一人会社とは?設立手続きは?社会保険はどうすべき?

公開日:2022年05月12日
最終更新日:2024年03月26日

この記事のポイント

  • 一人社長の会社設立は、株式会社か合同会社が決める必要がある。
  • 一人社長でも、社会保険には加入する義務がある。
  • 法人用クレカを作成すると、経理処理を効率化できる。

 

自由な働き方、家族との時間、満足のいく収入…さまざまなものを手に入れることを夢見て、一人社長が一人会社を設立するケースが増えています。
起業をする際は、個人事業を開業する方法と会社を設立する方法がありますが、一定以上の収入を見込める場合には、会社を設立する方が税負担を軽減できるなどのメリットがあります。
ここでは、一人社長が一人会社を設立する際に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
 

会社設立の豆知識

組織にとらわれず、好きな場所で好きな時に自分のペースで仕事ができる一人会社を設立するケースが増えています。政府がダブルワークを後押ししていることもあり、なかには会社を辞めずに副業として一人会社を設立するケースもあります。
個人事業主と比較した場合の会社をつくるメリットは、なんといっても税金面の有利さです。個人事業と株式会社が同じ事業所得を得た場合で考えてみます。
株式会社の場合、その所得をすべて事業主に役員給与として支払った場合、個人事業主が払う税金より、会社とその事業主が払う税額の方がだんぜん安くなります。
また、会社の方が社会的な信用を得やすくなるため、金融機関からの借入も有利になりますし、従業員を雇用するうえでも有利です。
つまり将来的に事業を大きくしたいという人は、会社を設立する方が事業拡大のための条件がそろっています。
ただし、個人事業として開業するのであれば手続きや資金は比較的にコンパクトに進めることができますが、会社を設立するとなると、作成・提出する書類も多いですし、設立するための費用もかかります。
さらに業種や事業内容によっては、許認可が必要になることもありますので、早めに情報収集を行いましょう。
なお、会社を設立する場合には、事業年度や資本金の額によって、設立後の税負担に違いが出ることがあります。したがって、会社を設立するうえでは、事前に税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

一人社長の会社設立

「起業しよう」と思ったときには、個人事業を始めるにしても会社を設立するにしても、さまざまな手続きが必要となりますし、知っておくべき知識があります。
「何だか難しそう」「手続きが大変そう」というイメージを持つ方も多いと思いますが、それほど難しい手続きはありません。ここでは、会社を設立する際に知っておきたいルールや手続きについて、わかりやすくご紹介します。

(1)一人社長は株式会社と合同会社、どっち?

会社を設立する際には、会社の形態を決めなければなりません。
会社には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社といった種類がありますが、起業して事業を行う場合には、株式会社や合同会社が一般的です。
合同会社は株式会社より設立費用を抑えることができる、意思決定が早いなどのメリットがありますが、事業を拡大するために資金調達をしやすいのは、株式会社といえるでしょう。

下記に株式会社と合同会社の違いをご紹介しますので、将来会社をどうしていきたいのかという観点も踏まえ、参考にしてください。

株式会社 合同会社
代表の呼称 代表取締役 代表社員
設立費用 収入印紙:4万円
認証手数料:資本金100万円~300万円未満は、~4万円
0円
登録免許税 15万円以上 6万円以上
責任 株式会社は資本と経営が分離しているので、株主は「有限責任」のみを負うことになります。株式会社は出資者と経営者が別人でもOKですが、経営者が自ら出資することも可能です。 合同会社は、原則として出資者=社員となります。つまり合同会社では出資者を「社員」と呼び、社員の中から代表者を選んで代表社員となります。この代表社員は、株式会社における代表取締役兼株主となります。
利益の分け方 原則として出資率に応じて、決まります。 定款に定めておけば、出資比率と異なる分配比率にすることができます。
出資者の議決権 毎年株主総会を開催し、会社の重要な方針を決定します。議決権は、1株1票が原則です。 社員総会の開催義務はありませんが、①出資者1票の議決権を持っていて、定款で定めれば、特定の人に多くの議決権を与えることが可能です。
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(2)会社設立手続きの流れを知っておこう

