公開日:2019年04月19日
最終更新日:2022年04月26日
会社の活力の源泉は、キャッシュです。
キャッシュがあれば、会社は継続することができます。
しかし、どんなに利益を上げていても会社にキャッシュがなくなったら、あっという間に「黒字倒産」をしてしまいます。
逆に赤字経営でも、手元に資金があれば会社は倒産しないのです。
したがって、経営者は常に資金繰りを意識して、「キャッシュの流れ」を把握するという意識を持ち続けることが大切です。
資金繰りとは、会社に入ってくるお金と出ていくお金の管理を行い、会社のお金を守り、資金の流れをコントロールしていくことをいいます。
資金は、よく人間の血液にたとえられます。これは、身体全体にまんべんなく血液が循環してはじめて人間は活動することができるのと同じように、企業活動は資金があるからこそ活動することができるからです。
したがって、「資金繰りを管理」し、「問題点があればすぐに改善する」という意識を常に持つということは、会社を継続するために必要であり、経営者にとって最も大切な役目であるということができます。
資金繰りの方法は個々の会社の状況によって異なりますし、資金繰りを良くする方法はさまざまありますが、ここではまず、最低限押さえておきたい7つのポイントについてご紹介します。
手元資金が少なく毎月の資金繰りに苦しんでいる中小企業のほとんどが、資金繰り表を作成していません。なかには、現金出納帳や現金残高、経営者の頭の中にある入出金予測だけで経営を行っているケースもあります。
しかし、これでは常に資金繰りに追われることになり、新商品開発や事業の成長等について考える時間も余裕もなくなってしまいます。
したがって、資金繰りを改善するためには、資金繰りを把握するためにまず資金繰り表を作成することから始めることが大切です。
資金繰り表は、通常経営計画・損益計画があってから、その後に出てくるものです。その計画によって予定の損益を立てていくのが通常の方法ですが、これらの計画の前に過去の実績資金繰り表を作成して、経営の詳細を把握することから始めるのがおすすめです。そのうえで「どうして、この時売上が上がったのか(もしくは下がったのか)といった要因分析を行い、仕入れや経費についても検証をしていきます。
過去の実績に基づく資金繰り表を作成したあとは、事業計画をたて経営の特徴をあぶりだし、中長期の事業計画を立てて資金繰り表と連動させます。
経営者自らが資金繰り表を作成するのが望ましいのはもちろんですが、その時間がない場合には、税理士に資金繰り表の作成を依頼しましょう。
経営者は、決算書のしくみを理解し分析し、さらに経営に生かしていくことが必要です。
しかし、事業計画書や資金繰り表を作成していない経営者のなかには、「決算書が読めない」というケースが多く見られます。
仮に資金繰り表を作成している場合でも、それは単に「資金不足にならないように」という意図から作成しているだけで、損益に影響を及ぼす支出まで把握できていないケースがほとんどです。
このように決算書のしくみを理解しないままでいると、「こんなに利益が出ているのに、なぜ資金繰りが厳しいのか」「多額の設備投資を行ったのに、なぜ利益が黒字になったのか」の理由が分からないまま経営を行なうことになってしまい、いずれ深刻なダメージを与えるリスクがあります。
「決算書の分析」というと、一見難しいように思うかもしれませんが、まずは損益計算書と貸借対照表のしくみと見方を理解しておきましょう。
損益計算書とは、簡単にいえば「ある期間にいくら儲かったか」をあらわす書類で、貸借対照表は、「今いくら持っているか」をあらわす書類です。
損益計算書 損益計算書は、会社の業績を「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益に分けて「段階的に」示されています。 それぞれの利益は「収益(稼いだ金額)―費用(かかった金額)」で計算されます。 損益計算書は、5つの利益が存在するというのがポイントです。最終的な利益だけでなくその計算過程や内訳を示すことで、それぞれの利益に別々の意味を持たせ、より有益な情報となるしくみとなっています。 それぞれの利益が何をあらわしているのか、その利益はどのような計算式で計算されているのかについては、下記の記事でくわしくご紹介していますので、あわせてご覧ください。 |
