寄附金控除(所得控除)と寄附金特別控除(税額控除)

公開日:2019年11月07日
最終更新日:2024年02月24日

この記事のポイント

  • 寄附金控除は、寄附をした時に受けられる控除。
  • 政党、認定NPO法人、公益社団法人等に寄附をした人は寄附金特別控除(税額控除)か寄附金控除(所得控除)を選ぶことができる。
  • 一般的には、税額から直接差し引くことができる「寄附金特別控除」の方が有利になる。

 

「寄附金控除」とは、国や地方自治体、日本赤十字社、認定NPO法人などに寄附をした時に受けられる所得控除で、確定申告をすると納税額が軽減されたり納めた税金が還付されたりするので、節税することができます。

ただし政党、認定NPO法人、公益社団法人等への寄附金については、「寄附金特別控除(税額控除)」との選択適用ができます。一般的には、「寄附金特別控除(税額控除)」の方が有利になりますが、その人の課税所得によって異なります。
 

寄附金控除の豆知識

特定の寄附をした場合は、所得控除の「寄附金控除」か、税額控除の「寄附金特別控除」のいずれか有利な方を選択することができます。
ただし税額控除が認められる寄附金は、①公益社団法人等への寄附金、②認定NPO法人への寄附金、③政治活動に関する寄附金とされるものだけです。
寄附金控除と寄附金特別控除のどちらが有利となるかは、所得金額や寄付金額によって異なります。
通常は税額控除の方が有利になりますが、所得控除の方が有利になる場合もあります。
政党等寄附金特別控除の場合は、通常は課税所得が900万円以下なら政党等寄附金特別控除(税額控除)、課税所得金額が900万円超なら寄附金控除(所得控除)が有利になります。
寄附金や所得が多い人は、どちらが有利になるか税理士に質問してみましょう。なお、
所得控除のうち、医療費控除・寄附金控除・雑損控除はサラリーマンも確定申告が必要となりますし、税額控除の「寄附金特別控除」の適用を受ける場合にも確定申告が必要です。
なお、医療費控除・寄附金控除・雑損控除以外で年末調整で控除モレがあった場合には、確定申告をすることができますので、ぜひ確定申告を行ないましょう。

寄附金控除と寄附金特別控除

個人が寄附をすると税金計算で有利になる制度として、寄附金控除と寄附金特別控除があります。

「寄附金控除」とは、地方自治体や日本赤十字社、認定NPO法人などに寄附をした時に受けられる所得控除のことです。

一方、寄附金特別控除とは税額控除で、特定の寄付をした時には、①政党等寄附金特別控除、②認定NPO法人等寄附金特別控除、③公益社団法人等寄附金特別控除の3つの税額控除が設けられています。

(1)寄附金控除は「所得控除」

寄附金控除は、15個ある所得控除のうちの1つです。所得控除とは、所得から差し引くことができる項目のことで、ほかにも医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、ひとり親控除などがあります。
所得控除が適用されると、所得から一定額を差し引くことができるので、当然所得控除は多いほど税金計算では有利になります。

寄附金控除の対象である「特定寄附金」とは、以下のようなものをいいます。

①国または地方公共団体に対する寄附金
※いわゆる「ふるさと納税」

②地方公共団体に対する寄附金

③指定寄附金
財務大臣が指定した寄附金など。日本赤十字社、国立大学への寄付など

③特定公益増進法人に対する寄附金
教育や科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献に寄与すると認められた一定のもの。
独立行政法人、自動車安全運転センターへの寄付など

④特定公益信託への支出金

⑤認定NPO法人に対する特定寄附金
NPO法人のうち、国税庁長官等の認定を受けたもの

⑥政治活動に関する寄附金
個人が支出した政治活動に関する寄附金のうち、政党、政治資金団体、国会議員、知事などに対する寄附金

⑦その他
特定新規中小会社が発行した株式の取得に係る払込金

寄附金控除額の計算式は、以下のとおりです。

寄附金控除額 = 支払った特定寄附金の額と
総所得金額等の合計額の40%
とのいずれか少ない金額 - 2,000円

(2)ふるさと納税も実は寄附金控除

地方公共団体に寄附をすると、控除を受けられるうえに地方の特産品がもらえるとして人気のふるさと納税ですが、このふるさと納税も、寄附金控除です。
ふるさと納税は、住民税の税額控除がある点もメリットのひとつです。
所得税のように税金が還付されるわけではありませんが、寄附した翌年から支払う住民税が減額されますので、所得税とダブルで控除され節税効果が高くなります。

