月次決算(試算表作成など)から経営を把握する

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2019年05月02日

目次

  1. 月次決算(試算表などの作成)の目的
    • そもそも「試算表」とは
    • 試算表を作成する際のポイント
    • 税理士に相談するメリットとは
    • 試算表の大まかな構成
  2. 月次の貸借対照表(B/S)のチェックポイント
    • 現金預金の水準
    • 現預金の増減は正常か
    • 「資産項目」についての確認
    • 「負債項目」は資金繰りに大きな影響を及ぼす
    • 「純資産項目」は確認する程度でOK
  3. 月次の損益計算書(PL)のチェックポイント
    • 「売上」は予定通りか
    • 経費は大きく変動していないか
    • 利益を確保できているか
  4. まとめ

この記事のポイント

  • 試算表は、もともと仕訳や元帳への転記が合っているかを確認するための集計表。
  • 月次の試算表を作成することで、経営状況を把握し経営管理に活かすことができる。
  • 月次試算表は、いかにタイムリーに情報提供ができるかがポイント!

 

会社の決算を、年に1度税務申告のためだけに仕方なく行っているケースでは、年度末に決算書を作成するためだけにまとめて記帳しているということも多いのではないでしょうか。
しかし、このような会計方法では「どんぶり勘定」になってしまいがちですし、経営管理が行き届いているとはいえず経営を把握しているともいえません。

数字で会社の経営を管理している社長は、月ごとに決算(月次決算)を行い、試算表を作成して、その数字を経営の指標としています。
なぜなら、月次決算をすると、業績悪化の兆候があれば、それを早めに察知して軌道修正することができますし、節税対策や納税資金の準備も効率的に着手することができるからです。

ここでは、月次決算で試算表を作成するメリットや、試算表のチェックポイントについてご紹介します。

月次決算(試算表などの作成)の目的

月次決算とは、年次決算に対比する概念で、会社が経営状況を把握し、経営管理に活かすために毎月実施する決算で、試算表などを作成する作業のことをいいます。
月次決算を行い試算表を作成することで、未回収の売掛金や原因不明の預かり金などの存在にも気づくことができるようになりますし、会社の問題点を数字で把握することができるようになります。

そもそも「試算表」とは

試算表とは、もともと複式簿記で仕訳の記帳や元帳への転記が合っているかどうかを確認するための集計表のことをいいます。
試算表の段階では、貸借対照表や損益計算書が仮の状態で出来上がることになります。
※損益計算書では、収益などの損益状況を把握することができますし、貸借対照表では各勘定科目の集計の途中経過・財政状態について把握することができます(※後述)。

試算表を作成する際のポイント

月次で作成する試算表は、収益などの損益状況と財政状態を把握して、経営判断の指標とするために作成されるものなので、精度が低かったりタイムリーに作成できなかったりするようでは経営の意思決定に役立たず、意味がありません。
したがって、月次決算で試算表を作成する際には、いかにタイムリーに情報提供ができるかがポイントとなります。

また、月次決算で試算表を作成することは、節税や納税資金の確保という面でもメリットがあります。
節税のための決算対策や納税資金の準備は、決算期が終わってからだと行える施策がほとんどなくなってしまいますが、月次決算でこまめに財務内容を把握しておけば、早めに的確な対策を行うことができるようになるからです。

さらに、月次で試算表を作成すると銀行からの融資が受けやすくなるというメリットもあります。
年度末にまとめて記帳している会社よりも、月次で業績管理をしている会社のほうが経営管理は行き届いていると判断されるため、財務内容の信頼性が高くなるからです。

会計ソフトを使えば、日々集積された仕訳情報は会計システムに集計され、試算表は自動的に出力することができるので、試算表の内容を分析すれば、早期に経営状態を把握することができるようになります。

税理士に相談するメリットとは

試算表は作りっぱなしでは意味がありません。
内容を分析し行動指針とするPDCAサイクル、つまりPlan-Do-Check-Actを実践していくことが大切です。

たとえば、試算表で単に経費をチェックするだけで終わってしまっているケースも多いのですが、実は何を経費として計上するかの判断の方が重要になることもあります。

もちろん、こうした判断は個別の事例によって正解が変わることがあり、書籍やネット上の情報だけでは判断に迷ってしまうこともあるでしょう。

したがって、月次決算で試算表を作成する場合には、まず税理士に相談して指導を受けることをおすすめします。

税理士に相談することで、企業の目的に沿った試算表の作成方法やフローについてサポートをしてもらうことができますし、経営の指標とするためには、どの項目をチェックし理解すればよいのかなどについても、アドバイスしてもらうことができます。

