経営指標とは?最低限知っておきたい経営指標の計算式&業種別の目安

公開日:2021年10月16日
最終更新日:2024年02月27日

経営指標とは、経営分析をするための指標です。
経営分析は、信用取引や融資の際の判断材料として行われたり、自社の経営に役立てたりするために活用されます。
さまざまな経営指標を活用することで、取引先の状況や投資分析を行うことができますし、内部管理分析を行うことで自社の経営方針や経営計画を立てることができます。また業績が思わしくなければ、どこに課題があるのか明確にすることも可能となります。
 

経営指標の豆知識

経営指標とは、決算書に記載されている数字を使って数字を加工し、自社の状態を読みとるための手法です。
いくら売上を上げてもそれ以上に経費をかけていては、利益を残すことはできません。しかし、経費を使わずに利益を上げるのも難しいものです。たとえば、経費のなかで大きな比率を占める人件費を削減し過ぎてしまうと、最終的には売上を上げることも不可能になるからです。
経営指標は、このような会社のさまざまなバランスを検討するための役割を持っています。
しかし、そうは言っても経営者は本業に忙しく、会社の経営状況を分析するうえで十分な時間をかけることは難しいでしょう。さらに常に財務諸表をチェックすることもできません。
このような場合には、最低限知っておきたい経営指標を活用するだけでもまずは十分です。企業の倒産リスクを知りたいと思ったら、貸借対照表の流動資産と流動負債をチェックします(流動比率)。また、資産を有効に活用しているか知りたいと思ったら、資産と売上高を比べます(総資本回転率)。
なお、経営分析は、安全性・収益性・成長性・生産性の視点から分析することも大切です。
いくら収益性が高くても、すぐに返済しなければならない有利子負債が膨らんでいれば資金繰りが苦しく倒産のリスクがあるからです。
さらに企業の経営状態を細かく分析して、事業の課題やリスク・将来性などを把握したい場合には、経営コンサルティングに力を入れている税理士に相談してみましょう。
税理士に分析してもらうことで、異常値が見つかったり、その異常値の原因や対策を提案してもらうことができます。

経営指標とは

経営指標とは、決算書の数字を組み合わせて計算するモノサシです。
決算書には、売上高や利益、資本金などさまざまな項目が記載されています。この数字を見るだけでも多くのことを知ることができますが、それぞれの数字を組み合わせて比率を求めると、他社や業界平均と比較することができるので、より具体的に数字の意味を理解することができます。

このような経営指標は、大きく①収益性分析、②安全性分析、③成長性分析、④生産性分析の4つに区分されます。

(1)経営指標①:収益性分析の指標一覧

収益性分析とは、「小さな元手で大きな収益や利益をあげる力があるか」「資本を有効活用しているか」「小さな資本で大きな利益をあげているか」といった収益力を見るための指標です。

売上高営業利益率
効率よく稼げているかを見るための指標です。
売上高営業利益率が高いほど、販売している商品の収益力が高く、さらに販売活動も管理活動も効率よく稼いでいるということになります。

売上高営業利益率 = 営業利益売上高 × 100

売上高や売上総利益が伸びているにもかかわらわず、売上高営業利益率が低下している場合には、販売費及び一般管理費が増加している可能性があります。「営業利益」は、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いて計算されるからです。
売上高営業利益率は、業種によってかなり差があります。一般的にサービス業や医薬品メーカーなどでは高く、小売業や商社では低い傾向にあります。

業種 売上高営業利益率
建設業 3.82%
製造業 4.02%
情報通信業 5.08%
運輸業、郵便業 2.42%
卸売業 1.77%
小売業 1.44%
不動産業・物品賃貸業 8.22%
学術研究、専門・技術サービス業 6.69%
宿泊業・飲食サービス業 2.11%
生活関連サービス業、娯楽業 1.82%
サービス業(他に分類されないもの) 3.80%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合です。
売上高経常利益率が高いほど、本業だけでなく、本業以外の財務活動(資金運用や資金調達など)といった資本管理の面から見ても、会社がうまくいっていると判断することができます。

