公開日:2021年10月22日
最終更新日:2024年03月14日
200%定率法とは、平成23年12月税制改正により、平成24年4月1日以降に取得された減価償却資産の計算方法です。
減価償却資産の償却方法には大きく定率法と定額法がありますが、平成24年4月1日以降に取得する減価償却資産の定率法の償却率は、「定額法の償却率×2.0」となっています。
このため、「200%定率法」と呼ばれています。
この記事では、200%定率法の計算方法や250%定率法との違いなどについてご紹介します。
200%定率法の豆知識
200%定率法は、平成24年4月1日以降に取得された減価償却資産の計算方法です。
200%定率法と定額法を比較すると定額法の償却率の2倍にもなるので、定率法を採用すると、取得初年度の減価償却費は定額法の2倍にもなるので、初年度の節税につながります。
200%定率法は、平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産については「250%定率法」となります。200%定率法も250%定率法も、調整前償却額、償却補償額、保証率、改定償却率を使って計算しますが、「資産をいつ事業に使い始めたのか」によって、償却方法が変わりますので注意が必要です。
どの計算方法を採用するべきかについては、個々の事業の状況によって異なりますので、税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
定率法は200%定率法と言われています。
なぜ200%定率法と言われるようになったかというと、平成23年12月(2011年)の税制改正によって、平成24年(2012年)4月1日以降取得する減価償却資産の償却限度額を計算する際に使用する定率法の償却率が、従来の250%定率法から200%定率法の償却率に引き下げられたからです。
この税制改正の狙いは、企業の新規設備購入を促進することにあります。
以前の日本の減価償却制度は、資産区分が煩雑なうえに取得価額の95%までしか償却できないなどの欠点がありましたが、そもそもアメリカ、ドイツ、イギリスなどでは、もともと残存価値や償却可能額という概念がありませんでした。
日本もこの改正によって主要国並みの減価償却が可能になったということになり、設備投資に資金を投入しやすくなったということができます。
200%定率法による減価償却費は、以下の計算式で計算します。
減価償却費 = 期首未償却残高 × 定額法の償却率 × 200% |
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つまり定率法の償却率は、定額法の償却率×200%ということになり、償却を始めた最初の年度では定額法の2倍もの減価償却費を計上することができることになります。
その後の年度では、計上する減価償却費がだんだん少なくなっていき、途中から定額法のような計算に切り替わります。
※定額法とは 減価償却費が毎期同額となるように、取得価額に「定額法償却率」(=1÷耐用年数)を乗じて計算した金額を、各事業年度の「償却限度額」とする方法です。なお、償却限度額とは、減価償却費として損金算入できる最高限度額のことをいいます。 |
定額法と比較するために、200%定率法の計算例を見てみましょう。
定率法を適用する場合には、耐用年数を満了するまでの残存年数で均等償却すると仮定した償却額の方が定率法による償却額よりも大きくなる事業年度から、残存年数による均等償却額を「償却限度額」とします。
たとえば、機械(取得価額:600万円、耐用年数:5年)の減価償却費を定率法と定額法で比較すると、以下のようになります。
※定率法の償却率 0.400、保証率 0.108、改定償却率 0.500
200%定率法と定額法による減価償却費の比較
※定率法償却率は0.4(1÷5年)×2です。 |
上記の例を見ると、定額法より定率法の方が、早い機会に多くの減価償却費を計上することができることが分かります。
減価償却については、平成19年(2007年)にも大きな税制改正がありました
(つまり、定率法は短期間に2度の税制改正が行われたことになります)。
平成19年の税制改正は、残存価値の廃止や250%定率法という償却方法が導入されたものでした。この改正でほぼ全額を費用化できるようになり、「より多くの減価償却費を計上できるようにして、設備投資に資金を投入しやすくしよう」としたのです。
その後、平成23年12月の税制改正では、平成19年の改正の250%定率法について、「減価償却費を多く計上し過ぎではないか」という意見が取り入れられたことで、200%定率法という新しい償却方法が導入されたものです。
したがって250%定率法を使って計算するのは、平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得した固定資産のうち、定率法を選択した資産だけです。
これらの改正によって、固定資産をいつ事業に使い始めたのかによって、どの償却方法を使うのかが変わることになります。
以下の区分を抑えておきましょう。
平成19年3月31日以前に取得した固定資産 →旧定額法、旧定率法 |
平成19年4月1日以降に取得した固定資産 →定額法、250%定率法 ・残存価額(取得価額×10%)が廃止され、全額償却できることになりました。 ・償却可能限度額(取得価額×95%)が廃止されました。 |
平成24年4月1日以降に取得した固定資産 →定額法、200%定率法 |
なお、「クラウド会計ソフト freee会計」では、固定資産台帳へ登録された資産は、自動で減価償却費の計算・計上が行われます。
