減資とは?意味と種類、手続き、仕訳を分かりやすく

公開日:2021年09月16日
最終更新日:2024年02月15日

この記事のポイント

  • 減資とは、資本金を減少させること。
  • 無償減資とは、資本金の額を減少させるのみの減資。
  • 有償減資とは、資本金の額を減少させ同時に株主に金銭を交付する減資(旧商法)。

 

減資とは、資本金の額を減少させることです。
減資には、株主への払戻を伴う有償減資と株主への払戻を伴わない無償減資があります。
この記事では、減資の意味や、有償減資、無償減資の違い、減資の会計処理などについてご紹介します。
 

減資の豆知識

減資とは、資本金の額を減少させることです。減資は、通常は財体質を改善したい、欠損を填補したい、事業規模に見合った資本に圧縮したいなどの目的で行われます。また、赤字続きで欠損金があると銀行から融資を受ける際に不利になるため、減資して未処理損失を整理するケースもあります。
このほか、外形標準課税が資本金が1億円を超える法人が対象であることから、資本金を1億円以下に減資をして、適用対象から外れるという節税目的で行われることもあります。法人事業税を節税できれば、結果的に収益体質の強化につながるというメリットが期待できます。しかし、外形標準課税の対象から外れるために減資を行うことは、租税回避と指摘される可能性がありますので注意が必要です。
また、減資を行うことで株式の持分割合が変わり経営権を左右する結果になることもあります。
したがって減資は、本来の経済的合理性が確かに存在しているのかについて税理士等に確認したうえで、慎重に対応する必要があります。
なお、減資は目的やその効果によって決議方法が異なります。
①通常の減資の決議方法は株主総会の特別決議が必要ですが、②資本金の減少額の全額を欠損の補てんに充てる場合には株主に不利益がないため、株主総会の普通決議でよいとされています。なお、③新株発行も同時に行うため資本金の額が変わらない場合には、取締役会決議で決議します。
なお減資には、会社財産を株主に払戻ししないものと払戻しするものがあり、それぞれ処理仕訳が異なりますので、税理士の指導のもと適切に処理することが大切です。

減資とは?減資の種類は?

減資とは、資本金の額を減少させることをいいます。
減資を行う目的はケースバイケースですが、典型的な例は経営を立て直すためです。
十分な会社財産を保有していれば、減資を行わなくても株主に対する利益分配は可能でしょう。しかし、株主に対して利益分配を行うことができないような業績不振によって資金難に陥った会社の場合には、再建のために新たな出資を受けようとしても、出資する側としてみれば出資するだけの魅力に欠けることになります。

このような時には減資によって配当を可能にすることで、出資しやすい財務状況にするわけです。
株主に分配する場合、資本金を配当に充てることはできませんから、いったん減資により資本金の額を減少させて配当可能な「その他資本剰余金」を増加させ、その後にその他資本剰余金を原資として剰余金の配当をすることができるようになります。

また、会社の事業を縮小するために減資を行うこともあります。
採算に合わない事業の資産を売却したものの、その売却代金を再投資する投資先が見つからない場合には、その売却代金を株主に返還することが考えられます。有効な投資先が見つからない場合には、その資金は株主に返還した方が、会社の資本効率向上の観点からいえば望ましいといえます。
ただし中小企業の場合には、資金調達は容易ではないことから、手元資金を厚くしておきたいものです。したがって中小企業の場合では、実際には株主に対して資本の払戻しを行うケースは少ないといえます。

(1)有償減資とは

有償減資とは、資本金の額の減少のうち、会社の財産の減少を伴うものです。「実質的減資」と呼ばれることもあります。

会社法での減資は、会社財産の減少を伴わず資本金の額を減少させるのみの手続き(旧商法の「無償減資」)と整理されました。
そして、会社法では、旧商法と違い金銭等を交付することによって資本金を減少させるという概念がなくなり、減資を行うことと金銭等を払い戻すこととは別の取引として扱われることになりました。そのため、法的には有償減資という言い方はしなくなりました。

旧商法の有償減資のように減資によって金銭を交付して資本そのものを減少しようとする場合には、資本金の減少とあわせてその他資本剰余金の増加(無償減資)の後に、増加したその他資本剰余金を原資とした剰余金の分配を行う手続きによって、株主に払い戻しを行うか、または、自己株式を取得して同日以降その消却を行うことになります。
このように、資本金の額の減少とその後の剰余金の配当とを一連の取引として実施することによって、旧商法の有償減資と同様の効果を得ることが可能なため、ここでは有償減資と呼び説明します。

(2)無償減資とは

無償減資とは、資本金の額を減少させるのみの減資で「形式的減資」と呼ばれることもあります。
つまり、資本金の額の減少のうち、会社の財産の減少を伴うものが有償減資、伴わないものが無償減資ということになります。
たとえば、資本金の減少額の全額を「その他資本剰余金」に計上する場合には、以下の会計処理を減資の効力発生日に行うことになります(資本金の減少額を20,000とします)。