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試算表の大まかな構成

試算表は本来、資産、負債、純資産を表示する貸借対照表にあたる部分と、収益と費用を表示する損益計算書にあたる部分が1つの表にまとめて表示されます。
※ただし、会計ソフトによっては、試算表を作成すると、貸借対照表と損益計算書に分けて表示されることもあります。

なお、月次決算を行う目的からすれば、月次推移、前年同月比較、予算実績比較を行うことができる様式が望ましいでしょう。

○貸借対照表(B/S)

貸借対照表は、企業の財政状態、つまりどのように資金を調達してそれをどのように使っているかを表しています。会計上の項目である勘定科目は、資産、負債、純資産の順に並べられ、資産と負債についてはそれぞれ流動性が高い順に表示されるというルールがあります。

○損益計算書(P/L)

損益計算書は企業の経営成績、つまり事業による収益力を表しています。売上高など営業による収益を先頭に、営業にかかった費用、利息など営業以外の損益、通常は発生しない特別な損益の順に記載され、法人税等を差し引いた最終的な利益が最後に記載されます。

会計ソフトfreee「試算表(損益計算書・貸借対照表)を確認する 」

月次の貸借対照表(B/S)のチェックポイント

月次貸借対照表の作成方法も、年次決算の場合の作成方法と、それほど大きな違いはありません。
ただし、月次決算特有の決算処理もありますので、その点について留意する必要があります。
ここでは、月次の貸借対照表(B/S)作成にあたって、とくにチェックすべきポイントについてご紹介します。

現金預金の水準

まず、手元にどれぐらいの現預金が残っているかを確認します。試算表の金額と実際の残高が一致しているかを確認し、一致していなければ原因を調べて帳簿を修正します。
なお、現金預金の適正な水準を知る指標としては「現預金月商比率」があります。
現預金月商比率とは、ある時点(通常は決算日)において、月商の何カ月分のキャッシュを保有しているかを示す指標で、現預金が月間売上高の何倍あるかを計算します。

現預金月商比率は以下の計算式で求められます。

現預金月商比率 = ( 現金 + 預金 ) ÷ 月間売上高
(現金+預金に短期保有の有価証券を含める場合もあります)

中小企業では現預金月商比率が1.0~1.5あれば安全とされています。とはいうものの、中小企業は得意先の倒産などで売上代金の回収が滞れば深刻な影響を受けるため、現預金は多めに持っておく方が無難と言えるでしょう。

現預金の増減は正常か

現預金については、前月との増減を確認することも大切です。
売上や仕入は、商品やサービスの引渡し時の支払いではなく、後日支払いを行なうことが多く、現預金の増減は損益の増減とは一致しないことになります。ですから、現預金の増減をこまめに確認しておかなければ、資金不足で経営危機に陥るリスクもあります。
とくに売り上げ変動が激しい場合であれば、いつどれくらいの資金調達が必要なのかは、しっかり把握しておく必要があります。
現預金の当月の増減を確認するほか、翌月以降の増減予定も見積もって、十分に現預金が残るかどうか確認するようにしましょう。

「資産項目」についての確認

現金・預金以外のチェックポイントとしては、一般的には現金預金、売掛金、買掛金などがチェックすべきポイントとなります。

・売掛金
売掛金は今後の資金繰りに大きな影響を及ぼします。入金予定を確認して、滞留がないかチェックしましょう。

・棚卸資産
現預金と同様に、試算表の金額と実際の在庫金額が一致しているかを確認します。一致していなければ売上あるいは仕入の計上漏れがあるため、原因を調べて正しく計上します。

・前払費用(前渡金)
家賃や保険料など継続したサービスで代金を先に支払った場合は前払費用を計上し、月割りで費用計上します。月次の試算表のチェックでは、前払費用から費用への計上ができているかを確認します。

・固定資産
決算でまとめて減価償却をすると、期末に多額の費用が計上されることになってしまいます。固定資産がある場合は、減価償却費を月次で計上しているかを確認します。

