個人事業主と法人の並立について
サラリーマンとして、これまで培ったノウハウと人脈を利用して、独立を予定しております。とりあえず個人事業主でスタートする予定ですが、社会的信用が問われる業種のため、できるだけ早いタイミングで法人(一人会社)を設立しようと考えております。
ところが、退社後すぐに契約を見込んでいるクライアントAから、個人としての業務委託契約(コンサルティング契約)を提示されているため、以下の形で、個人事業主としての契約を残しつつ、法人を並立させる形を想定しています。
1)個人事業主:クライアントAとの、業務委託契約に基づいた業務
2)法人(設立予定の一人会社):その他のクライアントとの業務
ちなみにクライアントAとその他のクライアントは、いずれも同業種となりますが、クライアントAの展開地域では他のビジネスは一切行わない、他社との契約前にクライアントAに事前に確認を取る等により、利益相反を回避できると考えております(クライアントAと合意済み)
調べた限り、このようなかたちで法人と個人事業主の並立させることは可能かと思うのですが、以下の点について注意が必要だと理解しています。
a) 法人と個人を分けるべき明確な理由あるべき
b) 法人と個人、それぞれの事業の境界線が明確であるべき
c) 税務署に対して、租税回避目的(個人事業と法人の間での利益供与など)ではないことが立証する必要あり
これらに対し、
上記a:取引先(クライアントA)との契約の条件であるため
上記b:一義的には、展開地域等で分ける。さらに今後、新規開拓をすすめるなかで、グレーな業務内容も出てくる可能性はあるが(例:グローバル市場を対象としたコンサル業務等)、利益相反の問題と捉えるかぎりは、クライアントAおよび一人会社の代表である自分が了解している限り問題とならない
上記c:法人・個人の両方で確定申告するのはもちろんのこと、それぞれを完全に別の立場で会計処理して対応可能
という理解で問題ないでしょうか?
なお、確定申告が二重になる等のデメリットは承知しております。租税回避目的で法人と個人を使い分けることは税務署から問題視されると認識しておりますが、今回のケースは、あくまでクライアントAとの契約条件が理由であり、節税の観点からはむしろ不利になるのではないかと考えています。
アドバイスいただければ幸いです。
荒井会計事務所
- 認定アドバイザー
- 群馬県
税理士(登録番号: 63578), 公認会計士(登録番号: 35025), 社労士(登録番号: 13120156), 行政書士(登録番号: 16140764), 中小企業診断士(登録番号: 421403)
はじめまして。
それぞれの論点についてコメントを付与する形式で回答いたします。
a) 法人と個人を分けるべき明確な理由あるべき
→取引先(クライアントA)との契約の条件であるため
●契約関係においては、相手方は相対する取引先を選ぶことが可能であり、法人設立前からの契約であり、変更できないなどの事由や社会通念上の合理性などが客観的にある場合には差し支えないと考えられます。
ただし、税務的に有利選択をしている場合には、挙証責任が質問者に存在すると考えられるため個人でなければならないというやりとり記録などを保管いただく必要はあると考えます。
b) 法人と個人、それぞれの事業の境界線が明確であるべき
→一義的には、展開地域等で分ける。さらに今後、新規開拓をすすめるなかで、グレーな業務内容も出てくる可能性はあるが(例:グローバル市場を対象としたコンサル業務等)、利益相反の問題と捉えるかぎりは、クライアントAおよび一人会社の代表である自分が了解している限り問題とならない
●利益相反については、1人株主法人である限り問題となるとは考えづらいですが、税務的に納税者有利の選択と結果となる場合には、客観的合理性を求められる可能性はあると考えられます。また、個人への新設法人からの外注などの取引は否認されるリスクが十分にありますので、業務について完全な切り分けは必要であると考えられます。また、規模などもわかりかねますが、役員として報酬を受け取っている場合には、個人事業が事業所得として並行的に成立するかについてはこちらも事業所得の判例などの要件を確認いただき検討いただく必要はあると考えています。
c) 税務署に対して、租税回避目的(個人事業と法人の間での利益供与など)ではないことが立証する必要あり
→法人・個人の両方で確定申告するのはもちろんのこと、それぞれを完全に別の立場で会計処理して対応可能
●法人税や所得税の税率調整(どちらかの税率が低くなるように恣意的に売上や経費を操作するなど)とも捉えられるような行為が、重要性、継続性の原則の観点からもないように留意いただく必要はあると考えられます。お考えの通り、それぞれの実務も会計も切り分けていただく必要があると考えられます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
(法人税の税率 国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
(所得税の税率 国税庁)
- 回答日:2021/09/15
- この回答が役にたった:4
早速のアドバイス、ありがとうございました!!
