雑収入とは|仕訳例や消費税について紹介

公開日:2022年03月09日
最終更新日:2024年03月10日

この記事のポイント

  • 雑収入とは、本業以外の重要性の乏しい取引に使われる勘定科目である。
  • 個人事業主の場合、事業に付随しない収益は「事業主借」で処理する。
  • 「雑収入」と「雑所得」は異なるので、注意が必要。

 

本業とは関係のない取引から生じる収益(営業外収益)のうち、質的・金銭的に重要でないものは、「雑収入」として処理することができます。
法人は「雑収入」という勘定科目を使いますが、個人事業主は「事業主借」という勘定科目を使います。

なお、雑収入を「雑所得」や「事業所得」として処理をしてしまうと、納税額に影響を与えてしまいますので、注意が必要です。
 

雑収入の豆知識

「雑収入」とは、本業以外の収入で金額が小さいものに使う勘定科目です。
ただし、法人と個人事業主で処理の仕方が異なりますので注意が必要です。
たとえば還付加算金は、法人の場合は「雑収入」で処理をしますが、個人の場合は「雑所得」として課税されるため、「事業主借」で処理をします。
また、保険金や損害賠償金の収入は、法人の場合は「雑収入」で処理をしますが、個人の場合、事業主自身のケガは「事業主借」で処理をします(非課税)。事業用の資産が破損した場合の保険金は、棚卸資産や一括償却資産などは「雑収入」で処理をして、建物や備品などは「事業主借」で処理をします。
また、「雑収入」は臨時的に発生することが多いので、期末前後に発生した場合に当期に計上すべきか翌期に計上すべきか注意が必要です。不明点は早めに税理士に相談し、適切に計上をするようにしましょう。

雑収入とは

「雑収入」とは、助成金の受け取りや損害賠償金の受け取りなど本業以外の収入で金額が小さいものについて、処理するときに使う勘定科目です。
適当な勘定科目がない場合で、金銭的にも重要性が乏しく発生頻度も低いと考えられる内容の取引について、適当な勘定科目がない場合に一括して使用する勘定科目です。

(1)雑収入に該当する収益とは

雑収入としてまとめて処理するものとしては、主に以下のようなものがあります。

・還付加算金の受取
・自動販売機設置収入
・保険金の受取
・損害賠償金の受取
・代理店手数料の収入
・祝儀
・作業くずの売却収入
・スクラップの売却収入
・廃材処分の収入
・リサイクルの収入
・弁金超過分
・助成金の受取
・補助金の受取

(2)雑収入と雑所得は違う

雑収入は、個人の所得である「雑所得」とは異なりますので、注意が必要です。
雑所得とは、10種類ある個人の所得のうちのひとつで、①国民年金や厚生年金などの公的年金等や、②非営業用貸金の利子、作家や著述家以外の人が受け取る原稿料や印税などの所得です。
雑収入は、「本業以外の収入で金額が小さいもの」について処理をする「勘定科目」であり10種類ある所得のひとつである「雑所得」ではありません。

なお、雑所得は①と②を分けてそれぞれ計算し、合計するという方法で求めます。

①+②=雑所得
①公的年金等の収入金額-公的年金等控除額
②公的年金等以外の総収入金額-必要経費

上記で計算した所得から、所得控除額を差し引いて課税総所得金額を求め、決められた税率を掛けて所得税額を求めます。

(3)雑収入と事業所得は違う

雑収入は、個人の所得である「事業所得」とも混同しがちですので注意が必要です。
事業所得とは、個人で卸売業、飲食業、製造業、サービス業、医師、弁護士、税理士、農業、漁業などを行っている人が、それぞれの事業から生じる所得です。

事業所得=総収入金額(※)-必要経費

※総収入金額とは、それぞれの事業から生じる売上金額のほか、事業に関係する付随収入(作業くずの売却収入など)を合わせた金額です。したがって、雑収入に該当する収益も含めた金額が、事業所得の総収入金額ということになります。

事業所得も、上記で計算した所得から、所得控除額を差し引いて課税総所得金額を求め、決められた税率を掛けて所得税額を求めます。

(4)雑収入の計上時期に注意

雑収入は臨時的に発生することが多いので、計上時期に注意が必要です。たとえば、期末前後に発生した雑収入については、当期に計上すべきか翌期に計上すべきか注意する必要があります、特に入金が翌期となる場合には、当期に計上すべき雑収入が漏れやすくなるので注意しましょう。

(5)雑収入は営業外収益となる

雑収入は、損益計算書の「営業外収益」に計上されます。
損益計算書では、企業の営業活動によって発生した損益を営業損益、営業活動以外によって発生した損益を営業外損益とします。

営業外収益とは、雑収入のほか受取利息、受取配当金、仕入割引などの勘定科目があります。

分類 勘定科目 内容
営業外収益 雑収入 作業くずの売却収入や自動販売機の設置収入など、本業とは関係のない取引から生じる収益で、他の勘定科目に当てはまらず、かつ金額的に重要性の乏しい雑多な項目を処理する勘定科目。
受取利息 金融機関の預貯金利息、国債、社債などの有価証券利息など
受取配当金 株式、出資、投資信託などに対する配当金の収入
仕入割引 材料や商品の仕入代金を早期支払することによる割引額
為替差益 外国通貨の所有または外貨建債権債務から生じる円貨との決済、円貨への換算に際して生じる為替相場の差額による利益
営業外費用 雑損失 現金過不足など、他の勘定科目に当てはまらず、かつ金額的に重要性の乏しい雑多な項目を処理する勘定科目
支払利息 金融機関からの借入金利息、他の会社からの借入金利息など
手形売却損 金融機関などで手形を割り引いた(売却した)場合の手数料
売上割引 売上債権を期日前に受け取ることで支払う利息相当分
為替差損 外国通貨の所有または外貨建債権債務から生じる円貨との決済、円貨への換算に際して生じる為替相場の差額による損失