たとえば、有利子負債に頼った経営をしていると、支払利息(営業外費用)が多くなって、経常利益率は低くなります。逆に手持ち資金に余裕のある会社は、その運用益である受取利息、受取配当金(営業外収益)をもたらすので売上高経常利益率は高くなります。

売上高経常利益率 = 経常利益売上高 × 100
業種 売上高経常利益率
建設業 4.31%
製造業 4.74%
情報通信業 5.81%
運輸業、郵便業 3.13%
卸売業 2.16%
小売業 2.30%
不動産業・物品賃貸業 8.52%
学術研究、専門・技術サービス業 7.84%
宿泊業・飲食サービス業 2.63%
生活関連サービス業、娯楽業 2.71%
サービス業(他に分類されないもの) 4.38%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

総資本回転率
総資本回転率は、会社の資源を有効活用できているかを見る指標です。
総資本回転率の単位は、%ではなく「回転」です。1回転とは、資本が会社の経営に使われ再び元のお金に戻るまでをいい、資本が何回転したかによって、会社の効率性を判断することができます。
総資本回転率が高い会社は、資源を有効に利用して多くの売上高をあげることができたことを意味しています。

総資本回転率 = 売上高総資本
業種 総資本回転率
建設業 1.32回転
製造業 1.03回転
情報通信業 1.00回転
運輸業、郵便業 1.18回転
卸売業 1.70回転
小売業 1.71回転
不動産業・物品賃貸業 0.31回転
学術研究、専門・技術サービス業 0.58回転
宿泊業・飲食サービス業 1.03回転
生活関連サービス業、娯楽業 1.18回転
サービス業(他に分類されないもの) 1.23回転

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率(ROE)は、自己資本に対する当期純利益の比率を見る指標です。
株主の立場から見た投資に対する収益性を知るための指標です。
したがって、分母は株主の投資額や株主に帰属する利益の累積である自己資本、分子は株主への配当の原資である当期純利益を用いて計算します。

自己資本利益率は高いほど、自己資本を有効に活用して利益を得たことを示していて、株主利益の増大に貢献しているといえます。
このため、ROEは投資家の判断基準としてもよく用いられる指標です。
ROEが高いほど、投資家からすれば「投資する価値は高い」ということになります。

自己資本利益率 = 当期純利益自己資本 × 100
業種 自己資本利益率(ROE)
建設業 13.37%
製造業 10.22%
情報通信業 10.27%
運輸業、郵便業 11.47%
卸売業 8.77%
小売業 14.86%
不動産業・物品賃貸業 6.47%
学術研究、専門・技術サービス業 7.28td>
宿泊業・飲食サービス業 13.65%
生活関連サービス業、娯楽業 6.99%
サービス業(他に分類されないもの) 11.76%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

総資本経常利益率(ROA)
総資本経常利益率(ROA)は総資本に対する経常利益の比率であり、会社に投下された総資本からどれだけの利益を稼ぎ出しているかを見る指標です。
ROAが高いほど、会社全体として総合的に多くの利益を上げていると判断することができます。
ROAも、ROEとともに投資家の判断基準としてもよく用いられる指標です。

総資本経常利益率(ROA) = 経常利益総資本 × 100
業種 総資本経常利益率(ROA)
建設業 5.69%
製造業 4.86%
情報通信業 5.83%
運輸業、郵便業 3.70%
卸売業 3.68%
小売業 3.93%
不動産業・物品賃貸業 2.61%
学術研究、専門・技術サービス業 4.52%
宿泊業・飲食サービス業 2.70%
生活関連サービス業、娯楽業 3.18%
サービス業(他に分類されないもの) 5.40%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

(2)経営指標②:安全性分析の指標一覧

安全性分析とは、会社の短期的、長期的な安全性を見る指標です。
短期の支払い能力、長期的な支払い能力を判断するために用います。また、「借入金が多すぎるか(依存し過ぎていないか)」「十分な自己資本を持っているか」などの、財務体質を判断し改善するためにも用いられます。
短期の支払い能力を見る指標として、流動比率・当座比率などがあります。
また、長期的な支払い能力を見る指標として固定比率、固定長期適合率などがあります。そして、財務体質の健全性を見る指標としては自己資本比率などがあります。

