不動産投資の税金とは?買う・貸す・売る時の税金

公開日:2023年12月29日
最終更新日:2024年03月03日

この記事のポイント

  • 不動産投資においては、さまざまな場面で税金が発生する。
  • 不動産を取得したとき、保有しているとき、売却したとき、それぞれに税金が発生する。
  • 賃貸経営で家賃収入を得れば、その収入にも税金がかかる。

 

不動産投資というと、まずは利回りやその物件の善し悪しや価格の妥当性ばかりに目が向きがちですが、税金に関する知識も欠かせません。
不動産投資では、購入するとき、家賃収入を得るとき、所有しているときなど、これでもかというくらい多くの場面で税金がかかってきます。そして、それが思わぬ負担となり、資金繰りに影響を与えることもあります。
ここでは、不動産投資を行ううえでぜひ知っておきたい税金の基礎知識をご紹介します。

 

不動産賃貸料とインボイスの豆知識

不動産賃貸では、店舗や事務所、駐車場などの賃料には消費税がかかります。
居住用の建物の賃料には、消費税はかかりません。また、土地を貸す場合で土地が更地の場合は、消費税は非課税です。
店舗や事務所、駐車場などの不動産の貸主がインボイス登録をしないと、借主は仕入税額控除ができなくなります。しかし、借主全員がその影響を受けるわけではなく、仕入税額控除ができないことによって借主の消費税の負担が増えてしまうのは借主が消費税の課税事業者であり、原則課税となっている場合です。
したがって、借主が免税事業者である場合は、消費税の納税義務はないのでインボイスの影響はありません。また、借主が課税事業者であっても簡易課税制度を選択している場合には、インボイスの影響はありません。
なお、不動産オーナーの代わりに、不動産管理会社がテナント借主への請求書発行などを請け負っているケースはよくありますが、この場合管理会社がインボイス登録していても不動産オーナーが免税事業者だと、テナント借主が課税事業者等であると、仕入税額控除ができなくなります。管理会社が代理発行する場合にも、管理会社はあくまでも代理人であり本人以上の権限を持つことができないため、オーナー自身のインボイス登録が必要となります。
不動産オーナーで、自身がインボイスの登録をするべきか否かは借主の状況によっても異なりますので、早めに税理士に相談することをおすすめします。

不動産を買う時の税金

不動産取得時には、不動産取得税、印紙税、登録免許税がかかり、ローンを組むときには、印紙税がかかります。
ローンを組むときには、税金のほかにも保証料、事務手数料、抵当権設定登記費用など、さまざまな費用がかかります。

(1)不動産を買う時の税金

不動産取得時には、不動産取得税、印紙税、登録免許税などがかかります。

不動産取得税
不動産取得税とは、不動産(土地や建物)を買ったときや建物を建てたときに、その土地や建物を取得した人に対してかかる税金で、不動産を取得したとき一度だけ納める税金です。
不動産取得税が課税される場合に基準となる不動産の価格は、購入価格ではなく固定資産台帳に登録されている固定資産税評価額が基準となり、税率は原則として4%です。
居住のために取得したものであるなど一定の要件を満たす場合には、特例が適用されます。
また、相続による取得については、原則として非課税です。

印紙税
印紙税とは「文書に課される税金」で、契約書や領収書などの課税文書を作成した人が納めなければならない税金です。
不動産の売買契約書、建築請負契約書などは、課税文書に該当するので、原則として契約書を作成した売主、買主が自らの契約書に印紙を貼って消印することが必要です。印紙税額は、契約書などの記載金額や領収金額によって決まっています。
不動産の譲渡に関する契約書については、印紙税の軽減措置が講じられ、通常の契約書などより低い税率に引き下げられています。

参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

登録免許税
登録免許税とは、不動産、船舶、会社、人の資格などについて、公に証明するために必要となる登記、登録、免許、許可、認可、指定および技術証明を行うときに課される税金です。
不動産を購入して登記をする場合には、この登録免許税が課されます。

たとえば、新築の建物を取得した場合に、建物の最初の所有者を確認するための「所有権保存登記」を行いますが、この所有権保存登記をする場合には、登録免許税がかかります。
また、土地や中古の建物など、他人が所有していた不動産の所有者が変わる場合には「所有権移転登記」を行いますが、このときにも登録免許税がかかります。
さらに、融資を受けて抵当権を設定する場合にも、登録免許税がかかります(※後述)。

消費税
消費税の対象となるのは、「国内」において「事業者」が「事業」として対価を得る取引です。したがって、不動産の取引においては、建物の譲渡は原則として消費税の課税対象となります。土地の譲渡については消費税は非課税となっているので、土地付きの戸建てやマンションなどの消費税は、建物部分のみの消費税です。

したがって、法人が建物を譲渡した場合には「事業」ですから、消費税の課税対象となります。また、個人事業主が「事業用」として建物を譲渡した場合にも、消費税の対象となります。
ただし、個人が居住用の建物等を譲渡した場合には、「事業」に該当しないので、消費税の課税対象とはなりません。

なお、不動産を購入する際には、仲介業者に対する仲介手数料や登記をする際の司法書士の報酬などの諸経費がかかりますが、これらは消費税の課税対象です。
一方、登録免許税や火災保険の保険料は、消費税の課税対象ではありません。

(2)ローンを組む場合の税金

不動産を購入するうえで、住宅ローンを組む時には、金銭消費貸借契約書に印紙税がかかります。

印紙税
不動産を購入するうえで融資を受ける際には、通常は住宅ローンを組みます。住宅ローンを組むうえで、契約書(金銭消費貸借契約書)を締結する際には、印紙税がかかります。