借方 貸方
資本金 20,000 その他資本剰余金 20,000

無償減資は、純資産の内訳を組み替えているに過ぎないわけで、純資産の額は変わらず、当然資産にも変化はありません。無償減資を行う理由は、減資によって増加した「その他資本剰余金」を、赤字が続いている会社の欠損てん補に充てて欠損金額を減らすことができるためです。
資本剰余金と利益剰余金は、混同することが禁じられていますが、利益剰余金がマイナス残高の時にその他資本剰余金で補てんすることは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないとされています。

参照:企業会計基準委員会 「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」

その他資本剰余金で欠損金額をてん補することができれば、貸借対照表上で繰越利益剰余金がマイナス表示されない場合でも税務上は繰越欠損金が減少したとは取り扱われず、そのまま次期以降に繰り越すことができます。
また、無償減資により資本金が少なくなることによって、税金が優遇される場合もあります。

(3)100%減資とは

経営不振や財務的困難に陥った会社を再建するため、会社更生や民事再生の過程で、既存株式の100%減資とスポンサーに対する第三者割当増資が行われることがあります。この第三者割当増資を含むスキーム全体を、100%減資と呼ぶことがあります。

具体的なスキームとしては、発行済株式のすべてを全部取得条項付種類株式に変更し、この全部取得条項付種類株式を会社が無償で取得します。その後、無償減資を行うと同時にスポンサーから第三者割当増資を受けます。無償取得した全部取得条項付種類株式は消却することで、再生前の発行済株式のすべてがなくなります。このスキームを通じて、無償減資による欠損てん補を実現し、株主を刷新することができるため、企業再生の手段として用いられます。
たとえば、オーナー企業においてオーナーが保有する株式を会社が無償で買い受けたうえで、買収先に大規模な第三者割当増資を行うことで、抜本的に財務内容を改善し、株主を交代することができます。

100%減資のメリットは、経営を悪化させた既存株主を強制退場させることで経営責任を明確化できるという点にあります。既存株主にとっては、強制退場させられ権利を奪われることになり、不利益を受けますが、スポンサーによる資本注入なしに事業の継続ができない状態であるため、事業再生のためには、この方法がとられることがあります。

減資をする際に必要な手続き

減資によって資本金を減少させる場合には、株主総会の特別決議が必要です。また、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し資本金等の額の減少について、異議を申し立てることができます。

(1)減資は株主総会決議が必要

資本金を減少させる場合には、株主総会の特別決議によって、以下の事項を定める必要があります。

①減少する資本金の額
②減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨および準備金とする額
③資本金の額の減少がその効力を生じる日

なぜ株主総会の特別決議が必要なのかといえば、それは「基本的に株主の払込財産である資本金を、株主に分配可能なその他資本剰余金に変えることが、事業規模の縮小など会社の根幹に関わる事態を生じることが多いため」とされています。

なお、欠損のてん補を目的として欠損の額を超えない範囲で、資本金の額を減少する場合には、新たに分配可能な剰余金の発生がなく、株主に不利益がないため、株主総会の普通決議でよいとされています。

また、資本金の額の減少と同時に株式を発行し、資本金の減少の効力発生日後の資本金の額が効力発生日前の資本金の額を下回らない場合には、業績不振企業のスポンサーによる再生を迅速に実施するため、取締役または取締役会の決議でよいとされています。

①通常の減資:株主総会の特別決議
②資本金の減少額の全額を欠損の補填にあてる場合:株主総会の普通決議
③新株の発行も同時に行うため資本金の額が変わらない場合:取締役会決議

(2)減資に関する債権者の異議手続き

減資は、特殊な例を除き一般的には株主にとって利益があり、会社債権者にとっては不利益な行為です。なぜなら、減資をすると株主に対する配当などを行いやすくなり、会社財産が流出しやすくなるからです。

したがって、株式会社が資本金の額を減少する時には、その会社の債権者は、異議を申し立てることができます。
この場合には、株式会社は以下の事項を官報に公示して、一定の債権者には個別に催告する必要があります。

①資本金の額の減少の内容
②株式会社の計算書類に関する以下の事項
・最終事業年度に係る貸借対照表を公告している場合にはその検索方法
・特例有限会社であるために公告を要しない場合にはその旨
・最終事業年度がない場合にはその旨
・これら以外の場合には、最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
③債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

債権者が上記③の期間内に異議を述べなかった時には、その債権者は資本金の額の減少について承認をしたものとみなされます。
もし債権者が異議を述べた時には、株式会社は資本金を減少しても、債権者を害するおそれがない時をのぞき、その債権者に対して弁済を行うか、相当の担保を提供するなどする必要があります。

(3)減資の登記

減資の効力が発生した時には、効力発生後、本店所在地を管轄する法務局へ2週間以内に変更登記をしなければなりません。この時には、株主総会議事録、公告、個別催告の実施を証明するための書面の添付が必要です。
必要な手続きの詳細については、司法書士等に確認してミスのないように手続きを行いましょう。

