個別注記表とは?意味・ひな形・記載事例を解説

公開日:2023年09月27日
最終更新日:2023年09月27日

この記事のポイント

  • 個別注記表とは、会社法で作成が義務づけられている計算書類のひとつ。
  • 重要な会計方針等について、個別に注記する表。
  • 売上の計算方法に変更があった場合などに記載するよう定められている。

 

個別注記表とは、会社法で作成が義務づけられている計算書類です。
重要な会計方針やその変更、表示方法の変更などについて、個別に説明する表であることから「個別注記表」と呼ばれています。

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個別注記表とは

個別注記表とは、会社法で貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書に関する注記事項を説明する書類です。
たとえば売上の計算方法に変更があった場合、過去の数字との比較が簡単にできなくなります。そこで、そのような基準の変更があったときには、その内容や理由、影響などについて記載するように定められています。

(1)個別注記表は計算書類の1つ

日本では、決算書に関するルールを法律で定めています。主なものとして、会社法と金融商品取引法があります。

このうち会社法は、すべての会社を対象としていて、以下の4種類の表を作成することとなっています。そして、会社法ではこれらの表を一括して「計算書類」と呼んでいます。

①貸借対照表
②損益計算書
③株主資本等変動計算書
④個別注記表

なお、金融商品取引法は、主に上場企業を対象としていて、以下の表を作成することとなっています。そして、金融商品取引法ではこれらの表を「財務諸表」と呼び、さらに決算書のことを「有価証券報告書」と呼んでいます。

①貸借対照表
②損益計算書
③株主資本等変動計算書
④キャッシュ・フロー計算書

つまり、一般的に「決算書」と呼ばれていますが、会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「有価証券報告書」という名称をつけています。
これは、日本の会社が上場すると2種類の決算書を作成しなければならず、事務作業の負担が重くなるということでもあります。

決算書に関する法律と作成する表

会社法 金融商品取引法
計算書類 有価証券報告書
①貸借対照表 ①貸借対照表
②損益計算書 ②損益計算書
③株主資本等変動計算書 ③株主資本等変動計算書
④個別注記表 ④キャッシュ・フロー計算書

(2)個別注記表に記載すべき事項って?

個別注記表に記載すべき事項は、以下のとおりです。
なお作成すべき注記表は、会計監査人設置会社かどうか、公開会社かどうか、有価証券報告書の提出義務の有無により異なり、注記を一部省略することもできます。

個別注記表記載事項 会社計算規則 会計監査人設置会社 会計監査人設置会社以外
有価証券報告書
提出会社
その他 公開会社 非公開会社
1 継続企業の前提に関する注記 会計規100
2 重要な会計方針に係る事項に関する注記 会計規101
3 会計方針の変更に関する注記 会計規102の2
4 表示方法の変更に関する注記 会計規102の3
5 会計上の見積りに関する注記 会計規102の3の2
6 会計上の見積りの変更に関する注記 会計規102の4
7 誤謬(ごびゅう)の訂正に関する注記 会計規102の5
8 貸借対照表に関する注記 会計規103
9 損益計算書に関する注記 会計規104
10 株主資本等変動計算書に関する注記 会計規105
11 税効果会計に関する注記 会計規107
12 リースにより使用する固定資産に関する注記 会計規108
13 金融商品に関する注記 会計規109
14 賃貸等不動産に関する注記 会計規110
15 持分法損益等に関する注記 会計規111
16 関連当事者との取引に関する注記 会計規112 ○(一部は附属明細書へ)
17 1株当たり情報に関する注記 会計規113
18 重要な後発事象に関する注記 会計規114
19 連結配当規制適用会社に関する注記 会計規115
20 収益認識に関する注記 会計規115の2
21 その他の注記 会計規116

参照:一般社団法人日本経済団体連合会「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)(2023年1月18日更新)」

(3)個別注記表に注記事項とは?

個別注記表に注記すべきとされている事項は、以下とおりです。

1.継続企業の前提に関する注記
事業年度の末日において、当該株式会社が将来にわたって事業を継続するうえでの前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在する場合などに注記します。

2.重要な会計方針に係る事項に関する注記
重要な会計方針に係る事項として、重要性の乏しいものを除き、以下の項目について注記します。

・資産の評価基準および評価方法
・固定資産の減価償却の方法
・引当金の計上基準
・収益および費用の計上基準
・その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項

3.会計方針の変更に関する注記
一般に公正妥当と認められる会計方針を、他の一般に公正妥当と認められる会計方針に変更した場合、重要性の乏しいものを除き、以下の項目について注記します。

