公開日:2019年12月24日
最終更新日:2023年03月23日
平成30年(2018年)に配偶者控除・配偶者特別控除の改正が行われました。
この改正によって、合計所得金額が1,000万円を超える納税者には、配偶者控除も配偶者特別控除も受けることができなくなりました。
また、令和2年(2020年)に改正が行われ、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下(収入103万円超201万円以下)となり、控除額も変更されました。
103万円を超えると、超えた額に対して自分で所得税を納めるようになることから、配偶者がパートで働く場合には「103万円の壁を超えないように」と言われていましたが、配偶者特別控除の適用対象となる配偶者の合計所得金額が改正されたことから「201万円の壁」もできたことになります。
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配偶者控除とは、収入の少ない配偶者(夫や妻)を養っている人が受けられる所得控除です。
家庭の主婦などが働いて収入があった場合に、その金額に応じて夫の所得に控除があります。対象は、籍が入っていないいわゆる内縁関係にある配偶者は含まれません。
配偶者控除と配偶者特別控除は、いずれかひとつしか受けることができません。どちらの控除を受けられるかは、配偶者の合計所得金額などで判断することになります。
また、控除を受けようとする人が給与所得者ではなく、個人事業主など自分で確定申告を行なう人で事業専従者(白色申告の場合)や青色事業専従者(青色申告の場合)になっている人は、配偶者控除も配偶者特別控除も認められません。
配偶者控除・配偶者特別控除については、適用条件や控除額について、平成30年(2018年)に見直しが行われ、配偶者控除、配偶者特別控除ともに、控除額は納税者本人の所得区分によって変わることになりました。また、納税者本人の合計所得金額が1,000万円(給与所得収入1,220万円)を超える所得者については、適用を受けられなくなりました。
また、令和2年(2020年)より、配偶者特別控除の適用対象となる配偶者の合計所得金額が、48万円超133万円以下となりました。
配偶者控除とは、合計所得金額が48万円以下で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の人が受けられる控除です。
もともと配偶者控除は、基本的に配偶者に収入がないことを前提としている控除です。
しかし、現実的には収入が全くゼロというケースがほとんどありません。そこで、実情に合わせて合計所得金額が48万円以下なら、控除対象配偶者と認めることとしています。
配偶者控除額は、配偶者の年齢が70歳未満なら一律38万円、70歳以上なら一律48万円でしたが、平成30年(2018年)分より、控除対象配偶者(70歳未満)または、老人控除対象配偶者(70歳以上)のいる納税者本人については、適用される配偶者控除の額は下記のとおりとなり、合計所得金額が1,000万円を超える納税者には、配偶者控除の適用はなくなりました。
納税者本人の合計所得金額 | 控除対象配偶者 (70歳未満) |
老人控除対象配偶者 (70歳以上) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
1,000万円超 | 適用なし | 適用なし |
※ 上記の合計所得を給与収入の目安で算出すると、900万円は給与収入1,095万円、950万円は1,145万円、1,000万円は1,195万円となる。
配偶者控除の適用要件
配偶者控除を受けることができるのは、以下の条件にあてはまる人です。
・納税者の配偶者で生計を一にする人 ・配偶者の年間合計所得金額が48万円(パートの場合は、給与収入より給与所得控除額を引いた金額)以下である人 ・青色事業専従者、事業専従者でない人 |
配偶者控除の改正ポイント 配偶者控除額は、平成29年(2017年)までは、70歳未満は一律38万円、70才以上は一律48万円でしたが、税制改正によって平成30年(2018年)からは納税者本人の合計所得金額によって異なることになりました。 この改正によって、納税者本人の合計所得金額1,000万円超(年収1,195万円超)は、配偶者控除の適用対象外となり、また、配偶者の合計所得金額が48万円以下となりました。 ただし、年収ベースでみると、対象となる年収は従来どおりの103万円以下で改正前と変わりません。これは、対象者となるための合計所得が38万円→48万円と10万円引き上げられた一方で、給与所得控除額(給与収入から差し引いて所得を計算できる控除)が一律10万円引き下げられたためです。 |
