公開日:2019年04月09日
最終更新日:2024年02月18日
証券会社で口座開設をするときは、特定口座と一般口座のどちらかを選択する必要があり、さらに特定口座については「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類から選択することになります。
ここでは、特定口座と一般口座の違いや、特定口座の「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の違い、メリット・デメリット、選ぶ際のポイントなどについてご紹介します。
特定口座の豆知識
株や投資信託を売却して利益が出た場合には、サラリーマンも原則として確定申告が必要です。ただし、利用している口座が「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、金融機関が代わりに納税額を計算して納税まで行っているので、確定申告は不要です。
一方、「特定口座(源泉徴収なし)」や「一般口座」の場合には、自分で損益を確認して申告する必要があります。NISA口座は、売却益が非課税なので基本的に確定申告は不要です。
なお、株や投資信託で損失を出した場合には、確定申告の義務はありませんが、損益通算する場合には確定申告が必要です。
損益通算とは、売却益が出ている取引と損失が出ている取引を相殺するしくみで、損失を利益から差し引くことができるので、結果的に節税になります。
ただし、すべての取引が損益通算できるわけではなく、株とFX、株と仮想通貨など損益通算できない取引もありますので注意が必要です。
特定口座とは、証券会社などの金融商品取引業者等で開設する口座のことです。
上場株式等の売却益については、原則として翌年に確定申告をする必要がありますが、この「特定口座」は、確定申告が不要となったり、確定申告が必要な場合でも証券会社等から送られてくる「年間取引報告書」を添付したりすれば申告を簡単に済ませることができるというメリットのある制度です。
投資家が簡易的に確定申告・納税を行うことができるので、ほとんどの方がこの特定口座を選択しています。
特定口座は「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」のいずれかを選択したかによって、確定申告をすべきか否かが異なります。「源泉徴収なし」を選択すると、売却損益の計算まではしてくれますが税金の計算や納税まではしてくれないので、確定申告をする必要があります。
一方「源泉徴収あり」を選択しても、一部の口座で損失が出ている場合には、確定申告をした方がお得なケースもあります。
特定口座を開設する時は、証券会社に「特定口座開設届」を提出して、上場株式等保管委託契約または上場株式等信用取引契約を締結する必要があります。
なお、「特定口座開設届」を提出する時には、個人番号カードや住民票などの本人確認書類が必要です。
株取引を行う口座は、大きく分けて源泉徴収ありの特定口座、源泉徴収なしの特定口座、NISA口座、一般口座の4つに分けることができます。
源泉徴収ありの特定口座 多くの方が選択しているのが「源泉徴収あり」の特定口座(正式名称:源泉徴収選択口座)です。 「源泉徴収あり」の特定口座を選択しておけば、証券会社で売却損益・税金の計算を行ってくれたうえに税金を売却代金から差し引いてもらうことができるので、基本的に確定申告は不要となります。 ただし、一部の口座で損失が出たなど年間トータルで売却損だった場合には、他の口座の損益や配当との通算をすることができるので、確定申告をした方がお得なこともあります。 なぜなら「源泉あり」の特定口座を選んだとしても、複数の口座を持っている場合、全ての口座を合算して税金の計算を行うわけではないため、不利になることがあるからです。 源泉徴収なしの特定口座 一般口座
NISA口座 |
特定口座には、「源泉徴収ありの特定口座(以下「源泉あり」)と、「源泉徴収なしの特定口座(以下「源泉なし」)の2種類があり、多くの方は「源泉あり」を選択しています。
「源泉あり」では、証券会社等が特定口座内の上場株式等や公社債等の譲渡損益を計算して、所得税と住民税を源泉徴収し、さらに投資家の代わりに納税してくれます。
忙しい人や細かい計算が苦手な人には「源泉あり」はとても便利な制度です。
ただし、他の取引との損益通算や各種特例の利用までは対応してもらうことはできません。
利益が出た場合は確定申告が不要ですが、損失が出た場合には確定申告しないと譲渡損失の繰越控除(※後述)を受けることができません。確定申告をすれば、一般口座や他の証券会社の特定口座の譲渡損益と通算して還付を受けたり、損失の繰越控除の適用を受けたりすることができますので、申告するとよいでしょう。
「源泉なし」を選択すると、証券会社等に売却損益の計算まではしてもらうことができますが、税金の計算や納税まではしてもらうことはできませんので、自分で確定申告をする必要があります。
「特定口座取引報告書」を年末から翌年にかけて送付、または証券会社ホームページからダウンロードなどをすることができますので、報告書に基づき、申告書を作成することができます。
これまでご紹介してきたように、特定口座の源泉あり、源泉なしはそれぞれにメリット・デメリットがあります。
源泉徴収ありの特定口座 | |
メリット | デメリット |
・確定申告が不要 ・確定申告をする場合でも「特定口座年間取引報告書」があるので、簡単に済ませることができる。 ・確定申告しない場合でも、課税所得が配偶者控除、扶養控除を判定する際の所得基準に合算されない。 |
・本人の収入や所得の如何に関わらず、利益や配当があれば一律で税金が引かれる。 |
源泉徴収なしの特定口座 | |
メリット | デメリット |
年間の譲渡所得が20万円以下の場合には、確定申告・納税が不要 ・確定申告をする場合でも「特定口座年間取引報告書」があるので簡単に済ませることができる。 |
配偶者控除、扶養控除を判定する際の所得基準に合算される。 ・国民健康保険料の額に影響することがある。 |
「源泉なし」は自分で確定申告をする必要がありますが、自分の収入や所得に応じた税金計算が可能です。
「源泉あり」だと税金が自動的に差し引かれてしまいますが、「源泉なし」なら、税金は差し引かれないので、その分を再投資にまわすことができるというメリットがあります。
