | 455,447 | 146,548 | 17,754 | 308,899 |
機械装置 | 34,187 | 1,046 | 6,549 | 28,684 | 21,494 | 4,546 | 7,190 | |
計 | 465,412 | 47,766 | 29,047 | 484,131 | 168,042 | 22,300 | 316,089 | |
無形固定資産 | ソフトウェア | 8,630 | 12,540 | 2,300 | 18,870 | 9,760 | 4,350 | 9,110 |
のれん | 32,300 | - | - | 32,300 | 12,920 | 6,460 | 19,380 | |
計 | 40,930 | 12,540 | 2,300 | 51,170 | 22,680 | 10,810 | 28,490 |
引当金の明細は、貸借対照表における引当金の残高を補足する情報として、引当金の増減・残高等の情報を記載します。
引当金は、将来の損失または特定の費用であり、発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合に計上されます。
つまり「見積により計上されるもの」であることから、補足情報の記載が求められています。
引当金の明細は、当期減少額の欄を区分する記載方法と当期減少額の欄を区分しない記載方法があります。
当期減少額を区分する場合には、引当金の登記減少額は、「目的使用」と「その他」に区分し、「その他」の欄には、当期減少額のうち目的使用以外の理由による減少額と、その理由を脚注します。
区分 | 期首残高 | 当期増加額 | 当期減少額 | 期末残高 | |
目的使用 | その他 | ||||
貸倒引当金 | 34,475 | 53,975 | 4,775 | 2,525 | 81,150 |
賞与引当金 | 32,720 | 36,970 | 32,720 | - | 36,970 |
当期減少額を区分しない場合には、当期首残高、当期増加額、当期減少額、当期末残高を記載します。
科目 | 当期首残高 | 当期増加額 | 当期減少額 | 当期末残高 |
貸倒引当金 | 34,475 | 53,975 | 7300 | 81,150 |
賞与引当金 | 32,720 | 36,970 | 32720 | 36,970 |
販売費及び一般管理費については、損益計算書ではその細目の記載まで求められておらず、その金額のみが記載されることが多いため、その補足情報として明細が求められます。
販売費、一般管理費の順に、その内容を示す適切な勘定科目で記載します。
科目 | 金額 | 摘要 |
広告宣伝費 | 13,230 | |
役員報酬 | 80,400 | |
給与手当 | 868,555 | |
賞与 | 210,332 | |
賞与引当金繰入額 | 88,500 | |
退職給付費用 | 22,120 | |
法定福利費 | 60,230 | |
福利厚生費 | 2,030 | |
旅費交通費 | 8,500 | |
水道光熱費 | 12,500 | |
賃借料 | 13,000 | |
消耗品費 | 5,530 | |
減価償却費 | 25,320 | |
交際費 | 320 | |
寄附金 | 100 | |
雑費 | 4,780 | |
合計 | 1,415,447 |
その他、附属明細書に、貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の内容を補足するための重要な事項を記載する場合には、ひな形が示されていないため、記載様式については、他の附属明細書のフォーマットとの成功性を考慮し、適宜作成するものとなります。
附属明細書は、株式会社で作成が義務づけられています。
計算書類に係る附属明細書に記載すべき事項は、①有形固定資産及び無形固定資産の明細、②引当金の明細、③販売費及び一般管理費の明細、④会計監査人設置以外の会社では、関連当事者との取引に係る注記の内容を一部省略した場合にはその省略した事項と、会社計算規則に規定されています。
決算書、申告書は、適切な会計処理の判断を行い作成しなければならず、内容に誤りなどがあると税務調査等の対象となることがあり、ペナルティー(各種承認の取消しと加算税)が課されるリスクがあります。
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