家賃収入の仕組み・経費・税金・節税対策

公開日:2023年11月27日
最終更新日:2023年12月29日

この記事のポイント

  • 家賃収入は、賃料がそのまま利益とはならない。
  • 家賃収入の利益を計算する際は、維持費・管理費などの経費を差し引く。
  • 家賃収入の目安を計算する際は、空室リスク・滞納リスクの見積も必要。

 

家賃収入は、賃料がそのまま利益となるわけではありません。修繕費や管理費が発生しますし、家賃下落リスク、空室リスクなどさまざまなリスクが伴います。
ここでは、家賃収入による利益の計算方法やかかる税金・諸費用、利益を増やすための節税対策について、ご紹介します。
 

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家賃収入とは

家賃収入とは、入居者から支払われる賃料です。この家賃収入には、家賃のほかに礼金、更新料、敷金や保証金等のうち賃借人に返還しないでよい金額のほか、共益費収入や水道光熱費収入なども含みます。

家賃収入は、賃料がそのまま利益となるわけではありません。
空室が続くリスクがありますし、入居者が決まっても滞納となるリスクもあります。
また、維持費や管理費や税金、ローン返済分も考慮しなければなりません。
これらを差し引いたものが、家賃収入に関する利益となります。
家賃収入について検討する際には、何にお金がかかり、どうすれば儲けが出るかをシミュレーションすることが大切です。

(1)家賃収入の計算方法

家賃収入は、そのままイコール利益ではありません。
家賃収入の利益は、家賃収入からローン返済額を引いた後、さらに経費を差し引いて計算します。
つまり家賃8万円の部屋で入居者が見つかっても、8万円がそのまま手元に入るわけではなく、ローン返済額や管理費、修繕費などの経費を支払った残りが利益となります。

さらに、不動産経営は空室リスクや未回収リスクがつきものです。したがって、事業計画を検討するうえでは、これらのリスクも考慮したうえで想定利益を算出する必要があります。

・家賃収入を計算する
・空室リスク・滞納リスクを検討する
・維持費、税金などの経費を計算する
・手取りの家賃収入を計算する
・ローン返済額を計算する

(2)空室リスク・滞納リスクを見積る

空室リスクとは、入居者が見つからず空室となり、賃料が入らなくなるリスクです。
滞納リスクとは、入居者が家賃を滞納するリスクです。

これらのリスクをどの程度に想定するかは、エリアや物件の種類によって全く違ってきます。
たとえば、山手線の沿線でしかも駅前にあるマンションやファミリー層をターゲットとしたマンションなら、空室リスクや滞納リスクはそれほど高くないでしょう。
しかし、地方で駅から徒歩20分・築年数も相当経っているマンションであれば、1年以上空室のままということもあり得ます。
また、どんなに立地の良い物件でも、入居者が退去した後には必ず空室期間が発生します。

したがって、まずは最初から空室リスク+滞納リスクの合計が家賃の10%程度の物件を選ぶことを意識することが大切です。

たとえば、月額家賃6万円の区分マンションであれば、年間の家賃収入は「6万円×12カ月=72万円」となります。
空室リスク・滞納リスクを10%とすると、72万円×10%=7万2,000円となります。
以上から、年間家賃収入は64万8,000円と見積もります。

 

不動産経営の豆知識

空室リスクに対する対策として「空室保証」があります。
空室保証とは、賃貸経営においてオーナーが保証会社に毎月一定の保証料を支払うと、万が一空室が増えた時に一定の家賃収入が保証される制度です。
一般的には、保証されるのは満室時の家賃の8~9割までで、全額が保証されるものではありません。

そのほか、サブリース契約というものもあります。まずオーナーが賃貸契約管理のノウハウのある会社に一括して貸付をし、その会社が賃借人に又貸しをします。空室リスクを負ってくれるほか、滞納トラブルにも対処してもらうことができますが、手数料を支払う必要があるため家賃収入の利益が減るというデメリットがあります。