会社設立に必要な書類の作成・手続きは、プロに依頼すれ方がスムーズですが、自分自身で行うこともできます。
ここでは、会社設立の大まかな流れをご紹介します。

①発起人(株式会社)・出資者(合同会社)を決める
株式会社は、1名以上の発起人、合同会社は1名以上の有限責任社員を決めます。

②商号の事前調査を行う
すでに登記されている商号と同じ商号をつけると、トラブルになることがあります。したがって、本店予定地の近隣で同一商号の会社がないかを調べておくようにしましょう。
同一住所でなければ既存の商号と同じでもよいことにはなっていますが、近隣に同名の会社があれば間違いのもとですし、有名な商号と同じであると後々トラブルになりかねませんので注意が必要です。
商号は、会社の第一印象を決めるものですから、自身の理念や姿勢が伝わるような商号を決めるようにしたいものです。

③会社の基本事項を決定する
商号、目的(事業内容)、本店所在地、事業年度、資本金の額などを決めます。
本店所在地の記載は、最小行政区画である市区町村までで構いません。ビル名が変わったりすると定款を変更しなければならなくなり、その分の費用がかかってしまいます。

事業年度は自由に決めることができますが、設立から遠い日を決算日として、業務繁忙期などを避けて決算日を決めるとよいでしょう。

④会社の代表者印(実印)を作成する
代表者印は、設立登記の際に届出が必要です。

⑤個人の印鑑証明書をとる
印鑑証明書は、多め(最低3枚)にとっておくと安心です。登記申請日から逆算して3カ月以内に発行されたものが必要です。

⑥定款の作成
会社のさまざまな事項を定めた定款は、会社の憲法ともいわれます。絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)、相対的記載事項(定款に定めないと効力が生じない事項)、任意的記載事項(定款に定めなくても効力を失わない事項)があります。
また、定款には創業理念を記載した「前文」を記載することもできます。起業時の思いを前文として記載するのも良いでしょう。

⑦定款の認証を受ける
株式会社は、公証役場で定款を公証人に認証してもらう必要があります。

⑧資本金の払込
株式会社の発起人や合同会社の社員(出資者)は、引き受けた株数(出資口数)に該当する金額を、払い込みます。
会社の資本金は1円以上あればいいのですが、資本金は事業のために使うお金ですから、開業資金+当面の運転資金に相当する額は、最低でも用意したいところです。
また、会社設立時に大きな投資をする予定がないのであれば、資本金は1000万円未満に抑えておくことをおすすめします。消費税や法人住民税等が軽減され、納税額を抑えることができるからです。

⑨登記に必要な書類を作成し申請する
申請書と必要な添付書類を法務局に提出します。
一人会社の場合は、オンライン申請も可能です。
オンライン申請を行う際には、あらかじめ法務局に電子証明書の発行を申請しダウンロードしておきます。次に「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスし、申請用総合ソフトをダウンロードして、申請者情報を登録します。
申請に必要な事項を記入し、本人確認証明書、払込みを証する書面、定款などに電子署名を付与してデータを送信します。
申請が受理されたら、登録免許税を納付します。

⑩登記完了
修正の必要がなく書類が受理されれば、会社が設立されます。
税務署などへの提出や銀行口座の開設のために必要となるので、登記事項証明書や代表社員の印鑑証明書の発行を申請します。

⑪税務署への届出
税務署や都道府県税事務所、市区町村、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなど諸官庁に必要な届出を行います。
税務署に提出する主な書類は、以下のとおりです。

・法人設立届出書
・給与支払事務所等の開設届出書
・青色申告の承認申請書
・減価償却資産の償却法の届出書
・棚卸資産の評価方法の届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・個人事業の廃業届(個人事業から法人成りした場合)

▶ 法人成りの手続き一覧

(3)一人会社でも社会保険には加入する義務あり

会社を設立したら、一人会社でも社会保険に加入する義務があります。
手続き期限は会社設立後5日以内なので、会社の登記が完了したら、登記簿謄本を法務局で取得し、年金事務所で手続きを済ませましょう。
会社が加入する社会保険は、健康保険、厚生年金、介護保険(満40歳以上)です。
社会保険料は、会社と加入者で折半します。
加入者負担分は給与から天引きし、支払いは会社が一括で行います。

また、従業員を1人でも雇ったら、労働保険にも加入しなければなりません。
労働保険のうち、労災保険料は会社が負担し、雇用保険料は従業員と按分します。

(4)初期費用は抑えて身軽に起業しよう

一人会社の場合には、初期費用はなるべく抑えて起業したいところです。
自宅をオフィスにすれば出費が抑えられるうえに、賃貸なら家賃の一部を損金算入することもできます。
また、バーチャルオフィスの利用もおすすめです。
郵便物や荷物の受取、保管、電話の転送、会議室のレンタルなどさまざまなプランが用意されていて、通常のオフィスを借りるよりも格安です。
ただし、許認可が必要な業種のなかには、バーチャルオフィスが不可な場合もありますので、事前に確認しておきましょう。