大変恐縮ですが、追加で何点か確認させていただくこと、可能でしょうか?『また、個人への新設法人からの外注などの取引は否認されるリスクが十分にありますので、業務について完全な切り分けは必要であると考えられます。』⇒こちらは、「個人事業主(である自分)」と「新設する法人(自分の一人会社)」の間の取引は否認されるリスクが高い、という理解でよろしいでしょうか?
『また、規模などもわかりかねますが、役員として報酬を受け取っている場合には、個人事業が事業所得として並行的に成立するかについてはこちらも事業所得の判例などの要件を確認いただき検討いただく必要はあると考えています。』⇒一人会社を設立する際、役員報酬の設定は慎重に検討する必要あり、という理解でよろしいでしょうか?
(まだ十分に検討できておりませんが、当面は報酬ゼロを想定しています。)投稿日:2021/09/15
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荒井会計事務所
- 認定アドバイザー
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税理士(登録番号: 63578), 公認会計士(登録番号: 35025), 社労士(登録番号: 13120156), 行政書士(登録番号: 16140764), 中小企業診断士(登録番号: 421403)
回答へのコメントありがとうございます。
『また、個人への新設法人からの外注などの取引は否認されるリスクが十分にありますので、業務について完全な切り分けは必要であると考えられます。』⇒こちらは、「個人事業主(である自分)」と「新設する法人(自分の一人会社)」の間の取引は否認されるリスクが高い、という理解でよろしいでしょうか?
●法人の事業目的行為と個人事業主の業務範囲などが重なる場合には、同族会社の役員との取引については、法人側からすると、法人の役員としてやるべき業務、個人事業側からすると、個人事業の労務費を他方に経費計上するなどが発生することから、税務上論点となり過去には否認事例等もあります。
『また、規模などもわかりかねますが、役員として報酬を受け取っている場合には、個人事業が事業所得として並行的に成立するかについてはこちらも事業所得の判例などの要件を確認いただき検討いただく必要はあると考えています。』⇒一人会社を設立する際、役員報酬の設定は慎重に検討する必要あり、という理解でよろしいでしょうか?
(まだ十分に検討できておりませんが、当面は報酬ゼロを想定しています。)
●抽象的回答でわかりづらく失礼しました。どちらかというと"事業所得"ではなく、法人経営の傍ら行う個人の事業活動が事業所得の程をなさないため"雑所得"として申告というケースです。事業所得の判断基準は過去最高裁等で判例があり、"自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得(最高裁昭和56年4月24判決)。"と定義されており、該当するかについては個別の判断となります。役員報酬の額の決定は別の論点です。
- 回答日:2021/09/15
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ご質問ありがとうございます!
①法人設立前のクライアントAとの契約条件であり、法人と個人を分けるべき明確な理由もある
②法人と個人、それぞれの事業の展開地域を分けている
③会計処理も個人と法人を完全に分けている
上記3点であれば、税務署にご説明して頂ければ税務上問題はないかと思います。
また、法人ではない個人事業主の業務であることを明確にするために、
クライアントAとの業務委託契約書や請求書等を保管して頂く必要もありますし、経費等の領収書も個人事業主分と法人分も明確に分けて頂く必要があります。
つまり、「会社を犠牲にして自身の利益を追求する」等の利益相反取引に見られないためにも、収入・支出に関するお金の流れについては、個人事業主→個人名義で、法人→法人名義で行われるのを徹底して置くのをお勧めします。
なお、クライアントAとの契約にもよりますが、通常、ご認識の通り、今回の場合所得税と法人税両方課税され、税金面では不利な立場となっております。個人事業主業務と法人の事業目的が同じであれば、ゆくゆくはクライアントAとの業務も法人側で一本化したほうが節税の観点からも有利ではないかと存じます。
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- 回答日:2021/09/16
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