貸借対照表 貸借対照表は、今いくら持っているかをあらわす書類で、左側に「資産の部」、右側に「負債の部」「純資産の部」が記載されています。 まず注目すべきなのは、右側の「負債の部」「純資産の部」です。 「負債」は借入金などの返す義務があるものであり、「純資産」は返す義務のない財産をあらわしています。したがって、負債の割合が多くなればなるほど、資金繰りが危険であるということができます。 なお、会社の数字を分析し経営に生かすためには、年に1度決算書を見るのではなく、毎月の試算表を作成し前月や前年同月と比較することが必要です。資産や負債をどのように管理していくか、利益に対して経費がどれくらいかかっているのかといった点が分かれば、会社の資金繰りを劇的に改善させることも十分に可能だからです。 事業を継続し発展させていくためには、いかにしてお金を稼いで、いかにしてお金を残すかということが大切です。 下記の記事では、貸借対照表の構造や内訳についてくわしくご紹介していますので、あわせてご覧ください。 |
経営の大原則は、「売上高の最大化&経費の最小化」です。
「売上を最大化」するためには、まず現在行っている事業の見直しを行なうことから始めます。売上高は、売上単価と売上数量によって決まりますから、同業他社と比較して単価が低ければ、単価のアップを検討します。
既存事業の改善による売上高工場が難しい場合には、新規事業を検討します。具体的な事業については、個々の状況によって異なりますが、必要に応じて「遊休不動産があれば不動産賃貸事業を検討する」「フランチャイズ事業に加盟する」といったことも検討していきます。
「経費の最小化」については、可能な限り販売費及び一般管理費の削減を検討します。
販売費 営業職や販売職の給与手当 営業にかかる旅費交通費、通信費 支払運賃 広告宣伝費 販売手数料 など |
一般管理費 事務職などの給与手当 役員報酬 福利厚生費 事務にかかる減価償却費 消耗品費 交際費 など |
どの費用を削減するかについては、上記の販売費及び一般管理費のなかで占める比率の高い経費の削減から検討することが効果的です。
比率の高い経費を削減することができれば、営業利益を確実に増加することができ、資金繰りを改善することができます。
さらに、あわせて売上原価の削減も検討します。製造業の場合には、製造原価にかかる製造経費別に削減を検討し、小売業の場合には、仕入単価や数量の調整を行っていきます。
人は、会社にとって貴重な財産です。
「同業他社より多く給与を与えて、できるかぎり従業員に還元したい」と思う経営者もいますが、高い給与を支払い続けた結果、会社がつぶれてしまったら元も子もありません。
会社が事業を継続するためには、払える限度というものがあるということを知っておきましょう。
上手に人件費をコントロールすることは、上手にお金を回すコツでもありますが、「人件費にどのくらいのお金をかけるべきなのか」は、経営者の頭を悩ませるものです。しかし、これには「粗利の50%」というある程度の目安があります。
粗利にはいろいろな考えがありますが、ここでは簡単に売上高から変動費(売上原価や売上に応じて変動する経費)を差し引いたものと考えましょう。
なお、人件費の削減を検討する際には、労働法上の問題や退職金の問題が関連してくることから、慎重に検討を行う必要があります。
手元資金を改善するためには、入金や支払のサイト(期間)は「入金は早く支払は遅く」を徹底することが大切です。
取引先との関係性や業界の事情があると思いますが、入金のサイトはできるだけ早く、支払のサイトはできるだけ長く設定するようにしましょう。
たとえば、商品の仕入れ代金を支払う前に前金で売上代金をもらっていれば、会社の資金が尽きることはありません。そして、支払のサイトを遅くすることができれば、自分の手元に資金が長い間残ることになります。手元に回ってくる資金の順番を早くするだけで、手元の資金の状況には大きな差が出ます。
支払いを先に行なってしまっていることが原因で、「手元に資金が足りない」という状態になっているケースは多々あります。
請求書がくるとすぐに払ってしまう人がいますが、「この支払に対する入金はいつか」という意識を明確にし、手元に資金が残る状況がなるべく長くなるようにしましょう。
また、あたり前の話ですが、売上代金は確実に回収しましょう。
代金の回収は時間が経過すればするほど難しくなります。したがって、「前金でもらう」「口座振替を利用する」「カード決済を利用する」など工夫して、早めに回収する努力をしましょう。
回収期日に入金がなかった場合には、必ず催促するようにしましょう。催促をしない取引先だと思われてしまうと、支払いを後回しにされてしまうこともあるからです。
未回収の売上代金を確実に回収するためには、売掛金を発生日別にリストアップした表を作成するのがおすすめです。
入金が1日でも遅れたら、電話やメールで催促を行なうようにしましょう。
さらに言えば、代金回収に問題が発生しそうな取引先とは、そもそも取引をしないと決めるのも資金繰りを改善するうえでは大切なことです。
そのためには、取引をする前に「取引先の信用調査」を行うのがおすすめです。