減資で必要な会計処理

無償減資は、単なる資本金という計数の減少であり、税務上資本金等の額に変動はありません。また、資本の払戻も生じないのでみなし配当による課税関係も発生しません。

一方、減資に伴い剰余金の配当を行う場合(従来の有償減資)には、資本の払戻が生じるので、払戻額のうち当該払戻株式に対応する部分を上回る額がみなし配当として課税されます。税務処理は複雑であるため、詳細については税理士に確認しましょう。
なお、有償減資と無償減資の会計処理については、以下のとおりです。

(1)有償減資の会計処理・仕訳

有償減資の場合には、会計処理を以下のように行います。

A社は、令和3年6月の株主総会において、資本金の額を100減少し、その他資本剰余金とすること、およびその効力発生日を7月1日とすることを決議した。なお、当該資本金の額を減少した効力発生日において、増加した剰余金100を配当することについても、併せて決議した。

効力発生日令和3年7月1日

・資本金の額の減少額

借方 貸方
資本金 100 その他資本剰余金 100

・剰余金の配当額

借方 貸方
その他資本剰余金 100 未払配当金 100

(2)無償減資の会計処理・仕訳

無償減資の場合には、会計処理を以下のように行います。

A社は、令和3年6月の株主総会において、資本金の額を100減少し、その他資本剰余金とすること、およびその効力発生日を7月1日とすることを決議した。

効力発生日令和3年7月1日

・資本金の額の減少額

借方 貸方
資本金 100 その他資本剰余金 100

まとめ

以上、減資についてご紹介しました。
減資は資本金の額を減少させる行為であり、特殊な減資を除いてはそれ自体が株主に不利益を課すものではありません。しかし株主・債権者にとって不利益になる減資もあることから、手続きには株主総会決議、債権者の異議などが必要になります。
また、減資の効力が発生した時にはその旨を期限以内に登記しなければなりません。

減資について相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では数多くの事務所の中から減資の手続きについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

\ 減資について相談できる税理士を検索 /

都道府県
業種

この記事の監修者:InnOpe合同会社

監修者:InnOpe合同会社

藤山 祥紀ふじやま よしのり

InnOpe合同会社 代表
幅広いスキルセットで、お客様のオペレーションの変革を全力でサポートします

減資には経営の立て直しができるなどのメリットがあるため、業績不振企業の事業再生でよく利用されます。しかし、株主・債権者にとって不利益となるケースがあることから、適正な手続きが求められます。
通常の減資の場合は株主総会の特別決議が必要ですし、資本金の減少額の全額を欠損の補てんに充てる場合には、株主総会の普通決議が必要です。また、新株の発行を同時に行い資本金の額が変わらない場合には、取締役または取締役会の決議が必要となります。
さらに、債権者に対して個別催告などの手続きが必要になります。
これらの手続きや利害関係者への説明が適正に行われていなかった場合には、後々大きなトラブルにつながる可能性がありますので注意が必要です。
また、減資による納税額についても、事前に正確にシミュレーションすることが必要です。
したがって、減資のための具体的な手続きや効果については、事業再生の専門家や、公認会計士・税理士等の意見を聞きながら、総合的な視点から意思決定を行うことが大切です。
InnOpe合同会社は、クラウド会計やダッシュボードを活用することで、自社の損益・経営状況をタイムリーに把握することを目指し、状況に応じて適切な意思決定を行うためのサポートを行っております。
全国を対象にサービスを提供させていただいておりますので、まずはお気軽にお問合せください。

・M&Aとは|M&Aの方法、種類、交渉から契約締結まで
・M&A|方法・成功させるポイント・売却価格をわかりやすく
・事業承継の方法|まず検討すべき3つの承継方法
・営業キャッシュ・フローとは|投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローとの関係
・剰余金とは|資本剰余金や利益剰余金とはどう違う?
・営業外収益とは|勘定科目・特別利益との違い
・財務諸表とは|財務三表を図入りで分かりやすく
・粗利とは|粗利率・粗利伸び率の計算式を分かりやすく!
・自己資本の意味・他人資本との違いとは
・営業利益とは|売上総利益・経常利益との関係
・財務分析|4つの重要ポイントと16の財務指標
・経営指標のまとめ|経営指標の計算式一覧&業種別平均値
・減資とは|意味と必要な手続き、仕訳を分かりやすく
・売上債権回転期間とは|計算方法は?長い理由・短い理由は?
・のれんとは|償却方法・仕訳法
・M&Aを活用した事業承継の3つのメリットと3つのデメリット
・負債比率とは|計算式・目安・業界平均
・ERPとは?メリット・デメリットは?
・総資本回転率とは|計算方法・業種別平均値を分かりやすく解説!
・売上高経常利益率|計算式・業種別平均
・固定費と変動費の違いとは
・インタレスト・カバレッジ・レシオ|意味・計算式・目安
・当座比率|意味・計算方法・流動比率との違い(初心者向け)
・事業承継(M&A)の相談先まとめ
・事業承継でM&Aを活用するメリット・デメリット
・事業承継でM&Aを活用する方法と具体的な流れ
・事業承継の後継者を選定する際のポイント
・事業承継とは|意味・対策が必要な理由とは

InnOpe合同会社の監修記事

 

PageTop