インタレスト・カバレッジ・レシオの意味・計算式・目安

公開日:2019年12月20日
最終更新日:2024年03月16日

この記事のポイント

  • インタレスト・カバレッジ・レシオとは、債務返済能力を見る指標。
  • インタレスト・カバレッジ・レシオは、利息を支払うだけの十分な利益を獲得できているか判断するための指標。
  • インタレスト・カバレッジ・レシオは1.0を上回ることが望ましい。

 

多くの会社は、銀行などの金融機関からお金を借りています。
ある程度の借入金をもつことは、会社を経営するうえで必要なことなので問題ではありませんが、同時に「その借入金の額は適正なのか」「どれだけ借入金に依存しているのか」という点もチェックすることは非常に大切であり、金融機関もこの点を非常に重視します。

さらに金融機関が借入金の返済能力を評価する場合には、まず利息が期日どおりに支払われるかどうかが先決問題です。

そこで、利息を支払うのに十分な利益を獲得できているかを判断するための指標として、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」があります。
 

インタレスト・カバレッジ・レシオの豆知識

インタレスト・カバレッジ・レシオは、金融費用の支払い能力を示す指標です。インタレスト・カバレッジ・レシオは、金融機関が会社にお金を貸す際にも参考にする指標で、この倍率が高いほど、利息の支払い能力が大きく、有利子負債返済の安全度が高いことを示します。
10以上あれば理想ですが、目安は1.0です。1.0以下になると、利益で利息すら賄えないということになります。
インタレスト・カバレッジ・レシオは業種ごとに差があり、たとえば、運輸業は高く小売業は低くなる傾向があります。
1.0を下回った状態が続くと倒産のリスクが高まりますので、早めに税理士に相談するべきです。税理士は、本来は税金のプロフェッショナルですが、税金のことだけではなく経営全般について相談することができます。税理士は、多くの会社と顧問契約を締結していてノウハウが蓄積されており、制度融資や複数の借入金の一本化、リスケジュールなどについて的確なアドバイスをしてもらうことができます。

インタレスト・カバレッジ・レシオとは

インタレスト・カバレッジ・レシオとは、営業活動と財務活動で得た利益(営業利益+受取利息+受取配当金)をインタレスト(支払利息など)でカバーできている割合(カバレッジ・レシオ)で割った数値です。

インタレスト・カバレッジ・レシオは、会社の債務返済能力を測る指標として、主に金融機関が安全性分析の際に用いられます。支払利息や社債利息などの金融費用に対する事業利益の比率を表すことで、借入金の元本ではなく「利息を支払うための十分な利益を獲得できているのか」をチェックする指標です。

安全性分析の指標としては、インタレスト・カバレッジ・レシオ以外にも流動比率や固定比率、自己資本比率などがありますが、これらの指標は貸借対照表のストックに基づく安全性の指標です。

一方、インタレスト・カバレッジ・レシオは、損益計算書の金額を重視したフローに基づく安全性分析の指標です。

短期の安全性を見る指標 流動比率、当座比率
長期の安全性を見る指標 固定比率、固定長期適合率、自己資本比率
利息の支払能力を見る指標 インタレスト・カバレッジ・レシオ

(1)インタレスト・カバレッジ・レシオの計算式

インタレスト・カバレッジ・レシオは、損益計算書の営業利益や営業外収益(受取利息・配当金)に着目して、以下のように計算します。

インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 + 受取利息・配当金等支払利息、社債利息等

このインタレスト・カバレッジ・レシオは、数字が高ければ高いほど利息の返済能力があると認められ、有利子負債返済の安全度が高いことを示します。

(2)インタレスト・カバレッジ・レシオの目安

インタレスト・カバレッジ・レシオは1.0を下回ってしまうと、利息の支払いのために十分な利益が確保できていないため、安全性に問題あり、ということになります。1.0を超えることが最低限必要です。

インタレスト・カバレッジ・レシオは、営業利益と受取利息・配当金の合計を、支払利息で割って計算するものなので、数値が高ければ高いほど安全性が高いと判断することができます。

営業利益は、本業で生み出された利益ですから、支払利息などに対してその支払いの原資になる利益を何倍あげているかを計算することで、利払い能力を見ることができるわけです。なぜなら、この利益が出ていなければ、いずれは利息の支払いに限界がきてしまうということになるからです。

中小企業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

インタレスト・カバレッジ・レシオのは、1.0を超えると利子控除後の利益はプラスとなり、1.0を下回ると金融費用が事業利益を上回って損失が計上され、さらにその状態が続くと倒産のリスクが高まります。
とはいうものの、インタレスト・カバレッジ・レシオは業種によってかなり差があります。
ここでは、中小企業庁から発表されている業種別のインタレスト・カバレッジ・レシオについてご紹介します。

平成15年 平成16年 平成17年
建設業 1.4 1.9 2.6
製造業 3.0 3.8 3.9
情報通信業 1.5 3.0 3.7
運輸業 4.7 5.5 5.5
卸売業 1.5 2.1 1.9
小売業 1.1 1.4 1.4
不動産業 3.5 3.6 3.5
飲食・宿泊業 2.7 3.4 3.2
サービス業 3.4 4.1 4.2

