公開日:2022年03月08日
最終更新日:2023年02月21日
相続税には、基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)があり、相続財産がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
また、生命保険金や死亡退職金も一定額までは相続税が非課税となります。
この記事では、相続税の計算方法や相続税が非課税となる財産などについてご紹介します。
人が亡くなると、その方が所有していた財産や債務を誰かが受け継ぎます。これを「相続」といいます。相続した人が財産を取得した場合にその財産に対して課税されるのが「相続税」です。
現金預金はもちろん、土地、建物、美術品など金銭的に見積ることができるものはほとんどが相続財産となり、相続税の課税対象となります。
相続税には「基礎控除額」があり、相続財産が基礎控除額以下であれば相続税は非課税、つまり相続税はかかりません。
基礎控除額は、以下の計算式で計算します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
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たとえば、法定相続人が3人であれば、
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円 |
となり、相続財産が4,800万円以下であれば相続税が非課税となります。
被相続人(亡くなられた方)が保険料を支払っていた生命保険金を、被相続人が亡くなったことによって相続人が受け取った場合には、その生命保険金は相続財産とみなされます。
しかし、生命保険金の全額に相続税がかかるわけではありません。これは、生命保険金の目的からしても、その全額を相続税の課税対象とするのは適切ではないと考えられるためです。
そこで「相続人が受け取った生命保険金で一定の額」までは、相続税はかからないことになっています。
この生命保険金で非課税となる「一定の額」は、以下の計算式で計算します。
生命保険金の非課税となる一定の額=500万円×法定相続人(※)の数 |
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※法定相続人の数については、仮に相続人のなかに相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。 法定相続人の中に養子がいる場合で法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までです。 なお、相続人以外の人が生命保険金を取得した場合には、相続税非課税の適用はありません。 |
たとえば、相続人がA、B、Cの3人がいて、それぞれ以下の生命保険金を受け取ったケースで見てみます。
非課税となる金額は、500人×3人で1,500万円となります。
上記の割合から、A、B、Cそれぞれの相続人の非課税となる金額を計算します。
以上から、A、B、Cそれぞれの相続人について相続税がかかる金額は、以下のとおりとなります。
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被相続人が亡くなったことによって相続人が死亡退職金を受け取った場合には、その死亡退職金は相続財産とみなされます。
死亡退職金には、現物支給されたものも含まれ、死亡後3年以内に支給が確定したものを含みます。
しかし死亡退職金は、その後の相続人の生活資金となり得ることからすれば、その全額に相続税がかかるのは適切とはいえません。
そこで、相続人が受け取った死亡退職金についても、一定額までは相続税が非課税となります。
死亡退職金で非課税となる一定の額は、以下の計算式で計算します。
死亡退職金の非課税となる一定の額=500万円×法定相続人(※)の数 |
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※法定相続人の数については、仮に相続人のなかに相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。 法定相続人の中に養子がいる場合で法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までです。 なお、相続人以外の人が退職手当金等を取得した場合には、相続税非課税の適用はありません。 |
死亡退職金の相続税がかかる金額の計算方法は、前述した生命保険金と同じです。
なお弔慰金や花輪は、その金額が常識的な範囲のものであれば、相続税非課税となります。この「常識的な範囲」については、以下のような基準があります。
①被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき: 被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額 つまり、年額100万円の普通給与を受け取っていた人が業務上の死亡である場合には、弔慰金は100万円×3年=300万円まで相続税がかかりません。 ②被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき |
相続や遺贈によって受け取った財産を、相続人が国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附をした場合には、その寄附した財産について相続税はかかりません。
ただし、寄附をした財産が非課税となる特例が適用されるためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
①相続税の申告期限(亡くなった日から10カ月以内)までに寄附すること
