公開日:2018年11月01日
最終更新日:2022年03月16日
税金に関する知識について、税の専門家でない経営者が身につけることは困難です。会社が払う税金には多くの種類があり、節税対策にもさまざまな方法があります。
この記事では、基本的な節税対策、税理士に相談するメリットなどについてご紹介します。
節税対策というと、納税を先送りするイメージを持つ人がいますが、節税対策にはさまざまなものがあります。
適切な節税対策を行うことで、税負担を減らすことができるほか、従業員のモチベーションアップや生産性の向上を実現させることもできます。
事業を行ううえでは、さまざまなことが起こります。
たとえば新型コロナウイルス感染症は、多くの会社に大きな打撃を与えています。会社の利益に対して課税される法人税は、利益が出た事業年度には納税義務が生じますが、損失が出た事業年度には納税義務はありません。
会社は毎年儲かるとは限らないわけですから、納税をしたりしなかったりを繰り返すことになります。
つまり利益がでた時には、適切な節税対策を行い翌期以降に利益を繰り延べるなどして、赤字に備えるということは、事業を継続していくうえで非常に重要なことなのです。
会社が支払う税金は数多くあります。
会社が支払う税金には、利益に対して課税されるもののほか、資産に課税されるものや従業員が負担する税金を代わりに納めるものもあります。非常に多くの種類がありますが、漏れのないように納税しましょう。
また、業種によっては下記で紹介する税金以外の税金が必要になることがあります。
詳細については、税理士に必ず確認するようにしましょう。
税金の種類 | 内容 |
---|---|
法人税 | 法人の所得に対して課税される税金で、法人の所得税のようなもの。中小企業の税負担については軽減措置がある。 |
法人住民税 | 個人の住民税と同様に法人も住民税を納めなければならない。平成26年の消費税増税時に地方法人税が創設されている。 |
法人事業税 | 事業を行ううえで利用する行政サービスの費用分担という趣旨の税金。期末の資本金1億円を基準に、課税方法が変わる。 |
消費税 | 課税売上高が1000万円以下は免税事業者となる。 |
印紙税 | 契約書や領収書など一定の文書を作成する場合に課税される。 |
登録免許税 | いろいろな権利の登記や資格の登録などの際にかかる税金。 |
固定資産税 | 固定資産税を保有していることに課される税金 |
上手に工夫すれば、税負担はかなり抑えることができます。
節税の基本は、何と言っても「適用できるものは、フル活用する」ということ。
中小企業に対しては、さまざまな税制上の優遇が設けられています。
たとえば、交際費等の額は、原則としてその全額が損金不算入とされていますが、中小企業の場合には800万円まで税務上の経費に計上することができますし、30万円未満の資産については、全額を経費に計上することができます。一定の要件を満たす設備投資について即時償却あるいは税額控除が認められるほか、賃上げをした場合に税額控除が受けられる特例もあります。
その他にも、さまざまな税制をフルに活用することで、かなりの税負担を軽くすることができます。
節税の大前提ともいえるのが、青色申告です。
青色申告では、会計帳簿の記帳と保存が義務づけられる代わりに、欠損金の繰越控除など税制上の優遇を受けることができます。青色申告の申請自体は簡単にできるので、必ず事前に手続きをして青色申告の承認を受けておきましょう。
モノやサービスを提供している会社において売上を計上する場合には、税務上、いくつかの計上基準が認められています。
このとき、合理的な計上基準を採用することで節税対策となることがあります。
法人税法では、出荷基準、検収基準などがありますが、節税対策のためにはなるべく売上高を翌期に延ばして当該事業年度の所得を縮小する方がよいということになります。
自社にとって適切な基準を採用することは非常に重要ですが、いったん採用した基準は毎期継続して適用する必要がありますので、事前に税理士等に確認してから選定することをおすすめします。
1年以上にわたる工事の収益計上時期については、一定の要件を満たす長期大規模工事を除いては、完成時となっています。これを工事完成基準といいます。一方、一定の要件を満たしている場合には工事の振興割合に応じて収益計上する「工事進行基準」が認められます。
中小企業の場合には、工事完成基準を採用すると工事の完成した事業年度に売上高が集中してしまいますので、工事進行基準を採用する方が望ましいでしょう。
期末の棚卸資産については、仕入価格で評価することができるほか、期末の時価が仕入価格より低くなった場合には時価で評価することもできます。これを低価法といいます。低価法を選択した場合には、原則法より不利になることはありません(同じ結果になることはあります)ので、適用要件を満たせば評価損を計上して当期の利益を圧縮させることができます。
ただし、棚卸資産の評価方法は毎期継続して適用しなければなりません。
節税という点では、不良在庫の評価損計上や廃棄処分という方法も考えられます。どちらも経費になるので、税金を抑えることができます。
役員給与の支給は、節税対策の代表的な方法です。ただし、利益調整の手法にされないように、税務上は経費にするための要件が定められています。経費にできる役員給与は、毎月の給与にあたる部分と、事前に税務署に届け出た賞与に限られます(事前確定届出給与)。
