長期保険の満期返戻金や解約返戻金
長期・満期返戻金のある生命保険や損害保険で、満期返戻金や解約返戻金を受け取ったときは一時所得ということでよいでしょうか?
また、支払ってきた保険料は一時所得の計算上マイナスできるとおもいますが、損害保険では掛け捨て部分の保険料はマイナスできないと聞いたのですが、これは掛け捨て部分は経費計上済みであることが理由とすれば、自宅にかけた損害保険の場合は、支払ってきた保険料の全額(掛け捨て部分+積立部分)をマイナスできると考えてよいでしょうか?
■結論
自宅にかけていた損害保険の満期返戻金や解約返戻金は 一時所得に該当し、支払った保険料の全額を控除できます。
■理由
①国税庁から公表されている通達より
国税庁から公表されている所得税基本通達34-4では、保険の一時所得で控除できる保険料について、「満期返戻金や解約返戻金を受け取る者が自ら支出した保険料や掛金」が含まれると定められています。この規定では、掛け捨て部分と積立部分を区別する記載は特にありません。
②事業用保険との違い
事業で使っている建物の損害保険料は、毎年の経費として既に計上されています。このような場合、一時所得でも控除すると「二重控除」になってしまうため、控除できません。
しかし、自宅の損害保険料は経費として計上していないため、一時所得で控除をしても二重控除にはなりません。
■重要なポイント
保険料を掛け捨て部分と積立部分に分けて考えるよりも、「誰がその保険料を支払ったか?」の方が重要です。ご自身が支払った保険料であれば、全額が控除の対象となります。
- 回答日:2025/07/06
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回答した税理士
税理士法人コンダクト・社会保険労務士法人コンダクト
- 認定アドバイザー
- 東京都
税理士(登録番号: 146389), 公認会計士(登録番号: 37781), 社労士(登録番号: 13210277)
回答者についてくわしく知る1. 満期返戻金・解約返戻金は一時所得か?
はい、満期返戻金や解約返戻金を受け取った場合、原則として「一時所得」に該当します。
ただし、保険契約の内容によっては、以下のケースもありますのでご注意ください。
* 保険期間5年以下の一時払養老保険など:金融類似商品の課税対象となる場合があります。
* 保険契約者と受取人が異なる場合:贈与税の対象となる場合があります。
一般的な生命保険や損害保険の満期返戻金・解約返戻金は、一時所得として扱われることがほとんどです。
2. 一時所得の計算について
一時所得の金額は、以下の計算式で算出されます。
一時所得の金額 = (総収入金額 - 収入を得るために支出した金額) - 特別控除額(最高50万円)
この場合の「収入を得るために支出した金額」が、支払ってきた保険料に該当します。
支払ってきた保険料の扱いについて
ご質問の「損害保険では掛け捨て部分の保険料はマイナスできないと聞いた」という点について、これはその通りです。
* 損害保険の保険料:損害保険の保険料は、保険契約の内容によって掛け捨て部分と積立部分に分けられます。
* 掛け捨て部分:その年の損害に備えるためのものであり、基本的には返戻金がありません。この部分は、事業用であれば経費として計上され、個人用であれば保険料控除の対象となります(ただし、生命保険料控除のような控除は、火災保険などにはありません)。
* 積立部分:将来の返戻金(満期返戻金や解約返戻金)の原資となる部分です。
自宅にかけた損害保険の場合
自宅(居住用不動産)にかけた損害保険(例えば火災保険の積立型)の場合、支払ってきた保険料の全額(掛け捨て部分+積立部分)を一時所得の計算上、収入を得るために支出した金額としてマイナスできるかというご質問ですが、これは**「積立部分に対応する保険料のみ」**がマイナスの対象となります。
理由:
ご認識の通り、損害保険の掛け捨て部分は、その年の費用として既に処理されています。個人の方が自宅にかけた損害保険の場合、それは経費にはなりませんが、将来の返戻金を得るための費用とはみなされません。返戻金が発生するのはあくまで積立部分がある場合であり、その積立部分に充当された保険料のみが、一時所得計算上の「収入を得るために支出した金額」に該当すると考えられます。
具体例で考えると:
例えば、10年間で保険料総額100万円(うち掛け捨て部分60万円、積立部分40万円)を支払った火災保険で、満期返戻金として50万円を受け取ったとします。
この場合の一時所得の計算は以下のようになります。
* 総収入金額:50万円(満期返戻金)
* 収入を得るために支出した金額:40万円(積立部分に充当された保険料)
一時所得の金額 = (50万円 - 40万円) - 特別控除額(最高50万円)
= 10万円 - 特別控除額(最高50万円)
= 0円(特別控除額50万円を適用すると)
重要な点:
保険会社から送られてくる「支払通知書」などには、一時所得の計算に必要となる「支払保険料総額」や「積立部分に該当する保険料」が記載されている場合があります。もし明確でない場合は、ご加入の保険会社に確認されることをお勧めします。
まとめ
* 満期返戻金や解約返戻金は一時所得です。
* 一時所得の計算では、収入を得るために支出した金額(支払った保険料)を総収入金額から差し引きます。
* 損害保険の場合、この「支払った保険料」は積立部分に充当された保険料のみが該当します。掛け捨て部分は、既に費用として処理されている(または返戻金の対価ではない)ため、一時所得の計算上、改めて差し引くことはできません。
ご自身の保険契約の内容をご確認いただき、正確な金額を把握することが重要です。
- 回答日:2025/07/06
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回答した税理士
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- 認定アドバイザー
- 愛知県
税理士(登録番号: 100068), 社労士(登録番号: 13210457), 行政書士(登録番号: 16192456), 中小企業診断士(登録番号: 414204), その他
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