配偶者特別控除とは、配偶者の収入が201万円以下で、かつ納税者本人(たとえば夫)の収入が1,195万円以下(所得は1,000万円以下)の人が受けられる控除です。
配偶者控除の場合、配偶者の合計所得金額が48万円(※令和2年より)を1円でも超えてしまうと、いきなり控除額が0円になってしまいます。これを改めて、配偶者の収入増に合わせ徐々に控除額が減るように設けられたのが、配偶者特別控除です。
配偶者特別控除は、配偶者控除が適用されなくなる103万円を超える収入の配偶者について、約201万円以下の収入まで段階的に所得から控除されます。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
参照:国税庁「配偶者特別控除」
配偶者特別控除の適用要件
配偶者特別控除の適用を受けるためには、以下の条件にあてはまる必要があります。
・納税者の配偶者で生計を一にする人 ・配偶者の年間所得金額(年収から給与所得控除額である55万円を差し引いた金額)が、48万円超133万円以下、給与収入では103万円超201万円以下である人 ・申告者の給与収入1,195万円以下(合計所得金額1,000万円以下) ・青色事業専従者、事業専従者でない人 |
配偶者特別控除の改正ポイント 配偶者特別控除についても見直しがされ、令和2年(2020年)以降について、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下となり、控除額は納税者本人の所得区分によることとなりました。 |
納税者本人は、一律に基礎控除48万円が認められます。
※基礎控除額については令和2年(2020年)に改正があり、合計所得が2,400万円を超えると、控除額が段階的に減っていき、2,500万円を超えると控除額はゼロになることになりました。
参照:国税庁「基礎控除」
そのうえで、合計所得が一定以下の配偶者や親族がいる場合には、その人の状況に応じた額の配偶者控除や扶養控除が受けられます。また、配偶者の所得次第で配偶者特別控除が受けられます(納税者の合計所得が1,000万円以下の場合)。
また、給与所得者であれば給与所得控除があります。
※給与所得控除については令和2年(2020年)から一律10万円引き下げられ、さらに上限額が適用される給与収入は850万円(控除額195万円)に引き下げられました。
そこで、配偶者控除を受けるためには、配偶者の年収は103万円まで、配偶者特別控除を受けるためには、配偶者の年収が103万円を超えて約201万円以下までとなりました。これが、「103万円の壁」「201万円の壁」と言われるものです。
103万円の壁
年収103万円を超えると、配偶者控除の対象外となってしまうため「103万円の壁」と言われることがあります。
これは、配偶者控除が適用されるのが103万円までであり、しかもパートによる収入は、年間103万円までは無税だからです。
「パート収入103万円」-「給与所得控除55万円」==「合計所得金額48万円」 |
パートによる収入も、サラリーマンと同じように「給与所得」となりますが、給与所得の金額は、給与収入から給与所得控除額を差し引いて計算します。
給与所得控除とは、給与所得者の給与から一定額差し引くことのできる控除額のことで、最低55万円(2020年から)です。
つまり、パート収入が103万円の場合も、給与所得控除が差し引かれることになります。
103万円-55万円=48万円 |
さらに、所得のある人には、48万円の基礎控除(2020年から)がありますから、さらに48万円を差し引くことができます。
48万円-48万円=0円 |
つまり、「103万円の壁」とは、自分が所得税を支払わなくて済み、同時に夫も配偶者控除が受けられ所得税が軽減されるギリギリのラインという意味を示すものでした。
※2020年から、基礎控除は48万円、給与所得控除は最低55万円ですが、48万円+55万円は同じく103万円です。
配偶者の収入から引かれるのは住民税(地域によって異なる)と雇用保険料だけで、収入103万円のほとんどが手取りとして手元に残るということになります。
103万円を超えると、配偶者控除が適用されなくなりますが、配偶者特別控除が適用されることになります。
201万円の壁
配偶者特別控除は、配偶者の収入が103万円を超えて約201万円以下までが適用対象となり、201万円超になると控除額はゼロになります。
