フリーキャッシュフロー|プラスの意味・マイナスの意味

公開日:2019年12月10日
最終更新日:2022年04月22日

この記事のポイント

  • フリーキャッシュフローとは、「自由に使うことができるお金」。
  • 自由に使えるお金とは、営業キャッシュフローから「現事業維持のための設備投資等」を差し引いた残り。
  • フリーキャッシュフローは、大きいほどよい指標。

 
キャッシュフローとは、簡単にいうと「お金の流れ」を意味します。
そして、キャッシュフロー計算書とは、会社がどのようにお金を得てどのように使ったのかをまとめた表です。
キャッシュフロー計算書は、上場企業だけが作成を義務づけられていますが、中小企業でも事業を維持するうえでは、キャッシュフローを把握することは非常に重要です。

フリーキャッシュフローとは

フリーキャッシュフローとは、会社が稼ぎ出したお金のうち事業を維持するために必要な設備投資等の支出を差し引き、最終的に会社の手元に残ったお金のことをいいます。
フリーキャッシュフローは、略して「FCF」と呼ばれます。

「キャッシュフロー」とはお金の流れのことで、「キャッシュフロー計算書」とは、会社がどのようにお金を得てどのように使ったのかをまとめた表です。
キャッシュフロー計算書は、上場企業にはルールによって作成が義務づけられていますが、中小企業には作成は義務づけられていません。
しかし、キャッシュフロー計算書は、損益計算書では分からない企業のキャッシュフローに関する情報を入手することができ、キャッシュの動きそのものを把握することができるので、作成義務はなくても中小企業にこそ、大変有益な書類ということができます。

キャッシュフロー計算書は、営業・投資・財務の3つの企業の活動別に分けて表示されます。そのうえで、期中の増減額を示し、最後に期末時点でどのくらいのキャッシュがあるかを明らかにしていきます。

①営業活動によるキャッシュフロー
本業における資金の動きが記載されます。

②投資活動によるキャッシュフロー
設備投資や企業買収など将来に向けた投資によるキャッシュフリーや、余剰資金の運用における投資とその回収によるキャッシュフローが記載されます。

③財務活動によるキャッシュフロー
企業の資金調達活動に関するキャッシュフローが記載されます。
銀行からの借り入れやその返済、株式発行による増資など、事業活動に必要な資金をどのように調達したのかが分かるようになっています。

損益計算書では、赤字か黒字かは分かりますが、キャッシュの状況までは分かりません。また、貸借対照表でも売掛金の状況は分かりますが、キャッシュの状況は分かりません。
つまり売り上げは計上されていても、取引先から実際に入金されたかどうかは分からないのです。そしてそれをあらわすのがキャッシュフロー計算書というわけです。

(1)フリーキャッシュフローの計算方法

フリーキャッシュフローの計算方法はいくつか考えられますが、最も簡単なのは、「営業活動によるキャッシュフロー」から「現事業維持のための設備投資等」を差し引く方法です。

「フリーキャッシュフロー」=
「営業活動によるキャッシュフロー」-「現事業維持のための設備投資等」

会社を成長させるためには、新たな設備を導入したりすでに持っている設備を継続して維持したりといったことが必要となります。特に、モノをつくる会社では、設備投資にそれなりの資金が必要です。
ただし、本業で稼いだ営業キャッシュフローをまるまる自由に使えるわけではありません。
そこで、このように会社を経営するうえで必要な設備投資の支出を差し引いたお金が、最終的に会社の手元に残ったお金が自由に使えるお金であり、「フリーキャッシュフロー」ということになります。

(2)フリーキャッシュフローから分かること

本業で稼ぎ出した営業キャッシュフローから事業の維持に必要な設備投資等の支出を差し引いたのが、フリーキャッシュフローです。

フリーキャッシュフローは、稼いだお金のうち自由に使うことができる部分であり、企業価値の源泉ともいえるものなので、フリーキャッシュフローがプラスなら、本業の稼ぎで投資を賄えていてうまく経営されているといえますし、多ければ多いほどよいということになります。