(3)家賃収入の経費(維持費・運営費等)を見積る

家賃収入を得るうえでは、さまざまな経費がかかります。
賃貸管理の代行業者に支払う費用や清掃、点検のための費用、修繕積立金のほか、固定資産税や所得にかかる税金なども経費と考えます。
この経費も、物件の種類によって大きく異なります。
木造の一棟アパートで、オーナーが自ら清掃や修繕を行う場合であれば家賃収入の10%程度に収まることもありますが、家賃の25%程度となる場合もあります。

ここでは、家賃収入の15%と見積もることとして、経費の合計を64万8,000円×15%=9万7,200円と見積ります。以上から、年間家賃収入は64万8,000円-9万7,200円=55万800円と見積ります。

(4)ローン返済額を差し引く

年間の家賃収入から、空室リスク・滞納リスクを加味し、さらに経費を差し引いた額が手取りの額です。
ローンを組んでいる場合には、この額からローン返済額を差し引きます。
ローン返済額が月々20万円であれば、手取りは55万800円-20万円=30万800円となります。

賃貸業を始める際の手続き

賃貸業を始める際の手続きは、個人と法人(会社を設立する)で異なります。
個人事業主として始める場合には、税務署に届出を行うだけですが、会社を設立するためには、定款を作成して資本金を払込んだうえで、設立登記をしなければなりません。

(1)個人で賃貸業を開始する時の手続き

個人で不動産賃貸業を開始する場合には、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出しなければなりません。
このとき、青色申告の承認を受けたい場合には、あわせて「所得税の青色申告承認申請書」も提出します。
また、青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする場合には、「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出も必要です。

▶ 個人事業主として開業するには?必要な届出・起業資金・確定申告

(2)会社設立して賃貸業を開始する時の手続き

会社を設立するためには、まず会社の目的や商号、本店所在地などを記載した「定款」と呼ばれるものを作成しなければなりません。
株式会社の定款は、公証人役場で公証人の認証を受ける必要があり、その手数料がかかります。さらに定款認証後は、設立登記をする必要があります。

①発起人・重要事項を決める
②個人の印鑑証明書を取得する
③会社の代表印をつくる
④定款を作成する
⑤定款の認証を受ける
⑥資本金を払込む
⑦登記を作成する
⑧登記を申請する
⑨登記が完了する
⑩税務署などへの届出を行う

▶ 会社設立の流れ~設立から事業開始まで

 

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家賃収入でかかる税金・諸費用

これまでご紹介したように、家賃収入からはさまざまな経費が差し引かれ、さらに空室リスク・滞納リスクが伴います。
また、不動産取得時や所有中・賃貸時にはさまざまな税金、費用がかかります。

(1)不動産取得時の税金・諸費用

不動産取得時には、不動産取得税、登録免許税、印紙税が課税されます。
そして、不動産のうち建物や建物付属設備等には消費税も課税されます。
諸費用としては、不動産仲介業者への仲介手数料、売主に対して支払う固定資産税の清算金、登記をするための費用などが発生します。

①不動産取得税
土地や家屋を取得(有償・無償問わず)したときに課される地方税です。
都道府県税事務所から送付される納税通知書に従って納付します。

②登録免許税
土地または建物の所有権保存登記や所有権移転登記をする際に、課される国税です。
登録免許税の計算は、その登記の種類や登記する資産によって異なります。

③印紙税
不動産の売買契約書または建築請負契約書を締結する際に、契約書面に貼付し消印することで納める国税です

※①~③について、個人の場合は、業務用の不動産であれば必要経費に算入し、非業務用の不動産であれば取得費に算入します。
法人の場合は、固定資産の取得費に算入しないことも可能です。

