公開日:2019年09月06日
最終更新日:2024年01月20日
個人事業主は、基本的に確定申告をして税金を納めなければなりません。
そして確定申告をするためには、日々の経理作業を行う必要があります。
個人事業主が納めなければならない税金は、所得税、住民税などがありますが、節税対策を行うことで、これらの納税額を大幅に減らすことができます。
しかし、節税対策は適切に行わないと効果がないこともありますし、税務調査の際に否認されるような方法は避けるべきです。
ここでは、個人事業主の方から寄せられる税務相談と、税理士がおすすめする節税対策についてご紹介します。
個人事業主の節税の基本
個人事業主で節税できていない人は、大きく「そもそも節税の情報を知らない」もしくは「情報を知っていても、対策として活用できていない」の2つのパターンに分かれるようです。つまり、節税対策ができている人とそうでない人の差は、「どれだけ税金の基本をしっかり押さえているか」にあります。
個人事業主にとってもっとも確実な節税対策は、税金の基礎知識を理解し、基本に忠実な節税対策を地道に積み重ねることこそが、
まずは、この記事でご紹介する青色申告の承認を受けること、必要経費はもれなく計上すること、所得控除や税額控除の適用を受けることなどは、節税対策の第一歩です。
そして個人事業主の事業が成長したら、会社を設立した方が節税につながるケースもあります。
「個人事業主としてできる節税対策は何か」「会社を設立した方が、節税につながるか」については、個々の売上、家族構成、事業内容等によって異なりますので、税理士に相談することをおすすめします。
ここでは、個人事業主の方から寄せられるさまざまな税務相談のなかから、多いものをピックアップしてご紹介します。
–「個人事業主が払わなければならない税金って何かあるのでしょうか?」
個人事業主が払う主な税金は、所得税・事業税・住民税・消費税の4つです。
この他事業の内容によっては、他に登録免許税、固定資産税がかかることもあります。
・所得税 所得税とは、その年の所得に対して課税される税金です。 所得税を納付するためには、確定申告を行なう必要があります。 所得税の計算は所得の額によって異なり、所得が高くなるにしたがって段階的に税率が高くなります。 所得税の計算は、以下の方法で行います。
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・消費税 消費税とは、商品やサービスの提供を受けた時にその対価にかかる税金を消費者が負担する税金です。 消費税はすべての事業主が納付するわけではなく、原則として、前々年度の売上が1,000万円を超える場合に納税する税金です。 所得税と同様に自分で税額を計算して、税務署に申告・納税します。 消費税の計算は、以下の方法で行います。
※みなし仕入率は、業種によって以下のとおり異なります。
2割特例(2023年10月~12月の申告から、2026年分の申告)の適用を受けた場合には、売上時に預かった消費税額の2割を納税額とすることができます。
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・住民税 住民税とは、自分が住んでいる自治体に対して納める税金です。 住民税は、所得の額に応じて課税される所得割の部分と、所得金額にかかわらず個人が等しく負担する均等割の部分から成り立っています。
・所得割額は、所得税の場合とほぼ同じで、所得控除を差し引いて求めます。税率は、道府県民税は一律4%、市区町村民税は一律6%です。
・均等割額は、道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円です。
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・事業税 事業税とは、営業している都道府県に納める税金で、事業税がかかる業種は法律で決められていて、業種によって税率が異なります。
個人事業主の場合には、独自の事業主控除として年290万円の控除が認められるので、事業税は以下の計算式で計算します。
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–「経費を増やせば、節税になりますか?」
税金は収入から必要経費を差し引いた所得に対して課せられるので、経費を増やせば所得を減らすことができ、納税額を減らすことはできます。
しかし、だからと言って無駄な経費を計上すれば、それだけ資金繰りが悪くなってしまいます。税金を支払うのは無駄だと考えてしまうかもしれませんが、無駄な経費を使うことは、税金を支払うよりもっと無駄なことです。
–「適用される所得控除の種類や額が多ければ多いほど、節税になると聞きました。そもそも所得控除って何ですか?」
所得控除とは、所得から差し引くことができる制度で全部で15種類あり、それぞれ控除額の計算方法は異なります。