また、ふるさと納税の特例としてワンストップ特例制度が創設され、確定申告が必要ないサラリーマンがふるさと納税を行う場合には、5地方公共団体までの寄附であれば確定申告が必要なくワンストップで控除が受けられることになりました。

ワンストップ特例制度を利用すれば、寄附した本人に代わり地方公共団体がふるさと納税の控除を申請するので、確定申告が不要です。
ただし、代わりに「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附した自治体に提出する必要があります。

このワンストップ特例制度を利用するためには、サラリーマンなどの給与所得者で寄附先が年間5自治体以下の人だけで、6自治体以上に寄附する場合や個人事業主など給与所得者ではない場合には、ワンストップ特例制度は利用できないため、従来どおり確定申告を行なう必要があります。

なお、そもそも「寄附金控除」は税金を払っていない人が寄附をしても、税金は戻りません。
専業主婦や年収103万円以下のパートの人などが寄附をしても、そもそも所得税を納めていないので還付される税金はありません。

家族の中でもっとも所得の高い人が寄附をして寄附金控除を行うのが有利なので、注意しましょう。

(3)寄附金特別控除は「税額控除」で3つ

寄附金特別控除とは、以下の3つの特別控除をいいます。

①政党等寄附金特別控除
②認定NPO法人等寄附金特別控除
③公益社団法人等寄附金特別控除

それぞれの控除額は、以下の計算式で計算します。
控除額の100円未満の端数は切り捨てます。
①~③の寄附金額の合計は、総所得金額等の40%が限度です。
計算式の「2,000円」は、寄附金控除の適用を受けるほかの特定寄附金等があるときには、「2,000円-特定寄附金等の合計額(マイナスの場合は0円」となります。

①政党等寄附金特別控除
(政党等に寄付した金額-2,000円)×30%
②認定NPO法人等寄附金特別控除
(認定NPO法人等に寄付した金額-2,000円)×40%
③公益社団法人等寄附金特別控除
(公益社団法人等に寄付した金額(一定要件あり)-2,000円)×40%

(4)寄附金控除と寄附金特別控除で選べるもの一覧

これまでご紹介してきたとおり、寄附金控除と寄附金特別控除は、どちらか有利な方を選択することができますが、すべての寄附金が選択適用できるわけではありません。
下記に一覧としてまとめましたので、参考にしてください。

寄附の内容や寄付先 所得控除 税額控除
特定寄附金(学校の入学に関して行うものをのぞく) 国、地方公共団体に対する寄附金 国に対する寄附金 ×
地方公共団体に対する寄附金 日本赤十字社、新聞・報道機関等への義援金 ×
上記以外のもの ×
指定寄附金 ・財務大臣が指定した寄附金
・公益社団法人、公益財団法人など公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金で、下記①②の要件を満たすと財務大臣が指定したもの
①広く一般に募集されること
②教育や科学の振興など、公益の増進に寄与するための支出で、緊急を要するものに充てられることが確実であること
×
特定公益増進法人に対する寄附金 独立行政法人、一部の地方独立行政法人、自動車安全運転センター、日本私立学校振興、共催事業団および日本赤十字社 ×
公益社団法人・公益財団法人、私立学校法人、社会福祉法人、更生保護法人
特例民法法人で、「特定公益増進法人」として、主務大臣の認定を受けていたもの ×
特定寄附金とみなされるもの 特定公益信託への支出 ×
認定NPO法人に対する寄附金(仮認定NPO法人に対する寄附金含む)
政治活動に関する寄附金 政党、政治資金団体
国会議員が主催する政治団体等・公職にある者や特定の公職の候補者の後援団体等・公職の候補者で一定のもの ×
その他 特定新規中小法人が発行した株式の取得に係る払込金 ×

