公開日:2019年12月03日
最終更新日:2024年07月28日
扶養控除とは、「年間の合計所得が48万円以下」「生計を一にする」など一定の要件を満たす扶養親族がいる人が受けられる控除です。
家族がいてその面倒を見なければならない時には、独身者より生活費の負担が重くなります。そこで税法では、このような事情に考慮して家族の人数に応じて税負担を軽減しようとする措置を設けているのです。
この記事では、扶養控除の対象となる扶養親族の範囲や扶養控除額、お得な扶養のつけ方などについてご紹介します。
扶養控除の豆知識
子どもや両親などの親族を扶養していて、一定の条件を満たす場合には扶養控除の対象となります。扶養控除の適用を受けるための条件は、扶養親族が16歳以上の6親等内の血族か3親等内の姻族であること、扶養親族の合計所得が48万円以下(年収103万円以下)であることなどで、年齢などに応じて、控除額が異なります(1人38万円~63万円)。
サラリーマンは、会社の年末調整で控除されますが、年末調整で申告しなかった場合には確定申告をすれば税金が戻ってくる可能性があります。個人事業主は、毎年原則として確定申告が必要です。
扶養控除等の見直しについて
令和7年度の税制改正において、令和8年分以降の所得税と令和9年度以降の個人住民税の適用について、検討されます。
16歳から18歳までの扶養控除について、現行の一般部分(国税38万円、地方税33万円)に代えて、特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、地方税33万円)が復元され、ひとり親控除の控除額も見直しが進められています。
扶養控除とは、16歳以上(その年の12月31日現在)の子どもや親、親族を養っている場合に受けられる控除です。
控除額は、扶養者の年齢によって異なり、38万円から63万円と幅があります。
特に大学進学や学費、1人暮らしをする子どもへの仕送りなどで出費がかさむことの多い19歳から22歳の子ども(いずれもその年の12月31日現在)がいる場合には、63万円もの控除が受けられます。同居していなくても、条件を満たしていれば対象となります。
離れて暮らす両親や親元を離れて高校・大学に通う子どもなどに生活費を送っている時も、控除の対象となります。
ただし、高校・大学に通う子どものアルバイト収入が103万円を超えて130万円以下の場合には、勤労学生控除が適用になりますので、子ども(勤労学生)自身には所得税はかかりませんが、扶養する親にとっては扶養控除が適用されなくなります(※後述)。
また、離れて暮らす親に兄弟で生活費を援助している場合にも注意が必要です。
このような場合には、送金額がいくらであるかに関わらず、兄弟のうちどちらか一方しか扶養控除を受けることはできませんので、兄弟間でどちらが扶養控除を受けるか、事前に話し合っておきましょう。
また、扶養親族が老人ホームに入居している時には扶養控除は認められません(一時的に病院に入院している場合には、認められます)。
扶養控除の対象となる扶養親族は、以下の条件をすべて満たしている必要があります。そして、その親族がいるか否かについては、毎年12月31日の時点で判定されます。
①納税者の扶養親族で生計を一にする人
原則として同居していることが条件ですが、単身赴任している父親や地方の大学に通っている子どもに仕送りをしている場合などは、扶養親族に含まれます。
②年間の合計所得金額が48万円以下の人(令和2年より)
令和2年より、所得金額が38万円→48万円となりました。
③青色事業専従者、事業専従者でない人
青色事業専従者、事業専従者とは、個人事業主の事業を手伝っている家族をいいます。
④他の人の扶養親族、控除対象配偶者になっていない人
他の人の扶養や配偶者である場合には、扶養控除の対象親族にはなりません。
つまり、二重に扶養控除の対象となることはできません。
扶養控除の額は、控除の対象となる扶養親族の年齢によって異なり、親族1人につき38万円から63万円となっています。
特に、70歳以上の親族は「同居か否か」で控除が変わります。
申告者または配偶者の直系尊属(父母・祖父母など)で、申告者かその配偶者と同居している同居老親等に該当すれば、控除額は58万円となります。
扶養親族 | 年齢 | 控除額 |
年少扶養親族 | 満15歳以下 | 0円(※平成23年から児童手当) |
一般扶養親族 | 16歳以上18歳以下 | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳以上22歳以下 | 63万円 |
成年扶養親族 | 23歳以上69歳以下 | 38万円 |
同居以外の老人扶養親族 | 70歳以上 | 48万円 |
同居の老人扶養親族 | 70歳以上 | 58万円 |
参照:国税庁「扶養控除」
平成23(2011年)に、児童手当を出す代わりに15歳以下の子ども(その年の12月31日現在)については、扶養控除が廃止になりました。
したがって、以前は「子どもが生まれたら税金が安くなる」と言われていましたが、今は「子どもが高校生にならないと税金は安くならない」ということになります。
高校生や大学生にならなくても16歳以上の「働いていない子ども」がいる場合には、扶養控除を受けることができます。
高校生や大学生がアルバイトをしている場合には、自分の収入から勤労学生控除を差し引くことができますが、その場合のアルバイト給与は130万円以下の場合です。
一方、アルバイトをしている高校生や大学生を養っている親などが扶養控除を受けるためには、そのアルバイト収入は103万円以下である必要があります。
つまり、子のアルバイト収入が103万円から130万円の間の場合に、子が勤労学生控除を受けるか、親が扶養控除を受けるかが問題となります。
子がアルバイトをする場合、130万円以下までなら勤労学生控除が適用され、子どもには所得税がかかりませんが、扶養する親は子のアルバイト収入が103万円以下でないと扶養控除が適用されなくなるので、税金が高くなることになります。
アルバイトは給与ですから、給与所得控除が55万円あります。その他すべての人に適用される基礎控除の48万円があります。そして勤労控除が27万円ありますので、これらの合計が130万円だからです。
