公開日:2019年12月10日
最終更新日:2023年11月07日
所得税とは、個人の1年間の所得に課される税金です。
所得税の税率は、収入が多い人ほど税率が高くなる「累進課税制」となっています。
この記事では、所得税の税率と、所得税額の計算方法、そして所得税を少なくするための節税方法についてご紹介します。
所得税とは、個人の所得に対して国から課される税金のことです。
個人の1年間(1月1日から12月31日まで)の所得から、必要経費や所得控除を差し引いた残りの金額に、決められた税率を適用して税額を決定します。
所得税の税率は、所得が多ければ多いほど税金が高くなる累進課税制となっています。
所得が195万円以下であれば、所得税率は5%ですが、所得が4,000万円を超えると、税率は45%にもなります。
① 課税所得金額(A)×税率(B)-控除額(C)=基準所得税額 ② 基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額 ③ ①+②=所得税および復興特別所得税の額 |
課税される所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) | 税額(A)×(B)-(C) |
195万円以下 | 5% | 0円 | (A)×5%-0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 | (A)×10%-97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 | (A)×20%-427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 | (A)×23%-636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | (A)×33%-1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | (A)×40%-2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | (A)×45%-4,796,000円 |
所得税は、所得の種類が違うと課税方法も違ってきます。
所得の種類は給与所得、配当所得、不動産所得など全部で10種類あり、総合課税と分離課税の2つの課税方法があります。
総合課税とは、1年間のその人のすべての所得を合計して、課税の対象とする計算方法です。所得を合計し、所得控除などを差し引き、それに累進課税率を乗じて、納めるべき税額が決まります。
分離課税とは、他の所得とは合計せず、その所得だけ分離して独自の税率を乗じて税金の計算をする方法です。分離課税となる所得の税額の計算方法は、その種類によって適用される税率や控除額が異なります。
分離課税の方法で計算する所得には、退職所得や山林所得、譲渡所得(土地R建物・株等)などがあります。これらの所得は総合課税にしてしまうと、税負担が重くなってしまうため、分離課税として別途納税額を計算するよう配慮されているのです。
ちなみに、個人事業主の「事業所得」やサラリーマンの「給与所得」などは、すべての所得を合計して納税額を計算する「総合課税」です。
所得税は、収入全てを対象にして計算するわけではありません。
まず、働いて得た「収入」から「必要経費」を差し引いた「所得」を計算します。そして、この「所得」から配偶者控除や社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除、医療費控除など15種類ある所得控除を差し引いた「課税所得金額」を計算します。
そして、この「課税所得金額」に決められた税率を掛けて控除額を差し引いて、「基準所得税額」を計算し、この基準所得税額に2.1%を掛けて「復興特別所得税額」を計算します。
① 収入-必要経費=所得 ② 所得-所得控除=課税所得金額 ③ 課税所得金額(A)×税率(B)-控除額(C)=基準所得税額 ④ 基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額 ⑤ 基準所得税額+復興特別所得税額=所得税および復興特別所得税の額 |
①収入から必要経費を差し引く
まず、収入から必要経費を差し引きます。
収入-必要経費=所得 |
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必要経費とは、収入を得るためにかかった費用のことで、個人事業主であれば交通費や書籍代、光熱費などを必要経費として差し引くことができます。
サラリーマンの場合には、必要経費が認められていませんが、その代わりに給与所得控除を収入から差し引くことができます。
令和2年(2020年)からは、給与所得控除額が一律10万円引き下げられ、さらに上限額が適用される給与収入については850万円(控除額195万円)に引き下げられ、実質増税となっています。
ただし、子育て世代、介護世帯には負担増が生じないようさまざまな配慮がされています。
収入金額 | 給与所得控除額 | |
2019年まで | 2020年以降 | |
1,625,000円まで | 650,000円 | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 年収×40% | 年収×40%-10万円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 年収×30%+180,000円 | 年収×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 年収×20%+540,000円 | 年収×20%+44,0000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 年収×10%+1,200,000円 | 年収×10%+44,000円 |
6,600,001円から10,000,000円まで | 年収×10%+1,100,000円 | |
10,000,001円以上 | 2,200,000円 | 1,950,000円 |
②所得控除を差し引く
収入から必要経費や給与所得控除を差し引いて「所得」を計算したら、次に所得から「所得控除」を差し引いて、課税所得金額を計算します。
所得-所得控除=課税所得金額 |
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所得控除とは、個人の事情に考慮して所得から差し引くことができるもので、全部で15種類あります。
たとえば、1年間の医療費が10万円以上かかった人は医療費控除が適用されますし、国や公益法人などへ特定の寄付金を支払った人は、寄付金控除が適用されます。
適用される所得控除の種類・金額が多ければ多いほど節税効果があります。
③税率を掛けて控除額を差し引く
所得から所得控除を差し引いて、「課税所得金額」を計算したら、それに決められた税率を掛けて、控除額を差し引いて「基準所得税額」を計算します。
課税所得金額(A)×税率(B)-控除額(C)=基準所得税額 |
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税率は、課税所得金額が多ければ多いほど高くなります(再掲)。
※ただし、山林所得や退職所得は分離課税なので、独自の課税方法が設けられています。
課税される所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) | 税額(A)×(B)-(C) |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 | (A)×5%-0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 | (A)×10%-97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 | (A)×20%-427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 | (A)×23%-636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 | (A)×33%-1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 | (A)×40%-2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 | (A)×45%-4,796,000円 |
(4)復興特別所得税額を計算する
復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興施策として創設された税金で、平成25年(2013年)から25年間課税されます。
復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1%を掛けて計算します。
基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額 |
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(5)税額控除を差し引く
基準所得税額と復興特別所得税を合計したものが、納税額となりますが、この他にも、直接所得税から差し引かれる税額控除というものがあります。
主な税額控除としては、住宅ローン控除や配当控除、外国税額控除などがあります。最終的に計算した税額から一定額を差し引くことができるので、大きな節税効果があります。
所得税額-税額控除=納税額 |
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▶税金が安くなる「税額控除」|所得控除との違いは?節税効果は?
