確定申告書Aとは|確定申告書Bとの違いと記入方法(図入り)

公開日:2019年12月25日
最終更新日:2023年02月20日

この記事のポイント

  • 確定申告書Aは、確定申告書Bの簡易版ともいえる申告書用紙。
  • 確定申告書Aは、サラリーマンで医療費控除や住宅ローン控除などの適用を受ける人が使用する。
  • 事業を行っている人などは、確定申告書Aではなく確定申告書Bを使用する。

 

確定申告書には、確定申告書Aと確定申告書Bがあります。
税務署の窓口で聞けば、自分が申告する際にはどちらの申告書を使用すればよいのか教えてもらうことができますが、申告書を国税庁のホームページからプリントアウトする際には、どちらの申告書を使えばよいのかを理解しておく必要があります。

令和5年1月から申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されました。

確定申告書Aとは

確定申告書にはAとBがあります。
確定申告書Bは汎用版なので誰でも使うことができますが、確定申告書Aは申告する所得が給与所得(サラリーマン)・雑所得(公的年金、原稿料や印税など)、一時所得(競馬や競輪の払戻金など)、総合課税の配当所得(株の配当金等)の場合で、予定納税がない場合に使用します。

(1)確定申告書AとBの違い

確定申告書Aは一表から二表まで、確定申告書Bは第一表から第五表までありますが、基本的には第一表と第二表を使用します。また、記入の流れなどは同じです。
確定申告書Bは汎用版なので、誰でも使用することができますが、確定申告書Aの方が項目数も少ないので使いやすく工夫されています。

個人事業主や不動産得がある人は、収入と経費の内訳を記載する収支内訳書か青色申告決算書を作成します。第三表から第五表は全員が提出するわけではなく、必要に応じて使用します。
申告書AとBは自分で選択しなければならず、収支内訳書などの書類を必要に応じて組み合わせて使用することになります。

(2)確定申告書Aを使う人

確定申告書Aを使用するのは、申告する所得が以下のケースに該当する場合です。

・給与所得
給与、パート、アルバイト、賞与、歳暮などによる所得

・一時所得
生命保険の満期保険金、損害保険の満期返戻金、賞金・懸賞当選金、競馬の払戻金などによる所得

・雑所得
公的年金や個人年金、原稿料、講演料、印税、放送出演料、仮想通貨、アフィリエイト収入などによる所得

・総合課税の配当所得
株式の配当金等を総合課税で確定申告することを選択した場合の所得

サラリーマンは原則として勤務先の会社で申告・納税をしてくれるので確定申告をする必要はありませんが、2カ所以上から給与をもらっている人や、副業による所得が20万円を超える人、給与の収入が2,000万円を超えている人は、確定申告をする必要があります。

また、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人や、年間の医療費が10万円を超える人、ふるさと納税などの寄付をした人、台風や地震、火災、盗難などの被害に遭った人は、確定申告をすれば税金が戻ってくることがあります。

サラリーマンでも、副業(事業所得になるもの)がある人や、アパートやマンションなどの賃料などの不動産所得がある人は青色申告ができます。そのときは確定申告書Bを使用して税金の計算を行うことになります。

サラリーマンが医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合には、確定申告書Aを使います。申告書Bより項目が少なく、記入するうえで迷うことがないというメリットがあります。

確定申告書Aを使用する人
たとえば…
・サラリーマンで医療費控除、寄附金控除、雑損控除を受ける人
・サラリーマンで住宅ローン控除を受ける人
・所得が年金(国民年金、企業年金、個人年金)のみの人
・所得が給与と年金のみの人
・アルバイトの原稿料収入がある人
・株式の配当金を総合課税で確定申告する人
・2カ所以上から給料をもらっている人

(3)確定申告書Aの基本

確定申告書の基本は、第一表と第二表です。それぞれ2枚つづり(提出用・控え用)となっています。
確定申告書は、第二表から書き始めるのが原則です。
第一表には、第二表から自分の申告に必要な該当項目を抜粋して転記していきます。第一表は、上から順番に記入していけば完成するつくりになっています。

A:所得控除についての記入欄
B:収入金額、所得金額の記入欄
C:税額計算の欄

確定申告書Aの作成方法

確定申告書Aの第二表は、第一表の内訳書のようなものです。
はじめに第二表を記入し、次にその内容を第一表に転記するのが、作成するうえでのポイントです。

(1)確定申告書Aの作成に必要な書類

確定申告書Aの作成に必要な書類を準備します。

サラリーマンの場合には、給与の源泉徴収票を用意します。
医療費控除の適用を受けたい人は、医療費の通知書、寄附金控除の適用を受けたい人は、寄付金の領収書を用意しておきましょう。