(3)フリーキャッシュフローがプラスの意味

フリーキャッシュフローが多ければ多いほど配当金の支払いや自己株式の取得、新規事業のための投資などの施策を行うことができることになります。

①株主への分配
まずは、株主への分配です。
事業継続のために必要な資金を社内に確保して、なお余剰が出た場合には、株主に分配することが考えられます。株主はリターンを期待していますので、まさに株主への分配の原資になるといえるでしょう。

②新規事業への投資
株主に分配せずに、さらに事業を成長させるために新規事業などへの投資資金として使うという選択肢もあります。将来の成長戦略を株主に説明し、理解を得られることができれば、新規事業への投資にフリーキャッシュフローを使うことを認めてもらうことができるでしょう。

③借入金の返済
フリーキャッシュフローを利用して、借入金の返済を行い、財務体質を改善するというのもひとつの手です。
借入金を圧縮して、将来のリスクへの耐性を強めておくというのも、事業を安定させるという意味では、選択肢のひとつといえるでしょう。

(4)フリーキャッシュフローがマイナスの意味

フリーキャッシュフローがマイナスだったり少なかったりすると、配当の支払い借入金の返済、新規事業のための投資などを行う余力がないことを意味します。

ただし、事業を拡大するうえで設備投資を行う場合に一時的にフリーキャッシュフローがマイナスになることもあることもあります。
このような情があれば、将来的にはフリーキャッシュフローがプラスになる可能性もありますので、フリーキャッシュフローがどの程度の期間マイナスなのかを判断し、その原因を探り、対策を講じることが大切です。

(5)キャッシュフローを改善させるためには

まず営業キャッシュフローは、プラスであることが理想的です。
逆に営業キャッシュフローがマイナスで財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、要注意です。これは、本業でのマイナス部分を借入金で賄っているということだからです。

いわゆる黒字倒産のリスクがある会社は、この営業キャッシュフローのマイナスが続くケースが実に多いのです。
たとえば、売上の回収が遅れている場合には、営業キャッシュフローの中の「売上債権の増減額」という項目は大きくマイナスになっていることがあります。これは、売上の代金が回収できていないことを示します。
また、「棚卸資産の増減額」という項目がマイナスになっている場合には、モノが売れず社内に残っていることを意味します。
このような場合には営業キャッシュフローのなかの項目をチェックし、売上代金の回収を計画的に行ったり、在庫を売ってお金に換えたりすることで、フリーキャッシュフローに余裕ができ、資金繰りの悪化を防ぐことができます。

また、キャッシュフローを生み出す運転資本にも注目する必要があります。具体的には、販売した代金の未回収分である売上債権は少なく(つまり回収を早く行う)、製造中の仕掛品などは少なくするなどの一方で、購入した代金の未払い分である仕入債務は、仕入先に負担を掛けない程度で可能な限り遅く支払うことが望ましいといえます。
これらの施策を日々の事業運営のなかで行うことが、キャッシュフローを速めに生み出すもととなります。

日々の事業のなかで、どの程度の期間キャッシュが必要となっているのかを見る指標としてCCC(=Cash Conversion Cycleキャッシュ・コンバージョン・サイクル)があります。

CCC=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

このCCCはできるだけ短い方が望ましいと言えます。なぜなら、売上債権の回収を早くして、棚卸資産の保有期間を短くし、仕入債務の支払いを遅くする、CCCは短くなるからです。

▶ 売上債権回転期間とは|計算方法は?長い理由・短い理由は?

▶ 棚卸資産回転率とは|計算式・業種別平均値を分かりやすく解説!

まとめ

以上、フリーキャッシュフローの意味や計算方法、プラスの意味、マイナスの意味などについてご紹介しました。フリーキャッシュフローは、多ければ多いほど、配当の支払いや新規事業への投資、借入金の返済などを行うことができ、株主と会社にとって、プラスになります。そして、フリーキャッシュフローが少なかったりマイナスだったりすると、こうしたことを実施する余力のない会社ということになります。

自社のフリーキャッシュフローを把握し、問題点がある場合には、早めに対策を行うことで、黒字倒産などの事態を回避することができます。
キャッシュフロー計算書は、中小企業にはキャッシュフロー計算書の作成は義務づけられてはいませんが、税理士に依頼すれば、作成してもらうことができます。
自社のキャッシュフローを把握し問題点に迅速に対応するためにも、税理士にキャッシュフロー計算書の作成や分析を依頼してみてはいかがでしょうか。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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