④消費税
建物や建物付属設備等に対して課される国税・地方税です。
税込経理方式では、取得価額となります。

⑤仲介手数料
不動産仲介業者に支払う手数料です。

⑥固定資産税清算金
年の途中で不動産を取得した場合には、取得日から年末までの期間の固定資産税相当額を売主に対して売買代金に加算して支払います。

※⑤、⑥は、個人・法人とも取得価額に算入します。

⑦土地家屋調査士報酬・司法書士報酬
土地家屋調査士報酬は、建物表題登記を行う際に土地家屋調査士に依頼する際の報酬です。
司法書士報酬は、不動産の所有権保存登記または所有権移転登記を多なうために司法書士に依頼する際の報酬です。

個人の場合は、業務用の不動産であれば必要経費に算入し、非業務用の不動産であれば取得費に算入します。
法人の場合は、固定資産の取得費に算入しないことも可能です。

(2)ローンを組む時の税金・諸費用

不動産の購入資金についてローンを組む際には、金銭消費貸借契約書に貼付する印紙税や抵当権設定登記のための登録免許税などがかかります。

①登録免許税
抵当権設定登記の際に課される国税です。

②印紙税
金融機関と金銭消費貸借契約書を締結する際に、印紙を貼付し消印することで納める国税です。

③司法書士報酬
抵当権設定登記の手続きを、司法書士に依頼する際の報酬です。

※①~③は、個人の場合は、業務用の不動産であれば必要経費に算入し、非業務用の不動産であれば取得費に算入します。
法人の場合は、固定資産の取得費に算入しないことも可能です。

(3)不動産所有中・賃貸時の税金・諸費用

賃貸不動産を所有している場合にも、その「所有している」ということについて固定資産税がかかります。また、都市計画法による市街化区域内の不動産については都市計画税がかかります。
また、家賃収入については、原則として所得税の確定申告(個人の場合)が必要です。

①固定資産税
毎年1月1日時点の土地、家屋の所有者に対して市町村から課税されます。

②都市計画税
毎年1月1日時点の都市計画法の市街地区域内の土地、建物の所有者に対して市町村から課税されます。

③所得税
個人が家賃収入を得た場合には「不動産所得」となり、賃料収入等から必要経費等を差し引いて計算した所得について確定申告を行ないます。
所得税の税率は、超累進税率となっていて、所得が高くなるほど税率も高くなります。

④住民税・事業税
前年の所得に対して課税されるもので、翌年6月以降に地方公共団体から納税通知書が送付されます。

⑤事業税
不動産賃貸で事業税が課税されるのは、不動産貸付業または駐車場業に該当する場合です。

家賃収入でかかる経費・節税対策

家賃収入では、さまざまな経費がかかります。
この経費をもれなく計上することが、節税のコツです。

(1)必要経費はもれなく計上する

主な必要経費としては、管理費や減価償却費、修繕費、固定資産税、水道光熱費などが挙げられます。
建物などを取得する時の借入金の利子や、不動産にかけた火災保険料なども経費に計上できます。

勘定科目 必要経費に含まれるもの
外注工賃 加工費など
減価償却費 建物や附属設備などの減価償却資産の減価償却費
利子割引料 借入金の利子など
租税公課 固定資産税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など
※法人税、所得税、住民税などは含まない
荷造運賃 宅配便などの梱包にかかった費用
水道光熱費 水道代、電気代、ガス台
旅費交通費 業務上の電車賃、バス代、タクシー代、宿泊代
通信費 電話代、インターネット接続代、切手代など
広告宣伝費 雑誌やwebの広告費用など
接待交際費 取引先に対する飲食代、旅行や観劇などの招待費用、中元や歳暮などの費用
損害保険料 火災保険料、自動車の損害保険料
修繕費 建物や附属設備などの修繕費
資産価値を高めたり使用可能年数を延長したりした場合は、すぐに費用にはできないため、減価償却する(20万円未満は、修繕費に計上できる)
消耗品費 事務用品や10万円未満の備品など
福利厚生費 従業員の福利厚生のために負担する費用(慰安旅行、レクリエーションなど)
新聞図書費 専門誌や業界紙など
雑費 その他の経費
専従者控除 妻や子供などの専従者の給与(個人事業主)
役員報酬 社長として受取る給与(法人)

