不動産を売却した時の特例制度と確定申告

公開日:2019年04月05日
最終更新日:2020年01月14日

目次

  1. 不動産を売却した時の確定申告
    • 税務署から申告書が送られてくる
    • 不動産を売却した時の税金
  2. 不動産を売却した時の特例制度
    • 売却した不動産がマイホームなら、3,000万円まで非課税
    • マイホームの買い替えで損失が出た時の特例
    • マイホームの売却で損失が出た時の特例
    • 被相続人の空き家を売った時の特例
    • 国や自治体に売却した時は特例制度がある
    • 税金がかからないこともある
  3. 不動産を売却した時の確定申告
    • 譲渡所得の内訳書2面・3面
    • 確定申告書B第一表・第二表・第三表
  4. まとめ

サラリーマンなどの給与所得者で、いつもなら確定申告をしない人たちでも、不動産を売却した時には確定申告が必要になります。

不動産の売却に関しては、税制が複雑でさまざまな特例制度があります。
不動産を売却して利益が出ても、特例制度の適用を受ければ税金がかからないケースはありますし、売却して損失が出た場合には特別控除が適用可能となり、損失した額をその年の給与所得から控除できて、税金が戻ってくることがあります。

これらの特例制度の適用を受けるためには、確定申告が必要で、申告しないと特例の恩恵は受けられず、払わなくてもいい税金を払ってしまうこともあります。

したがって、不動産を売却した時には、かかる税金の税率や、個々のケースによって利用できる特例制度について、しっかり理解しておくことが大切です。

不動産を売却した時の確定申告

土地や建物などの不動産を売却して利益が出ると、その所得は「譲渡所得」として税金がかかりますので、確定申告をしなければなりません。
また、マイホームを売却して損失が出た場合には、確定申告をすることで、源泉徴収されている所得税が戻ってくることがあります。

なお、不動産を売った利益と家賃収入にかかる税は別なので、注意が必要です。
不動産を売却して利益が出た場合の所得は「譲渡所得」ですが、不動産の賃貸経営をしている場合には「不動産所得」となり、所得の種類や税金のかかり方、確定申告で使う用紙などが異なります。

譲渡所得は分離課税の対象となり、申告書第三表に記載してほかの所得(給与所得など)とは別に税額を計算します。
これに対して、不動産の賃貸経営をしていて得た所得は「不動産所得」で総合課税となり、確定申告で使う用紙は、不動産所得用の申告用紙を使用します。

▶ 「所得税とは?所得10種類の税金のかかり方と計算方法!」を読む

税務署から申告書が送られてくる

不動産を売却すると、税務署から申告書の用紙が送られてきます。
サラリーマンは、原則として確定申告をする必要がありませんが、それは会社が給与計算、年末調整などで、税金の計算と納付を行っているからです。
しかし、サラリーマンで通常確定申告をしない人でも、不動産を売却した時には税務署から申告書の用紙が送られてきますので、必ず期限までに確定申告を行なうようにしましょう。

不動産を売却した時の税金

不動産を売却した時の税金は、その不動産を所有していた期間によって税率が異なります。
不動産の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点で所有している期間が5年を超える時には「長期譲渡所得」、所有している期間が5年以下の時には「短期譲渡所得」となり、所有期間が長いほど、税率が優遇されます。

短期所得(所有期間が5年以下)であれば、税率39%(所得税30%、住民税9%)、長期譲渡所得(所有期間が5年超)であれば、税率20%(所得税15%、住民税5%)です。
ただし、売却した不動産がマイホームであれば、所有期間を問わず、譲渡益が,3000万円までは税金がかかりません。
そして、所有期間が10年を超えた場合には、前述した3,000万円の特別控除が適用され、3,000万円までは税金がかからないうえに、6,000万円までの税率が14%まで軽減されます。

不動産を売却した時の特例制度

前述したとおり、不動産を売却した時にかかる税金は、譲渡した年の1月1日の時点で所有している期間が5年以下か、5年を超えるかで税率が異なります。
また、売却した不動産が自分の住んでいるマイホームであれば、利益が3,000万円まで税金がかからなかったり、損失が出た場合にその損失を給与所得から控除できたりする制度があります。
ここでは、不動産を売却した際のさまざまな特例についてご紹介します。