登録免許税
なお、不動産を購入するうえで融資を受ける際には、不動産を担保に提供するために抵当権の設定登記を行いますが、このときにも登録免許税が課されます。抵当権設定登記の申請の際に納付する登録免許税は、原則として債権額または極度額の0.4%です。
一定の減額要件を満たす場合には、0.1%となります。

なお、住宅ローンを組む際には、保証料(保証会社などから保証を受ける場合)や団体信用生命保険料、火災保険料がかかりますが、これらは消費税の課税対象ではありません。

不動産を持っている時(貸す時)の税金

不動産を購入したあとにかかる税金には、固定資産税、都市計画税があります。これは、家を手放すまで毎年かかる税金です。

(1)不動産を持っているだけでかかる税金

不動産を所有している場合には、毎年固定資産税、都市計画税がかかりますので、不動産投資においては、これらの税金や特例を把握したうえで、事業計画を策定することが必要です。

固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日現在に、土地、家屋などの不動産、事業用の償却資産を所有している人が、その固定資産の評価額をもとに計算される税額を、固定資産が所在する市町村に納める税金です。
そのため、年の途中で不動産を売却したとしても、売主は1月1日時点では所有者であることから、その年1年分の固定資産税を納税します。
そうなると買主はその年分の固定資産税を全く納税しなくてよいことになってしまうので、一般的には、所有日数を按分して清算します。

固定資産税額は、「課税標準額×1.4%」で計算します。課税標準額は、原則として固定資産税評価額です。税率の1.4%は標準税率であり、各市町村が条例によって異なる税率を定めることができます。
固定資産税にも特例があり、税額が軽減されることがあります。

都市計画税
都市計画税とは、都市の整備に充てるための財源として徴収される地方税です。都市計画税の課税対象となるのは、毎年1月1日現在で都市計画法に基づく市街地化区域内の土地や家屋の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている人です
都市計画税の税率は、0.3%を上限として各市区町村で異なる税率を定めることができます。また、この都市計画税についても特例があり、税額が軽減されることがあります。

(2)不動産を貸した時の税金

個人が不動産を貸して家賃収入を得ると、所得税などがかかります。
所得とは、収入から必要経費を差し引いた額で、所得税は収入ではなく所得に対して課税されます。
土地、建物などの不動産を貸し付けて得た地代、家賃、権利金、礼金などの所得を不動産所得といいます(敷金は借主に返還されるものなので、含まれません)。
一定以上の水準の帳簿を作成し、その帳簿に基づいて確定申告をする場合には、有利な取扱いが受けられる「青色申告」を選択できます。
青色申告者の場合は、収入から必要経費を差し引いた残額から、さらに「青色申告特別控除額」を差し引いた金額が不動産所得となりますので、大きな節税効果があります。
 

不動産投資の豆知識

ある程度所得が増えてきたら、会社を設立する方が、節税効果が高くなります。会社を設立した場合にも、青色申告を利用することができます。会社を設立する場合も、青色申告を選択した方が、節税効果は高くなります。

~収入金額2,000万円で必要経費が800万の場合~

個人の場合
1,200万円の不動産所得となり、これに所得税がかかる。

会社の場合
1200万円の全額を社長に役員報酬として支給すると、会社の所得はゼロとなり、法人税はかからない。
さらに社長として受取る役員報酬を計算する際には、給与所得控除額が220万円差し引かれて所得が980万円となり、これに所得税がかかる。

不動産を売る時の税金

不動産を売却する場合にも、その売却益に税金がかかります。
ここでは、法人が売却する場合と個人が売却する場合に分けてご紹介します。

(1)法人が売却する場合の税務

法人として所有する不動産を売却したときには、譲渡収入からその不動産の帳簿価額や譲渡費用を差し引いた残額が、その法人の益金または損金となります。
売却による損益は、その法人の他の所得と合算します。
収益の計上時期は、原則として引渡しがあった日とされていますが、引渡し日がいつか明らかでない場合には、①代金の相当部分(おおむね50%)を収受するに至った日、②所有権移転登記の申請をした日のいずれか早い方に引渡しがあったものとされます。

なお、法人が所有する不動産を、法人のオーナーや親族に市場価額よりも低い価額で譲渡することがありますが、この場合には市場価額と譲渡価額の差額が寄附金、交際費、役員給与などの損金算入に制限のある取り扱いがされる可能性がありますので、注意が必要です。
なお、法人が不動産を譲渡する場合の特例として、圧縮記帳が可能になるもの、特別控除ができるものなどがあります。

(2)個人が売却する場合の税務

個人が不動産を売却した場合には、譲渡所得として所得税がかかります。
法人の場合とは異なり、給与所得や事業所得などの他の所得とは合算せず、譲渡所得だけで譲渡所得特有の所得税率が課されます。

不動産の譲渡所得の所得税率は、「所有期間」によって以下のように異なります。

譲渡所得の区分 所有期間 税率
短期譲渡所得 その年の1月1日現在で
保有期間 5年以下
所得税:
課税短期譲渡所得金額×30%
住民税:
課税短期譲渡所得金額×9%
長期譲渡所得 その年の1月1日現在で
保有期間 5年超
所得税:
課税長期譲渡所得金額×15%
住民税:
課税長期譲渡所得金額×5%

まとめ

不動産投資においては、さまざまな局面で税金が発生します。
不動産を取得しているとき、保有しているとき、売却するときにも税金が発生しますし、不動産を貸して家賃収入を得ると、その収入にも税金がかかります。

不動産投資において十分な資金計画を行うためには、税金がいつ、いくら発生するのか、そして節税対策として何ができるかを知っておく必要があります。
不明点は早めに税理士に相談し、資金繰りにどの程度の影響があるかシミュレーションをしておくことをおすすめします。

不動産の税金について相談

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、不動産所得の確定申告や不動産投資の節税対策や税務申告などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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