適用できる所得控除の数や額が多いほど、その分課税対象となる所得を減らすことができ納税額が減ることになりますので、もれなく適用を受けることで節税することができます。
所得控除については、後ほど「税理士おすすめの節税対策」でもご紹介しますが、要件や計算方法は、以下の記事でも詳しくご紹介していますので、自分が受けられる控除について確認してください。
–「自宅を事務所として使っている場合、経費にできると聞いたのですが。」
自宅兼事務所の場合には、仕事で使っている部分は経費とすることができます。
具体的にはその支払金額を100%とし、たとえば「事業用が60%、プライベート用40%」などと分けて計算します。もし支払額が1万円だとしたら、6,000円を経費することができます。これを「按分(あんぶん)」といいます。
水道光熱費、電話、インターネット接続料、車、車の保険料、修繕費、減価償却などは按分して経費とすることができます。
–「個人事業主も消費税は払わなければならないのですか?」
消費税は、原則として前々年度の消費税の対象となる売上が1,000万円を超えた場合に支払う必要があります。したがって、個人事業主も前々年度の売上が1,000万円を超えたら消費税を支払わなければなりません。
ただ、売上が1,000万円を超えるようであれば、法人成りを検討するのもひとつの手です。
一般的には、売上が1,000万円を超える場合には、法人成りをした方が節税でできるケースがほとんどです。
これまでご紹介したように、個人事業主ができる節税対策はたくさんあります。ただし、やり方を間違えると税務調査で追及されてしまうこともありますので注意しましょう。
ここでは、税理士が個人事業主の方に実践していただきたい、おすすめの節税対策をご紹介します。
青色申告の承認を受けるのは、節税対策の第一歩です。
確定申告には青色申告と白色申告がありますが、青色申告の方が、メリットが多く節税効果が高いため、ぜひ青色申告の承認を受けるようにしましょう。
▶所得税の青色申告承認申請書とは?書き方・提出先・期限【まとめ】
青色申告のメリットは、細かく数えると50以上あると言われていますが、最も大きいメリットは以下の5つです。
①青色申告特別控除として、65万円の控除が受けられる。
青色申告をするだけで、青色申告特別控除という特別な控除を受けることができます。
②赤字を翌年以降に繰り越せる
赤字になってしまっても、その赤分を翌年以降に繰り越して、黒字と相殺することができます。
③家族への給与を経費にできる
家族への給与を全額必要経費とすることができます。
④30万円未満の資産を全額経費にできる
パソコンなどの固定資産は、数年にわたって使うものなので、1度に経費として計上することはできません。しかし、青色申告であれば、取得価額が30万円未満のものは、全額を購入した年の経費とすることができます(ただし年間300万円が限度)。
⑤貸倒引当金でリスクを経費にできる
取引先の倒産や資金繰りの悪化によって回収できない代金がある場合には、売掛金残高の5.5%を必要経費にすることができます。
所得控除とは、条件に当間レバ所得から一定額を差し引くことができるしくみで、全部で14種類あります。当てはまるものがあるか確認してもれなく適用を受けるようにしましょう。
①雑損控除
自然災害や盗難、横領などによって、自宅や家財に損害を受けた時に受けられる控除です。
控除額: 損失金額-所得金額×10% 災害関連支出-5万円 のいずれか多い方を控除することができます。 |
②医療費控除
本人や本人と生計を一にする家族の1年間の医療費の合計が、10万円を超えた時受けられる控除です。
控除額: 1年間の医療費-10万円 正味の医療費-総所得金額等×5% どちらか多い方 ※セルフメディケーション税制を使う時 |
▶ 医療費控除の確定申告に必要な計算方法と還付を受けるための手続きとは
③寄付金控除
国や地方公共団体、学校法人などに寄付を行った場合に受けられる控除です。
控除額: その年の特定寄付金の合計額-2,000円 (総所得金額等×40%)-2,000円 どちらか少ない方 |
④社会保険料控除
健康保険、国民健康保険、国民年金など支払った保険料が対象となります。本人だけでなく生計を一にする配偶者や親族の分も合計することができます。
控除額: 1年間に支払った全額 |
▶ 社会保険料控除とは?年末調整で必要な作業と計算方法を解説
⑤小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金、確定拠出年金などを支払っている人が受けられます。
控除額: 1年間に支払った全額 |
⑥生命保険料控除
生命保険、個人年金保険、介護医療保険の保険料を支払った時、生命保険料の一部を所得から差し引くことができます。
控除額: 支払金額により算出 最高12万円 |
⑦地震保険料控除
自宅や家財などにかけた地震保険など損害保険料を支払った時に受けることができます。
控除額: 控除額: 支払金額により算出 最高5万円 |