住宅ローン控除の適用を受けたい人は、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、登記事項証明書などが必要です。

(2)確定申告書Aは第二表から記入する

第二表では、所得や所得控除の内訳などを記入します。
第二表には、所得の内訳や住民税に関すること、配偶者控除や生命保険料控除といった所得控除について記入します。これらの所得や出費が分かる書類(源泉徴収票や控除証明書など)をもとに転記したり計算したりします。

源泉徴収票と確定申告書Aの転記項目

なお、第二表は主に第一表の内訳を記入する書類ですが、第一表と第二表は、記入欄の頭にある丸文字が対応しているので、迷わず記入することができます。

①「所得の内訳」
「所得の内訳」は「給与」と記載し、源泉徴収票を見ながら勤務先の名称、源泉徴収票の「支払金額」を「収入金額」に記入し、源泉徴収票の「源泉徴収税額」を転記します。副業の収入がある場合や2カ所以上から収入がある場合には、それもあわせて記入します。
雑所得とは、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料などの所得です。
配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当、投資信託の収益の分配などによる所得です。一時所得とは、生命保険の満期保険金(一時金)、損害保険の満期返戻金、解約返戻金、賞金、懸賞当選金、競馬や競輪の払戻金、遺失物拾得の報労金などによる所得です。
これらの所得がある人は、記入します。

②「一時所得」
一時所得がある場合に、記入します。一時所得とは、生命保険の満期保険金(一時金)、損害保険の満期返戻金、解約返戻金、賞金、懸賞当選金、競馬や競輪の払戻金、遺失物拾得の報労金などによる所得です。
これらの所得がある人のみ、記入します。

③配偶者や親族に関する事項
控除対象の配偶者や扶養家族のマイナンバーを記入します。

④所得控除
源泉徴収票を添付する際には、源泉徴収票に記載されている項目や金額については、申告書に「源泉徴収票のとおり」と記入することもできます。
雑損控除、医療費控除、寄付金控除の3つは、会社で年末調整をしてくれないので、自分で申告しないと損をしてしまいますので、注意が必要です。

(3)確定申告書A第一表は第二表から転記する

第二表を記入したら、第一表の作成です。
第二表はおもに第一表の内訳に相当しますので、第二表の内容を見ながら、第一表の該当事項を順番に記入していきます。

①収入と所得を記入
「収入」とは、個人事業主なら売上金額、サラリーマンなら源泉所得税や社会保険料を差し引く前の給与額をいいます。
「所得」とは、収入から必要経費(サラリーマンの場合は給与所得控除額)を差し引いたものです。

②所得から差し引く控除額を記入
「所得控除」とは、一定の条件を満たしていれば所得から差し引くことができ、課税されないものをいいます。所得控除は全部で15種類あり、適用される控除の種類、金額が多ければ多いほど節税効果があります。
サラリーマンは会社で年末調整をしてくれますが、雑損控除、医療費控除、寄付金控除は自分で確定申告をする必要があります。
原則として、会社からもらった源泉徴収票から各数字を転記して、雑損控除、医療費控除、寄付金控除が該当する場合には、その旨を記入します。

③本来の所得税額を計算
①で計算した「所得の合計」から、②で計算した「所得控除の合計」を差し引き、「課税される所得金額」を算出します。それに税率(金額によって異なります)をかけて、本来の所得税額を求めます。
所得税の税率は、課税所得ごとに税率が異なります。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

参照:国税庁「所得税の税率」

④税額控除額等を差し引く
税額から直接差し引いて税額を減らすことができる税額控除(住宅ローン控除など)が該当する場合には、その旨を記入します。
税額控除は、所得控除より節税効果が大きいので、忘れずに記入するようにしましょう。

⑤所得税・復興特別所得税を計算
所得税・復興特別所得税を計算します。
2037年までは、所得税に加えて復興特別所得税もあわせて申告します。
復興特別所得税の金額は、所得税額から直接差し引ける配当控除、(特定増改築等)住宅借入金特別控除、政党等寄付金等特別控除、住宅耐震改修特別控除などを差し引いたあと、基準所得税(再差引所得税額)に対して、2.1%を掛けた額となります。
復興特別所得税額と再差引所得税額を合計したものを「所得税及び復興特別所得税の額」欄に記入しましょう。

⑥源泉徴収税額を記入し納税額を計算
⑤で計算した「所得税及び復興特別所得税の額」から、すでに徴収されている「源泉徴収税額」を差し引いた金額が納税額または、還付金となります。