・当該会計方針の変更の内容
・当該会計方針の変更の理由
・遡及適用をした場合には、当該事業限度の期首における純資産額に対する影響額

4.表示方法の変更に関する注記
会計計算規則の改正により、一般に公正妥当と認められる表示方法を、他の一般に公正妥当と認められる表示方法に変更した場合、重要性の乏しいものを除き、以下の項目について注記することとなりました。

・当該表示方法の変更の内容
・当該表示方法の変更の理由

5.会計上の見積りに関する注記
会計計算規則の改正により、会計上の見積りに関する注記として、以下の項目について注記することとなりました。

・会計上の見積りにより、当該事業年度に係る計算書類にその額を計上した項目であって、翌事業年度に係る計算書類に重要な影響を及ぼす可能性があるもの
・上記項目に計上した額
・上記のほか、会計上の見積りの内容に関する理解のための情報

6.会計上の見積りの変更に関する注記
会計計算規則の改正により、会計上の見積りの変更をした場合、重要性の乏しいものを除き、以下の項目について注記することとなりました。

・当該会計上の見積りの変更の内容
・当該会計上の見積りの変更の計算書類の項目に対する影響額
・当該会計上の見積りの変更が当該事業年度の翌事業年度以降の財産または損益に影響を及ぼす可能性があるときは、当該影響に関する事項

7.誤謬(ごびゅう)の訂正に関する注記
誤謬の訂正をした場合には、重要性の乏しいものを除き、以下の項目を注記しなければなりません。

・当該誤謬の内容
・当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額

8.貸借対照表に関する注記
貸借対照表については、以下の項目が定められています。

・担保に供している資産および担保に係る債務
・資産から直接控除した引当金
・資産から直接控除した減価償却累計額
・減損損失累計額の表示
・保証債務等
・関係会社に対する金銭債権・債務
・取締役、監査役および執行役に対する金銭債権・債務
・親会社株式

9.損益計算書に関する注記
損益計算書については、以下の項目が定められています。

・関係会社との取引高
関係会社との取引による取引高の総額は、営業取引によるものとそれ以外のものに区分して、注記しなければなりません。

10.株主資本等変動計算書に関する注記
株主資本等変動計算書に関する注記としては、以下のものがあります。

・事業年度末日における発行済株式の数
・事業年度末日における自己株式の数
・事業年度中に行った剰余金の配当
・事業年度末日における株式引受権に係る株式の数
・事業年度末日において発行している新株予約権

11.税効果会計に関する注記
税効果会計に関する注記としては、重要性の乏しいものを除き、以下の項目を注記しなければなりません。

・繰延税金資産
・繰延税金負債

12.リースにより使用する固定資産に関する注記
所有権移転外ファイナンス・リース取引のうち、契約終了後、所有権が移転しないリース資産を賃貸借契約で処理したときなどに注記します。

・当該事業年度の末日における取得価額相当額
・当該事業年度末日における減価償却累計額相当額
・当該事業年度末日における未経過リース料相当額
・その他重要な事項

13.金融商品に関する注記
金融商品に関する注記としては、重要性の乏しいものを除き、以下の項目を注記しなければなりません。

・金融商品の状況に関する事項
・金融商品の時価に関する事項
・金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項

14.賃貸等不動産に関する注記
賃貸等不動産に関する注記としては、重要性の乏しいものを除き、以下の項目を注記しなければなりません。

・賃貸等不動産の状況に関する事項
・賃貸等不動産の時価に関する事項

15.持分法損益等に関する注記
持分法損益等に関する注記としては、以下の項目を注記しなければなりません。

・関連会社がある場合
 関連会社に対する投資の金額
 当該投資に対して持分法を適用した場合の投資の金額
 投資利益(または損失)の金額

・開示対象特別目的会社がある場合
 開示対象特別目的会社の概要
 開示耐用特別目的会社との取引の概要
 開示対象特別目的会社との取引金額
 その他の重要な事項

16.関連当事者との取引に関する注記
関連当事者について定められている主な項目は、以下のとおりです。

・当該株式会社の親会社
・当該株式会社の子会社
・当該株式会社の親会社の子会社

17.1株当たり情報に関する注記
1株当たり情報の注記としては、主に以下の項目が定められています。

・1株当たり純資産額
・1株当たり当期純利益または当期純損失金額

18.重要な後発事象に関する注記
事業年度の末日後において、当該株式会社の翌事業年度以降の財産または損益に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合には、注記が必要です。

19.連結配当規制適用会社に関する注記
事業年度末日が最終事業年度の末日となる時後、連結配当規制適用会社となる胸について、注記が必要です。

20.収益認識に関する注記
会社が顧客との契約に基づく義務の履行の状況に応じて、当該契約から生じる収益を認識する場合には、注記が必要です。

21.その他の注記
貸借対照表、損益計算書および株主資本等変動計算書によって、株式会社の財産または損益の状態を正確に判断するために必要な事項については、注記が必要となります。