売却した不動産がマイホームなら、3,000万円まで非課税

不動産を売却して利益が出た場合でも、売却した不動産が自分の住んでいたマイホームの場合には、税金を優遇する制度として「3,000万円の特別控除」があり、譲渡益が,3000万円までは税金は課税されません。

この特例は、所有していた期間が5年を超えるかなどの長短を問わず、適用されます。
さらに、10年を超えて所有していたマイホームを売却した時には、譲渡した所得の6,000万円までの税率が10%まで軽減されます。
所有期間が5年以下なら税率は39%、5年超なら、20%なので、これらと比較すると、かなり大きな軽減となります。

なお、マイホームを買い替えたときは、「特定の居住用財産の買い換え特例」を利用することもできます。
この特例は、売却した利益が非課税となるわけではありませんが、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる制度です。
ただしこの制度は、前述した,3000万円の特別控除とは併用できませんので、どちらが有利になるのか検討する必要があります。税理士に相談するなどして、選択するようにしましょう。

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マイホームの買い替えで損失が出た時の特例

マイホームを買い換えて損失が出た場合には、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(以下、「買い換え特例」)を利用することで、払い過ぎていた税金が戻ってくる可能性があります。
この特例は、マイホーム(旧居宅)を12月31日までに売却し、新たにマイホーム(新居宅)を購入した時に損失が出たら、その年の給与所得などから損失額を控除できるという特例です。

この特例を使うと、損失した額をその年の給与所得から控除することができるので、源泉徴収されている所得税があれば、還付されることができます。そして、その年の所得から控除しきれなかった損失額については、最大3年間繰り越して控除することができます。

なお、この特例を受けるためには、「譲渡の年の1月1日における所有期間が5年超えること」「10年以上の住宅ローンを組むこと」家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること」など、複雑で厳しい要件をクリアする必要があります。
したがって、買い換え特例を利用したいと思った場合にも税理士に相談して、条件をクリアしているか確認することをおすすめします。

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マイホームの売却で損失が出た時の特例

買い換えをしない場合でも、マイホームを売却して損失が出た場合には「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰押控除の特例」(以下、「売却特例」)が利用できます。

この特例は、住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出た時に、住宅ローン残高から売却額を差し引いた金額を限度として、損益通算と繰越控除が可能となる制度です。
この制度を利用するためには、住宅ローンが残っていることが条件となるほか、買い換え特例の時と同じように、さまざまな要件をクリアする必要があります。

なお、この特例は、住宅ローン控除と併用することもできます。
住宅ローン控除とは、10年間にわたって、ローン残高の1%が所得税から税額控除される制度です。
控除額は通常の住宅で、最高40万円ですが、耐久性・耐震性・省エネ性能にすぐれた「認定長期優良住宅」などを新築・購入した場合には、限度額が高くなります。

被相続人の空き家を売った時の特例

2016年(平成28年)の税制改正で「空き家等に係る譲渡所得の特別控除の特例」が新設されました。
この特例は、被相続人(亡くなった人)の一戸建ての空き家を、相続人(相続財産を引き継ぐ人)が1億円以内で売却した場合には、所得金額から3,000万円の差し引いた控除した残額で税額を計算できるという制度です。

この特例を適用すれば、譲渡所得の額は、「譲渡価格-所得費(不明の場合は譲渡価格の5%)-譲渡費用-特別控除3,000万円」で計算できることになりますので、その分税額を軽くすることができます。

国や自治体に売却した時は特例制度がある

国や自治体に不動産を売却した場合にも、税を軽減する特例制度が設けられています。
それぞれのケースに応じて所得金額から次の特別控除を差し引くことができ、その金額の税額を軽減することができます。

(1)収用等の特別控除
収用とは、国や自治体が強制的に不動産を買い取る制度です。
本人の意思に反して不動産を売却するため、5,000万円という高額の特別控除が認められています。

(2)特定土地区画整理事業等の特別控除
国、自治体、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社などが行う市街地整備事業のために、不動産を売却した場合には、2,000万円の特別控除が認められています。

(3)特定宅地造成事業の特別控除
国、自治体からの買い取り、土地収用法等に基づく買い取り、民間の宅地造成事業または住宅建設事業のための買い取り、景観法や都市計画法に基づく買い取りにより、土地を売却した場合は1.500万円の特別控除が認められています。

