公開日:2019年07月02日
最終更新日:2024年03月16日
適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)においては、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができません。
ただし、インボイス制度導入から一定期間は、経過措置がとられています。
免税事業者の豆知識
免税事業者には、預かった消費税を納税する義務がありません。そして、この部分にメスを入れたのがインボイス制度です。
インボイス制度がスタートしたことで、免税事業者からの仕入について納める消費税額が増える可能性があるからです。
ただしインボイス制度がスタートした影響を軽減するため、2023年10月から免税事業者に支払った消費税がすぐに仕入税額控除できなくなるわけではなく、3年ごとに段階を経て少しずつ控除額を減らしていく経過措置が取られていますので、今すぐに大きな影響が出るわけではありません。
しかし、いずれは完全に仕入税額控除を受けられなくなりますから、課税事業者は免税事業者である取引先の扱いをどうするべきか今から税理士と相談するなどして、検討しておきましょう。
なお、免税事業者も課税事業者になるべきか否か、検討をする必要があります。
仕入先の事業者が免税事業者だと、受け取った請求書は仕入税額控除を受けられなくなるため、事業者の負担が増えることになり、免税事業者との取引を見直すケースが発生する可能性があるからです。免税事業者であっても、税務署に消費税課税事業者選択届出書を提出すれば、課税事業者になることができます。課税事業者になった場合は、基準期間等の課税売上高が1,000万円以下でも消費税を納めなければなりません。
なお、新規の課税事業者については、納税額軽減措置として売上時に預かった消費税額の2割を納税額とする「2割特例」を選択することができます。
適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)においては、適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者、または登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のための保存が必要な請求書等の交付を受けることができないため、仕入税額控除を行うことができません。
消費税法では「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、その課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡につき、消費税を納める義務を免除する」と規定されています。
つまり事業者のうち、2年前の売上高が1,000万円以下である者については、原則として国内課税取引について消費税を納める義務が免除されているということです。これが「免税事業者」です。
インボイス制度導入後は、原則として帳簿および適格請求書発行事業者として税務署長の登録を受けた課税事業者から交付された適格請求書等の保存が仕入税額控除の適用要件となります。
そこで、免税事業者は適格請求書発行事業者となれず、適格請求書を発行することができないため、免税事業者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができなくなります。
そこで、適格請求書が交付されない課税仕入れについては、仕入税額控除の対象から除外しなければなりません。
インボイス制度導入後、6年間は、インボイス制度において仕入税額控除が認められない課税仕入れについても、区分記載請求書等保存方式のもとで仕入税額控除の対象となるものについては、以下の割合で仕入税額控除が認められます。
期間 | 控除の割合 |
---|---|
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで | 仕入税額相当額の80%控除 |
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで | 仕入税額相当額の50%控除 |
この経過措置の適用を受けるためには、帳簿に「80%控除対象」「免税事業者からの仕入」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れであることが分かるように記載しておく必要があります。
免税事業者は、適格請求書発行事業者の登録を受けることができないため、適格請求書を発行することができませんので、免税事業者からの仕入については、仕入税額控除を行うことができません。
ここでは、免税事業者からの仕入の処理についてご紹介します。
免税事業者からの適格請求書の保存がない課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができないため、仮払消費税等を計上する会計処理を行った場合には、所得金額の計算をするうえで、法人税申告書別表による申告調整が必要となります。
たとえば、「免税事業者から建物を取得して、110万円を支払い、仮払消費税を10万円計上した」という事例では、以下のように処理を行います(耐用年数20年・定額法とする)。
取得時
決算時
|
なお、決算時に雑損失とした額は、償却費として損金経理をした金額として扱います。
償却限度額を超える95,000円を減価償却の償却超過額として、所得金額に加算します。
(100万円+10万円)×0.050(20年の償却率)=5万5,000円(償却限度額) (5万円+10万円)-5万5,000円=95,000円 |
免税事業者から商品を取得して、仮払消費税等を計上した場合には、所得金額の計算をするうえで、法人税申告書別表による申告調整が必要となります。
たとえば、「免税事業者から220万円の商品を取得して、仮払消費税を20万円計上した。期末在庫は110万円であった」という事例では、以下のように処理を行います。
取得時
決算時
|
決算時には、雑損失とした20万円のうち、期末在庫の部分の金額10万円を所得金額に加算することになります。
免税事業者からの仕入については、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないため、仕入税額控除を行うことができません。
ただし、インボイス制度導入後も一定期間は経過措置がとられています。この経過措置の適用を受けるためには、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となります。
不明点や疑問点については、早めに税理士に相談し、スムーズに対応するようにしましょう。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、インボイス制度導入後の経理システムの構築や、免税事業者からの仕入について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修者
アトラス総合事務所
会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!
インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外の者(消費税免税事業者または登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないので、仕入税額控除を行うことができません。
ただし、適格請求書等保存方式の導入後も、一定期間は免税事業者からの仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。
令和5年10月から令和11年9月までの6年間は、3年刻みで徐々に控除率が逓減していく措置で、具体的には、令和5年10月から令和8年9月までは、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入についても8割の控除を認め、その次の令和8年10月から令和11年9月までは5割の控除を認め、令和11年10月からは、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて仕入税額控除が認められなくなります。
したがって、免税事業者との取引については、この6年間で対応方法等を検討する必要があり、なるべく早い段階から、実際に税負担額がどのようになるか、どのようにカバーしていくのかを税理士等に相談して具体的にシミュレーションしていくことが大切です。
アトラス総合事務所では、免税事業者からの課税仕入れの対応、免税事業者が適格請求書発行事業者を選択する場合のメリット・デメリット等について、ていねいにご説明しながらサポートしております。
インボイス制度以外の税金・経営・融資等に関する相談、懸案事項に対するセカンドオピニオンについても対応しております。
・売上がぎりぎり1000万円を超える場合の節税について 「個人事業主として3年目になりますが、今年度の売上が1056万ほどに達する見込みです。 ただ、今後この金額より上がる見込みが少ないのですが、消費税等への対策として今年度の仕事を減らして売上1000万円未満に抑える方が節税になりますでしょうか? 尚、インボイス制度の影響により課税事業者に転向する予定は今のところありません。…」 |
・インボイス制度について 「私が、本業の仕事があり、副業でジムでパーソナルトレーナーを業務委託で請け負っております。 インボイス制度がよくわからず、私自身で何かする必要はあるのか契約しているジムのみが関わる話なのでしょうか…」 |
・インボイス制度について 「インボイス制度の記載方法について質問なのですが、インボイス制度の申請をすると消費税の課税事業者になると思うのですが、それに伴い、別途消費税の課税事業者になるための届出は必要になるのでしょうか。それとも、インボイスの登録の申請書を出すだけで、特に問題ないでしょうか。…」 |