公開日:2019年12月23日
最終更新日:2022年07月14日
老後の暮らしを支える年金にも、税金がかかります。
公的年金については、年間400万円以下であり、かつ年金以外の所得が年20万円以下の場合には、確定申告をしないで済みますが、確定申告することによって、所得税の一部が戻ってくるケースもあります。
また、扶養親族等申告書を提出しなかった場合には、各種控除が適用されず所得税が多く源泉徴収されてしまう場合があります。
「リタイアした後は、年金で悠々自適に生活しよう」と考えていた方の中には、その年金にも税金がかかると聞いて驚かれる方も多いようです。
国民年金や厚生年金などの公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつこれらの公的年金以外の他の所得が20万円以下であるときは、原則として、確定申告書を提出する必要はありません。
年金は、国民年金や厚生年金などの公的年金と、生命保険会社などから支払われる公的年金等以外に大別されます。
①公的年金等 国民年金や厚生年金、企業年金など、国や企業が関わっている年金 ②公的年金等以外 |
いずれも、「雑所得」に該当しますが、所得の計算方法が異なりますので、まずは自分の年金が、①公的年金等と②公的年金等以外のどちらに該当するのかを、確認しましょう。
また、公的年金については、必要経費のような「公的年金等控除額」がという大幅な控除の制度が設けられています。そして、年金額からこの公的年金等控除額を差し引いた額が所得となります。
①公的年金等
公的年金等については、65歳未満と65歳以上で、それぞれ計算式が異なります。
なお、年金のほかに給料、アルバイト収入がある人には、「所得金額調整控除」が創設されており、給与所得から最大10万円を差し引くことができる配慮がされています(※後述)。
②公的年金等以外
個人年金については、以下の計算式で計算しますが、確定申告をする際には、生命保険会社などから送られてくる支払調書に計算された金額が記載されていますので、そのまま転記するだけOKです。
個人年金に係る雑所得の金額(公的年金等以外の年金収入金額+剰余金や割戻金)-{公的年金等以外の年金収入金額×(支払保険料または掛金総額÷年金の受給総額(見込額))} |
---|
平成24年度から「年金所得者に係る確定申告不要制度」が導入されたことで、公的年金が年間400万円以下であり、かつ年金以外の所得が年間20万円以下の場合には、確定申告が不要となりました。
ただし、国外で源泉徴収の対象とならない公的年金等の支給を受ける人は、確定申告が必要ですし、所得税等の還付を受けるために申告書を提出することができます。
ただし、この場合でも年金受給者が確定申告とまったく関係ないというわけではなく、以下のケースに該当する場合には、所得税を払い過ぎている可能性がありますので、確定申告をすれば税金が戻ってくる可能性があります。
①住宅ローンを組んで住宅を購入、もしくは増改築した場合 住宅借入金等特別控除や住宅特定改修特別税額控除を受けられます。 ②医療費を多く支払った場合 ▶ 医療費控除の確定申告に必要な計算方法と還付を受けるための手続き ③災害や盗難などの被害に遭った場合 ④ふるさと納税などで寄付をした場合 |
年金から所得税を源泉徴収する際には、各種の所得控除が設けられています。
所得税が源泉徴収される際に所得控除を受けるためには、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を毎年提出する必要があります。
年金以外に収入はなく扶養親族もいない場合には、扶養親族等申告書の提出は不要です。提出の有無にかかわらず、受給者本人の基礎的控除は適用されます。ただし、受給者本人が障害者または寡婦等に該当するときには、控除を受けるためには、扶養親族等申告書の提出が必要です。
扶養親族等申告書については、令和2年分以降については、受給者本人の基礎的控除のみ申告したものとみなされ、扶養親族等申告書を提出しないでも、源泉徴収される税額は変わりません。
ただし、受給者本人の障害者、寡婦等にかかる控除、控除対象となる配偶者または扶養親族にかかる控除を受ける方が提出しなかった場合には、各種控除が適用されないため、所得税が多く源泉徴収される場合があります。
したがって、「扶養親族等申告書の提出期限が過ぎてしまった」という場合には、可能な限り速やかに提出するようにしてください。
期限までに提出しないと、申告書が適用される年は提出がなかったものとして一旦計算し、源泉徴収が行われるケースがあります。この場合には、源泉徴収税の調整分は、確定申告により所得税の過不足の精算をすれば、所得税が戻ってくる可能性があります。
公的年金は、すべて確定申告をしなければならないわけではありません。
公的年金が年間400万円以下であり、かつ年金以外の所得が年間20万円以下の場合には、確定申告が不要ですし、遺族年金、障害年金については、税金はかからないことになっているので、申告は不要です。
年金受給者の確定申告は、65歳未満と65歳以上で、それぞれ計算式が異なり、公的年金等に係る雑所得以外の所得が1千万超ある場合には、控除額は少なくなります。
年金受給者の確定申告は、公的年金とそれ以外を分けて計算します。
公的年金は、65歳未満と65歳以上で、それぞれ計算式が異なり、公的年金等に係る雑所得以外の所得が1千万超ある場合には、控除額は少なくなります。
年400万円以下の公的年金収入のみの人は、原則として確定申告は不要ですが、医療費控除などの所得控除がある人は、申告して源泉所得税の還付を受けることができます。公的年金等の所得計算は、65歳未満と65歳以上で異なります。
【65歳未満の方】
【65歳以上の方】
※A=公的年金等の収入金額 |
たとえば、68歳で公的年金等の収入が340万円で他に所得がない場合には、「65歳以上」の表を使って、以下のように、公的年金等の所得金額を計算します。
340万円×0.75-27万5,000円=227万5,000円 |
個人年金がある人は、以下の計算式で計算しますが、生命保険会社等から送られてくる支払調書などの明細書を用意して、その明細書に書かれた金額を転記すれば、所得金額を求めることができます。
個人年金に係る雑所得の金額(公的年金等以外の年金収入金額+剰余金や割戻金)-{公的年金等以外の年金収入金額×(支払保険料または掛金総額÷年金の受給総額(見込額))} |
---|
このとき、公的年金と個人年金の両方をあわせて申告する人は、双方の所得金額を合計して税金を計算します。
公的年金も公的年金以外も、年金額が一定以上ある人はその支払いの際に、所得税が源泉徴収されていますので、確定申告の際に、この源泉徴収された所得税等を記入し、納付税額から差し引くのを忘れないようにしましょう。
以下の記事では、確定申告の方法についてご紹介しています。
あわせてご覧ください。
以上、年金にかかる税金や、受けられる所得控除、扶養親族等申告書についてご紹介しました。
年金には所得税がかかりますが、令和2年分以降については、受給者本人の基礎的控除のみ申告したものとみなされ、提出しなくても源泉徴収される税額は変わりませんが、そのほかの各種控除が適用されず所得税が多く源泉徴収される場合があります。扶養親族等申告書を提出した人は、公的年金等控除の他に各種所得控除が認められ、源泉徴収される税額が少なくて済みます。
毎月11月中旬に送られてくる扶養親族等申告書の返送を忘れないようにしましょう。
なお、納め過ぎた税金がある場合には確定申告をすればその税金が戻ってきます。
不明点等がある場合には、年金事務所や税務署、税理士等に確認することをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、年金にかかる税金について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、年金の確定申告について相談することができます。
クラウド会計ソフト freee会計