たとえば、課税所得金額(収入-必要経費-所得控除)が650万円のケースでは、所得税率は20%・控除額は42万7,500円となります。
650万円×20%-42万7,500円=872,500円→基準所得税額 |
これまでご紹介してきたとおり、所得税は所得が多ければ多いほど高くなるしくみになっています。
そこで、この「所得金額」を減らすことができれば、所得税を節税することができます。また、確定申告を青色申告で行うことによって、最大65万円の控除を受けることもできます。
ここでは個人事業主がこの所得税の負担を軽くするための方法をご紹介します。
個人事業主の節税の第一歩は、青色申告の承認を受けることです。
確定申告には、青色申告と白色申告がありますが、青色申告の承認を受けると、65万円の控除((令和2年分より、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うが要件として追加)を受けることができたり、家族への給与を全額必要経費にできたりするなど、さまざまな特典を受けることができ、大きな節税効果があります。
▶ 青色申告のメリット|65万円の控除を受けるための要件は?
事業に関係した経費は、もれなく計上するようにしましょう。
自宅兼事務所の場合には、事業に使った光熱費や家賃を按分して、経費として計上することができます。
所得は、収入から必要経費を差し引いて計算するので、必要経費を多く計上すればするほど、所属税額を抑えることができます。
▶ 個人事業主やフリーランスがよく使う必要経費の勘定科目一覧
小規模企業共済とは、個人事業主や中小企業経営者を対象とした共済制度です。
1年間に支払った掛金の全額を所得から控除することができるので、その分所得をおさえて所得税額を抑えることができる、大変メリットのある制度です。
掛金は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択することができ、加入後も自由に増額・減額ができます。
適用される所得控除や税額控除は、すべて活用するようにしましょう。
個人事業主は、確定申告することになりますが、適用できる所得控除や税額控除について申告するのを忘れても、税務署が親切に教えてくれることはありません。
適用される所得控除や税額控除について分からない場合には、個人の確定申告について相談できる税理士を探して、アドバイスを求めましょう。
個人事業主としての収入が増えてきたら、法人化することも検討しましょう。
法人化すると、代表者として自らに給与を支給することができて、「給与所得控除」を受けることができます。
ただし、法人化すると社会保険への加入が義務づけられ、法人として負担すべき社会保険料が発生することになります。
法人成りを検討する時には、これらのメリット・デメリットを理解することが大切です。
サラリーマンは、所得税を源泉徴収されているので、「節税なんてできない」と思う人も多いようです。
けれども、サラリーマンでも節税できる方法はあります。
ここでは、サラリーマンが所得税を節税できる方法をご紹介します。
まず、前述した所得控除や税額控除で適用できるものがあれば、すべて受けるようにしましょう。医療費控除、寄附金控除、雑損控除は、会社で年末調整の対象とならないので、自分で確定申告をする必要があります。また、住宅ローン控除は、1年目には自分で確定申告をする必要があります。
確定申告をすれば払い過ぎた税金が戻ってくるケースは多いのですが、知らずに確定申告をしなければ、所得税を納め過ぎてしまいます。
株取引を行っている人で、損失が出た場合には、譲渡損失の繰越控除を使うことができます。損失を繰越すためには、一般口座・特定口座かにかかわらず確定申告をする必要がありますが、確定申告をすれば今年の損を3年間繰り越すことができるので、翌年の納税額を抑えることができます。
マイホームを売却した人で、一定の要件に該当する人は、その損失を他の所得と損益通算できます。
給与所得とも通算することができるので、結果として課税される所得金額が少なくなり、税金が戻ってくる場合があります。
さらに、それでも赤字が残った場合には翌年以降に繰越して控除することができます。
ふるさと納税は、前述した寄附金控除の1つですが、サラリーマンの場合、ワンストップ特例制度が創設されたことで、確定申告が不要となり、より利用しやすくなりました。
ふるさと納税は、寄附金額が一定額の範囲内であれば、実質的な自己負担額は2,000円で済み、おまけに返礼品として自治体から特産品を受けることができる、大変メリットのある制度です。
5団体までの寄付出れば確定申告不要なので、積極的に活用したいものです。
▶ ワンストップ特例制度(ふるさと納税)の2つのメリット・2つのデメリット
住宅ローンを組んでマイホームの新築などをした人は、住宅ローン控除を受けられます。
控除の適用を受けるためには、住宅の新築・取得から6カ月以内に居住している、登記簿上の床面積が50㎡以上であるなどの要件を満たす必要がありますが、大きな節税効果がありますのでぜひ活用したいところです。
なお、住宅ローンを組まずに自己資金だけで家を購入した場合や、10年未満の返済期間の場合には、住宅ローンの対象外ですが、その代わり利用できる特別控除として「認定住宅新築等特別税額控除」という制度が用意されています。
認定住宅などを新築・取得した場合に適用されます。
以上、所得税の意味や税率、計算方法、そして所得税を節税するための方法をご紹介しました。節税方法は他にもいろいろな方法がありますし、どの節税対策を行えばよいかは、個々の状況によって異なります。
適切な節税対策を行い、手取を増やしたいという人は、個人の節税対策について相談にのってくれる税理士にアドバイスを受けることをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、所得税の計算方法や節税方法について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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