公開日:2023年05月18日
最終更新日:2023年05月18日
山林所得とは、山林を伐採して譲渡(売却)、または立木のまま譲渡することで生じる所得です。所得の種類は10種類ありますが、山林所得はそのうちの1つです。
ただし、山林を取得してから5年内の伐採または譲渡は、山林所得ではなく事業所得または雑所得となります。
所得税法では、その収入を得る方法によって所得を10種類に分け、それぞれの所得ごとに所得金額を計算するようになっており、山林所得は、この10種類の所得のうちの1つです。
山林所得とは、取得後5年を超えた後に山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡したりすることで生じる所得です。
土地付きで山林を譲渡した場合には、土地部分の所得は「譲渡所得」となり、山林の譲渡から生じた所得は「山林所得」というように、2つの所得が生じることになります。
また、製材業者が山林を育成している場合には、①植林から伐採まで→山林所得、②製材から販売まで→事業所得となります。
山林所得とならない譲渡の例 | 所得の種類 |
保有期間が5年以内の山林(立木)の譲渡 (事業的規模ではない) |
雑所得 |
保有期間が5年以内で山林の売買を業とする者の譲渡 (事業的規模) |
事業所得 |
山林を譲渡した時の「土地部分」の譲渡 | 分離課税の土地等の譲渡所得 |
山林を伐採し、製材して譲渡 | 伐採までの所得→山林所得 製材して販売までの所得→事業所得 |
立木の枝の譲渡 | 原則として、総合課税の譲渡所得 ただし、継続的に行われる場合には雑所得または事業所得 |
果樹園に栽培されている果樹 | 山林ではないので総合課税の譲渡所得 |
山林所得は、以下の計算式で計算します。
山林所得の金額 = 総収入金額 - 必要経費 - 山林所得の特別控除額(最高50万円) |
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山林所得の総収入金額には、山林の売買代金の他、間伐などによる付随収入、山林の損害によって取得した保険金や損害賠償金、自家消費などの収入も含まれます。
また、山林を伐採して自宅の建築資材に使用した場合には、その時の山林の価額も含まれます。
山林所得の収入の時期は、原則として引渡しのあった日ですが、契約の効力発生日を選択することもできます。
山林所得の必要経費として認められる支出は、植林費、取得費、育成費、管理費および山林の譲渡のための伐採費、運搬費、測量費、仲介手数料などです。
植林・取得費 | 山林の取得費用 | ・苗木の購入代金、運搬費、購入手数料、人件費等 ・山林の購入代金、仲介手数料等 |
育成・管理費 | 山林の育成・管理費用 | ・肥料代、防虫費、下刈り、枝打ち、除草などの人件費 ・固定資産税、組合費、火災保険料、機械等の減価償却費等 |
譲渡費用 | 伐採、譲渡費用 | ・山林の伐採に要した人件費 ・伐採した山林の運搬費、測量費、仲介手数料等 |
なお、15年以前から引き続き所有していた山林を譲渡した場合には、特例として、以下の計算式で計算した金額を必要経費として申告することも認められています(概算経費控除)。この特例を適用する時には、確定申告書にその旨の記載をすることが必要です。
必要経費=(収入金額-譲渡経費※①)×50%+譲渡経費※①
※①伐採費、運搬費、譲渡費用 |
ちなみにこの山林所得の概算経費控除は、青色申告をしているかどうかは関係ありません。
山林を伐採した年の15年前の年の12月31日以前から引き続き山林を伐採譲渡した場合には、納税者が選択することで概算経費率を適用して計算することができます。
山林所得には、総収入金額から必要経費を差し引いた残額が、50万円未満の場合にはその残額、50万円以上の場合には、50万円の特別控除額が認められます。
また、青色申告者には、青色申告特別控除が認められています。
ただし、55万円または65万円の青色申告特別控除は、不動産所得、事業所得に限られているため、事業所得や不動産所得がなく、山林所得のみの場合には、青色申告特別控除は最高10万円です。
山林所得の金額 = 総収入金額 - 必要経費 - 山林所得の特別控除額(最高50万円)-青色申告特別控除額(10万円) |
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森林法の認定を受けた一定の森林経営計画に基づいて、山林を伐採または譲渡した場合には、令和6年12月31日までの特例として、その山林の収入から必要経費の他に、下記の①と②のいずれか低い方の金額を特別に控除することができます。
①(この特別控除の対象となる山林の収入金額※A-譲渡経費※B)×20% ※Aの金額が2,000万円を超える場合には、その超える部分の金額については10% ※B譲渡経費:伐採日、運搬費、譲渡費用 ②(A-B)×50%-{Aに対応する部分の経費-(B+Aに対応する部分の山林災害損失及び災害関連費用)}※ |
森林計画特別控除の特例は、令和4年度末までの特例でしたが、令和4年度改正で、令和6年12月31日まで適用期限が延長されました。適用を受けるためには、一定の要件を満たしたうえで手続きが必要となりますので、早めに税理士に相談することをおすすめします。
山林所得の赤字の金額は、他の事業所得や総合課税の譲渡所得などの黒字部分と損益通算をすることができます。
損益通算とは、所得を総合する時に各所得のうち損失(いわゆる赤字)が生じている場合には、この赤字分を他の黒字の所得から一定の順序で差し引くことができる制度です。
損益通算できる損失は、山林所得の他、不動産所得、事業所得、譲渡所得の金額の計算上生じた損失です。
山林所得の税額は、「山林所得は、長い年月にわたる山林育成の結果による所得である」という性質を考慮して、税負担を軽くするために他の所得とは分離して計算します(この計算方法を「5分5乗方式」といいます)。
(課税山林所得金額 × 1/5 × 税率) × 5 |
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山林所得の税額計算については、以下の速算表が用意されていますので、参考にしてください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 以上 9,750,000円 未満 | 5% | 0円 |
9,750,000円 以上 16,500,000円 未満 | 10% | 487,500円 |
16,500,000円 以上 34,750,000円 未満 | 20% | 2,137,500円 |
34,750,000円 以上 45,000,000円 未満 | 23% | 3,180,000円 |
45,000,000円 以上 90,000,000円 未満 | 33% | 7,680,000円 |
90,000,000円 以上 200,000,000円 未満 | 40% | 13,980,000円 |
200,000,000円 以上 | 45% | 23,980,000円 |
山林所得について確定申告をする際には、「山林所得収支内訳書(計算明細書)」の作成が必要です。山林所得収支内訳書を作成したら、確定申告書の第一表、第二表および第三表(分離課税用)を作成します。
記載事例および確定申告書等については、国税庁のホームページでダウンロードすることができます。
山林所得とは、山林を伐採して譲渡、または立木のまま譲渡することで生じる所得です。ただし、山林を取得してから5年以内の伐採または譲渡は、事業所得または雑所得となりますので、注意が必要です。
山林所得は、総収入金額から必要経費と特別控除額を差し引いて計算します。税額は、他の所得と比較して優遇されていますので、その点についても注意してください。
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