公開日:2019年12月04日
最終更新日:2024年07月22日
競馬や競輪などのギャンブルで得た利益は、「一時所得」として年間50万円を超えていれば確定申告が必要となります。
しかし、競馬や競輪などで得た利益が、「一時所得」ではなく「雑所得」と認められる判例が、2017年に下されました。
「一時所得」か「雑所得」かによって、所得税額の計算方法が変わってきますし、必要経費の認められ方も大きく変わることから、この判例は大変注目されました。
競馬の馬券の豆知識
一時所得には、最大50万円の特別控除があるため、収入から「収入を得るために要した費用」を引いた額から、さらにに50万円引いた所得の1/2に税金がかかるのですが、給与所得と合算した時には税率が変わる可能性もあります。
また、競馬の払戻金の額自体は申告不要な少額なものであっても、ほかに生命保険の一時金などがある場合には、合算すると申告が必要になる場合もあります。
「競馬を事業として行っている」として外れ馬券が経費と認められたケースがある一方で、競馬の高額配当を税務申告しなかったとして、有罪判決を受けた例もあります。
「自分の場合には、外れ馬券が経費となるのかならないのか」「確定申告の必要性はあるのか」については、税理士に相談してから判断することをおすすめします。
所得税法では、所得の種類を10種類に分類していて、それぞれ計算方法が異なります。
サラリーマンなどが得る給与や賃金は「給与所得」であり、個人事業主などが得る利益は「事業所得」となります。
そして、競馬などギャンブルで得た利益は、通常は「一時所得」となります。
一時所得の課税所得額(※税額の計算の対象となるもの)は、「総収入金額-収入を得るために要した費用-50万円)×2分の1」で計算します。
一時所得の金額={収入金額-収入を得るための費用-特別控除額(50万円)×1/2 |
---|
一時所得に区分される所得は、競馬や競輪などのギャンブルで得た利益のほか、生命保険や養老保険の保険金、懸賞の賞金、福引の当選金品などがあります。
そして、一時所得の課税所得は「総収入金額-収入を得るために要した費用」が年間50万円を超えていれば特別控除である50万円を超えることになりますので、確定申告が必要となります。
一方、「総収入金額-収入を得るために要した費用」が年間50万円を超えていなければ、確定申告は必要ありません。
総収入金額 - 収入を得るために要した費用 > 年間50万円 → 確定申告が必要 総収入金額 - 収入を得るために要した費用 < 年間50万円 → 確定申告が不要 |
---|
なぜ年間50万円を超えていなければ確定申告が必要ないかというと、一時所得の特別控除額が認められるからです。
一時所得の特別控除額は、
総収入金額-支出した金額が50万円未満の場合は、その全額
総収入金額-支出した金額が50万円以上の場合は、50万円
となります。
なお、この時の「収入を得るために要した費用」とは、生命保険や養老保険の保険金の場合には、必要経費となる払込保険料などが該当しますが、たまに競馬を楽しむ人の場合の外れ馬券は経費とならず、当たり馬券の購入代金は必要経費として認められます。
先ほどご紹介したように、たまに楽しむ程度の競馬の払戻金は、「一時所得」に該当します。
一時所得は、事業ではないことから原則として必要経費は認められず、所得金額は以下のように計算します。
(総収入金額-収入を得るために要した費用-50万円)×2分の1…所得金額 |
たとえば、年間の馬券の払戻金合計が200万円だった場合で、1年間にその当たり馬券を購入した合計額が100万円だった場合には、以下のように計算します。
200万円(総収入金額)-100万円(当たり馬券購入費)-50万円(特別控除)×1/2=25万円…所得金額 |
一時所得は、事業ではないとして原則的に必要経費は認められません。
なぜなら、仮に外れ馬券が経費になれば、勝つまで馬券を買い続けることができることになってしまいます。
そのため、ギャンブルで得た収入は事業ではなく必要経費とは認められないとされていますが、2017年に、「競馬を事業として行っている場合には、外れ馬券は経費である」という判決が最高裁で確定されました。
この裁判は、競馬の外れ馬券が経費であるか争われた裁判で、最高裁判所では、外れ馬券を経費であると認めたのです。
札幌に住んでいる原告の男性は、平成22年までの6年間、インターネットで計72億円の馬券を購入し、合計約5億7,000万円の収入を得ていました。
男性は、競馬を事業として行っており、馬券で得た収入は「雑所得」であるとして、外れ馬券を経費に算入して申告していました。しかし、札幌国税局は外れ馬券の購入代金を経費と認めず、約1億9,000万円の追徴課税を行いました。
ところが、最高裁判決では男性の訴えが認められ、外れ馬券を経費と認めたため、課税処分が取り消されることになったのです。
(※収入より経費の方が多くなり赤字であるため)
前述したとおり、競馬が単なる趣味であり一時所得と判断される場合、事業ではないとして外れ馬券は経費と認められませんが、この裁判では、「馬券の購入が、この男性の経済的な活動であり、事業としての実態がある」と認定され、外れ馬券が経費と認められることになりました。
外れ馬券を経費と認めた判例は、他にもあります。