(1)製造業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

製造業のインタレスト・カバレッジ・レシオは、3.0を上回る数値となっていて、利子控除後の利益はプラスの状態をキープしているといえます。

製造業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

平成15 平成1 平成17
3.0 3.8 3.9

 
参照:中小企業庁「中小企業の財務指標」

(2)情報通信業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

情報通信業のインタレスト・カバレッジ・レシオは、安定して上昇傾向にあるといえます。

運輸業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

平成15 平成16 平成17
1.5 3.0 3.7

 
参照:中小企業庁「中小企業の財務指標」

(3)運輸業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

運輸業のインタレスト・カバレッジ・レシオは、他業種と比較して高い傾向にあります。

運輸業のインタレスト・カバレッジ・レシオ

平成15 平成16 平成17
4.7 5.5 5.5

 
参照:中小企業庁「中小企業の財務指標」

(4)インタレスト・カバレッジ・レシオ以外の返済能力を見る指標

インタレスト・カバレッジ・レシオは、利息の支払い能力を見る指標でしたが、借金の返済能力を見る指標としては、債務償還年数(どの程度の年数で返せるのかを見る指標)や、借入金依存度(どれだけ借入金に依存しているのかを見る指標)などがあります。
銀行から融資を受ける際には、利息を支払う能力であるインタレスト・カバレッジ・レシオ以外にも、これらの指標もチェックされますので、あわせて理解しておくとよいでしょう。

債務償還年数
債務償還年数とは、今ある借金を返そうとした場合に、どの程度の年数で返せるのかを見るための指標です。
債務償還年数は、貸借対照表の借入金の合計を、営業活動によるキャッシュ・フローで割って計算します。キャッシュ・フロー計算書の作成は上場会社にだけ作成が義務づけられているものなので、キャッシュ・フロー計算書を作成していない中小企業の場合には、税引前当期純利益に減価償却費を加えたものを使うこともあります。

債務償還年数 = 貸借対照表の借入金の合計営業活動によるキャッシュ・フロー

または

債務償還年数 = 貸借対照表の借入金の合計(税引前当期純利益+減価償却費)

この債務償還年数を見れば、本業で生み出されたお金を使ってあと何年で今の借金を返済することができるのかを判断することができます。数字が小さければ小さいほど返済余力があることになりますので、金融機関などからお金を借りやすくなります。

借入金依存度
借入金依存度とは、会社がどれだけ借入金に依存しているかを見るための指標です。
借入金依存度は、短期借入金+長期借入金+受取手形割引高の合計を総資産で割って計算します。

借入金依存度=(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)÷総資産×100

この時、受取手形割引高を含めているのは、手形を割り引く時に手形売却損と言う利息のような費用が発生するからです。
借入金依存度は、会社の純資産のうち、どれだけ外部からの借入金があるかを表しますので、低ければ低いほど借入金の比率が低く、借入金の依存度が低いと判断することができます。

借入金月商倍率
借入金月商倍率は、非常によく利用されている指標で、借入金の総額が月商の何倍あるのかを表す指標です。
借入金月商倍率は、(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)を(売上高÷12)で割って計算します。

借入金月商倍率=(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)÷(売上高÷12)

1倍以下なら借入金が少ないと判断でき、2倍以下でもそれほど危険はないと判断できます。しかし、3倍を超えると要注意となり、5倍を超えれば危険だと判断されます。

まとめ

以上、インタレスト・カバレッジ・レシオの意味や計算式、インタレスト・カバレッジ・レシオ以外で借入金の支払い能力を見る指標である、債務償還年数・借入金依存度・借入金月商倍率についてご紹介しました。
これらの指標は、自社の借入金の割合や返済能力を判断するだけでなく、金融機関がお金を貸す場合に、「この会社には、あとどのくらい貸してよいのか」を判断する際の基準にもなります。
したがって、これらの指標の数値が悪い場合には、新規の借入が難しくなることから、何らかの対策を検討する必要があるということになります。
細かい分析をしたい場合や、必要な対策について知りたい時には、税理士など専門家にご相談することをおすすめします。

インタレスト・カバレッジ・レシオについて相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中からインタレスト・カバレッジ・レシオについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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この記事の監修者:InnOpe合同会社

監修者

藤山 祥紀ふじやま よしのり

InnOpe合同会社 代表
幅広いスキルセットで、お客様のオペレーションの変革を全力でサポートします

インタレスト・カバレッジ・レシオは、支払利息や社債利息などの金融費用に対する事業利益の比率であり、企業の債務返済能力を測る指標として、安全性分析に用いられます。
会社経営は継続することが重要です。そのためには、キャッシュや利益が安定して生まれるバランスの良い経営が非常に重要となってきます。
InnOpe合同会社では、システム構築コンサルティング経験を含めたITに関する知見、経営、バックオフィス業務、会計に関する知見を駆使し、クラウド会計やダッシュボードなどを活用し、自社の損益・経営状況をタイムリーに把握し、債務返済能力等の把握、事業の意思決定、利益率などの確認をスピーディに行うことができるようサポートを行っています。
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