⑧ひとり親控除
母子家庭や父子家庭など、未婚のひとり親が受けられる控除です。
ひとり親控除:35万円 |
⑨寡婦控除
一定の寡婦が受けられる控除です。
一定の寡婦:27万円 |
⑩障害者控除
本人や配偶者や扶養親族が障害者の場合に受ける控除です。
控除額: 1人につき27万円、特別障がい者は1人につき40万円 同居特別障がい者は1人につき75万円 |
⑪勤労学生控除
の納税者本人が働きながら学校に通っていて、合計所得金額75万円以下の場合に受けられる控除です。
控除額: 1人につき27万円 |
⑫配偶者控除
合計所得48万円以下(改正前38万円以下)の配偶者がいる時に受けられる控除です。平成30年(2018年)から、納税者本人の合計所得が1,000万円を超える場合には適用されなくなりました。
控除額: 納税者本人の所得によって異なります。 申告者本人の所得により13万円~38万円 配偶者が70歳以上のときは、16万円~48万円 |
⑬配偶者特別控除
配偶者控除が適用されなくなる103万円を超える収入の配偶者がいる場合に受けられる控除です
配偶者控除と同様、納税者本人の合計所得が1,000万円を超える場合には適用されなくなりました。
控除額: 申告者本人と配偶者の所得によって異なります。 最高38万円です。 |
⑭扶養控除
配偶者のほかに、子どもや両親、祖父母など生計を一にする親族が要る場合、その人数分の控除を受けることができます。
控除額: 年齢や同居の有無によって異なります。 38万円~63万円 |
⑮基礎控除
誰でも無条件に受けられる控除ですが、2,500万円超では控除額は0円となります。
控除額:48万円(改正前38万円) |
先程ご紹介した所得控除とは別に、税額から直接差し引くことができる「税額控除」という制度があります。
納めるべき所得税額からさらに差し引くことができるので、節税効果は絶大です。
税額控除は、配当控除、住宅ローン控除、政党等寄付金特別控除などがあります。
該当する税額控除がある場合には、必ず適用を受けるようにしましょう。
小規模企業共済とは、個人事業主などを対象とした共済制度です。
ひと月あたりの最低支払額は1,000円、最高支払額は7万円です。
その間の金額は500円単位で自由に設定することができます。
1年間に支払った全額を控除することができるので、7万円×12か月=84万円もの金額を所得から差し引くことができ、さらに老後に備えることもできます。
経営セーフティ共済とは、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
ひと月あたりの掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選ぶことができます。
個人事業主の場合、掛金全額を必要経費とすることができるので、高い節税効果があります。
ふるさと納税とは、都道府県や市区町村への寄付で、前述した寄付金控除です。
先に出費が発生しますが、特産品というプレゼントがあり、なおかつ納税額の一部を軽減することができます。
iDeco(個人型確定拠出年金)とは、自分のための年金を自分で積み立てる制度です。
iDecoの掛金も、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
原則的に60歳未満までの国民年金・厚生年金加入者なら誰でも加入することができ、かつ税制面で大きなメリットがあります。
iDeCo(イデコ)|個人型確定拠出年金を知識ゼロから理解する
個人事業主の節税の基本
個人事業主の商売が順調に成長して売上が増えてくると、「個人事業ではなく法人化した方がいいのかな」と考える人もいるでしょう。
法人化する最大のメリットは、やはり節税です。
なぜなら、個人では認められない節税対策が会社を設立すると可能になったり、会社でのみ認められる経費があるなど、節税の方法が大きく増えるからです。
一方で法人化すると、社会保険料の負担が増えたり、赤字でも均等割の納付(東京都の場合年7万円)があるなどのデメリットもあります。また、個人と比べると法人の方が税金の確定申告も複雑で手間がかかります。
個人と法人でどちらがメリットが大きいのかは、税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
以上、個人事業主の方から寄せられた個人の節税対策についての相談や、税理士がおすすめする節税対策についてご紹介しました。
個人事業主が行うことができる節税対策は、ここでご紹介した以外にもたくさんあります。個人事業主の節税対策に力を入れている税理士に相談すれば、よりメリットのある節税対策を提案してもらうことができます。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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