つまり、「201万円の壁」とは、配偶者特別控除が適用されなくなる壁のことをいいます。
なお、配偶者特別控除の適用対象となる配偶者の合計所得金額は、令和2年(2020年)から48万円超133万円以下となり、配偶者の合計所得金額の区分はそれぞれ10万円引き上げられます。
「パート収入約201万円」-「給与所得控除額約68.2万円」==「合計所得金額約133万円」 |
130万円・150万円の壁とは、配偶者の社会保険料の支払義務に関するものです。
配偶者の年収が130万円を超えると、世帯主の社会保険の扶養から外れて、配偶者に社会保険料の支払い義務が生じます。さらに、150万円を超えると、世帯主の38万円の配偶者特別控除が段階的に減額されます。
つまり、家計への負担という観点から考えると、世帯全体の手取りがダウンしてしまうこともあるわけです。
配偶者(特別)控除については、制度が複雑になったため、今一度働き方について見直してみることをおすすめします。
妻のパート先が大手企業の場合で一定の要件を満たしている場合には、年収106万円以上働くと、その会社で社会保険に加入することになります。
そして、妻が自分で社会保険料を払うようになると、この社会保険料の支出が影響して逆に世帯年収が減ってしまうことがあります。
これが、106万円の壁です。
政府は、これらの「年収の壁」を理由にして、世帯年収が減らないようにするために仕事をセーブすることを解消することを目指していますが、将来の年金に不安を感じることも多いことから、社会保険に加入すること自体はプラスであるとする考え方もあります。
ここまでは、主に所得税や住民税の配偶者控除、配偶者特別控除について述べました。
しかし、所得税や住民税以外の相続税や贈与税でも、配偶者への優遇措置が設けられています。
配偶者が相続人となった場合、相続財産が法定相続分か1億6,000万円までは、相続税はかかりません。
これは、残された配偶者の老後の生活を保障するためです。
もし、この金額を超えて相続財産をもらった時には、超えた金額の部分に対応する相続税を支払うことになります。
配偶者の相続税の税額軽減は、結婚している期間に関係なく、特例を受けることができます。つまり婚姻届が提出されて1日しか経過していなくても、この特例を受けることで相続税がゼロになることがあるということになります。
逆に、たとえ長い同居生活を送っていても、婚姻届が提出されていない場合には、この特例を受けることはできません。
婚姻期間が20年以上経過して、配偶者から居住用財産を贈与された時には、配偶者控除が認められます。配偶者控除は、居住用財産あるいは居住用財産を取得するための資金を贈与した時、基礎控除110万円(贈与税がかからない額)の枠以外に2,000万円まで控除されます。
以上、配偶者控除・配偶者特別控除の2018年、2020年の改正ポイントや、103万円の壁、201万円の壁の意味についてご紹介しました。
少しでも家計の足しにしようとパートを増やしても、その額によっては配偶者自身に所得税や住民税(地域によって異なる)が課税されることになり、かえって家計を圧迫することもあるかもしれません。
配偶者控除や配偶者特別控除の控除額を考える時には、配偶者個人の税金についてもあわせて検討することが大切です。
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監修者
アトラス総合事務所
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納税者本人に、控除対象配偶者がいる時には、一定の金額を所得金額から控除することができます。これを配偶者控除といいます。また、また、納税者本人と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円を超えるときは、一定の金額を所得金額から控除することができます。これを配偶者特別控除といいます。控除できる額は納税者の合計所得金額や控除対象配偶者の年齢等によって異なります。
このように、所得税は配偶者がいるか、扶養している家族が何人いるか、多額の医療費を支払っているなど、個人の特殊な事情なども加味して、所得金額から一定金額を控除することで、税負担の調整を行っています。
これを所得控除といい、全部で15種類あります。適用される所得控除の数が多ければ多いほど、税負担は軽減されますから、もれなく適用を受けるようにしましょう。
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