公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年03月11日
決算とは、一定期間の損益を算出し財政状態を確定することをいいます。
法律上、全ての企業は、決算を1年に1回行うことを義務づけられています。これを「年次決算業務」といいます。
これに対して、月単位で行う決算業務のことを「月次決算」といいます。
月次決算は、法律上義務づけられているものではありませんが、自社の業績をタイムリーに把握し、対策を講じるための指標を入手することができるため、経営上非常に重要な作業といえます。
月次決算とは、月次で行う決算のことです。
月次決算は、公告が義務づけられる年次決算とは異なり企業の裁量に任されています。大手企業であれば、10営業日以内には月次決算が完了するケースが多いようですが、中小企業ではつい後回しにされがちで月次決算が翌月末までかかってしまうケースも多々あります。
しかしビジネスを取り巻く環境は日々変化しており、企業経営にはその変化に対応するためのスピードが強く求められます。そして、このスピードをアップするためにはタイムリーな業績確認と経営判断が必須といえます。
そして、そのために重要なポイントとなるのが、月次決算の早期化といえるのです。
決算とは、一定期間における収益と費用とを計算して損益を算出し、資産、負債、資本金、剰余金といった財政状態を確定させる業務のことをいいます。
通常、この一定期間とは1年を指し、この期間を事業年度(会計期間)といいます。そして、この1年の期間の最終日を一般的に決算日と呼び、決算日がある月を「決算月」といいます。
1年ごとに決算を行うことを「年次決算」、1カ月ごとに決算を行うことを「月次決算」と言います。
月次決算と年次決算の違い
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個人事業主の場合には、1月1日から12月31日までの1年間について確定申告をしなければならないので、個人事業主が年次決算を行う場合には、1月1日から12月31日までの1年間が事業年度になります。
一方、法人の場合は、自由に決算日を決めることができます。
たとえば、3月決算の企業は4月1日から3月31日までが事業年度であり、3月31日が決算日となりますので、年次決算業務は3月末から5月にかけて行うことになります。
月次決算を行うと、「記帳のミスを早期に発見できる」「新製品の原価を早期に把握できる」などのメリットがありますが、最も大きいメリットは、現状を早期に把握しタイムリーな経営判断を行うことが可能となるという点でしょう。
月次決算を行うと、経営者は会社の業績をタイムリーに把握することができるようになるので、会社の経営方針をより迅速かつ的確に修正することが可能になります。
月次決算で部門ごとの業績が明らかになれば、人員や資源投入について検討し機会損失を防いだり、問題が深刻化する前に原因を分析し対応を検討したりすることが可能となります。
たとえば生産状況が遅れていれば、その原因を究明して解決策を講じることができますし、検収作業が遅れていれば、検収がなぜ遅れているのか先方に確認することができます。また、債権の回収が遅れていれば、債権の保全を行うなどのタイムリーな対応も可能になります。
つまり、月次決算を行っていれば、PDCAサイクルつまり、Plan(計画する)→Do(実行する)→Check(測定・評価する)→Action(改善する)の4段階のサイクルを繰り返すことができ、必要があれば事業計画を変更しながら、業務をタイムリーにかつ継続的に改善していくことが可能になるわけです。
月次決算を行い、タイムリーに損益を把握している企業は、金融機関からの評価を高めます。金融機関は、融資の相談を受け付けたら「稟議書」を作成し、銀行内の関係者に回覧します。この稟議書では、会社概要や取扱商品だけでなく、最近の決算数値、試算表の内容、今期の決算見込みなども取り上げられますが、月次決算を行っていることは好材料となります。月次決算を行っている会社は、社内のフローやルールがしっかりしており提示された決算数値、試算表の内容についても正確とみなされる傾向があるからです。
月次決算を行っていると、早期に売上高や利益を具体的な数値で把握できるので、黒字であれば黒字なりの対策を、赤字であればその赤字の原因を究明して解決するための対策をタイムリーに行うことができるようになります。
年度決算で利益がたくさん出そうだという予想も早めに行うことができ、適切な節税対策を行うことができます。
また、納税資金を早期に予想することができるので、納税資金を確保するなどの資金繰りを調整できるというメリットもあります。
月次決算で作成する資料は、経営上の必要性、取引方法や会計処理の方法だけでなく、内部統制や法令遵守の視点も踏まえ独自に様式を決める必要があります。
前月までの実績、前年同月の実績と比較しやすい様式にすることが望まれます。
ここでは、オーソドックスなひな形について3つご紹介します。
月次決算で多角的な分析を行うためには、部門別の損益計算書を作成するのが有効です。
月次で作成する部門別損益計算書は、あまりにも区分を複雑にしてしまうと、日常の事務処理が複雑になってしまって、事務作業が遅延してしまうことがあるので注意が必要です。
会計システムでは、一般的に部門の設定をすることができ、それぞれで計算書を作成することができます。
部門別損益計算書
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月次決算の損益計算書については、前年同月との比較をすることも有効です。