通常は「定率法」として処理され、250%か200%かは取得日から自動判定します。また、平成19年(2007年)3月31日以前に取得したものは「旧定率法」にて処理されます。
「freee会計」の固定資産台帳は、法人税申告書の別表16(1)や別表16(2)を作成する際の元情報にもなります。
「freee会計」の固定資産の簡易一覧・詳細一覧画面から、登録した固定資産の詳細や自動計算された減価償却費を閲覧することができます。 |
資本的支出を行った場合の新しい減価償却制度の適用は、原則として「本体設備等」と「資本的支出」とは別管理して、それぞれ減価償却をします。
特例として、「本体設備等」と「資本的支出」を合算して減価償却することもできますが、平成24年3月31日以前に取得した資産、および平成24年4月1日以降にした資本的支出によって取得した資産との合算はできないことになります。
参照:国税庁「資本的支出を行った場合の減価償却[令和4年4月1日現在法令等]」
また、この特例で定率法を採用しているケースにおいては、合算して償却を開始する時期を「資本的支出を行った事業年度の翌事業年度から」とすることも可能です。
※資本的支出とは 固定資産を改良したり機能を追加したりしたことで、資産の価値が高まったり固定資産の使用可能年数が伸びたりした場合には、その出費は「修繕費」ではなく「資本的支出」となり、修繕費としては処理することができなくなり、全額をその年の経費とできなくなります。 資本的支出は固定資産として取り扱われ、原則として減価償却して少しずつ経費としていくことになります。 |
税法は、経済の変化や政策等から、通常の減価償却費のほかに特別な減価償却費を計上することを認めています。なかでも中小企業がぜひ活用したいものとして、「中小企業投資促進税制」があります。
これは、青色申告を行っている中小企業者(資本金1億円以下)の会社が、平成10年6月1日から令和5年3月31日までの間に、新品の1台または1基160万円以上の機械を購入した場合などに、その取得価額の100分の30を特別償却できるという制度です。
たとえば、1,000万円の機械を購入した場合には、300万円(1,000万円×30%)の特別な減価償却費を計上することができるわけです。
さらに特定中小企業者(資本金3,000万円以下)に該当する場合には、この30%特別償却か7%税額控除のいずれかの選択をすることができます。
該当する企業の場合には、ぜひ活用したい制度ですが、この特別償却の適用を受けるためには、確定申告書等に償却限度額の計算に関する明細書を添付して申告するなどの手続きが必要です。手続きの詳細については、税理士に確認してください。
参照:国税庁「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)[令和3年9月1日現在法令等]」
以上、200%定率法の意味や計算方法についてご紹介しました。
200%定率法とは、毎期期首の未償却残高に一定率(償却率)を乗じて減価償却費を計算する方法です。定額法の償却率(=1÷耐用年数)の2倍が定率法の償却率となることから、200%定率法と呼ばれます。
減価償却費の償却方法は、定額法、定率法などがありますが、減価償却費(損金)を早く計上して投下資本の早期回収を図るためには、定率法を採用する方が有利です。
ただし、どちらの償却方法を採用するかは、個々の状況によって異なりますので、税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、200%定率法について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修者
アトラス総合事務所
会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!
減価償却とは、固定資産の取得の際にすでに現金の支出が済んでいるにも関わらず、それを一気に費用に計上せずに、その後の一定期間に費用配分する手続きです。
定額法とは、毎期均等額の減価償却費を計上する方法で、定率法とは毎期期首の未償却残高に一定率(償却率)を乗じて、減価償却費を計算する方法です。
ただし、定率法を採用して償却率を乗じ続けても未償却残高は永遠にゼロにはなることはありません。そこで、定率法における償却費が、未償却残高を残存耐用年数で均等償却した場合の償却費を下回る場合には、残存期間の償却費は均等償却額とすることになっています。要するに、未償却残高をゼロにするために、ある時点から定額法に切り替えるということです。
最終的な減価償却費は、定額法も定率法も同じですが、直近の節税を考えた場合には定率法の方が有利になるので、定率法を選択するケースが多いといえます。
ちなみに、節税という視点で考えると、中古でよいものは中古で購入して短い期間で償却するのがおすすめです。中古の耐用年数は新品より短くなっていますので、年間の経費を増やすことができるからです。
また、一定の中小企業者の場合には、取得価額30万円未満の資産を購入したときに、全額を経費とすることができますので、この制度も上手に利用していきたいものです。
アトラス総合事務所では、固定資産の減価償却や節税対策について、ていねいにご説明しアドバイスを行います。会計ソフトの活用方法や経理システムの構築などのご相談についても、お気軽にお問い合わせください。
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