②相続や遺贈によって受け取った財産そのものを寄附すること ③すでに設立されている特定の公益法人への寄附であること ④その寄附を受けた特定の公益法人が、寄附を受けた日から2年以内に寄附を受けた財産を公益事業に使用すること ⑤その寄附によって、寄附した人やその親族の税金が不当に軽減されないこと |
お墓や仏壇、位牌、神棚、神具などには、相続税はかかりません。
これは、国民感情の面からしても当然のことと言えるでしょう。
ただし、仏像などを骨とう品として所有していた場合には、その仏像は相続財産とみなされ相続税の課税対象となります。
相続税には、それぞれの相続の状況に応じてさまざまな特例が設けられています。
相続人によっては特例が認められていて、法定相続分から軽減されるケースがあります。
配偶者控除とは、被相続人の配偶者が取得した財産の金額のうち、法定相続分または1億6,000万円のどちらか多い金額までは無税となる税額控除制度です。
たとえば、相続財産が6億円で配偶者が相続した財産が3億円であっても、妻は相続税がかかりません。
ただし、相続税の申告期限までに相続分割ができていること、および相続税の申告が必要です。
相続人が未成年の場合には、今後教育費や養育費が必要となるという事情を考慮して、一定額を控除することができる措置が設けられています。
控除できる金額は、以下の計算式で計算します。
未成年者控除額=(20歳※-相続開始の日の年齢)×10万円 ※令和4年4月から18歳 |
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令和4年4月1日以降は、18歳に達するまでの年齢が未成年者控除の基準年齢となることから、控除額が2年分(20万円)減少することになります。
相続人が85歳未満の障がい者であるときは、相続税の額から一定金額が控除されます。
障がい者控除は、障がいの程度によって控除額の計算式が異なります。
一般障がい者の場合
特別障がい者の場合
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相続開始前の3年以内に被相続人から受けた贈与については、生前の被相続人から受けた贈与税と相続税が二重に課税されてしまうことがあります。
そこで、贈与財産についてすでに贈与税が課されているときには、以下の計算式によって計算した贈与税額が相続税額から控除されることになっています。
(被相続人から贈与を受けた年の贈与税額)×(その年中に被相続人から贈与を受けた財産の価格÷その年中に贈与を受けた財産の価格の合計額) |
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つまり、相続税から一定の贈与税額を差し引いた額が、相続税として支払う額となります。
相次相続控除とは、相次いで相続が起こる場合に1回目の相続で課税された相続税の一定金額を差し引いた金額を、2回目の相続で発生する相続税額から控除するものです。
たとえば、半年前に父親が亡くなりその相続人である母親が続けて3カ月前に亡くなった場合、短期間に同じ財産に2度も相続税がかかってしまうことになります。
そこで、1回目の相続をしてから次の2回目の相続が発生するまでの期間が10年以内であれば、1回目の相続時に払った相続税のうち全部または一部を、2回目の相続で納める相続税額から差し引くことができます。
海外の財産について、外国で相続税を払った場合には、その相続税額を日本での相続税から控除することができます。
以上、相続税が非課税となるケースやその限度額の計算方法、相続税が軽減される特例等についてご紹介しました。
相続税は、お墓、仏具など祖先の祭祀を承継するものや、相続人が受け取った生命保険金や死亡退職金の一定金額、財産を国などに寄附した場合の寄附金額などについては非課税となります。
また、相続した人の状況に応じて相続税が軽減される特例措置も設けられています。
相続税が軽減される特例を適用するためには、手続きが必要となることもありますので、早めに税理士等に相談することをおすすめします。
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監修者
アトラス総合事務所
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人が亡くなると、その人が所有していた財産や債務を誰かが受け継ぎます。これを相続といいます。
受け継いだ人は財産を取得し、この財産に対して課税されるのが「相続税」です。生命保険金や死亡退職金といったものも、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。さらに生前に贈与された財産に相続税が課税される場合もあります。
一方、相続税が非課税となるものもあります。相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算される「基礎控除額」があり、相続財産がこの基礎控除額以下であれば相続税は非課税となりますし、墓地や墓石、相続した人が受け取った生命保険金・退職金などの一定金額、財産を国などに寄附した場合の寄附金額などは非課税となります。
相続に関しては、相続財産の把握や相続税が非課税となるものの把握も大切ですが、そもそも誰が相続人となるのか、相続財産は何か、そしてどのように評価するのかといった知識も必要です。
また、相続手続きには期限があります。相続税の申告は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から原則として10カ月以内」となっていますし、相続放棄や限定承認を選択する場合には、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から原則として3カ月以内」に家庭裁判所に対して申述書を提出する必要があります。
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