とくに、季節的な要因に影響を受ける業種の場合や、同時期の市場動向や気象条件によって売れ筋商品が変わる業種の場合などは、前期比較が重要な指標となるでしょう。
前年同月比較を行い、異常値があれば、増減の原因を究明し、分析したうえで早期に対応することができます。
前期比較表
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月次決算で予算実績対比表を作成すると、予算の達成度を把握し、先述の見直しの要否について確認することができます。
予算が達成できない場合には、予算実績分析を行ったうえで「現状維持するべきか」「営業の方針を転換するべきか」「人員を追加するべきか」など、企業の意思決定の指標とすることができます。
予算実績比較表は、何を分析したいのかという目的によって、フォーマットが変わります。
当初は基本的に損益計算書で十分ですが、予算実績比較表を作成すると、達成率が明確になります。ここで注意したいのが、「費用項目について達成率は100%を超えているというのは、そこに何らかの問題が潜んでいるのだ」ということであり、「改善が必要だ」という視点を常に持ち続けなければならないということです。
たとえば、売上が予算を下回っているにもかかわらず、売上原価が達成率100%を超えていて予算を上回っている場合は、その内容を早急に確認し、改善策を行わなければならないということを示していることになります。
予算実績対比表
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月次決算を経営分析の指標とするためのポイントが、「月次決算の早期化」です。
そして、「月次決算の早期化」を実現するためのポイントが、経営者自身の意識改革、クラウド会計ソフトの活用、そして税理士等の専門家の活用の3つです。
しかし、月次決算の早期化を実現できれば、タイムリーな経営判断が可能になるなど大きなメリットがあるにも関わらず、月次決算が遅れてしまう理由のひとつが、企業トップの理解の欠如にあると言われています。
月次決算はスピードが命ですから、各部門から必要な数字が集まらなくても、後日正確な数字が出てきたら、その時点で修正すると決めて、いったん締め切って概算値を入れてトップに報告するケースも多々あります。
しかし、これらの対策は部門ごとの理解と協力が重要であり、経理担当の単独で実行することが難しいものです。だからこそ、企業トップが月次決算の重要性を認識するよう意識改革を行い、概算での報告を実現できるように、トップダウンで各部門の担当に指揮することが不可欠となります。
月次決算の早期化を実現するためには、承認の簡素化などフローの構築が必要となりますが、独自開発すると導入コストが膨らみます。
そこで活用したいのが、「クラウド会計ソフト freee会計」です。「freee会計」は、多くの企業に導入されていますが、請求書の電子化や経費精算のシステムを活用して作業量そのものを減らすことで、スピード化を実現することができます。
また、システムを独自で開発するよりも、当然にコストを抑えることができますし、他のシステムなどとも連携しやすいというメリットがあります。
銀行やクレジットカードと連携させれば、明細や利用履歴が自動で反映されるため、手入力による作業はほぼ必要なくなります。
さらに、「freee人事労務」と「freee会計」を連携させれば、給与まで自動で仕訳が反映され、月次決算に必要なデータを迅速に集計することが可能となります。
また、「freee会計」は、どのような業種でも適切かつ効率的に作業を行うことができるようプロセスが汎用化されていますから、導入しやすいというメリットがありますが、仮に従来のフローとかけ離れているのであれば、それは従来の方法が非効率である可能性があります。このような時にも、「導入したシステムに合わせる必要がある」という大義名分があれば、フロー変更への社内理解も得やすいものです。
月次決算の早期化は、税理士等に依頼するという手もあります。
もちろん、税理士にすべての作業をまる投げするわけにはいきませんが、税理士に依頼すれば、よりスピーディで正確な月次決算を実現することができますし、経理部門をはじめとする部門ごとのスタッフの負担も大きく軽減されます。
さらに、月次決算から課題を明確にし、企業の利益体質を強化することも期待できます。
多くの企業に導入されていますが、請求書の電子化や経費精算のシステムを活用して作業量そのものを減らすことで、スピード化を実現することができます。
たとえば請求の入金消込、経費精算の勘定科目の判断の作業をシステム化することができます。
以上、月次決算の重要性や早期化を実現することのメリットや方法などについてご紹介しました。月次決算の早期化を実現できれば、タイムリーかつ正確な経営判断を行うことができ、迅速な年次決算に直結させ、経理担当をはじめとするスタッフの負担が大きく軽減されます。さらに、金融機関等の外部からの信頼が高まり、企業の利益体質も強化されるなど、多くのメリットが期待できます。
そして、月次決算の早期化を実現させるためには、経営者自身の意識改革、クラウド会計ソフトの活用、そして税理士等の専門家の活用の3つのポイントを重視する必要があります。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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