「アルバイト収入130万円」-「給与所得控55万円」-「基礎控除48万円」-「勤労学生控除27万円」 |
したがって、子どもの側からみた場合には、このラインを守るようにすれば所得税はかかりません。
ただし、親からすれば扶養控除が適用されるのはアルバイト収入が103万円以下でないと、扶養控除は適用されないということになります。
①扶養控除を受けるためには、子どものアルバイト収入が103万円以下である必要がある。 ②子どものアルバイト収入が103万円以上130万円以下の場合には、子ども自身が勤労学生控除の適用を受け、扶養する親は扶養控除が適用されなくなる。 |
海外で暮らしている親族を扶養しているケースの扶養控除について、令和5年(2023年)から見直されることになりました。
海外で暮らしている人の所得要件(48万円未満)は、国内源泉所得のみで判定されます。そこで、国外で一定以上の所得を獲得している親族も扶養控除の対象となってしまいます。これをふまえ、令和5年(2023年)から16歳以上の留学生や障がい者、送金関係書類で38万円以上の送金等が確認できる者を除く30歳以上70歳未満の成人については、扶養控除の対象から外されることになりました。
これまでご紹介したように、養っている子どもが高校生以上になり、その子どものアルバイト収入などが103万円以下の場合には、扶養控除を受けることができます。
それでは、共働きで高校生以上の子どもを養っている場合、父親と母親のどちらで扶養控除を受けるべきなのでしょうか。
所得税や住民税は、所得が高くなればなるほど税率が高くなります。
したがって、共働き夫婦のうち、所得が高い=税率が高い人が扶養控除を受ける方がおトクです。
たとえば、高校生の子ども1人の扶養控除を受ける場合、年収600万円だと所得税+住民税で7万2,000円安くなりますが、年収200万円の場合には、5万5,000円安くなります。つまり、年収が高い人に扶養控除をつける方が、税金が1万7,000円も安くなることになります。
15歳以下の子どもがいる場合には、扶養控除が受けられない代わりに児童手当が支給されます。この児童手当は、中学を卒業するまでの子どもを育てている人に支給されるものです。
扶養控除の対象となる扶養親族は16歳以上であり、中学生までの子どもは扶養控除の対象外で税金が安くなるわけではなりませんので、児童手当は必ず申請しましょう。
そしてこの児童手当は、出生した日から当然にもらえるものではなく、「申請した日の翌月分から」の支給となります。
したがって、出生届と同時に児童手当の申請をするようにしましょう。
ただし、月末に出産した場合には「その月内に申請するのは難しい」ということもあるでしょう。その場合には15日特例といって、出産後15日以内なら出産日の翌月に申請してもその月から手当をもらうことができます。いずれにせよ、児童手当は1日でも早く申請するということを忘れないようにしましょう。
扶養控除を受けるためには、サラリーマンは扶養控除等申告書を会社に提出すれば、年末調整で控除を受けることができます。
年末調整の対象ではないサラリーマン(給与年収2,000万円超など)や、確定申告が必要な場合には、確定申告の際に「所得から差し引かれる金額」の欄に扶養控除について記載をする必要があります。
年末調整は、原則として「扶養控除等(異動)申告書」を提出するよう会社から求められます。
ただし、給与総額が2,000万円以上の人、中途退職者で再就職の予定がある人、2カ所以上から給与を受けている人などは年末調整の対象とはなりません。
「扶養控除等(異動)申告書」の記入方法については、以下で確認してください。
年末調整の対象とならない人や個人事業主などでそもそも確定申告が必要な場合には、申告書第二表の「扶養控除」の欄に扶養親族の名前、続柄、生年月日、控除額を記載し、申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の扶養控除欄に、扶養控除額の合計額を記載します。
①申告書第二表 ②申告書第一表 |
以上、扶養控除についてご紹介しました。
扶養控除を受けるためには、いくつかの要件を満たしている必要があり、また、扶養控除の対象となる扶養親族の年齢によって控除額が変わります。
とくに、学費などでお金がかかる19歳から22歳(その年の12月31日現在)の子どもがいる場合には、63万円もの控除が受けられます。
サラリーマンであれば原則として年末調整されますが、そうでない場合には、忘れずに確定申告を行うようにしましょう。
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監修者
遠藤 光寛えんどう みつひろ
遠藤光寛税理士事務所 代表
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扶養控除とは、16歳以上(その年の12月31日現在)の子どもや親、親族を養っている場合に受けられる控除で、15種類ある所得控除のひとつです。
仮に同居をしていなくても、生活費を仕送りしていれば、「生計を同じくしている」とみなされます。扶養控除の額は、親族の年齢や同居の有無などによって異なります。
サラリーマンなど年末調整を受けられる人は、手続きは不要ですが、自営業者の場合には自分で申告書に扶養家族の名前や生年月日、同居状態、続柄、マイナンバーの記載が必要です。
所得控除が適用されると、所得から一定額を差し引くことができるので、適用される所得控除は多いほど税金計算では有利になります。受けられる所得控除については、もれなく適用を受けるようにしましょう。
また、自営業者の場合には、経費の上手な計上が節税の大切なポイントとなります。自宅兼事務所の場合には、光熱費や家賃、電話代などを利用用途の割合に応じて、一部を必要経費として計上(按分)することができます。また、青色申告の場合には30万円未満の資産については、事業に利用した翌年の確定申告の際に一括して経費計上することも認められています。
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