雑収入の仕訳

これまでご紹介したように、雑収入は他の勘定科目に当てはまらず、かつ金額的に重要性の乏しい雑多な項目を処理する勘定科目です。
ただし少額でも頻繁に発生する収益については、事業状況を適切に管理するために、独立した勘定科目を設けることをおすすめします。

(1)個人事業主の事業に付随しない収益は「事業主借」

事業に付随しない収益については、個人事業は「事業主借(じぎょうぬしかり)」という勘定科目で処理をします。
事業主借とは、個人事業主の事業以外からの入金で、たとえば家計から事業資金を補充したり、事業以外の所得となる入金があったりした場合に使用する勘定科目です。

一方個人事業主でも、事業を行ううえで付随して受け取る取引先や従業員への貸付金利息、資産を購入する際に景品として受け取る利息、固定資産税の前納報奨金などは「雑収入」として処理をします。

なお、個人の所得はその内容によって10種類に分類されています。
預金の利息は「利子所得」、固定資産等の売却は「譲渡所得」になります。そして、事業所得とはならない他の収入を「事業主借」で処理をします。

(2)法人の勘定科目は「雑収入」

法人は、営業外収益のうち、本業とは関係のない取引から生じる収益で、他の勘定科目に当てはまらず、かつ金額的に重要性の乏しいものは、雑収入として処理をすることができます。
たとえば、「支店開設の祝儀として5万円の祝儀をもらった」「作業くずを10万円で売却した」「障害者雇用助成金として10万円を受け取った」といったケースでは、雑収入として処理をすることができます。

(3)雑収入の仕訳①「保険金の振込」

「ケガをして、傷害保険20万円が普通預金に振り込まれた。」
法人の場合には「雑収入」で処理をし、個人事業主でケガをしたのが個人事業主自身であった場合には「事業主借」で処理をします。

法人の場合

借方 貸方
普通預金 200,000 雑収入 200,000

個人の場合

借方 貸方
普通預金 200,000 事業主借 200,000

(4)雑収入の仕訳②「一括償却資産の売却」

「5年前に15万円で購入したパソコンを2万円で売却し、現金で受け取った。」
事業用資産の売却は、「雑収入」で処理をします。
個人事業主も、減価償却資産のうち、使用可能期間が1年未満のもの、取得価額が10万円未満のもの、一括償却資産を譲渡した場合の所得は、事業所得となりますので「雑収入」で処理をします。

法人・個人ともに以下の仕訳

借方 貸方
現金 20,000 雑収入 20,000

(5)雑収入の仕訳③「還付加算金」

更正の請求を行ったことにより、還付加算金2万円が普通預金口座に振り込まれた。
法人の場合には「雑収入」で処理をします。個人の場合には「雑所得」として課税対象となるため「事業主借」で処理をします。

法人の場合

借方 貸方
普通預金 20,000 雑収入 20,000

個人の場合

借方 貸方
普通預金 20,000 事業主借 20,000

まとめ

以上、雑収入で処理する収益や法人と個人事業主の処理の違い、雑収入と「雑所得」「事業所得」との違いなどについてご紹介しました。
雑収入は、本業とは関係のない取引から生じる収益で、かつ金額として重要性が乏しい取引を処理する時の勘定科目です。
個人事業主の場合には、事業に付随しない収益は「事業主借」で処理をしますが、事業に付随して受け取る取引先や従業員への貸付金利息、資産を購入する際に景品として受け取る金品などは、「雑収入」として処理をします。
雑収入は「雑所得」「事業所得」と混同しがちですが、雑収入は勘定科目のひとつであり、雑所得、事業所得とは異なりますので注意が必要です。

雑収入について相談する

freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、法人や個人事業主の雑収入の処理について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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この記事の監修者:アトラス総合事務所

監修者

アトラス総合事務所

会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!

雑収入とは、営業外収益のうち、受取利息、受取配当金、為替差益、仕入割引などの適当な勘定科目がない場合に、一括して使用される勘定科目です。金銭的にも重要性が乏しく、発生頻度が低いと考えられる場合に、この勘定科目で処理をします。したがって、金銭的に重要性のある場合や、少額でも頻繁に発生する収益については、雑収入ではなく独立した勘定科目を設けて処理をした方が、良いでしょう。
帳簿をつけ始める時は、どの勘定科目を使うか迷うケースが多いものです。雑把過ぎると事業の状況を正確に把握することができなくなりますし、細かすぎても後々管理が面倒になってしまいます。したがって、最初に使う基本的な勘定科目を押さえておくのがおすすめです。
また、税理士と顧問契約を締結して日々の記帳を自分で行う場合には、税理士とデータを連携しやすい会計ソフトを選ぶのがおすすめです。
「クラウド会計ソフト freee会計」を活用すれば、税理士と同時に同じデータを見ながら打ち合わせすることができますので、仕訳をすぐにチェックしてもらうことができ、正確な帳簿づけを行うことが可能となるのはもちろん、結果的に決算を早く終わらせることができる、適切な節税対策を行うことができるといったメリットがあります。
アトラス総合事務所は、「常にお客様のために最善を尽くす」をモットーに、勘定科目の意味やお客様のビジネスに合った勘定科目の決め方、会計ソフトの導入支援から活用はもちろん、経理の自計化、節税対策、融資のご相談など幅広くサポートを行っております。

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