(4)農業保有の合理化の特別控除
農地保有の合理化事業等のために農地を売却した場合には、800万円の特別控除が認められています。

税金がかからないこともある

不動産を売却した場合には、所得税を納付する必要があり、原則として確定申告をする必要がありますが、例外として税金がかからないケースもあります。

(1)抵当権の実行による競売された場合
抵当権実行で競売されるということは、本人に借入金などの支払い能力がない可能性が高いということです。そのため、明らかに支払い能力のないことが客観的に分かる場合には、確定申告の必要はありません。

(2) 破産と同じ状況にある人が、借金返済のために任意売却した場合
税金は支払い能力に応じて課税されます。そのため、明らかに支払い能力のない人に対してまでは課税されず、確定申告の必要ありません。

(3) 他人の連帯保証人となったため、保証債務(保証人としての債務)を履行するために売却したものの、代わって返済したその借金を債務者から回収できなかった場合
ただし、連帯保証人になる前から本人に支払の能力のない人を予め知っていたりした場合は、課税される可能性があります。

不動産を売却した時の確定申告

これまでご紹介したように、不動産を売って利益が出ると、譲渡所得として税金がかかります。不動産譲渡所得は分離課税の対象なので、第三表に記載しほかの所得とは別に税額を計算する必要があります。
ここでは、不動産の売却で利益が出た場合の申告書の記入方法についてご紹介します。

譲渡所得の内訳書2面・3面

「譲渡所得の内訳書」は、土地や建物の譲渡(売却)による譲渡所得金額の計算用として.使用するものです。

(1)登記事項証明書を見ながら、売却した土地や建物の住所を記入します。
(2)該当するものにチェックを入れ、面積を書き込みます。
(3)利用状況にチェックを入れ、売買契約の契約日と引渡日を記入します。
(4)売買契約書の確認し、売却先を記入します。
(5)譲渡面積(売買価額)を記入します。
(6)代金の受領状況を記入します。
(7)購入した時の売買契約書を確認し、土地・建物の購入先、購入年月日、購入金額を記入します。
(8)建物の減価償却を行います。
(9)土地建物の購入代金から償却費を差し引いて、取得費を記入します。
(10)マイホームを売却するためにかかった経費を記入します。
(11)(5)から(9)と(10)のを差し引き、特別控除3000万円を差し引いた金額を記入します。

確定申告書B第一表・第二表・第三表


(12)第二表「所得から差し引かれる金額」に、所得控除の内容を記入します。
(13)第二表「所得の内訳」に、所得の内訳と源泉徴収税額を記入します。
(14)第一表「収入金額」に、収入金額、所得金額を記入します。
(15)第一表「所得から差し引かれる金額」に、所得から控除される金額を記入します。
(16)第三表「収入金額」に、譲渡所得の内訳書2面(5)から、譲渡収入金額を記入します。
(17)第三表「所得金額」に、(11)で計算した「収入金額-経費-特別控除」の額を記入します。
(18)第三表「総合課税の合計額」と「所得から差し引かれる金額」に、(14)の所得金額と(15)の控除の合計額を記入します。
(19)第三表「税金の計算」の70番の欄に、(14)の所得金額の合計から(15)の控除の合計額を差し引いた金額を記入します。
(20)72番の欄に(17)の金額を記入します。
(21)(19)に対する税額を計算して記入します。
(22)(20)に対する税額を計算して記入します。
(23)(21)と(22)の合計額を記入します。
(24)譲渡所得の内訳書3面から、(11)の当てはまる項目を記入します。

まとめ

  • 土地・建物などの不動産を売却した時には、譲渡所得として税金がかかる。
  • 特例制度の適用を受ければ、税金がかからないケースもある。
  • 特例制度を受けるためには確定申告が必要。申告しなければ恩恵は受けられない。

これまでご紹介してきたように、不動産を売却した場合には、所有期間によって税率が異なったり、さまざまな特例があったりして、税制は非常に複雑です。また、税額を計算する際には、建物の償却率を計算に入れる必要もあります。
会計ソフトを利用すれば、売却代金、譲渡経費、取得費などを入力することで、確定申告書を作成することができます。

ただし、どの特例を受けるのが有利なのか、その特例を受けることができる条件を満たしているかの判断については、税理士に相談するようにしましょう。

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