ただし、使用人兼務役員に対する賞与は、条件を満たしていれば使用人に支給する部分を損金算入することができます。したがって、取締役はできるだけ使用人兼務役員にした方が、税務上得だといえます。
出張が多い会社は、出張日当を支給することで節税することができます。出張日当を支給すれば、その金額を損金算入することができるうえ、国内の出張日当は消費税の課税対象ともなりますので、消費税の節税にもなります。
出張日当を支給するためには、社内で「旅費規程」を作成する必要があります。この旅費規程のなかで役員や従業員の出張に際して日当を支給する旨の規定を設け、適正金額の範囲内で支給することが条件となります。
中古の減価償却資産は、新品より短い耐用年数で償却することができます。
減価償却とは、時間の経過とか使用によって価値が減少するものについて、経費として引くことができるという制度です。減価償却費は、お金の支出がない費用項目であり、節税対策として有効です。
原則として、購入価格が10万円を超えて1年以上使用する資産は減価償却の対象になります。取得したときは固定資産として計上し、一定の期間で減価償却費として費用計上します。中小企業では購入価格が30万円未満であれば一括して費用計上できる特例があります。
中古資産を購入した場合、購入金額によっては、新品で購入した場合に相当する償却費の計上が可能となる場合もあります。
近年は、新品同様の中古車も市場に多く出回っており、新品の半額近い金額で購入できる場合もありますので、減価償却資産を購入する場合には中古資産の購入を検討しましょう。
なお、減価償却の方法には、毎期一定の金額で費用化する定額法と毎期一定の割合で費用化する定率法があります。どちらを選択するかは会社で決めることができますが、毎期継続して適用する必要があります。
減価償却をする年数は資産の種類ごとに細かく定められているので、税理士に確認するようにしましょう。
従業員に対する支払いで節税することもできます。利益が多く見込まれる場合には、決算賞与の支給や社員旅行などを実施します。利益を圧縮できるだけでなく、従業員のモチベーションの向上も期待できます。
ただし、このような節税対策を行う際には、手元の現金が減少するという点に注意しなければなりません。また、一度決算賞与の支給や社員旅行を実施すると、それが従業員にとって当たり前になってしまい、逆効果になってしまうこともあります。明確な実施の目安などについて、経営者と従業員で取り決めておくことが必要です。
顧客を紹介してもらった人に対し、お礼として紹介料を支払うことがあります。この支出は原則として交際費になりますが、以下の一定の要件を満たしている場合には交際費ではなく支払手数料として損金算入することができます。
①その金品の交付が、あらかじめ締結された契約に基づくものであること ②提供を受ける役務の内容が、当該契約において具体的に明らかにされていて、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること ③その交付した金品の価額が、その提供を受けた役務の内容に照らして相当と認められること |
消費税は、基準期間における課税売上高(原則として前々事業年度における課税売上高)が1000万円以下の場合に、納税義務が免除されます。
したがって設立1期目は基準期間がないので、消費税の納税義務は生じません。しかし、設立の日における資本金の額または出資の金額が1000万円以上である新設法人は、消費税の課税義務が生じます。
したがって、設立時の資本金は1000万円未満に設定するようにしましょう。
以上、会社の節税対策についてご紹介しました。「まだ会社の規模が小さいから、節税対策するほどではない」と税理士に節税対策について相談する必要性を感じていない人もいますが、ここでご紹介した以外にも活用できる節税対策はまだまだあります。
しかし、有効かつ適正な節税対策は、正確な税知識がないと難しいケースがほとんどです。
また、中小企業だからこそ、経営のパートナーとなる税理士を見つけ、しっかりとした会計管理を行うことが、事業を発展する基盤ともなります。
会計を自社で行っている会社でも、節税対策や税務調査の対応は税理士に相談することをおすすめします。
節税対策のアドバイスが受けることができる 会社の節税対策に関するノウハウは、ネットや書籍で数多く出回っていますが、その方法が自社に有効とは限りません。また、中小企業に関する優遇税制は種類が多く、せっかく条件を満たしていても、それを知らないばかりに上手に活用できていないケースも多々あります。信頼できる税理士に相談すれば、適切な節税対策のアドバイスが得られるでしょう。 税法改正にタイムリーに対応できる 税務調査に対応してもらえる 税務調査が行われると、多くの場合で申告の誤りが指摘され、税金を追徴されることになります。経営者や担当者だけで応対すると、「この領収書は、家族との食事ですよね?会議費にはなりません」など、調査官からの質問や指摘にきちんと答えることができず、申告内容の誤りを認めざるを得ない状況になることもあります。 税理士が税務調査に対応することで、調査官からの質問に的確に対応することができます。不必要な追徴課税を免れるほか、調査そのものをスムーズに終わらせる効果も期待できます。 |
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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