公開日:2022年02月04日
最終更新日:2024年03月17日
のれんとは、事業の譲受や合併などのM&Aによって有償取得した企業や事業の取得原価が、取得した資産および負債に配分された純額との間に生じた差額のことをいいます。
のれんは、無形固定資産に計上され、原則として20年以内のその効果がおよぶ期間にわたって償却します。なお、差額が負となる場合には「負ののれん」とよばれ、特別利益として計上されます。
のれんの豆知識
のれんは、よく「超過収益力」と説明されます。
これは、値札以上のお金を出して手に入れた場合に、その超過額をのれんといい、いわばのれんは、買い手がその企業に対して感じた無形の魅力ということになるからです。
買い手は、「それなりのお金を出してでも将来的に役立つ魅力的なもの」と考えお金を出しているから、のれんという無形の魅力は資産に計上します。
しかし、のれんが将来のキャッシュ増加に何も貢献しない可能性もあります。
つまり、お金を出してでも手に入れたいと思ったのれんは、無形の魅力なのか単なるムダ遣いに終わるか不確実性が高いものといえるわけです。
そこで、日本ではのれんは20年以内に償却することになっているのです。
一方、IFRSでは、のれんは対象外です。これは「将来のキャッシュ増加に貢献するかどうか分からないものは、償却の対象外」という理論で、毎期厳格な減損テストが行われます。
のれんとは、事業の譲受や合併、会社分割、株式移転などで有償取得した超過収益力です。
のれんとは、その企業の長年にわたる伝統や社会的信用、立地条件、特殊な技術、取引関係の存在などに基づく超過収益力をいいます。
M&Aの買い手は、「将来に役立つ」と思って、これらに主観的な魅力を感じてお金を出しています。
そのため、企業買収の買収金額は、単なる売り手企業の資産と負債の差額ではなく、これらの超過収益力をプラスアルファした金額となります。
すなわち、M&A(事業の譲受け、合併など)によって買い手企業が売り手企業を有償取得した時に、この超過収益力がのれんとして顕在化するわけです。
上記の通り、のれんは、M&Aの買い手が、「将来に役立つ」と思って、企業の伝統や社会的信用、立地条件などに魅力を感じてお金を出しているものです。
そのため、のれんは、無形の魅力を手に入れたとして資産(将来のキャッシュを増加させるポテンシャルという意味での資産)として計上します。
具体的には貸借対照表の「無形固定資産」に計上します。
無形固定資産には、のれんのほか、特許権、借地権、ソフトウェアなどが計上されます。
取得によって発生した取得対価から、継承した識別可能な資産および負債の時価を差し引いた場合に、差額の数値が「負」になる場合を「負ののれん」といいます。「負ののれん」は原則として特別利益に計上します。
負ののれんは、何らかの理由によりM&Aを通常より安く実施できた場合に発生することがほとんどであるため、現実的には異常かつ発生の可能性が低いものとされています。そのため、特別利益として処理します。
のれんは、将来のキャッシュを増加させるポテンシャルという意味での資産です。
そのため、将来のキャッシュの増加に徐々に貢献していくことに対応して、のれんを取得した支出を徐々に費用としてすることが妥当です。
そのため、日本基準では、のれんを20年以内に償却することになっています。
つまり、最長20年で資産から消えてなくなると考えられているということになります。
なお、のれんの償却額は、販売費及び一般管理費に計上されます。
のれんは、税務上「資産調整勘定」といわれ、償却年数は5年とされています。
日本基準では、のれんを20年以内に償却することになっていますが、IFRSでは、のれんは償却の対象外となっています。
IFRSでは、「のれんは、将来の収益獲得にどのような貢献をするのか分からないものであるから、償却しようがない」と考えるわけです。
そこで、償却する代わりにIFRSでは、毎期厳格な減損テストが課されることになっています。減損テストによって、M&Aの効果を毎期厳密に確認していることになります。
一方で、IFRSの減損テストは、複雑でコストがかかるという問題が指摘されています。そのため、日本基準の20年以内に償却する方法の方が簡便であるというメリットがあります。
のれんは、原則として20年以内に毎期均等償却しますが、収益性の低下によって減損会計を適用し、減損損失を認識する場合があります。
のれんの未償却残高は減損処理の対象となり、減損損失を認識すべきことになった時には「特別損失」に計上します。
のれんに対する減損の判断は、簡単にいえば買収した事業が計画通りにいかず、買収額を当該事業で回収しきれなくなった場合に行います。