(2)修繕費と資本的支出

修繕費とは、建物の外壁の塗り替えや障子の張り替えの費用など、資産維持や管理のために支出したものです。
ただし、増改築など資産価値を高めたり使用可能年数を延長したりした場合は、すぐに費用にすることができず「資本的支出」とされ、これについて取得価額として扱い、減価償却して計算しなければなりません。
まず、20万円未満であれば修繕費とできますが、原状回復のためか資産価値を高めるためか微妙なケースであれば、修繕費の金額が60万円未満か、その資産の前年末の取得価額の10%以下であれば、修繕費としてOKです。

▶ 資本的支出とは?修繕費との違い&処理仕訳

(3)赤字の時は損益通算と繰越控除

家賃収入で赤字となった場合(収入金額から必要経費を差し引いた所得が赤字となった場合)には、個人事業主は他の所得と損益通算できます。また、赤字分を翌年度以降に繰越せる制度があります。
個人の場合、繰越控除は3年間持ち越せます。会社の場合は繰越控除できる期間が10年間となります。

(4)「事業規模」の場合は有利になる

個人事業主の場合、賃貸業を「事業規模」で行う人のみに適用される有利な取扱いがあり、事業規模の場合には55万円または65万円の青色申告特別控除が適用され、妻や子供の専従者給与を経費にできます。
「事業規模」に該当するかどうかの基準は、貸間・アパートの場合には「貸すことができる独立した部屋数が10以上であること」独立家屋の場合は「5棟以上であること」です。

(5)会社設立でさらにおトク

賃貸業を個人ではなく会社を設立することの最大のメリットは、節税です。
個人の場合には、収入金額から必要経費を差し引いた残額が不動産所得となり、これに対して所得税がかかります。
しかし会社を設立した場合には、法人の所得から社長に役員報酬を支給することになります。社長として受け取る役員報酬からは給与所得控除額が差し引かれるため、個人の不動産所得の場合より、節税することができます。

~収入金額2,000万円で必要経費が800万の場合~

個人の場合
1200万円の不動産所得となり、これに所得税がかかる。

会社の場合
1200万円の全額を社長に役員報酬として支給すると、会社の所得はゼロとなり、法人税はかからない。
さらに社長として受取る役員報酬を計算する際には、給与所得控除額が220万円差し引かれて所得が980万円となり、これに所得税がかかる。

ただし、会社を設立するためには、費用がかかります。
株式会社であれば、定款の認証を受けるための手数料がかかりますし、設立登記のための登録免許税もかかります。
個人と法人のどちらにすべきか判断に迷う場合には、税理士に相談してシミュレーションしてもらうことをおすすめします。

まとめ

家賃収入によって生計を立てるためには、競合の激化・空室率の増加などに対抗するだけの経営力が必要です。
何にお金がかかり、どうすれば儲けが出るかを考え、くれぐれも赤字にならないよう税理士等に相談して確実に儲かるための収益計画をきちんと立てること、さらに節税対策などが必要となります。

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・資本的支出について
「20数年前から保有している建物の外壁が壊れてきたため修繕を考えています
ここで資本的支出になるか修繕費になるかですが基本的に修理目的であれば修繕費でいいと思うのですが
今回の場合、20年前と同じ素材ではなくどうしても現代の技術の進歩から以前よりも機能的に向上した外壁に交換ということになります
・報酬と不動産所得がある場合
「デザイン業の報酬と不動産所得(賃料)があります。合算しても1千万円以下ですが、インボイスの登録をしないといけないですか?
・個人不動産所得 青色申告について
「不動産所得の青色申告について教えてください。
青色申告65万円控除で毎年申告をしていたのですが、知り合いから事業税を支払ってない人は65万円控除はできないといわれました。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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