公開日:2019年11月06日
最終更新日:2023年02月16日
寡婦控除とは、夫と死別または離別した場合で、一定の要件に該当する時に受けることができる控除です。
寡婦控除は、令和2年(2020年)にひとり親控除が創設されるなど、大幅な見直しが行われ、いわゆるひとり親は、「ひとり親控除」の対象となります。
これまで寡婦控除の対象だった人がひとり親控除の対象となったり、所得制限が設けられたことから寡婦控除やひとり親控除の対象から外れたりするケースも多いので、注意が必要です。
寡婦控除とは、夫と離婚した後で婚姻をしていない人や、夫と死別した後で婚姻をしていない人のうち、一定の要件に該当する時に受けることができる所得控除です。
寡婦控除が適用される人は、27万円の控除額が所得から差し引かれるため、納税額が軽減されることになります。
寡婦控除は、以前は死別・離婚した人で子どもなどの扶養親族がいる人も対象でしたが、ひとり親控除が創設されたことで、ひとり親控除の対象となる人は寡婦控除から外れることになりました。
従来は控除の対象者が結婚をしていた人に限られており、未婚のシングルマザーは対象から外され、不公平さを指摘されていました。
しかし、すべてのひとり親家庭に対して公平な税制支援を行う観点から、未婚の方でも子どもを養っていれば、婚姻歴の有無や性別にかかわらず、ひとり親控除の要件を満たせば、ひとり親控除の対象となります。
なお、この改正に伴い従来の寡夫制度は廃止され、「ひとり親」に統合されることになりました。
したがって、シングルファーザーの場合には、控除額が従来の27万円から8万円アップされ35万円となりました。
改正以前は、同条件(合計所得500万円以下、子どもあり)であっても、女性は35万円の控除を受けることができ、この点が性別による不公平であると指摘されていました。
そして、一定の寡婦については引き続き寡婦控除が継続されることになりました。
寡婦控除とひとり親控除の判定は、以下のとおりです。
寡婦控除・ひとり親控除の判定 | 控除区分 | 控除額 | |||||
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本人の合計所得金額が500万円以下 | 婚姻 なし |
男性 | 扶養する子あり | ひとり親控除 | 35万円 | ||
扶養する子なし | 非該当 | - | |||||
女性 | 死別 | 扶養する子あり | ひとり親控除 | 35万円 | |||
扶養する子なし | 寡婦控除 | 27万円 | |||||
離婚 | 扶養する子あり | ひとり親控除 | 35万円 | ||||
扶養する子なし | 扶養親族あり | 寡婦控除 | 27万円 | ||||
扶養親族なし | 非該当 | - | |||||
未婚 | 扶養する子あり | ひとり親控除 | 35万円 | ||||
扶養する子なし | 非該当 | - |
寡婦控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 夫と離婚した後婚姻していない人で扶養親族がいること。または夫と死別した後に婚姻していないこと(夫の生死が明らかでない一定の者を含む)。 ②合計所得金額が500万円以下であること。 ③その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人(住民票に未届の夫がいるなど)がいないこと。 |
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参照:国税庁「寡婦控除」
寡婦控除の判定時期は、その年の12月31日の時点です。
事実婚や内縁関係があった場合には、適用はされません。なお、結婚の回数は関係ありません。
寡婦控除の控除額は、27万円です。
寡婦控除の控除額:27万円 |
したがって、所得から27万円が差し引かれ、残りの所得をもとに所得税が計算されます。
寡婦控除は、住民税においても控除されます。
住民税の控除額は、本人が寡婦の時は26万円、本人がひとり親の時は30万円です。
会社で年末調整されるか、自分で確定申告をすれば、住民税については特に手続きは必要ありません。
寡婦控除を受けるためには、サラリーマンなどの給与所得者の場合には、会社で年末調整が行われる際に提出する「扶養控除等(異動)申告書」の「寡婦」欄に、記入をすれば、控除されます。
サラリーマンやパート、アルバイトなどの給与所得者は、会社で年末調整が行われる際に、さまざまな書類を提出するよう求められます。
このうち、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄を記入すれば、会社で年末調整が行われる際に寡婦控除が適用されます。
なお、年末調整の際に寡婦の申告を忘れてしまった場合には、後述する確定申告を行えば、寡婦控除が適用されます。
確定申告においては、第一表の「寡婦、ひとり親控除」の欄に控除額を記入し、第二表について「寡婦」に〇をつけ、死別、離婚など該当する箇所にチェックを入れればOKです。
サラリーマンの場合には、会社で年末調整をしてくれるので所得控除について申告する必要はありませんが、年末調整を受けていない場合には、原則として自分で申告しなければ所得控除の適用を受けることはできません。
適用できる控除があるのに申告しないままでいると、その分多く税金を支払ってしまうことになりますので、不明点がある場合には、早めに税理士に相談しましょう。
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監修者
アトラス総合事務所
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すべてのひとり親家庭に対して公平な税制支援を行うことを目的として、2020年(令和2年)より、寡婦控除、寡夫控除の見直しが行われ、ひとり親控除制度が設けられました。婚姻歴の有無や性別に関わらず、所得控除としてひとり親控除制度が設けられ、一定の寡婦については引き続き寡婦控除が継続されることになりました。
寡婦控除は、本人が寡婦であり、合計所得金額が500万円以下であるなどの一定の要件を満たした場合に適用される所得控除で、所得の合計額から27万円を控除することができます。
所得税は、所得の額からまず所得控除の分を引いて、残りの課税所得金額に税率を掛けることで計算しますから、適用される所得控除が多ければ多いほど、税額が減ることになります。
寡婦控除は所得控除の1つで、他にも医療費控除、社会保険料控除、雑損控除など、所得控除の種類は全部で15種類あります。所得控除とは、その人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情によって、税負担を軽くする制度であり、適用される所得控除の数が多ければ多いほど、税額を軽減させることになります。内容をよく理解したうえで、適用を受けられるものはもれなく受けるようにしましょう。
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