流動比率
流動比率は、短期的な支払い能力を見る指標です。
流動比率が高ければ短期的な支払い能力があると判断することができます。

流動比率は、貸借対照表の流動資産と流動負債を用いて計算します。この2つの金額を見る時には、まず流動資産と流動負債のどちらが多いかに注目します。

仮に流動資産より流動負債の方が多ければ支払い能力が低いため、よい財務状況ではありません。一方、流動負債よりも流動資産の方が多ければ、短期的な支払い能力はあると判断できます。

流動比率は、流動資産を流動負債で割ることで、短期的な支払い能力を具体的な数値として示すことができます。たとえば、流動資産が流動負債の2倍であれば、200%、3倍であれば300%となります。一方、流動資産より流動負債の方が多ければ、100%を切ることになります。業種により異なりますが、一般的に、流動比率は150%~200%を超えているとよいとされています。

流動比率 = 流動資産流動負債 × 100
業種 流動比率
建設業 173.55%
製造業 194.55%
情報通信業 254.35%
運輸業、郵便業 155.04%
卸売業 156.57%
小売業 158.32%
不動産業・物品賃貸業 169.16%
学術研究、専門・技術サービス業 193.00%
宿泊業・飲食サービス業 104.51%
生活関連サービス業、娯楽業 142.80%
サービス業(他に分類されないもの) 215.56%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

固定比率
固定比率は、固定資産を過剰な借入金で購入していないかを見る指標です。
固定比率は、固定資産を自己資本で割って求めます。つまり、固定資産に投資された資金のうち、どれだけが返済義務のない自己資本でまかなわれているのかを示す指標です。
固定比率が高ければ安全性が低く、固定比率が低ければ安全性が高いと判断することができますが、目安としては100%以内を達成すべきと言われています。

固定比率 = 固定資産自己資本 × 100
業種 固定比率
建設業 76.72%
製造業 97.48%
情報通信業 63.80%
運輸業、郵便業 156.15%
卸売業 87.24%
小売業 118.09%
不動産業・物品賃貸業 184.49%
学術研究、専門・技術サービス業 92.42%
宿泊業・飲食サービス業 346.59%
生活関連サービス業、娯楽業 187.43%
サービス業(他に分類されないもの) 87.91%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

自己資本比率
自己資本比率は、会社として借金が多すぎないかを見る指標です。
自己資本比率は、自己資本を総資本で割って求めます。
自己資本は第三者に返済する必要のない資本ですから、自己資本比率が高いほど長期の安全性は高いと判断することができます。

自己資本比率 = 自己資本総資本(他人資本+自己資本) × 100
業種 自己資本比率
建設業 40.84%
製造業 45.60%
情報通信業 55.22%
運輸業、郵便業 35.32%
卸売業 38.01%
小売業 36.15%
不動産業・物品賃貸業 36.58%
学術研究、専門・技術サービス業 59.92%
宿泊業・飲食サービス業 20.83%
生活関連サービス業、娯楽業 36.14%
サービス業(他に分類されないもの) 42.23%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

(3)経営指標③:成長性分析の指標一覧

成長性分析とは、会社の売上高、利益が順調に伸びているのかを見るための指標です。売上が伸びているということは、会社の規模が大きくなっている、つまり成長しているということだからです。
ただし、会社の成長性を分析する際には売上だけではなく利益もあわせてチェックすることが大切です。つまり「増収増益」の状況であるのかを見る必要があります。

売上高伸び率
売上高伸び率は、当期の売上高と前期の売上高から、伸び率を計算する指標です。
ただし、売上高が伸びていても利益が伸びていない状態(増収減益)であれば、正常な成長とはいえないので注意が必要です。
たとえば、売上高が伸びていても営業利益伸び率が伸びていないのであれば、売上高の伸び以上に販売費及び一般管理費が伸びている可能性があります。