(5)銀行口座は早めに開設しよう

会社を設立したら、なるべく早く銀行口座を開設しましょう。
都市銀行では、新しい会社の口座開設に対して消極的ということもありますが、ネット銀行なら新しい会社に対しても口座開設を広く受け入れています。
ただし、社会保険料の口座振替はネット銀行では対応していない場合もありますので、その点をよく確認したうえで口座開設を進めましょう。

(6)法人用クレカで経理処理を効率化

最近は、会社設立直後に申し込めるカードが増えてきました。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、クレジットカードやネットバンキングと連携すると、「自動で経理」という機能で利用履歴を取込、取引入力を自動で行い、最低限の事項だけを後で確認するだけで済みます。

会計処理が簡単になりますので、現金払いして精算しさらに記帳する作業と比較すると、格段に経理作業を効率化することができます。
提出書類はカード会社によって異なりますが、登記事項証明書や代表者の本人確認書類が必要となるケースが多いようです。

(7)資金繰りを知っておこう

法人取引の多くは、請求書を発行した後取引相手が代金を支払うまで一定期間あることが通常です。
しかし、相手から約束したとおりに振込がなかったりすると、帳簿上は黒字でも身動きがとれなくなってしまうことがあります。
反対に帳簿上は赤字でも、融資などを受けて資金を用意することができれば、事業を継続することができます。
資金繰り表を作成すれば、早めに対策を講じることで、会社を守ることができます。
「クラウド会計ソフト freee会計」では、日々の取引入力が自動で行われるだけでなく、さまざまなレポートも自動作成されます。
資金繰りレポートでは、今後のお金の出入りを踏まえた上で、資金ショートを起こさないか確認することができます。ぜひご活用ください。

資金繰りレポート
・今月はどういった勘定科目で一番お金を使ったのかを確認することができます。
・今後のお金の出入りを踏まえた上で、資金ショートを起こさないか確認することができます。

▶ クラウド会計ソフト freee会計「資金繰りレポート」

(8)会社が納める税金を知っておこう

会社を設立すると、さまざまな税金を納めることになります。
中心となるのは法人税で、法人税額が決まることで算出される税金が大半となりますが、なかには消費税や法人住民税の均等割額のように赤字でも納めなければならない税金もあります。
それぞれ計算方法や納付時期が異なりますので、未納になったり計算間違いをしたりしないようにしましょう。

▶ 会社が納める税金一覧と納税方法まとめ

まとめ

以上、一人会社を設立するうえで知っておきたい基礎知識についてご紹介しました。
会社を設立するとさまざまな手続きが必要となりますし、社会保険にも加入しなければなりません。
それでも、起業したからこそ手に入れられるものは、多々あります。
サラリーマン時代とは比べられないほど自由な時間が手に入りますので、子どもの成長を見守る時間を持つことができますし、理想のサービスを自由に追求することもできます。
もちろん、サラリーマン時代より多くの収入を得ることも可能です。
会社設立の不明点や疑問点はもちろん、設立後の経理システムの構築や決算書コンサルは、税理士に相談することができます。
自分自身の可能性を追求したいと考えたら、まずは一人会社の設立に挑戦してみてはいかがでしょうか。

一人会社の会社設立について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、一人会社の会社設立について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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この記事の監修者:アトラス総合事務所

監修者

アトラス総合事務所

会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!

自分で会社を立ち上げて事業をスタートしようとする時には、知っておくべき知識やルールは多々ありますし、いろいろな手続きが必要です。会社を立ち上げてからは、日々の経理事務が必要となりますし、社会保険関係や税務署などの役所対応など、さまざまな分野にわたって事務作業を行わなければなりません。それらを事前に理解したうえで、自分の目的に合った会社を立ち上げることが大切です。
さらに、会社を経営するうえでは、モノやサービスを売るだけではなく、効率的にお金が入ってくるしくみを考え、お金をどのように使うか検討し、さらにそのお金をどう増やしていくかも考えなければなりません。
アトラス総合事務所は、会社設立のサポートから会計ソフトを活用するためのサポート、記帳代行、決算・税務申告の代行など、一人会社の経営者様を幅広く支援するための体制を整えております。会計・税務・労務・法務に至るまで、可能な限りあらゆる面でサポートを行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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