個別注記表の記載事例よくある7つのケース

会計監査人設置会社では、基本的にすべての項目について記載が必要ですが、会計監査人設置会社以外の会社に関しては、さらに公開会社か非公開会社によって、注記項目が異なります。
ここでは、非公開会社を想定し、よくある個別注記表の記載事例についてご紹介します。

(1)重要な会計方針に係る事項に関する注記

重要な会計方針に係る事項に関する注記は、中小企業を含むすべての企業で必ず注記しなければなりません。

棚卸資産の評価基準及び評価方法

 ①商品、製品、原材料、仕掛品
 総平均法による原価法
 (貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)

②貯蔵品
 先入先出法による原価法
 (貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)

固定資産の減価償却の方法

 ①有形固定資産(リース資産を除く)
 定率法

②無形固定資産(リース資産を除く)
 定額法
 自社利用のソフトウェアについては定額法を採用しており、償却年数は5年であります。

③リース資産
 所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産
 自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法を採用しております。

引当金の計上

貸倒引当金
 債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権につきましては、貸倒実績率による計上しております。また、貸倒懸念債権及び破産更生債権につきましては、個別に回収可能性を勘案し、回収可能見込額を計上しております。

賞与引当金
賞与引当金は、従業員への賞与の支払いに備えるため、従業員に対する賞与の支給見込み額のうち、当事業年度に帰属する額を計上しております。

繰延資産の処理方法

社債発行費:支払時に全額費用として処理しております。

(2)会計方針の変更に関する注記

会計方針を変更した場合には、変更の内容や理由、純資産額に対する影響額などの記載が必要です。

棚卸資産の評価方法の変更

社債発行費:支払時に全額費用として処理しております。

(3)表示方法の変更に関する注記

会計基準24号等の適用に伴って会社計算規則が改正されたことで、表示方法に変更があった場合には、その内容や理由について記載しなければならないことになりました。

○○の表示方法の変更

○○の表示方法は、従来、貸借対照表上、○○(前事業年度××百万円)に含めて表示しておりましたが、重要性を増したたため、当事業年度より○○(当事業年度××百万円)として表示しております。

表示方法の変更に関する注記

(損益計算書)
前事業年度において「営業外収益」のその他」に含めていた「為替差益」は、営業外収益の総額の100分の10を超えたため、当事業年度より独立掲記することとしております。
なお、前事業年度の損益計算書において「営業外収益」の「その他」に含めていた「為替差益」は、○○百万円であります。

(4)会計上の見積りに関する注記

会計上の見積りに関する注記としては、翌事業年度に重要な影響を及ぼす可能性があるものや、計上した額について記載が必要です。

関係会社株式の評価

(1)当事業年度の計算書類に計上した金額 関係会社株式 ○○百万円
(2)その他の事項
市場価値のない関係会社株式の減損処理の要否は、取得原価と実質価額とを比較することにより判定されており、実質価額が取得原価に比べ50%以上低下したときは、実質価額まで減損処理をする方針としております。当該実質価額は、関係会社の事業計画等に基づき見積もりを行っておりますが、将来の不確実な経済条件の変動等により事業計画等の見積りが必要となった場合、翌事業年度の計算書類において、関係会社株式の金額に重要な影響を与える可能性があります。

(5)誤謬の訂正に関する注記

誤謬(誤り)があった場合には、その内容や影響額について記載をしなければなりません。

誤謬の訂正に関する注記

当事業年度において、○○年度より退職給付債務の会計上の見積りに誤り(過大計上)があることが判明し、誤謬の訂正を行いました。当該誤謬の訂正による累積的影響は、当事業年度の期首の純資産の帳簿価額に反映しております。
この結果、株主資本等変動計算書の期首残高は、利益剰余金が○○千円増加しております。

(6)株主資本等変動計算書に関する注記

株主資本等変動計算書に関しては、事業年度末日における発行済株式数や自己株式の数などの記載が必要です。

当事業年度末における自己株式の種類及び株式数
普通株式         ○,○○○,○○○株

(7)1人会社で必要な注記は?

1人会社の場合にも、(1)重要な会計方針に係る事項に関する注記、(6)株主資本等変動計算書に関する注記については、個別注記表に記載が必要です。

重要な会計方針に係る事項に関する注記
1.この計算書類は、「中小企業の会計に関する指針」及び「中小企業の会計に関する基本要領」によって作成しております。
2.消費税の会計処理
 消費税の会計処理は、税込方式を採用しております。

株主資本等変動計算書に関する注記
1.当該事業年度の末日における発行済株式の数 100株
2.当該事業年度の末日における自己株式の数 0株

まとめ

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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