減損損失の計上額の算定は複雑ですが、簡単に説明すると、将来キャッシュ・フローがのれんを含む各種資産への投資額を下回ると、その下回った金額だけ減損損失を計上する、というイメージです。
ソニーは2015年3月にスマートフォン事業の不振に伴い、関連するのれんの全額である1800億円を減損処理しました。 ただし、減損処理をしたからといって、のれんに対するキャッシュの支払いは買収時点で終わっているのですから、その減損額に相当するキャッシュが流出したわけではありません。つまり減損処理とは大ざっぱに言えば、「あの時の買収は効果がなかった」ということが判明したということを意味します。 |
のれんとして会計処理をするのは、事業の譲受や合併などで有償取得したものです。
自社で築き上げた「自己創設のれん」は、有償取得したものではなく企業自身が主観的に考えている超過収益力にすぎず、客観性が担保できないため、計上することは認められません。
のれんは、取得後20年以内の効果が及ぶ期間にわたって、定額法その他合理的な方法によって規則的に償却します。
税務上、のれんは資産調整勘定と言われ、償却年数は5年とされています。
「事業譲受に際して支払った対価は1,000万円で、譲受けた資産は800万円、負債は300万円であった。従って、のれんは500万円である。そののれんは、20年で償却する。」
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
資産 | 8,000,000 | 負債 | 3,000,000 |
のれん | 5,000,000 | 現金 | 10,000,000 |
②償却時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
のれん償却費 | 250,000 | のれん | 250,000 |
企業結合は、会計上、①取得、②共同支配企業の形成、③共通支配下の取引等に分類されます。
①取得の場合には、「パーチェス法」によって処理し、②共同支配企業の形成、③共通支配下の取引等とみなされた場合には、資産・負債の簿価を引き継ぐ方法(旧:持分プーリング法)によって処理します。
①取得時 | ②共同支配企業の形成、③共通支配下の取引等以外の企業結合 | パーチェス法 |
---|---|---|
②共同支配企業の形成 | 複数の独立した企業が契約等に基づいて、共同で支配する企業を形成する場合 | 資産・負債の簿価を引き継ぐ方法(旧:持分プーリング法) |
③共通支配下の取引等 | 親子間、子会社間などグループ内の組織再編による場合 | 資産・負債の簿価を引き継ぐ方法(旧:持分プーリング法) |
パーチェス法による処理 「A社はB社を吸収合併し、新株(時価1,000万円)を発行した。資産は1,300万円、負債は700万円、資本金は100万円、利益剰余金は500万円である。」 パーチェス法とは、取得企業の取得原価について支払対価の時価によって算定する方法です。被取得企業の資産および負債について時価評価を行います。 つまり、取得原価が時価ベースの純資産より大きい場合に「のれん」を計上し、取得原価が時価ベースより小さい場合には「負ののれん」を計上します。
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のれんは、事業の譲受けや合併等のM&Aによって有償取得した超過収益力であり、取得後20年以内の効果の及ぶ期間にわたって、規則的に償却します。税務上「資産調整勘定」と呼ばれ、5年間で償却します。
また、企業結合の会計処理には、パーチェス法と資産・負債の簿価を引き継ぐ方法があります。
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監修者
藤山 祥紀ふじやま よしのり
InnOpe合同会社 代表
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ビジネスモデルや経営戦略は、数字に落とし込まなければ具体化させるのは困難です。
そして、ビジネスモデルや経営戦略を数字に落とし込むための第一歩が、決算書などから企業活動を読みとり、それぞれの数字が意味することを理解することです。
日々のビジネスの現場においては、戦略やマーケティング、人的資源管理などをベースとした定性的な検討ももちろん重要ですが、それと並行してアカウンティングやファイナンスをベースとした定量的な検討が、必ず必要となります。
そのうえで、さまざまな分野の専門家らと連携し議論と検討を繰り返し、ようやくベストと考えられる意思決定を行うことができると言っても過言ではないのです。
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