たとえば、取引で100万円の利益が出た場合、「源泉あり」だと税金が自動的に引かれてしまうので、手元に入る売却益は約80万となってしまいます。
しかし、「源泉なし」なら税金は差し引かれないので、100万円がほぼ手元に残り再投資に使うことができます。
一見再投資に使える財源があるため良いようにも見えますが、将来の納税資金を確保できないというリスクもあります。
仮に利益を含めた金額を再投資に使用したものの、確定申告、納税時期に再投資した金融資産に含み損が発生している場合、納税資金を確保できないという事態になってしまいます。
そういった意味では、「源泉なし」口座は、投資上級者向けと言うことも出来ます。
「源泉なし」を選択した場合は、年末から翌年にかけて、証券会社等から「特定口座年間取引報告書」が送られてくるか、ホームページ等からダウンロードすることができます。これにより、売買損益の計算の手間を省くことができます。
これまでご紹介したように、特定口座「源泉あり」を選択すれば、その譲渡益の20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の税金を源泉徴収してくれますが、源泉徴収するかしないかは毎年納税者が選択することになっています。
特定口座「源泉あり」を選択した場合でも、上場株式等の譲渡所得が赤字になっている場合で、その赤字の金額を翌年以降に繰り越す時や、上場株式等に係る配当所得等と損益通算をするときは、確定申告が必要になります。
※同一口座内であれば、証券会社が損益通算してくれるケースもあります。
また、別の証券会社の特定口座の損益や一般口座の損益と株式譲渡所得等を通算する場合にも、確定申告が必要です。
確定申告の義務の有無や、確定申告が不要の人でも確定申告をした方がよいケースについては、以下を参考にしてください。
※ただし所得控除で課税される所得がなくなる人をのぞく |
特定口座では、譲渡損益を計算した「特定口座年間取引報告書」が証券会社から交付されます。そして、この「特定口座年間取引報告書」には、特定口座内の年間の譲渡損益・配当金や、それに対する源泉徴収税額が記載されています。記載されている収入金額や譲渡損益の金額を転記することで、確定申告書の作成も簡単に行うことができます。
なお、この「特定口座年間取引報告書」は、証券会社などの営業店の所在地を管轄する税務署にも提出されます。
「特定口座年間取引報告書」では、まず「源泉徴収の選択欄」を確認します。
「源泉あり」を選択している時は「有」に、「源泉なし」を選択している時には「無」に○がついています。「無」に○がついている時には、確定申告が必要となる場合がありますので、忘れずに確認しましょう。
「源泉徴収税額」欄には、所得税と住民税の源泉徴収税額がそれぞれ記載されています。
「譲渡の対価の額(収入金額)」欄には、譲渡収入金額の年間トータル額が表示されます。
「取得費及び譲渡に要した費用の額等」欄には、証券会社等で計算した取得価額などの年間トータル額が表示されます。
「差引金額(譲渡所得等の金額)」欄には、年間の譲渡損益が表示されます。損失の場合は、金額の前に「-」が表示されます。
これらのデータは、確定申告をする際に必要となるデータなので、しっかり確認するようにしましょう。
前述したとおり、株取引で損失が出た場合には、「譲渡損失の繰越控除」を使うことができます。「譲渡損失の繰越控除」とは、損失額を翌年以降3年間繰越して、株の売却益や配当所得と相殺できる制度です。なお、この繰越控除が使えるのは、上場株や公募式投資信託による損失で、未公開株では使えません。
損失を繰越すためには、特定口座、一般口座にかかわらず確定申告をする必要があります。
「特定口座年間取引報告書」の「差引金額」の欄をよく確認するようにしましょう。
参照:SMBC日興証券「「特定口座年間取引報告書」と確定申告について」
株式の売却損の豆知識
株式の売却損は、確定申告によって他の銘柄の株との売買益から、赤字を差し引くことができます。ただし、上場株式等と一般株式等との譲渡損益の相互の通算および給与所得など他の所得の黒字との損益通算はできません。
さらに、その年に控除しきれなかった赤字がある場合、翌年から3年間繰越控除を受けることができます。繰越控除を受ける場合には、その期間中は毎年確定申告書の提出が必要です。
以上、特定口座の内容やメリット・デメリット、「特定口座年間取引報告書」のチェックポイントなどについてご紹介しました。
株取引を行っている人は、「源泉ありの特定口座」を選択している人が多いでしょう。
しかし、確かに「源泉あり」には確定申告が不要であるという大きなメリットがありますが、年間の譲渡所得が20万円以下の場合、納付しなくても済む税金が源泉徴収されてしまうというデメリットもあります。
自分がどのような取引を行いたいかによって、上手に口座を選択しましょう。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、特定口座の確定申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修者
遠藤 光寛えんどう みつひろ
遠藤光寛税理士事務所 代表
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特定口座には、「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」があり、「源泉徴収あり」を選択した場合には確定申告をしなくてもよいことになっています。ただし、「源泉徴収あり」を選択した場合でも、赤字を繰り越す時、上場株式等に係る配当所得等と損益通算する時には、確定申告が必要です(証券会社が損益通算してくれるケースもあります)。源泉徴収のありなしにかかわらず、証券会社から「年間取引報告書」が送られてきますので、確定申告の際にはこの報告書をベースに申告します。当事務所では、個人の資産構築、事業継承、相続問題など、あらゆるお金の問題に対して、戦略的な財務コンサルティングを行うことで「安心」を提供しております。確定申告の疑問点や不明点はもちろん、個人の資産構築のお悩みなどお金に関するご相談は、どんなことでも当事務所にお気軽にお問合せください。