(5)寄附金控除と寄附金特別控除の有利不利の判定

①政党等寄附金特別控除、②認定NPO法人等寄附金特別控除、③公益社団法人等寄附金特別控除の3つの税額控除は、寄附金控除(所得控除)と有利な方を選択適用することができます。
税額控除は、税額から差し引くことができるので、通常は税額控除の方が有利ですが、所得金額や寄附金額によって、どちらが有利になるのかは異なります。
政党等寄附金特別控除については、一般的には課税所得が900万円以下の人は税額控除が有利になり、課税所得が900万円を超える人は所得控除の方が有利になります。
寄附金や所得が多い人は、どちらが有利か計算してみることをおすすめします。

寄附金控除を受けるための確定申告の方法

寄附金控除を受けるためには、原則として確定申告を行なう必要があります(ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用している場合は、確定申告は必要ありません)。確定申告をすることで、その年の分の所得税から控除・還付を受けられ、翌年の個人住民税から税額が減額されることになります。

確定申告を行なう場合には、所得控除か税額控除かで手続きが異なります。
通常は寄附金特別控除(税額控除)を受ける方が税金の計算上で有利となりますが、どちらが有利なのか分からない場合や記入方法などについて不明点がある場合には税理士に相談するとよいでしょう。

(1)寄附金控除(所得控除)の確定申告


①国税庁のホームページにアクセスします。
②画面の指示にしたがって、寄附先の所在地、名称、寄附額を記入します。
③所得控除と税額控除のどちらが有利か自動計算されます。

(2)寄附金特別控除(税額控除)の確定申告

①寄附金の税額控除には、それぞれ計算明細書があります
ので、まず控除額の計算で使用する「計算明細書」を入手します。

政党等寄附金特別控除額の計算明細書

認定NPO法人等寄附金特別控除額の計算明細書

公益社団法人等寄附金特別控除額の計算明細書

②計算明細書を使って、控除額を計算し、その金額を確定申告書第一表に転記します。
③税額控除対象法人であることの証明書や寄附金の領収書などは、貼付して提出する必要があります。
④第二表の「特例適用条文等」の欄には、公益社団法人等寄附金の場合には「措法41の18の3」、認定NPO法人等寄附金の場合には「措法41の18の2」、政党等寄附金の場合には「措法41の18」と記入します。

まとめ

寄附金控除と寄附金特別控除は、原則として確定申告が必要であり、その場合にどの控除を適用するか自分で選択する必要があります。
どちらが有利になるのかは、「クラウド会計ソフト freee会計」やe-Taxを利用する場合に、寄附金の種類を正しく入力すれば自動で判定してもらうことができます。
ただし、どの寄附金に該当するか判定するのは難しいこともあるので、その場合には不明点や疑問点は事前に税理士に相談しておくと安心でしょう。

寄附金控除と寄附金特別控除について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、寄附金控除について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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この記事の監修者:アトラス総合事務所

監修者

アトラス総合事務所

会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!

寄附金控除で控除される寄附金は、限定されています。寄附であれば何でもOKというわけではなく、特定の個人や私的な団体にだけ利益が及ばないように考えなければなりません。また、政党や政治資金団体に対する寄付については「政党等寄附金特別控除(税額控除)」と選択することができますので、両者を比較して有利不利を判定することが大切です。
なお、寄附金控除は所得控除のひとつですが、このような所得控除は全部で15種類あり、もれなく適用を受けることが節税のポイントとなります。適用される所得控除についてはしっかり確認し、もれなく適用を受け、納税額を軽減させましょう。
アトラス総合事務所は、税務から労務、法務など、法人・個人事業経営をトータルでサポートする総合事務所です。会計ソフト支援や確定申告はもちろん、節税対策や年末調整、給与計算、税務調査立会まで、お客様の個々の事情に合わせたサポートをご提案いたします。
事業計画の策定や融資支援などのコンサルティング業務についてもサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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