公開日:2019年11月10日
最終更新日:2022年07月30日
サラリーマンには、必要経費などの控除がありません。そこで、それに代わるものとして「給与所得控除」という控除枠が設けられています。
さらに税法では、この給与所得控除を超えた部分の支出のうち、特定の支出(通勤費、研修費、資格取得費など)については必要経費と認めています。
平成25年に、この必要経費と認められる範囲が拡大され、図書費、衣服費、交際費などが追加されました。
サラリーマンには、原則として経費が認められません。しかし、個人事業主の場合には、収入から必要経費を差し引いた所得について税金を計算します。つまり必要経費が認められる分、所得を減らすことができ税額が軽減されるのです。
収入-必要経費=事業所得 |
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しかし、サラリーマンなどの給与所得には、上記のような必要経費などの控除がないため(特定支出の控除の特例あり ※後述)、それに類するものとして「給与所得控除」という控除枠が設けられています。
給与収入-給与所得控除額=給与所得額 |
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個人事業主が収入から必要経費を差し引いたものを事業所得としているのに似ていることから、給与所得控除額は、サラリーマンの必要経費と呼ばれたりしています。
この給与所得控除額は、下の表のように1年間の収入の違いによって、その金額は変わります。
収入金額 | 給与所得控除額 | |
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令和元年(2019年)まで | 令和2年(2020年)以降 | |
162万5,000円以下 | 年収×40%(65万円に満たない場合は65万円) | 55万円 |
162万5,000円超180万円以下 | 年収×40%-10万円 | |
180万円超360万円以下 | 年収×30%+18万円 | 年収×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 年収×20%+54万円 | 年収×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 年収×10%+120万円 | 年収×10%+110万円 |
850万円超1,000万円以下 | 195万円 | |
1,000万円超 | 220万円 |
「【2020年税制改正】給与所得とは|所得の範囲・かかる税金」を読む
参照:国税庁「給与所得控除」
前述したとおり、サラリーマンの必要経費は原則として認められておらず、それに類するものとして給与所得控除が一律に定められています。
けれども、サラリーマンも個人事業主と同じように、仕事をするうえでは、通勤費や図書費、交際費、スーツ代などの経費がかかっています。そして、これらの経費が給与所得控除額の範囲内でおさまるとは限りません。
そこで、税法ではこの給与所得控除を超えた部分の支出のうち、特定のケースで必要経費として認めています。
○原則
給与の総額-給与所得控除額=給与所得 ○特定支出の控除の特例 給与の総額-(給与所得控除額+特定支出のうち給与所得控除額の2分の1を超える部分)=給与所得 |
以前は、サラリーマンの必要経費は給与所得控除しか認められていませんでした。しかし、この特定支出控除の特例が設けられたことで、サラリーマンの必要経費として認められる範囲が広がったことになります。さらに平成25年からは、特定支出の範囲が拡大され、勤務必要費(図書費・衣服費・交際費)や弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費なども特定支出として認められることになり、控除される範囲が広がりました。
以前は、サラリーマンの必要経費は給与所得控除し特定支出の控除の特例の「特定支出」とは、サラリーマンが支出した通勤費、転居費、研修費などの6つに限定されていて、さらに給与の支払者が証明したものに限ります。
特定支出控除は、特定支出の合計額が給与所得控除額の1/2(最高125万円)を超えている部分に適用され、その超えている分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。
ただし、勤務必要費(図書費・衣服費・交際費)については、その年の支出として認められるのは、合計65万円までです。
なお、特定支出について会社から補助があり、その補助された金額に所得税が課税されていない場合は、その額は特定支出に含めることはできません。
電車やバスなど、通勤のために必要な公共交通機関の料金です。
マイカー通勤の場合にも、燃料費や高速代など通勤に必要な場合には通勤費と認められます。ただし、グリーン車料金などは、特定支出にはあたりません。
また、会社が通勤費を支給している場合には、特定支出に含めることはできません。
転勤に伴う転居のために必要となった運賃や宿泊費、家財の運送料などを個人で負担した場合には、特定支出に含めることができます。
梱包のための材料や運送に伴い必要となった損害保険料なども含めることができます。
ただし、壁の塗り替えや置き換えのために発生した費用は、特定支出にはあたりません。
仕事をするうえで直接必要となる、技術や知識を習得するための研修費用です。
研修に参加するための交通費などを含めることができます。
研修費については会社が負担するケースも多いですが、サラリーマンが個人で研修費を支払う場合には特定支出とすることができます。
①自動動車免許、簿記、英語検定など、仕事に直接必要な資格取得のための費用(2年制の専門学校などの授業料を一括で支払った場合、入学金を除く、その年に対応する部分の費用)。
②法令の規定にもとづきその資格を有する者に限り、特定の業務を営むことができる資格取得のための費用
たとえば、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、医師、歯科医などの資格を取得するための費用です。
※②については、平成25年の改正で範囲が拡大されたものです。
単身赴任者などの勤務地や居所から自宅に帰宅するための旅費についても、特定支出にあたります。
ただし、1カ月に4往復を超えた分の帰宅旅費や、グリーン車、ファーストクラスなどを利用した場合には、特定支出にはあたりません。
勤務必要経費については、平成25年の改正で範囲が拡大され特定支出について認められることになりました。この勤務必要経費は上限が65万円と決められています。
①図書費
仕事に関連する専門書、業界紙の購入費用
②衣服費
制服、事務服、作業着など、仕事場で着用することが必要な衣服の購入費
スーツについても、勤務先で着用が慣行になっているものについては、特定支出として認められます。ただし、仕事先から特定の衣服の着用を認められていない場合の私服については、特定支出にはあたりません。
③交際費
顧客や仕入先に対する接待、贈答費用
職場の同僚との親睦会や、同僚の慶弔のための支出は特定支出にあたりません。
特定支出控除を受けるためには、まず国税庁のホームページから、「令和○○分特定支出(○○費)に関する証明の依頼書」をダウンロードする必要があります。
この依頼書は、特定支出ごとに「特定支出(通勤費)に関する証明書」「特定支出(転居費)に関する証明書」などそれぞれ用紙が用意されています。
そして、この用紙に必要事項を記入して、その用紙の証明書欄に会社の捺印をもらわなければなりません。
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そして、確定申告の際には、「給与所得者の特定支出に関する明細書」や「給与所得の源泉徴収票」、特定支出の領収書やレシートを申告書に添付する必要があります。
![]() 参照:国税庁「給与所得者の特定支出に関する明細書」 |
特定支出の控除を受けるためには、確定申告が必要です。
確定申告の際には、給与所得の源泉徴収票、給与所得者の特定支出に関する明細書、特定し支出に関する証明書、特定支出の領収書が必要です。
記入するうえで、注意すべきポイントは、以下の6つです。
![]() ①「給与」 「給与所得者の特定支出に関する明細書」の、⑫欄の数字を転記します。 ②給与の額 ③税額
④復興特別所得税 ⑤還付される税金 ⑥特例適用条文等 その他 |
以上、特定支出の控除の特例についてご紹介しました。
かつては給与所得控除しか認められていなかった、サラリーマンの必要経費は、特定支出控除の特例が設けられたことで、控除される機会が広がりました。
ただし、特例を受けるためには「令和○○分特定支出(○○費)に関する証明の依頼書」や、「給与所得者の特定支出に関する明細書」を準備しなければならず、さらに確定申告を行う必要があります。
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