売上高伸び率 = 売上高(当期)売上高(前期) × 100

(4)経営指標④:生産性分析の指標一覧

生産性分析とは、投入する経営資源(インプット)に対するアウトプットの割合であり、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源が効率よく働いているのかを見る指標です。
生産性分析は、インプットを何にするかによって以下の通り区分されます。
インプットをヒトとした場合が「労働生産性」、インプットをモノ(設備)とした場合が「設備生産性」、インプットをカネ(資本)とした場合が「資本生産性」です。

労働生産性
労働生産性とは、従業員一人あたりの付加価値を見る指標です。
労働生産性は、高ければ高いほど、従業員1人あたりの生産性が高いと判断することができます。
付加価値とは、外部から購入したモノやサービスに会社が事業活動によって付け加えた価値のことです。

労働生産性 = 付加価値従業員数

付加価値の平均値は、大企業か中小企業かによって大きく異なります。。

建設業 製造業 情報通信業 運輸業,郵便業 卸売業 小売業 宿泊業,飲食サービス業 生活関連サービス業,娯楽業
中小
企業
698 560 613 550 650 506 256 420
中堅
企業
957 757 863 793 938 657 395 496
大企業 1,406 1,009 1,209 1,145 1,215 715 542 683

引用:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の労働生産性」

労働分配率
労働分配率とは、付加価値が労働者にどの程度配分されているのかを見る指標です。
人件費(給与、賞与、退職金、福利厚生費など)が高ければ、労働分配率は高くなります。

労働分配率は、飲食業やサービス業など、機械や設備が少なく、労働集約型の業種で高くなる傾向があります。また、創業から間もない会社は利益があまりあがらないことが多く、その場合にも労働分配率が高くなります。

労働分配率 = 人件費付加価値 × 100
業種 労働分配率
建設業 69.25%
製造業 69.82%
情報通信業 74.62%
運輸業、郵便業 76.99%
卸売業 63.74%
小売業 67.05%
不動産業・物品賃貸業 37.91%
学術研究、専門・技術サービス業 71.70%
宿泊業・飲食サービス業 71.26%
生活関連サービス業、娯楽業 57.94%
サービス業(他に分類されないもの) 82.47%

参照:中小企業庁 「中小企業の経営指標(2017年度)」

まとめ

経営指標は、決算書を読み解くための指標であり、さまざまな経営指標を用いることで、「取引先に支払い能力はあるのか」「生産能力は問題ないのか」「急増する運転資金に対応できるだけの資金があるか」などを分析することができます。

厳密にいえば経営分析は決算書の分析だけでなく、立地条件、従業員の資質といった、決算書からは判断できない非財務情報も含めて分析する必要があります。
とはいえ経営分析の中心は、貸借対照表、損益決算書といった決算書であり、さまざまな経営指標を用いることで、会社の経営の多くを判断できます。

ここでご紹介した以外にも、さまざまな経営指標があります。
経営指標を経営に活用するためには、自社の状況と分析したい目的を明確にし、不明点等は税理士などに相談しながら、適切な経営分析を行うことが必要です。

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この記事の監修者:InnOpe合同会社

監修者

藤山 祥紀ふじやま よしのり

InnOpe合同会社 代表
幅広いスキルセットで、お客様のオペレーションの変革を全力でサポートします

経営指標を用いた経営分析とは、その文字通り「経営」を「分析」することです。
さまざまな経営指標は、取引先を信用取引できるか判断する場合や、株式投資を行う際の投資分析を行う場合にも使われますが、忘れてはならないのが自社の経営を分析するという役割です。
もし業績が思わしくなければ、どこに問題があるのか早期に確認する必要があります。また、今は業績が良くても、今後他社との競争に勝ち残れる財務体質なのか把握しておく必要があります。
いずれにせよ、この記事でご紹介した経営指標を用いる際は、まず課題を明確にし、分析の目的をはっきりさせることから始めるべきです。
InnOpe合同会社は、個々の企業の経営状態を把握したうえで課題を明確にし、必要に応じて経営分析を行い、会社のさらなる利益の向上を目指すための各種経営コンサルティグ業務をご提供しております。
また、生産性の向上、早期の経営状況の把握等を目的とした経理・会計業務のデジタル化・効率化についてもサポートを行っております。
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