・仮払消費税
消費税の課税事業者の場合、決算が近づいてから消費税の金額を確認していては、消費税の納税資金が用意できないリスクがあります。消費税の期末の納税額をある程度予測するためにも、月次の試算表で消費税が適切に計上されているかを確認します。

「負債項目」は資金繰りに大きな影響を及ぼす

貸借対照表では、負債項目のチェックも大切です。
また借入金が多い会社の場合には、借入金のチェックは必ず行う必要があります。
ここでは、一般的な企業の場合で、とくにチェックしておきたいポイントについてご紹介します。

・買掛金・未払金・未払費用
これらの科目は、今後の資金繰りに大きな影響を及ぼします。
支払期日を確認して、支払い漏れがないかチェックしましょう。

・未払費用
月末が金融機関の休日に当たる場合で翌月の初めに代金を支払う場合には、月末の時点で未払費用を計上します。また、継続したサービスで代金を後で支払う場合は、月ごとに未払費用を計上します。代金が支払われていないだけに、計上は忘れがちになるので注意しましょう。

・仮受消費税
仮払消費税と同様に仮受消費税についても、適切に計上されているかを確認します。

「純資産項目」は確認する程度でOK

中小企業では月々の利益以外に純資産が変動する要因は少ないため、純資産項目は年度末の決算で確認する程度でよいでしょう。念のため、利益剰余金の当月残高が前月残高+当月の純利益になっているかについて、確認するとよいでしょう。

「貸借対照表(B/S)とは|構造・ルール・見方・ポイントまとめ」を読む

月次の損益計算書(PL)のチェックポイント

損益計算書(PL)は、売上や経費が予定通りに推移しているかといった観点からチェックします。
仕訳入力勘定科目ごとに集計された試算表のうち、収益・費用にかかわる項目を抽出してチェックします。
これらの作業についても、会計ソフトなら、入力するだけで自動的に行うことができます。

「売上」は予定通りか

売上が予定通り計上されているかを確認します。
予定よりも少なく推移している場合は、予定されていた売上が翌月以降にずれたのか、予定されていた売上がなくなってしまったのかといった点を見極めます。予定されていた売上がなくなってしまった場合は、年度を通じてそのまま売上の減少になるため注意が必要です。

予定よりも多く推移している場合でも、翌月以降に予定されていたものが前倒しされたに過ぎない場合があるため、よく確認しましょう。

経費は大きく変動していないか

経費が、予定していた額と比較して大きく変わっていないかについても確認します。
差異がある場合は、原因を調べて対策を考える必要があります。
経費の計上が漏れていることもあるので、前月の結果と比較することも大切です。

利益を確保できているか

損益計算書では、利益は「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」、「税引前当期純利益」、「当期純利益」の5段階に分かれて表示されます。

売上総利益は売上から原価を差し引いた金額で、商品そのものの稼ぎを表しています。営業利益は売上総利益から販売費と管理費を差し引いたもので、本業での稼ぎを表しています。経常利益は営業利益に利息や雑損益などを加減したもので、通常どおり事業を行った場合に得られる利益を表しています。

月次で利益をチェックする場合は、売上総利益、営業利益(あるいは経常利益も)が予定どおりに確保できているかを見るとよいでしょう。

なお、税引前当期純利益は通常は発生しない特別な損益を経常利益に加減したもので、当期純利益は税引前当期純利益から法人税等を差し引いた最終的な利益となります。業績の大きな変動や特別な損益がなければ、どちらも月次ではあまり気にしなくてもよいでしょう。
ただし、年度末が近いた場合には、納税資金の準備のためにも期末の当期純利益や法人税等の金額を予測する必要があります。

「損益計算書(P/L)とは|構造・ルール・見方・ポイントまとめ」を読む

まとめ

以上、月次決算で行う作業や試算表でチェックしたいポイントについてご紹介しました。
試算表は、会計ソフトで簡単に作成することができますが、自社に合致した試算表を作成するためにも、まずは税理士に相談することをおすすめします。
月次決算で作成する試算表も、年次決算と同様に貸借対照表と損益計算書として作成して問題ありませんが、月次決算は、年次決算のような法的な義務から作成するわけではなく、経営の指標とするために作成するものであることから、会社の目的ごとに独自に様式を決めることができるからです。

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