2015年3月10日、最高裁は自動購入ソフトを使ってネットで大量の馬券を購入していた大阪の男性の行為は「営利目的の継続的行為」であるとして、払戻金は雑所得であり外れ馬券は経費と認める判断を下しました。
営利を目的とする継続的行為から生じた雑所得に当たるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間、その他の状況等を総合考慮して判断するのが相当である。一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの事実関係の下では、払戻金は雑所得に当たる。 |
競馬は通常事業、経済的な活動ではないとされますが、競馬を事業として行っていた場合には、「雑所得」として外れ馬券が必要経費となります。
つまり、「事業としての実態がある」ことが、雑所得となる条件であり、雑所得と認定された場合には、外れ馬券が必要経費と認められることになります。
国税庁では、これらの判決を受けて、一時所得について以下のような通達を出しています。
次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(1) 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。) (2) 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。) (注) |
以上、競馬にかかる税金についてご紹介しました。
競馬による利益は、一時所得か雑所得かで必要経費に認められる範囲が異なり、税額が大きく変わってきます。
もし、競馬で得た収入が事業、経済活動であり「営利目的の継続行為である」と認められた場合には、雑所得となり、外れ馬券も必要経費とすることができます。
また、外れ馬券以外にも、競馬に関する書籍などが必要経費と認められる可能性もあります。
競馬を事業として行っていて、「営利目的の継続行為」として行っている場合には、早めに税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
競馬の馬券の豆知識
競馬は、運任せでは競馬に勝つことは難しいものです。大きく勝とうとするとそれだけ失敗する可能性が高くなります。したがって、初心者が競馬で大儲けをしようとするのはNGで、あくまで副業として趣味として、余力資金で楽しむことが大切です。
まずはリターンが小さくても、確実に勝てそうな馬券を買って楽しみます。自力で予想を的中するためには、時間をかけ場数を踏むことが必要でしょう。
とはいえ、勝利が確実な馬だけを狙っても、オッズが低いためそれほど儲けることはできません。そこで、対策としては並行してオッズ3倍あたりの馬券を購入するのもひとつの手です。当たるか可能性は低いですが、当たれば損した分を取戻して次回の資金とすることができます。
競馬による払戻金は、一時所得に該当しますが、給与所得と合算した時には税率が変わる可能性もあります。
また、競馬の払戻金の額自体は申告不要な少額なものであっても、ほかに生命保険の一時金などがある場合には、合算すると申告が必要になる場合もありますので注意が必要です。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から競馬の税金や確定申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 競馬の税金について相談できる税理士を検索 /
監修者
遠藤 光寛えんどう みつひろ
遠藤光寛税理士事務所 代表
法人・個人の皆様の「お金の問題」に誠実に対応し解決します!
一時所得については、申告義務があるにも関わらず確定申告を行わないケースもあります。しかし、税務署に指摘されると、通常かかる税金に加えて重加算税などの追徴課税を課せられる場合もあります。
「競馬を事業として行っている」と認められたケースは確かにありますが、競馬の高額配当を税務申告しなかったことで、所得税法違反に問われて有罪判決を受けた例もあるのです。
したがって臨時収入があった場合には、前もって課税対象かどうかを税理士に確認することをおすすめします。
競馬の税金に限らず、正しい納税、そして正しい節税を行うためにも、身近な税金のしくみや基本的な制度は知っておく必要があります。
遠藤光寛税理士事務所は、税金に関わらずあらゆるお金の問題について、法人・個人を問わず、戦略的な財務コンサルティングを行っています。
お金の問題は、仕事や生活のうえで不可欠ともいえるものです。「どのような税金があり、どのように納めるのか」「老後の資産について不安をなくすためには、どのような資産形成を行えばよいのか」など、皆様のお金に関するあらゆる問題に対して、財務コンサルタントが丁寧にお答えいたします。
・一時所得の支払う納税額に関して 「競馬などで得た一時所得で支払う納税額に関して質問いたします。 会社員として給与所得を受け取りつつ競馬で一時所得を得て、納税の必要が出た場合、一時所得に他の収入額を合算した額に税金が掛かるかと思いますが、…」 |
・給与所得者に一時所得が発生した場合の所得税率について 「今年は、競馬の払戻金で約1100万円の所得がありました。最高裁の判例を見ると、億単位での払戻金については雑所得に認定されてますが、雑所得認定は2例しかなく特別な事例のようです。…」 |