上場している会社であれば、この信用調査は必ず実施されています。なぜなら、信用調査手続きは、上場審査の際に必要だからです。
中小企業だと信用調査は実施されていないケースが多いので、自社で可能な限りで調査を行う必要があります。確かに信用調査は面倒な手続きですが、売上が欲しいあまりに取引を開始してしまうと後で代金が回収できず資金繰りに苦しむ状況を生み出しかねません。
損益計算書や貸借対照表を分析するための重要指標は、こまめにチェックして、その達成を意識して日々行動することが大切です。
事業計画の先には重要指標の目標達成があり、その目標を達成することが資金繰りを改善させるきっかけになります。
たとえば、売上高営業利益率(営業利益 / 売上高 × 100)では、「効率よく稼げているか」を判断することができますし、総資本回転率(売上高 / 総資本)では、「会社の資源を有効活用できているか」を判断することができます。
また、流動比率(流動資産 / 流動負債 × 100)からは「短期的な支払い能力」について判断することができますし、労働生産性(付加価値 / 従業員数 × 100)では、「従業員一人あたりの付加価値」を判断することができます。
下記記事では、代表的な経営指標の計算式と意味、業種別平均値をご紹介していますので、同業他社と比較して数値が悪ければ、早急に原因を究明し対策を講じる必要があります。
適切な節税対策を行うことも、資金繰りを良くするために必要です。税金の支払いが減れば、それだけ資金繰りが改善されるからです。
節税の方法は多々ありますが、突然大きな売上が発生してしまった時や今後利益が出ることが確定した場合などは、決算期を変更したり資本金額を見直したりすることで、一時的に税金の額を減らすことが可能です。
また、赤字の場合には、法人税を返してもらえる「繰戻還付」という制度があります。この制度は中小企業限定の制度で、還してもらえる税金は1年前に払った税金が限度です。
「昨年は黒字で法人税を納めたけれど、今年は赤字で法人税は発生しない」という時に、昨年の黒字と相殺することができます。なお、今年の赤字を繰越欠損金として将来の黒字と相殺することもできます。
節税方法はそれぞれの会社の状況によってさまざまですが、中長期で計画的に行った方が効果は大きいものがほとんどです。また、税金を払いたくないと思うあまりに間違った節税対策を行ってしまうと、経営そのものに悪影響が出ることもあります。
早めに税理士などの専門家に相談してアドバイスを受け、有効な節税対策はもれなく行なうようにしましょう。
これまで資金繰りを良くするための7つのポイントについてご紹介してきましたが、これらのポイントを活用し、資金繰りに強い経営者になるための大前提は、「経理を理解する」ということです。
「会社の経理のことは分からない」「領収書をそのまま税理士に渡している」という経営者もいますが、経理とは「経営管理」の略であり、経理を理解していない経営者が会社をつぶしてしまうことがあります。
「こんなに売上がアップしているのに、会社にお金がない」という状態は、経理を理解し早期に対策を行うことができれば、多くのケースで改善できるものです。
経理を理解し、経営の意思決定に活用することは、資金繰りを良くするために大変重要なことなのです。
「クラウド会計ソフト freee会計」の「自動で経理」という機能を活用すれば、銀行の入出金履歴やクレジットカードの利用明細が自動で反映され、日々の仕訳が自動で処理されるため、忙しい経営者でもすぐに会社の状況を把握することができて、経理の本来の目的である「経営管理」に時間を割くことができます。
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税理士は、経営のよきパートナーになってくれます。
先ほどご紹介した資金繰りの作成だけでなく、決算書や資金繰り表の数字から、どのような投資をいつ行えばいいのか、人件費を削減するべきか増員するべきか、金融機関から融資を受けるべきかなどについてまでアドバイスをしてもらうことができます。
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以上、資金繰りに強い経営者になるための7つのポイントについてご紹介しました。
ここでは、最低限知っておきたいポイントについてご紹介しましたが、資金繰りを改善する方法は他にもたくさんあります。経営のパートナーとなってくれる税理士にアドバイスを受けながら、会社を成長させていきましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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