⑦延納の申し出や還付金の振込先口座など
税金が戻ってくる場合には、自分の銀行口座などの情報を記入します。

(所得の合計額-所得控除の合計額)×税率-税額控除等=差引所得税額
差引所得税額×2.1%+再差引所得税額=所得税及び復興特別所得税の額
所得税及び復興特別所得税の額-源泉徴収税額=納税額または還付金

(4)確定申告書作成コーナーがおすすめ

確定申告書Aは手書きで作成することもできますが、記入や計算が面倒で記入の仕方が分かりにくい項目も多々あるでしょう。
その場合には、確定申告書作成コーナーを活用するのがおすすめです。
パソコンやスマホ、タブレットから、画面の指示に従って必要事項を入力していきます。
用語説明もありますし、入力した金額は自動計算してくれるので、初めての人でも簡単に作成することができます。

▶ 確定申告書等作成コーナー

所得を選択します。

事業所得:自営業、農漁業
不動産所得:不動産経営
利子所得:金融商品などの利子
配当所得:株式などの配当
給与所得:サラリーマンの給与
雑所得:公的年金・本業以外の所得(その他)
綜合譲渡所得:不動産以外の譲渡所得
一時所得:一時的な所得

ガイドに従って、必要事項を入力します。

確定申告書等作成コーナーを利用するための事前の準備については、以下の記事でご紹介しておりますので、参考にしてください。

▶ e-taxによる確定申告|やり方・添付書類・確認方法

(5)確定申告書Aの提出方法

確定申告書Aは、①e-Taxで送信する、②税務署に持参する、③税務署に郵送する方法があります。

①e-Taxで送信する
確定申告書等作成コーナーで作成した申告書を、オンラインで提出する方法です。

②税務署に持参する
確定申告書等作成コーナーで作成した申告書または手書きで作成した申告書を税務署に持参する方法です。控えも一緒に提出して、税務署で「収受日印」を押してもらいましょう。

③税務署に郵送する
確定申告書等作成コーナーで作成した申告書または手書きで作成した申告書を税務署に郵送する方法です。控えも一緒に提出して、税務署で「収受日印」を押して返送してもらいましょう。自分の住所氏名を書いて必要な額の切手を貼付した返信用封筒を同封します。
なお、確定申告書は「信書」ですから、ゆうパックやゆうメールでは送付できません。

確定申告書Aのまとめ

確定申告書は、サラリーマンなどの給与所得者が使う確定申告書A、個人事業主など自営業者が使う確定申告書B、土地、建物や株式などの譲渡所得がある人が使う確定申告書第三表(分離課税用)などがありますが、項目などはどれも共通しています。
確定申告書Aは手書きで作成することもできますが、確定申告書等作成コーナーを利用するのがおすすめです。
また、不明点や疑問点があったり時間がなかったりする場合には、税理士に依頼するのもひとつの手です。
サラリーマンの医療費控除や副業の申告など、簡単な内容であれば3万円程度の税理士報酬がかかりますが、ミスなく適切に申告を行うことができます。

確定申告書Aについて相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から所得税の申告や、確定申告書Aの作成方法について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

確定申告について相談できる税理士をさがす

この記事の監修者

監修者

遠藤 光寛えんどう みつひろ

遠藤光寛税理士事務所 代表

確定申告書Aは、申告する所得が給与所得、雑所得、配当所得、一時所得の方を対象としており、確定申告書Bは、どのような種類の所得の場合でも使用できる、すべてのケースに対応する様式です。また、申告書Bには「分離課税用(第三表)」、「損失申告用(第四表)」が用意されていて、必要な人はこれらを組み合わせて使うことになっています。たとえば、損失を繰り越す人などは、申告書Bに加えて損失申告用の申告書も使います。確定申告書Aは、令和5年(2023年)1月から廃止され、申告書Bに一本化されます。
確定申告については、この記事でご紹介した申告書の記入方法以外にも、「自分の所得が何なのか」「どのような所得控除を受けられるのか」など、分かりにくい点も多いものです。そのようなときには、お気軽に遠藤光寛税理士事務所にお問合せください。
遠藤光寛税理士事務所は、法人・個人に限らず、それぞれの立場で抱える「お金の問題」を解決することを使命としている税理士事務所です。
国税局出身のお金と税のプロフェッショナルが、正しい財務コンサルティングを行います。確定申告に関するご相談はもちろん、老後の資産形成、お金のプライベートレッスン、経営相談など幅広いご相談に対応しております。「あの時にこうすればよかった」と、後悔しないために「正しいお金の知識」を提供してまいります。

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